『なっなんとぉ! ネギ選手! 人型の黒竜になったと思いきや、そのままラカン選手と組み合ったぁ! 急展開に私も理解が追いついておりません!!』
実況に熱が入る中、マギとラカンはまだがっちりと組んだまま両者動かないでいたが先にマギが仕掛けた。
咆哮を上げながら腕を下に回し、ラカンを宙に浮かせるとそのまま上へと放り投げ、近くにあった乗用車サイズの崩れた瓦礫を掴むと宙に居るラカン目掛けて投げる。が、ラカンは迫りくる瓦礫をいとも容易く拳でくだいてしまう。
ラカンは落下の勢いをつけてマギに向かってキックを放った。マギは両腕を交差し防御の構えをする。ぶつかる蹴りと腕、鈍い轟音と共にマギが立ってた地面が陥没する。
「ぎっ……が……!!」
「ほら、どうしたどうした? まだへばんじゃねえぞ」
ラカンは追撃を緩めない。着地した瞬間に拳の連撃を繰り出す。高速のラッシュにマギのボディは凹み少しずつ体が浮いてしまう。
「〜〜〜〜!! グガァ!!」
マギもただ連撃を許す筈もなく、浮き始めた体を踏ん張って地面に戻し、体を振り回し尻尾をラカンに当てる。尻尾が当たり吹っ飛ぶラカンにマギはマウントポジションを取る。
「GAAAAAAAAA!!」
そこからは一心不乱にラカン向かって拳を振り下ろす。何十回も何百回もあまりの速さにラカンの体が全く見えない。マギの乱暴を通り越した攻撃に観客は何も言えなかった。これだけの攻撃に流石のラカンもただじゃ済まないのだろうかと。しかし英雄の強さは伊達ではない。
「おいおいなんだよこのだっせぇ攻撃は。こんなので俺がやられるわけねーだろ」
ラカンの呆れた声と同時にマギの身体に巨大な剣が生えてきた。いや生えてきた訳では無い。ラカンのアーティファクト千の顔を持つ英雄を発動したのだ。腹を貫かれ、バックステップで下がるマギ。直ぐに傷は塞がる。
「GRUUUUUUU……やっぱり簡単にはいかねえよな」
血反吐を吐きながらマギは呟く。正直言えばこのファフニール形態はかなり強力な力を持っている。だがこれでは駄目だ。マギは魔力を集中し、両腕に集約させる。
両腕から黒き炎の断罪の剣が現れた。
「おおおおおおおおおお!!」
マギは吠えながら黒き断罪の剣を構えながらラカンへ突撃していく。千の顔を持つ英雄の剣とマギの黒き断罪の剣がぶつかるのであった。
ネギと小太郎は黙ってマギとラカンの戦いを観戦する。ラカンは拳の方が自分に合っているとそう言っていたが、武器の扱いにも長けている。マギの黒き断罪の剣に対して両刃の大剣を振るいぶつかり合う。ラカンの両刃剣がマギの体に当たるがマギ怯まず断罪の剣でラカンの両刃剣を弾き飛ばした。
ラカンが次に呼び出したのは槍だった。槍術でマギを翻弄し、マギも苦戦を強いられるが断罪の剣を振るい、槍を弾く。
更に上に飛ぶラカン今度は大量の剣を召喚し、マギに射出する。マギは口に魔力を集中し、黒き炎を放ち剣を迎撃する。打ち漏らした剣はマギに突き刺さる。会場では悲鳴があちこちから上がるが、マギは両翼で飛翔し断罪の剣でラカンに斬りつける。ラカンは高らかに笑いながら巨大な斬艦剣を召喚、射出する。飛んでいるマギは斬艦剣を受け止めるが、そのまま斬艦剣は地面に突き刺さる。斬艦剣が巨大なステージと化し、ラカンが斬艦剣に降り立ち、2本の剣を召喚し二刀流で構える。
瞬道術で高速で動くマギ、消えては現れ現れては消えるヒット&ウェイの戦法でラカンを翻弄しようとするがラカンの獣の様な反射神経と動体視力でマギの攻撃を防いでしまう。マギは更に攻撃の速さを上げる。だが速く攻撃を繰り出してもラカンは簡単に防いでしまう。
「はっ! しゃらくせぇ!!」
剣を放り出すとラカンはマギのボディにパンチをお見舞いする。がっふと口から血を噴き出すマギ。
「GAAAAAAAA!!」
断罪の剣を突き出すマギ。マギの腕を肘と膝で挟んで止めてしまうラカン。余りに強すぎたのか、マギの腕が砕けてしまう。鈍い音がマギの耳に入る。マギは一瞬だけ苦悶の声を上げるが超再生力で砕けた腕を再生させた。
「おい、ネギの奴いま腕が折れてたよな?」
「ああ、それなのにもう元に戻ったように見えたぞ」
観客たちはマギの腕が折れて複雑に曲がった腕を見てしかめっ面を浮かべていたが、次の瞬間には何事無くなっているのを見て首を傾げている。
