堕落先生マギま!!   作:ユリヤ

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Training Sparring! Sparking!!

 ラカンそれにネギに宣戦布告をしたマギ。

 その後一旦闘技場から離れたマギ一行。落ち着いた所でオスティアの恥にてネギに頭を下げるマギ。

 

「すまん。ラカンさんは兎も角お前にまで喧嘩売るような真似しちまった」

「大丈夫だよお兄ちゃん。ああいう風に言われたらね」

「もうしゃあないわな。あんま気にすんなマギ兄ちゃん」

 

 ネギと小太郎は気にはしていない様子だったが

 

「呑気にしてられないぞマギさん。おっさんが出場するなんてかなりヤバいだろう」

「千雨嬢ちゃんの言う通りだ。ただでさえフェイトや敵組織の問題だってあるのに問題を増やしやがって!」

 

 

 千雨とカモはラカン出場を危惧してる。

 

「俺とプールスとあやかの嬢ちゃんでジャック・ラカンの弱点がないか調べるために図書館で調べてきた」

「そうだったか。ありがとなプールス」

「ハイレス!」

 

 マギに褒められ嬉しそうにする。しかしほのぼのとした空気はすぐに終わる。

 

「あんまりいい話じゃないから心して聞いてほしいでさ……こっちの世界では魔法使いの方が戦果が大きいのが普通なんですが、あのおっさんはそういった常識はあてはまらない」

 

 ラカンの戦果を纏めると

 先の大戦で沈めた艦の数は137隻。数だけならナギを上回るらしい。

 他にも9体の鬼神相手に素手で戦いを挑んだといった逸話は事欠かないらしい。更に驚く事に

 

「兄貴と大兄貴、帝都の守護聖獣古龍・龍樹は見ましたかい?」

「ああ見たぞ」

「なんか物凄く強いらしいねあの怪獣」

 

 式典で帝都の象徴とも言える神々しくも豪然たる姿を見せた龍樹。それも当然で古龍は最強種と謳われる存在で、マギの隣に居る雪姫と同格の存在である。

 

「その怪獣は雪姫お姉ちゃんと同じ位強いんレス?」

「そう言われてるらしいな。まぁデカいだけの古龍と私が同じと言われるのは気に食わんがな」

 

 ちなみに雪姫は同格とは思ってはいないようだ。

 

「そんな古龍とあのおっさんは引き分けになって以来友達とかなんとか……」

「ええ!?」

 

 あまりのとんでも情報にネギも大声で驚いた。

 流石の規格外過ぎて嘘なんじゃないかと言いたいが、あながち嘘ではないと決定づける出来事があった。

 このかから聞いたが、ラカンとこのかが一緒に居た時にフェイトの仲間に襲われたらしい。しかも敵のアーティファクトが無限に広がる空間でそこに閉じ込められていたのを気合で破壊したという理不尽な手段だったらしい。

 そして千雨もラカンに強さがどれ位なのか聞き

 

「1万2千。それがあのおっさんの強さらしい」

 

 あまりのぶっ飛び具合に言葉も出なくなる。

 

「でも、マギ兄ちゃんはおっさんよりも少し下位なんやろ?」

 

 ラカンは早朝にマギとネギに呼ばれた時に強さ表を見せてもらいその時にマギの強さの位置はラカンよりも少し下であった。

 

「ああ。その後おっさんに正確な数値を聞いたが1万ジャスト。それがマギさんの強さ。おっさんとは2千と埋められない差ではないだろうが」

「さっきラカンさんに宣戦布告してからずっと心がざわついてる。こんなにも心が乱れるなんて……正直言って今の俺は万全の状態じゃあない。しかも俺の方がラカンさんと先に当たる。この状態の俺で勝てるかどうか……」

 

 マギは自分の状況を危惧してる。何かあってもおかしくない。

 完全にお通夜モードの空気の悪さ。そんな空気の悪さの中で2回手を叩く音が響き渡る。あやかである。

 

「皆さん。何故始まる前から諦める空気になっているんですか? 勝負はまだ始まっていないのですよ」

「そうは言うがあやかさんだっておっさんの規格外の強さは目の当たりにしてるだろ?」

「あら? 千雨さんはネギ先生とマギ先生が身を削る修行をし乗り越えたのを見ているのにお二人を信じる事が出来ませんの? そこのコタロー君も幾らか強くなっていますでしょうし」

