堕落先生マギま!!   作:ユリヤ

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命の洗濯

 ナギ達の過去を纏めた映画の上映が終わり、その後直ぐにネギと楓が仮契約を行った。楓がネギと仮契約するという事は、唇と唇を合わせる行為なのだがあやかは猛反対するのだと思いきや

 

「ネギ先生に必要なのは強力な力であり仲間です。戦闘経験もあり忍びである楓さんのフットワークの軽さならば強力なアイテムが出てくるはずですわ。ならばこの場で私情は挟みませんわ」

 

 ……とは言っているが今にも血涙を流しそうなほどに下唇を噛んでいたが。

 早速仮契約をすると一枚のボロ布のようなアーティファクトが出てきたが、実際はボロ布の中に中々に大きい庭付きの家が格納されているというのが楓の談。隠れ家とは楓らしいアーティファクトである。

 そしてその流れで古菲も仮契約をしろとハルナが押すのだが、古菲本人がひよったのと2人連続は許容範囲外だったようで、あやかが暴れそうになったので古菲の仮契約は先送りになったのであった。

 オスティアに戻ってきた時に夜明けになっていた。皆はオスティアで名所になっている温泉施設へと足を運んだ。

 早速脱衣し、浴場に足を運ぶと、眼前には巨大な温泉が幾つもあった。

 先に体を洗い湯に浸かる男衆。程よい湯加減が体を癒やす。

 

「ふぅ~いい湯加減やな」

「朝風呂っていうのもオツなもんだな」

 

 フェイト達との戦闘や映画の上映でクタクタになっていたからか湯が身に沁みる。感嘆な声を上げる男達。

 

「あの映画のお陰でフェイトの目的もあらかた分かったけど」

「今は亜子達を奴隷から解放するのが第一目標だ。今はそれに集中しようぜ」

「けどよ大兄貴……」

「マギ兄ちゃんだってヤバい状況なん理解してるんか?」

「そうだよ。僕もお兄ちゃんが心配だよ」

 

 ネギ達も雪姫を通してだがマギがアーチャーが不死を斬る刀を手に入れた事を聞いており心配していたが

 

「なに、俺は負けるつもりなんてないし、不死身の俺がそう簡単にくたばる事はないさ」

 

 咄嗟に口を押さえてない所を見て本心で言ったのだろう。闇の魔法の修行を終えてからというのもマギは自身の身を顧みない言動や行動が目立ってきた。そんな兄を見てモヤモヤする弟のネギ。しかし根拠はないがマギが大丈夫と言い切るなら信じるしかないのも事実だった。

 微妙な空気になったが、カモがわざとらしく咳払いをして場の空気を切り替えようとした。

 

「ま、まぁ大兄貴を信じて、この話は一旦置いといて折角温泉に来たんだし、ここは一大イベントと洒落込もうじゃないですか!」

「何カモ君一大イベントって?」

 

 ムフフと笑いながら勿論と目を輝かせながら

 

「そりゃ、覗きですぜの・ぞ・き!! こんな大きな温泉に来たんだしやらないなんて勿体ないですぜ」

「アホらし。女の裸見て何が面白いや」

「なっ何言ってるのカモ君。だめだよ僕そんな事しないからね」

「お、面白そうじゃねーな。遠慮しておく。雪姫に〆られたくないし、のどか達に白い目で見られたくないからな」

 

 カモの誘いに小太郎は興味なさげにネギは断りマギは一瞬乗り気だったがすぐに理性が戻って断った。

 誰も乗って来なかったので一匹で行くかとカモは女湯と繋がっていそうな場所を探していると他の入浴客にぶつかってしまった。

 

「あぁすまねえな」

 

 ぶつかってしまった相手はザイツェフ……ではなくチコ☆タンであった。

 

「あんたは……」

「黒い猟犬!!」

「のどか姉ちゃん狙ったちゅう傭兵共か!!」

 

 相手がマギと戦っている相手だと知るとネギと小太郎は臨戦態勢に入るがチコ☆タンはまてまてと慌てながら

 

「こっちには戦う意志はない。だから鉾をおさめてくれ」

「そうそう。俺らは朝風呂浴びに来たんだよ」

「そんなかっかしないで今は温泉を楽しもうよ」

 