『強い! 強すぎるジャック・ラカン!! ネギ選手も変身し猛攻を見せてますが、やはり英雄の力は伊達ではなかったぁ!! ネギ選手活路を見出すことは出来るのか!!』
インタビュアーの実況に熱が入り、観客も応えるように歓声を上げる。観客のラカンコールが響く、闘技場のあちこちにもネギコールが聞こえるがラカンコールに比べると小さい
「お兄ちゃん……!!」
ネギは苦戦しているマギを見て悲痛に顔を歪めている。だが
「マギさん……信じてます。マギさんが勝てるって」
のどかは、マギの勝利を信じて祈っていた。
「はぁっはぁっはぁっ……」
断罪の剣を振るいながら高速で動くマギ。その息は上がっていた。闇の魔法、邪竜ファフニール。この状態はかなり強力であるが、如何せんその反動も凄まじいし魔力の消費もかなりである。元々この姿になったのは短期決戦で勝負を決めるためだったのだが、ラカンとその差を縮める事は難しいようだ。
「駄目だ。全然勝てるイメージが浮かばねえ」
「そうか。だったらもうギブアップするか?」
「まさか、そんな簡単に諦める────―わけねぇだろぅがぁ!!」
マギは断罪の剣を消すと今後は両手に魔力を集中し、爆発させて突貫する。
「はっそうこなくちゃなぁ!!」
斬艦剣を足場にしマギの腕とラカンの腕がクロスし、互いの顔に拳がめり込む。クロスカウンター。マギの方が膝から崩れ落ちそうになるが
「まだまだぁ!」
脚を踏ん張り、ラカンのボディに拳を当てる。ダメージが入ったのかラカンは口から少しだけ血をこぼす。
「DAAAAAAA!!」
更に連撃をしようとしたマギの顔面をラカンが掴むと頭突きをマギの顔面に当てる。溜まらずマギが両眼を瞑ってしまい、ノーガードになったマギの顎にアッパーを当てる。アッパーが当たり、体が浮くマギは直ぐに意識を回復し、体を空中で前転し尻尾をラカンの頭頂部に当てる。尻尾が当たりよろけるラカンに追撃するマギ。
またもマギの攻撃が自身のボディに当たりながら、ラカンは遠い目をする。かつてこうやってナギと他愛のないことで取っ組み合い喧嘩をして殴り合いをしたなと。マギにナギを重ねて見た。
しかしその時間もあまりない事もラカンは分かっていた。このマギの姿を維持できるのも残り数分であることを。
「おいマギ」
「何だよラカンさん」
「お前のその姿を維持できるのも残りあと数分って所だろ?」
「……」
マギは無言で何も答えない。だがその無言がそうだと言っている事は分かった。
「このまま殴り合いっていうのも味気ない。だったら……男だったらこれだろ。必殺技のぶつけ合い。どうだい乗るか?」
「必殺技のぶつけ合い……か」
マギは雪姫が居る方をちらりと見た。雪姫とはかなり距離が離れているが、雪姫がこくりと頷いたように見えた。
「……あぁ乗ってやるさラカンさん。だがな、この必殺技のぶつけ合い」
簡単に防げると思うんじゃねえぞ。そう言ってマギは両翼を広げると遥か上空へ飛び上がってしまう。
『ネギ選手上空へ急上昇! 何をするつもりなのでしょうか!?』
マギは残っている魔力を竜の口へ集中させる。禍々しくも力の奔流の輝き。
「エターナル────―」
対するラカンは無駄に洗練された無駄な動きを見せる。その技はネギに教えようとして編み出した、技名とポーズはダサいが強力な必殺技。
互いの魔力が集まり、それは放たれる。
「
「ネギフィーバー!!」
マギの劫火の火球とラカンのビームが空中でぶつかり合い、強力なエネルギーの爆発を起こす。余りの余波に闘技場の観客たちが悲鳴を上げる。
火球とビームは拮抗していたが、徐々にビームが押していった。
「KAAAAAAAA────―GAAAAAAAAA!! 」
マギがエネルギーを集中させると火球だったのが、収束し一本の極細のビームとなった。極細のビームはそのままラカンのビームをいとも容易く切裂いてしまった。
「────やっべ」
あのビームは防ぐことは出来ない。本能で察したラカンはネギフィーバーを止めて紙一重でビームを避ける。ビームはラカンの足場になっていた斬艦剣を豆腐のようにスパッと斬ってしまい、そのまま地面も斬ってしまうと、轟音を上げながら爆発してしまった。ラカンは冷や汗をかく。避けてなかったら自分も斬艦剣のようにスパッと切れてしまっていただろうと。
しかしビームに気を取られてマギから注意を逸らしてしまったのがいけなかった。
「うおあああああああああああああ!!」