「おい、何で俺だけそんなぞんざいな扱いなんや」

 

 それでもあやかはネギやマギの勝利を信じている。1人でも信じてくれる者がいるだけで少しは気持ちが救われるものである。

 

「……」

「どうしたネギ。難しい顔をして」

「お兄ちゃん、皆さんちょっと来てくれませんか? 見せたいものがあるんです」

 

 

 

 

 

 

 

 ネギに着いていき、オスティアが離れた浮遊してる岩礁地帯。何故こんな場所に連れてきたのか。それはあまりに威力が大きく、オスティア周辺には軍隊もいるので大騒ぎになるのは避けたいからとネギは言った。

 ネギが見せたいもの。それはラカンと一緒に完成させるつもりだった新呪文。

 その名は千の雷。ネギの放った巨大な雷は100mを超える巨岩は熱されたバターのように溶けて吹き飛んでいた。

 

「凄まじいですわネギ先生! これほどまでに強い魔法を使えるようになりましてあやかは感激しております!!」

「流石は兄貴でさ! これを使えるならあのラカンだって目じゃねえでさ!」

「何いってんや。威力が高くても詠唱が長ければ意味ないやろ。狙ってくだいって言ってるもんや」

 

 あやかやカモが称賛するが小太郎は冷静に今の千の雷の欠点を指摘する。ネギも小太郎が言っている事は分かっている。ネギが目指しているのは千の雷をラカンに当てるのではなく

 

「そうか。闇の魔法で」

 

 千雨はネギの目的を理解したようだ。

 

「そうです。闇の魔法・術式兵装。本来千の雷は対軍勢用の広範囲呪文で、使用される魔力は直線的に放出される雷の暴風の10倍以上。これを自身に装填すればあるいは……」

 

 単純計算でもかなりのパワーアップである。これは勝ち目があるのではないかと先程のお通夜モードも払拭さるかと思いきや

 

「「無理だな」」

 

 今まで黙っていた雪姫ともう1人の声がすっぱりを言い切った。

 

「ふふ、『こんな事では勝てない』と自分の顔に書いてあるぞ。自身が信じきれていないコトを仲間に賛同してもらって安心を得ようなどとは」

「あ、あなたは!?」

「図星か? ぼーや。ククク、いいぞいいぞ。そういう卑屈な行動も嫌いではない。もっとも相手があのラカンならば仕方ない。もはやあのアホはもはや存在そのものが反則のようなものだからな」

 

 ネギに闇の魔法の修行をつけてくれたエヴァンジェリンの幻影が不敵な笑みを浮かべながらの登場だ。

 

「ま、師匠!!」

「エッエヴァンジェリン……さん! けどなんでやなんでエヴァンジェリンさんがもう1人おるんや!?」

 

 急に現れたエヴァンジェリンの幻影に驚きを顕にするネギと小太郎。

 

「ぼーやに闇の魔法の相手をしていた私の幻影か。裸にボロ布切れ一枚とは、我ながらみすぼらしい格好だな」

「おい。何で本物の私が居るんだ? これじゃあ私のキャラが薄くなってしまうじゃないか」

 

 雪姫は自身の幻影を白い目で見てエヴァンジェリンの幻影も雪姫に文句を垂れる。キャラが薄まるといったメタい事を言って空気がぐだぐだになりそうになるのを切り替えるエヴァンジェリンの幻影。

 

「どうするぼーや。あんなアホを相手にする方が愚かだ。今回は諦めたらどうだ? 私も軽蔑はせんぞ」

 

 それにとエヴァンジェリンの幻影はマギの方を向く。

 

「ぼーやの兄であるマギ、貴様もだ。どうやらあのアホと同等の力を身に着けたようだがそれでも貴様のメンタルの力ではあいつには勝てないぞ。本物の私だってそれぐらいは分かっているだろう?」

 

 しんと沈黙が続く。しかし雪姫は自身の幻影の言ったことを一蹴するかのように不敵に笑う。

 

「幻影の私はぼーやの修行を見たくせに何も分かっていないな。ぼーやはうじうじ悩むくせに一度決めたら突き進む頑固者だ。それはマギも一緒だ」

「そういう事や幻のエヴァンジェリンさん。折角の忠告悪いけどな」

「師匠、僕は逃げる訳にはいきません」

「俺なんかネギとラカンさんに宣戦布告しちゃったし、ビビって尻尾巻いたら格好つかないしさ」

 