 トカゲ男とモルボルグランも一緒に居た。チコ☆タンと一緒に朝風呂を浴びに来たのだろう。だが2人にも戦う意思はない。

 

「落ち着けよお前ら。そんなに気を張るなよ」

 

 マギはチコ☆タン達が報復する気配を全く感じてないためリラックス状態だ。マギが落ち着いている様子を見せているのでネギ達も構えを解いた。

 

「すみません。お兄ちゃんと戦った人達と偶然出会って気が張ってしまいました」

「いやいや気にしてないよ。君らは我々を見逃してくれたからね。それに今はオフだし金にならない事はしない主義なんだ」

「なんや骨の兄ちゃんが風呂に入ってると出汁取ってるみたいやな」

「ガハハハッまた言われたなモルボルグラン!」

「もう何回も言われてるけど未だになれないなぁ……」

 

 ネギと小太郎もチコ☆タン達と世間話をするぐらいに打ち解けたようだ。

 

「そう言えばお前らにあと1人仲間がいたよな? あいつはどうしたんだ?」

「おおそうだそうだ。奴とは話が合いそうと思ったのにいないのか?」

「ん? パイオ・ツゥの事? あいつ女だよ?」

『ええ!?』

 

 チコ☆タンの衝撃発言に驚きを見せるネギとカモ。まさかぶちのめした1人が女であった。

 

「言っとくが俺は謝らないぞ。あいつはのどかやのどかと同行していた人達を辱しめようとしたんだからな」

「まぁパイオ・ツゥは仕事の時も胸の事にこだわるからな。恨まれるのもしょうがない」

 

 チコ☆タンも苦笑いを浮かべるのを見るにパイオ・ツゥの胸への探求心は辟易しているようだ。とその時

 

「きゃあああああ!!」

 

 女湯から悲鳴が上がる。しかも声はのどかのようだった。

 

「パイオ・ツゥの奴またやってるな。あいつ温泉に来ると他の入浴客にちょっかいをかけるからな」

 

 チコ☆タン達は呆れた溜息を吐いているが、この場にはパイオ・ツゥよりもヤバい奴が居る。

 

「……」

 

 マギの顔から表情が消えた。

 

「お、お兄ちゃん?」

 

 ネギはマギに声をかけるがマギからは何の反応もなかったが

 

「────マギウス・リ・スタト・ザ・ビス  来たれ炎の精闇の精 闇よ渦巻け燃え尽くせ地獄の炎 固定 掌握 魔力充填 術式兵装『夜叉紅蓮』」

 

 無機質な声で夜叉紅蓮となったマギは女湯との境目になっている壁を見る。日本の銭湯のように上部の方は空いているのだ。マギは無言でその壁へと走る。

 

「お、おい。幾ら此処の警備が緩いからといっても覗き防止の結界はしっかり貼られているんだぞ!」

 

 チコ☆タンの静止の声を無視しマギは男湯と女湯の境目の空間に異形化した右腕を振り下ろした。右腕が空間に接触した瞬間に結界が展開され、スパークが走る。しかしマギが力を入れると硝子が砕ける音と同時に結界はいとも簡単に砕け散ってしまった。

 マギは最初から結界などなかったかのようにそのまま女湯へと侵入してしまう。

 邪な想いは微塵もなく。マギは女湯へ入ってしまったのであった。

 

 

 

 

 

 

 一方、時は少し戻り女湯。パイオ・ツゥが好き放題していた頃。温泉の一か所にのどか達が入っている。因みに雪姫は一緒に入っていない。理由としては

 

『温泉は興味はあるが、大衆浴場はあまり好みじゃない』

 

 という理由である。他の理由もあるだろうが今はそう言う事にしておこう。

 浴場の岩場に腰掛けて古菲は思案顔を浮かべながら

 

「ちょっといいアルか本屋。話があるアルよ」

「何ですか古菲さん?」

 

 数秒黙ってから真剣な顔で

 

「恋っていうのはどういう感じアルか?」

 

 のどかに恋について問いかける。

 

「なんやくーふぇ恋したん!?」

 

 恋バナに興味津々な感じで顔を輝かせながら詰め寄るこのかにたじたじになりながら古菲は

 