咆哮を上げながら高速でラカンに突貫し、ラカンの鳩尾に頭突きを繰り出した。
「ごっふぇ!?」
変な声を出しながらラカンとマギはそのまま闘技場に堕ちていった。土煙を上げる闘技場、竜の姿のままラカンへ寝技をかける。がっちりと組んでビクともしない。
「どうした!? へばってもうそれしか出来なくなったか! だがな俺はまだピンピンしてるぜ! こんな寝技、直ぐに解いてやる!!」
「────いや、もう俺の出番は終わった」
「何?」
限界が近そうなマギ、しかしその顔には笑みが浮かんでいた。どういうことだと一瞬分からなかったがハッとする。
「後は頼んだぜ────―雪姫ぇ!!」
「────全てのものを妙なる氷牢に閉じよ」
ラカンはやっべと顔を青くしている。しかしもう遅い。雪姫が放つ魔法、それは相手を氷に封印する──―
「こっのっ離せ! マギ!!」
「残念だな。もう遅いぜ……一緒にかちんこちんに凍ろうぜ」
こおるせかい
雪姫の魔法が発動した瞬間、闘技場に巨大な氷柱が現れ、その氷の中にマギとラカンが入る形で氷漬けにされてしまった。
急に巨大な氷柱が現れた事に観客たちそしてインタビュアーもポカンとしていたが、インタビュアー真っ先にハッとする。
『ゆゆゆ雪姫選手が強力な氷結魔法を発動したことによって、ネギ選手ごとラカン選手を氷漬けにしてしまったぁ! これはまさか最初からネギ選手と雪姫選手の作戦だったいうことなのかぁ!? これはダウン扱いとなりますので、カウントを開始します! 1──―2──―3──―』
インタビュアーがカウントを開始する。カウントは20カウント。20までにラカンがこおるせかいの氷の拘束を解かなければ負けになってしまう。
『10──―11──―12──―』
遂にカウントが折り返しになった。観客たちともしかしてと段々と一緒にカウントを数えて言った。
『『『15!!! 16!!!』』』
だがラカンもこのまま負けるつもりはなかった。相手は雪姫改めエヴァンジェリンのこおるせかい。自身が本気を出せばカウントギリギリに氷を破壊する事が出来る。
「よく考えたな。だがまだまだあま──―」
ゾクりと感じる悪寒。何だとラカンは目線を後ろに向けると
「絶対──―絶対に離さねぇ──―!!」
血走った目でラカンを拘束するマギ。更に体中から闇が溢れだして、うねうねと触手のように蠢きラカンを拘束してがっちりと離さない。
マギの意地を見て、ラカンはすこし呆けた顔をしていたが、ふっと笑いながら
「まいったな……負けたぜ」
『『『19!!! ──―20!!!』』』
しんと静まり返る。次の瞬間
わあああああああああああああああああああああああ!!!!
『今私は!! 新たな伝説を目の当たりにしております!! ネギ選手があの伝説のジャック・ラカンへ勝利を勝ち取りました!!! ネギ選手そして雪姫選手決勝戦進出です!!!』
興奮鳴り止まない歓声、その歓声の中で、ラカンは氷を破壊して地面に着地する。マギも砕けた氷からずるりと落ちて、膝から着地した。
「まさか最初からこの作戦で俺と勝負しようとしたのか」
「……雪姫が居なければ俺はラカンさん、アンタには勝てなかった。試合に勝って勝負に負けるとはまさにこのことだ。だから……」
振るえる膝で何とか立ち上がって、マギはラカンを見て
「次に戦った時は俺一人で勝つよ」
「……っふ、アッハッハッハ!! そうか! だったら早く強くなれよ!!」
快活に笑いながらラカンはマギに肩を組んだ。インタビュアーがマギに勝利のインタビューをしようと近づいた瞬間、マギは白目を向きながらがくりと意識を手放してしまった。
「ネギは無理をしたんだ。インタビューは後にしてくれ」
雪姫がラカンに代わってマギに肩を貸して闘技場を後にする。少々締まらない終わり方になってしまったが、観客たちは惜しみない拍手をマギに向けて送った。
「まじか、マギ兄ちゃんあのおっさんに勝っちまった」
「マギお兄ちゃんすごいレス!」
「まったく冷や冷やしたよ。けど、これで最難関のラカンのおっさんに勝ったんだ。ネギ先生も勝てば亜子さん達の借金返済問題は解決だ」
千雨達もマギが勝利したことにほっと胸を撫で下ろしていた。
「マギさん……よかった」
中でものどかはマギの勝利に目尻に涙を溜めて、その涙を拭いながらマギの勝利を喜んだ。
ただ1人────―
「お兄ちゃん……」
ネギだけが顔を曇らせていたのだった。