 呆れたように溜息を吐きながら片目でマギ達を見るエヴァンジェリンの幻影。

 

「だが万の一つも勝てんぞ。あのアホは何も考えていない。無意味な勝負だ」

「はい。でも……ラカンさんは漸く1人の男として僕を見てくれました。だったら僕は逃げません」

「ふ、そうか。だったらもう何も言わん。精々足掻けばいいさ」

 

 ネギが逃げる積もりはないと分かるとエヴァンジェリンの幻影ももう言う事はないだろう。

 話は変わるが

 

「何故幻の師匠がここに居るんですか?」

 

 幻影のエヴァンジェリンが独り歩きしていることにも驚きだが、何故ここに来たのかネギが聞こうとすると

 

「それは主らの修行を手伝いに来たのじゃ」

 

 今度は聞き慣れない女性の声が聞こえ、声が聞こえた方を見ると子供の姿に変わりケモミミを被ったこのかとのどかにアスナとまき絵に祐奈と彼女らの護衛のために居たマギウス。そして角が生えた褐色の美女が居た。

 

「主らがネギとマギか。メンコイ子に中々にいい男じゃな」

 

 褐色の美女はマギとネギを物色していると

 

「ネギくーん!! うわーい! 会いたかった!!」

「うぷ! まき絵さん。無事で何よりです。ゆーなさんも」

 

 感極まったまき絵が再会のハグをネギとする。

 

「ゆーなさんもご無事でなによりですわ」

「いやーいいんちょも変わりないようだねー! それよりもさっき凄い雷がなってたけどまさかあれもネギ君の魔法だったりするの?」

 

 祐奈が質問しようとすると

 

「千の雷。電撃系では最大規模の大呪文じゃな。サウザンドマスター。すなわちそなたの父君得意の古代語呪文じゃった」

 

 褐色の美女は纏っていたマントを脱ぐと中々に攻めた格好の装束を着込んでいた。あまりの際どさにプールスには早いと思ったマギはプールスの目を手で隠す。

 色々と詳しく説明する美女が何者なのか訪ねようとするが、ネギがナギの息子だと改めて知ったまき絵と祐奈がわちゃわちゃとネギに質問攻めしたりネギに杖に跨って飛んでほしいと懇願されたりした。

 

「それよりあんたは誰なんだ? どこかで見たことあると思ったんだがな」

 

 千雨は褐色美女を何処かで見ており思い出そうとするが先に祐奈が

 

「そうだった! この人の正体を聞いて驚かないでよ!! なんとこの人はヘラス帝国第三皇女テオドラ様だよ!!」

「テオで良いぞ」

 

 帝国の第三皇女のテオドラだった。確かにラカンが見せてくれた映画に彼女は出てきていた。その時はまだじゃじゃ馬娘と映画の中のラカンが言っていたように幼い少女であった。

 ラカンがどういう風に自分の説明をしたのか気になるテオドラだが、マギとネギの方を見て申し訳なさそうに

 

「マギにネギよ、妾はナギやアリカとは友人じゃった。じゃが、妾はアリカ達に何もしてやらなんだな。許せ」

 

 謝罪するがネギにからしたら何の話か見えてこない。

 

「あの何の話なんでしょうか?」

「ウヌ? ……まさかラカンから何も聞かされておらなんだか? いや! なんでもない。忘れるのじゃ」

「えちょ、待ってください! 今の話は」

「ネギ、忘れろって皇女様が言ってるなら今は忘れて置こうぜ」

「でも!」

「ワーハッハッハ!!」

 

 ネギが納得していないと暑苦しい男の高笑いが轟く。

 

「いよぉ! お前らがマギとネギかぁ!? 確かにどっちもまだまだガキだなぁ! とう!!」

 

 中々に高そうな単車を乗った変な髪型の男が単車から飛び乗り着地する。

 

「おうおうおう! 俺様はケチな政治屋やってるリカードってもんよはっはぁ!!」

「随分と暑苦しい自己紹介だな」

 

 あまりの暑苦しさに千雨が呆れた声を上げていると

 

「ふふ、その男の暑苦しさは昔からね」

「おう!?」

「さらに誰!?」

「セラスよ。よろしく」

 

 箒に乗ったアリアドネーの総長であるセラスも優雅に箒から降りて自己紹介をする。

 