「い、いやまだそこまでいっていないというか……そもそも恋というのがよく分からないというのが本心アル。だからこそ、人を好きになった本屋に聞きたいと思った次第アル。本屋、恋とはどんなものアルか? 人を好きになるとどういう気持ちになるアルか?」

 

 真剣に問いかけるとのどかももじもじしながらもマギを思い浮かべながら

 

「そうですね……恋をするとその人の事を考えると胸がドキドキしてぽかぽかと暖かなるといいますか」

 

 自分の感覚を古菲に伝える。古菲は恋の感覚を聞いてうむむと唸る。

 

「ドキドキ、ぽかぽか……まだよくわからないアル……」

「だったらくーふぇもやって見ればいいんやよ!」

「いや、まだ私には意中の相手は……」

「だったら最初に思い浮かべた人でえーから!」

 

 このかの押し気味に戸惑いながらも古菲は最初に思い浮かべる相手をイメージする。もやもやとしていたシルエットも少しずつ形になる。それは自分が教えている弟子の少年の……

 

「う、うむむ……何か胸にドキドキとした感覚が」

「ホンマ!? それからそれから!?」

 

 興奮気味なこのかに古菲は

 

「……ん? けどこの感覚は、ドキドキというより、もにゅもにゅ?」

「ふむふむ、素晴らしき感触。これは高得点を与えてもいい逸品ネ」

 

 褐色の多腕の少女に背後から胸を揉まれる古菲。気配を感じられず、背後を取られ胸をもまれた事に驚く古菲。のどかも思わず悲鳴を出してしまう。

 

「何奴!?」

 

 素早く回し蹴りを少女に繰り出すが瞬道術で避ける少女。そしてそのまま今度は刹那の背後に周り胸を揉む。

 

「モフフフフ。まだまだ発展途上でありながら将来は有望な物を持ってるね。嗚呼おっぱいに幸あれ」

 

 見た目は少女だが、この少女こそチコ☆タンの仲間であるパイオ・ツゥその人である。パイオ・ツゥはこんどはこのかの胸を堪能してから最後はのどかに狙いをつける。

 

(まさか賞金首の仲間に出会えるとは……そしてあの時に堪能出来なかったあの少女のおっぱいを揉むチャンスネ。ここで思い切り揉みしだいてやるネ)

 

 パイオ・ツゥにこのままのどかの胸も辱しめられてしまうのか。だがその時、上から何かが落ちてきて、のどか達が入っている温泉の湯が弾ける。

 

「……はぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 現れたのはマギであった。マギが自分のピンチにまた助けに来てくれた。のどかの気持ちは高揚するが、今自分の格好を思い出して羞恥の気持ちが大きくなる。それはこのか達も一緒で

 

「きゃあああ!! マギさんここは女湯や! 勝手に入ってきたらダメやえ!」

「……その声はこのかか。心配するななぜなら」

 

 湯気が切れると、マギはタオルを顔面できつく縛り、目隠してしている。しかも下半身は影にあらかじめ収納していたズボンをはいており自分の下半身を見せない徹底ぶり。

 

「覗きはダメだからな。徹底的にしてから来た」

「あぁそういう事なら安心……なわけないやろ! どんなことしても女湯に入るのはダメやって!!」

 

 納得しそうになるが直ぐにツッコミを入れるこのかを無視し、パイオ・ツゥの方を向く。

 

「まさかもう一度のどかを襲うとするとはわな……てめぇのリーダーからお前が女と聞いた時は一瞬罪悪感が生まれたが、のどかを辱しめようとした蛮行。もう一度お灸をすえてやる」

「モフフフフ。まだまだ諦めないネ。けど、ここは逃げるのが得策!」

 

 マギの殺気でパイオ・ツゥは一目散に逃げだす。しかしマギは目隠しをしながらもパイオ・ツゥの後を追う。

 

「な!? 一切の迷いなくこの私を追いかけるとは!」

「てめぇの邪な気配は目隠ししても余裕で感じ取れるんだよ!」

「モフフフフにじみ出てしまったカ。おっぱいに対するあまねく溢れる探求心が!」

「ぬかせ!!」

 

 周りの女性の悲鳴を無視してパイオ・ツゥを追いかけるマギ。ぽつんと残されたのどかは

 

「ああやって私のピンチに颯爽と現れるのも素敵な所……かな」

「いや、あれは」

「ただの心配性じゃないアルか?」

「恋もあそこまで行くと正に恋の病やな」

 