「まさかメガロメセンブリアの元老院議員にアリアドネー騎士団総長が揃い踏みとはな。ってアリアドネーの総長って事は夕映が今お世話になってる人か」

「初めましてマギ君ネギ君。貴方達の教え子のユエさんはとても優秀よ。このまま騎士団にスカウトしたいぐらい」

「それは嬉しい事を聞きましたが、俺達の大事な生徒であり仲間です。時が来たら俺達と帰るのでそのつもりで」

「あら残念ね。さて世間話はこれぐらいで。私達は貴方達のお父さん達にはお世話になったのよ」

「ヌァハッハッハ! ナギのアホとラカンのバカとは酒飲みの腐れ縁よ!」

「は、はぁ」

「クソ親父と貴方達が」

 

 マギがナギをクソ親父と呼んでほんとにクソ親父って呼んでるんだなとリカードは愉快そうに笑うと

 

「さて、本題だが。お前らはあのラカンを相手にするわけだな。再度聞くが生半可な覚悟じゃ負けるぞ。それでも挑むんだな」

「はい。もう決めたことなので」

「逃げるなんて格好がつかない事はしないって決めたからな」

 

 マギとネギは逃げないと目が語っているのを見て気に入ったとリカードは高笑いを上げる。

 

「俺達が修行を見てやる。ラカンの野郎がナギ以外の奴に負ける姿を見てぇしな! 光栄に思えよ魔法世界でも5本の指に入る教官の元で稽古をつけてもらえるんだぞぉ!」

 

 リカードが言っている事は嘘じゃあないだろう。雰囲気からして彼は強者だというのはひしひしと伝わる。しかし

 

「悪いが俺は辞退するよ」

 

 マギはリカード達の修行を辞退すると言った。これにはリカードやセラスそしてテオドラも驚きを見せる。

 

「なにィ!? マギお前は準決勝でラカンに当たるんだろ!? 俺らが修行を見ればもっと強くなれるってのに!!」

「お気遣いありがとうリカードさん。けど、俺には雪姫っていう師匠がいるから」

 

 マギは雪姫の方を見る。雪姫も満更でもないと微笑みを浮かべる。

 

「雪姫ぇ? というかさっきから余裕そうに佇むそいつは誰なんだ?」

 

 リカードが訝しげに雪姫をまじまじ見ると幻影のエヴァンジェリンが呆れた様に息を吐きながら

 

「間抜け。そいつは正真正銘本物の私だ」

「なにぃ!? 本物のエヴァンジェリンだとぉ!? エヴァンジェリンはナギが力を封印してあっちの世界の日本って国の学校に閉じ込めてたはずだろ!?」

「あ、その封印は俺が解きました」

「なんとまぁ。ナギがかけた封印を息子のマギが解くとはのう」

「流石はあの人の息子と言った所かしら」

 

 

 驚くリカードとテオドラ、感心するセラスと反応はそれぞれだが

 

「まさか雪姫を捕縛しようとは思いませんよね? もしそうなら抵抗させていただく所存だ」

 

 マギはグレートソードを構えて抵抗の姿勢を見せるが

 

「いや止めとくぜ! 流石に力を全力で出せるであろうエヴァンジェリンの相手なんか無理に決まってるだろう!」

「そうね。彼女と対するなら軍隊を呼ばないと勝てそうにないわ。それに」

「今は頼もしいナイト殿に護られておるようじゃしの」

「おい私は別にお前達とは友人でもなんでもないからからかわれてもムカつくだけだぞ」

「まったくナギの次はその息子とはな。本物の私は随分と節操がないみたいだな」

「ふん、残念だったな。巻物に封じ込められていたカビ臭い幻に言われてもどうってことないぞ」

 

 雪姫の挑発に殺気を高める幻影のエヴァンジェリン。強さは雪姫と同等なため、ぶつかったら最終決戦と化すだろう。

 なんとか2人を宥める事に成功する。

 

「ナギの息子の1人を見てやれないのが残念だが、ガキ2人を徹底的に鍛えてやるぜ! 其処のガキがネギの相棒だな!? お前は俺が重点的に見てやるぜ!!」

「お、おう」

 

 指を指された小太郎はまだリカードの熱さについて行けずたじろいでいる。

 こうしてリカードが基本的な体術をセラスがネギの千の雷を完成させる手助けを。テオドラは全体の総指揮と修行の場を設けてくれた。

 テオドラが持ってきたのは雪姫が持っている別荘と似たダイラオマ。その中では3日を30まで濃縮出来る。これでネギと小太郎の修行を行おうとの事だった。

 

「それでエヴァンジェリン……じゃなくて雪姫だったか!? お前さんはどういう修行をするんだ!?」

「やかましい。喚かなくともすぐに用意する」

 

 リカードに急かされて鬱陶しがりながらも雪姫は自身の影からテオドラが用意したダイラオマと似たような物を出した。中には古戦場が広がっていた。

 

「雪姫これは?」

「これは……『虚無の箱庭』だ」

 

 虚無の箱庭。そういった瞬間にリカード、セラス、テオドラも目を開いて息を呑む。

 

「虚無の箱庭って、随分とたいそれた名前だな。それでこれってテオドラ様が持ってきたものとどれほど時間の流れが違うんだ?」

「ない」

 

 きっぱりとないと言い切った雪姫を見て首を傾げるマギ。

 

「言葉の通りだ。この虚無の箱庭には時間の概念がない(………………)。この中で体感する時間は私でも分からない。外と同じ1日かもしれない。それか10日、1ヶ月、1年10年……100年かもしれない、空虚とも言える空間が広がっている」

「おい、雪姫さん。まさか……」

 

 千雨は雪姫が何をするのか分かり、冷や汗が止まらなくなる。

 

「マギは試合以外はこの中で私と延々と戦ってもらい、精神的な不安定さを強制的に無くし、ラカンと戦えるようにする」

「おいちょっと待て! 雪姫さん、いやエヴァンジェリン!!」

 

 千雨は雪姫呼びではなくエヴァンジェリンを呼び捨てで叫ぶ。それほどまでにキレているのだ。

 

「黙って聞いてればあんたがやろうとしてるのは終わりのない無間地獄であんたに殺され続けるってことだろ!? 無理矢理戦い続けてメンタルを矯正させるなんてそんなの……洗脳と大差ないじゃないか!!」

 

 肩で息をする千雨。皆も思っている事は一緒だ。雪姫が行おうとしている事は正気の沙汰でない修行だということを

 

「長谷川。貴様が言っている事は正しい。終わりのない空間で戦い続けるというのは常人なら発狂することだろう。だが、マギは私と同じ不死身の存在。時から逸脱した存在なら可能な修行だ」

「は、はぁ!? エヴァンジェリンと同じ不死身だとぉ!? 俺達はラカンからそんなこと聞いてないぞ!!」

「ああ、本当です……ほら」

 

 マギは親指を軽く噛んで血を出し、逆再生のように傷が塞がる所を見せた。

 

「まじか。ナギの息子が不死身だなんて世間が知ったら大騒ぎのニュースじゃねえか」

「まぁなるようになったとしか言いようがないんですけどね……けど、ラカンさんの強さは分かってるあの人の強さは正に非常識だ。だったら俺も非常識なやり方で強くならないと、あの人には勝てない」

「マギさん……! だったらあたしも」

「長谷川、入る事は勧めんぞ。常人が入ったら体が耐えきれず消滅するとも言われている。それにもし100年も時間が経つものならお前は老衰で死ぬぞ。プールスも駄目だからな」

「ハイレス……」

 

 人からスライムへと改造されてしまったプールスも駄目だと釘をさす雪姫。しゅんとするプールスを優しくあやすマギ。

 

「心配してくれてありがとな。正直言えば俺も自分がどうなるか分からないから不安だ……けど、絶対に克服してそのままラカンさんに勝って優勝してみせるからさ。だから……たのむ雪姫」

「ああ。分かった」

 

 マギも覚悟を決めて虚無の箱庭に入るための魔法陣に向かう。千雨が呼び止め、マギが振り返ると千雨とプールス、のどかがマギに飛び込んだ。マギは受け止めて優しく抱きしめた。

 

「ほんと、俺には勿体ない位いい子達だ。お陰でやる気が満たされたよ」

 

 気合十分のマギは魔法陣の上に立つ。魔法陣が光だし、マギは振り返りながら

 

「それじゃ皆、また明日会おう」

 

 それだけ言うとマギと雪姫は光と共に消えてしまった。虚無の箱庭に入ったのだろう。残ったのはネギ達だけ。

 

「おーしガキども! 気持ち切り替えるぞ!! 俺の予想じゃあれは化けるぞ。俺らも気合入れて修行しないと無駄になっちまうぞ!!」

「はい!!」

「おう! やったるで!!」

 