 マギを艶っぽい目で見るのどかにツッコミを入れるこのか達であった。

 同時刻に夕映達アリアドネーの騎士団達も朝風呂に来ていた。エミリィ達は男湯にマギ達が入っているのではという話になって何故か女性が男湯へ侵入する流れになりそうであった。

 そんなわいわい騒いでいる蚊帳の外で夕映は自身のカードを見つめていた。

 

「ユエ。そんなにカードまじまじと見て、やっぱりマギさんに魔法当てたのを気にしてる?」

「はい。マギさんにあの程度の魔法は効かないのは分かっていますが、私がマギさんに剣を向けた事が……」

「だったらさ、今それでマギさんに謝ったらいいじゃない。マギさんだってユエの事を許してくれるって」

「そうでしょうか?」

「そうそう! こういう時は当たって砕けろだよ」

「……はい。そうですね」

 

 数回深呼吸していざ念話をしようとした。

 

「モフフフフ! そう易々と捕まるわけないネ!」

 

 夕映の前をパイオ・ツゥ走り去る。滑りやすい大浴場で走るなんて随分とマナーが悪い子供だと夕映が思っていると

 

「待ててめぇ!!」

 

 その後をマギが追いかけているのを目の当たりにして夕映の頭の中が真っ白になった。

 

「ま、マギ、さん? いったい何をしてるんです?」

 

 殆ど消え入りそうな程小さな声であったが、マギは夕映に気づき目隠しした顔を夕映に向ける。

 

「そこに夕映が居るのか? 聞いてくれ、今逃げた奴がのどかの胸をまさぐろうした不埒者なんだ協力してあいつをとっちめて────」

「バカァァァァァァ!!」

「あばぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 鷹竜に当てた白き雷を割と本気でマギに当ててマギは情けない悲鳴を上げるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうマギさんたら。のどかの為とはいえ無茶をしすぎです」

「すまん。頭に血が上って周りが見えてなかった」

 

 あの後結局パイオ・ツゥは逃げおおせてしまい、仲間のチコ☆タン達が胸を揉まれた者達に謝罪したという。マギは夕映が秘密裏に逃がしてくれたおかげで他のアリアドネーの騎士団に見つからずに済んだ。

 が現に皆にばれない様にこっそりと夕映から説教を受けるハメになった。と言ってもマギも頭に血が上っていて周りが見えなくなっていたので猛省しているわけだが。

 

「でも私もごめんなさいです。2度もマギさんに魔法を撃ってしまって……」

「夕映が責任を感じることはないさ。最初は俺が逃げるために、2度目は俺がバカな事をしたんだから」

 

 したかった謝罪も結局はマギは気にはしていなかった。沈黙が続く。

 

「さっきの姿。あれは闇の魔法ですよね?」

「あぁ。あの姿は俺が選んだ道だ。皆を護るために手に入れようとした力」

 

 禍々しいそして力強い姿。あの姿を手に入れるためにマギは自身を責めたのだろう。ぎゅっと拳に力をこめる夕映。

 

「私も……私もマギさんや皆の為に強くなりましたです。今は一緒にはいられないです。けど、この力は絶対にマギさんや皆の役に立つです。だから待っていてください」

「……おう。待ってるよ」

 

 マギが微笑むと夕映はその、ともじもじしながら

 

「もし無事に戻ることが出来たら、その時は……マギさんがぎゅっと抱きしめてもらってもいいですか?」

「……あぁ」

 

 マギは夕映の頭を優しく撫でながら

 

「俺も、のどかも、皆が夕映を待ってる。だから無理はしないでな。俺もあんま無理はしないつもりだから」

「はいです!」

 

 夕映は元気よく返事をすると待っているであろうコレット達の元へ急いで戻る。

 

「ユエさん何処に行っていたんですか!? 早く女湯で暴れ回った不埒者を探しますよ!」

「ごめんなさいエミリィ。直ぐに行くです!」

「どうだったユエ? 久しぶりに好きな人とおしゃべり出来て」

「コレット……はい。よかったです」

 

 夕映の表情は先程よりも明るかった。

 やはり風呂は命の洗濯。色々な悩みも一緒に洗い流してくれるものだと夕映はそう思ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

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