 リカードの喝にネギと小太郎も応え、彼らも修行を始めるのであった。

 一方の虚無の箱庭に入ったマギの感覚だが、第一の感想は変なのだった。

 空を見上げると雲が不規則に動き、北極南極でよく見られる白夜が古戦場を照らしてくる。

 

「よっし雪姫、早速始め―――」

 

 振り返りながら言うマギだが最後まで言い切れなかった。無詠唱で放った雪姫の闇の吹雪がマギの上半身を吹き飛ばしてしまったからだ。力なく崩れ落ちる下半身。痙攣してるのか時折ピクピク動く。

 

「もう修行は始まっているぞ。お行儀よくよーいどんで始めるわけないだろたわけ。早く再生をしろ。それに……もう、暴れたくてうずうずしてるだろ?」

 

 急速にマギに肉片等が集まっていき、再生していく。完全に再生されたマギは笑みを弧に描く

 

「―――くくくく……ギャハハハハハ!!! あぁぁぁぁぁぁぁぁ、そうだよ? 千雨達の前では平静を保ってたが限界だったぜぇぇ。久しぶりの二人っきりだなぁ。思い切りイチャイチャデートを楽しもうぜエヴァ!!」

 

 その瞬間からマギから黒い魔力が吹き出した。今喋っているマギは本当にマギか、またはちょっかいを出すと言っていた黒マギがそう言わしているのかは分からない。

 

「今は精々そうやっていきっていればいい。私はお前のその不安定な心を矯正してやる。掛かってこい」

「それじゃ……お言葉に甘えまして!!」

 

 甲高い嗤い声を上げながら、マギは雪姫に掛かっていったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。決勝トーナメントの記念すべき第一試合であり、マギと雪姫の試合なのだが……

 

「遅い……遅すぎだろ……!!」

 

 千雨が焦りと苛立ちの表情を浮かべていた。それもそのはず、あと1時間もすれば試合が始まるというのに虚無の箱庭から一向にマギと雪姫が顔を出さないでいる。

 もし1分でも遅刻しようものなら棄権扱いになってしまう。ハルナが乗ってきたグレート・パル様号を飛ばせば10分で闘技に着くことが出来る。だが刻一刻と秒が刻まれるのを感じるのは心臓に悪い。

 

「千雨さん、今はお兄ちゃんと師匠を信じましょう」

「そうは言ってもだな……」

「! 千雨ちゃん。魔法陣が!」

 

 のどかが指を指す。虚無の箱庭の魔法陣が現れた。そこからマギと雪姫が姿を表す。

 

「マギさん遅かったじゃねえか!! ……マギさん?」

 

 だが様子がおかしい。目は虚ろでぼうっとしておりまるで覇気がない。その姿は幽鬼のようだ。

 

「マギさん! おいマギさんしっかりしろって!!」

 

 千雨がマギを揺するとマギの目に光が戻りだした。

 

「……あぁ、千雨。久しぶりだな」

「久しぶり? 何言ってるんだよまだ修行が始まって1日しか経ってないぞ?」

「1日……そっか。まだ1日しか経っていないんだな」

 

 受け答えは出来ているがまだぼんやりしている。

 

「あの中は昼夜がずっと白夜だったのと、時間の感じ方が全然違うように感じて、どの位の時が過ぎたのか全然わからないし、ずっと雪姫に殺され続けたからか感覚が完全に狂っちまった」

「あの、マギさんは本当に大丈夫でしょうか雪姫さん」

「心配するなのどか。まだ荒削りだが、マギの強さは完成しつつある」

 

 不安げなのどかに雪姫は自信ありとそう答えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ始まりました決勝トーナメント!! 今年度はあのジャック・ラカン、英雄の息子のネギ・スプリングフィールド、そしてそっくりさんのナギ・スプリングフィールドといったそうそうたる顔ぶれが揃っております! そして今日は決勝トーナメントの第1試合! ネギ・スプリングフィールド選手の試合が始まる……はずなのですか、ネギ選手は一向に姿を見せません。会場に居るのは間違いないのですが、緊張でもしているのでしょうか!?」

 

 インタビュアーの実況に熱が入るがマギの姿が闘技場に見えない。観客席でもマギの姿が見えないためにザワついている。

 

「お兄ちゃん大丈夫かな……」

「ずうっとぼーっとしとったからな。雪姫さんがはりきり過ぎたせいでダウンしちまったんやないか」

 

 ネギと小太郎もマギの幽鬼のような姿を見ているから心配になっていると

 

「おいおい!! 何時まで待たせるんだぁ!? ビビってるんか!?」

「ジャック・ラカンが出るって分かって怖気づいたんじゃねえのか!!」

「やっぱり英雄の息子っていうのは法螺話だったのか! だっせーの!!」

 

 マギが姿を見せないのに痺れを切らしたのか一部のモラルのない観客が野次を飛ばしてくる。内容も嘘つきやら腰抜け等の品のない内容だった。

 流石に酷いと思ったネギが野次を飛ばす観客の元へ行こうとして小太郎が止めたその時

ズンと途轍もない重圧がネギ達を襲う。

 

「ななんやこの凄まじいプレッシャーは!?」

 

 小太郎は何が何だが分からないでいると

 

「お、おいあんた震えているが大丈夫なのか!?」

「あ、あんたこそ大丈夫なのかよ!? あんた、自分が漏らしてる事に気づいてねえのかよ!?」

「え? ……うわぁなんじゃこりゃ!?」

 

 野次を飛ばしていた観客の何人かが体の震えや気づかずに失禁するのが見えた。本能が敏感に恐怖を感じ取ったのだ。

 観客席でひと騒動があったが、その間にマギが選手入場口からゆっくりと登場したのだが

 

「う、なんや……あれ……?」

「あれがお兄ちゃんだっていうの……?」

 

 現れたマギの姿を信じられないと見てしまった。

 擬音で例えるならグゴゴゴゴゴという圧迫感、ズオオオオと引きずり込まれそうになる感覚。そしてマギから生気を感じられない。闇、否闇をも超えた虚無の存在に感じてしまった。

 マギが姿を見せた瞬間、観客席でのパニックも加速する。

 

「ぎゃああああ! 髪が真っ白になっちまった!!」

「おれ、もう限界……うおうぇぇぇぇぇ!!」

「うわああああ! こいつ吐きやがった! やべ俺もオロロロロ!!」

 

 阿鼻叫喚の地獄絵図が広がっている。中には失神する者も続出している。マギの仲間であるネギや小太郎、千雨やあやか、プールスのどかも気をしっかり持とうと踏ん張っている。

 

『ちう様バイタルが不安定ですが大丈夫ですか?』

「だい、じょうぶだ。けど、やばくなったらアタシ以外も頼む」

『了解いたしました』

 

 脂汗を流しながらも気丈に振る舞う千雨。

 

(これがマギさん!? 昨日の面影なんて全くないじゃねえか!)

『こ、これがあのネギ・スプリングフィールド選手なのでしょうか!? 今までの雰囲気と全く違います! というかこれ以上時間が経つと大会に支障をきたしそうなので早速試合を始めたいと思います!! それでは試合を開始いたします! レディ……ファイト!!』

 

 インタビュアーも限界が来そうだったので、直ぐに試合のゴングを鳴らした。

 

「くそ! 英雄の息子がなんだって言うんだ!!」

「ジャック・ラカンと戦うのは俺達だ!!」

 

 マギの大戦相手も恐怖に呑まれそうになるが、そこは拳闘士。恐怖を払拭し無詠唱で魔法の矢を展開する。その数有に100は超える。魔法の矢が一斉にマギに向かっていく。

 

「マギ」

 

 黙っていた雪姫がマギを呼ぶ

 

「やれ」

 

 たった2文字の命令。マギは自分に迫ってくる魔法の矢を凝視し、軽く手を振るった。

 次の瞬間にはマギが軽く手を振るっただけなのに魔法の矢が次々と撃ち落とされてしまった。

 

「な!?」

 

 相手は簡単に自分らの魔法の矢が撃ち落とされてしまったことに仰天しながらも直ぐに次の行動に移ろうとした。

 が爆発の煙からマギが飛び込んできてマギが相手の顔面を掴み、そのまま地面へと沈めた。

 グシャリという聞こえちゃいけない音が聞こえ、相手選手はうめき声を出すことなく戦闘不能となった。

 試合開始してから1分も満たずにマギの圧勝で終わった。

 皆状況が分からず呆然としている。そして特別席でカゲタロウと一緒に試合を見ていたラカンは

 

「やっべぇな……マギの奴強くなりすぎじゃね?」

 

 冷や汗を流しているのであった。

 

 

 

 

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