第1試合は小太郎が勝利をおさめ、第2試合はネギとタカミチの試合となる。
大歓声の中、普通に試合会場に向かうタカミチと違い、ネギは緊張の余りロボットの様な固い動きだ。
そんなネギをハラハラとした目で眺めるアスナ
「うぅ高畑先生の事も応援したいけど、ネギも凄く心配……ねぇマギさんネギは大丈夫かな?」
アスナに聞かれたマギはう~んと唸りながら
「正直言うと、4:6の割合かな」
「それはどういう割合でござるか?」
楓の問いにマギはこう答える。
「ネギが勝つに4、負けるに6。下手したら病院送りだな」
ネギの勝利が低い事よりも病院送りと言う言葉に絶句するアスナ達。
「いやだってな、俺やネギでさえタカミチの実力を分かってないんだ。予選で見せた見えない攻撃の原理さえも分かってないし。迂闊に近づいたらまず負けるな」
この武道大会の解説を行っている、ネギと予選で戦ったリーゼント頭の男、豪徳寺薫もまずは保った方がいいと実況の茶々丸にそう答えている。
「本気のタカミチに坊やが勝てる確率はゼロだ。まぁタカミチも今回は坊やの成長を見たいと言う事で本気の半分を出すかどうかだな」
「おうエヴァ。エヴァはタカミチの実力を知ってるのか?」
急に背後に現れたエヴァンジェリンにタカミチの実力がどれくらいかを尋ねると、エヴァンジェリンは
「アイツの実力も化け物クラスだ。といってもナギには劣るがな」
「成程な。一応コタローと一緒にあごは護れって強く言っておいたが、それが役に立つかどうか」
そうこう言ってる間にネギとタカミチの試合が始まる。まずは魔力で身体能力を上昇させる『戦いの歌』を発動、そして体を風の楯で覆う『風楯』。そしてネギは一直線に突っ込む。ネギの姿が一瞬消えた事に観客は騒ぎ出す。
パパパパパンと破裂したような音が会場に響くが、ネギがタカミチの背後に回っている。
「瞬動術!ネギの奴、この土壇場で成功させた!」
小太郎はネギに魔力や気を足に集中し、瞬間的に移動する技。マギや小太郎は扱う事が出来るが、ネギは修業の間は成功する事が出来なかった。が本番で扱う事が出来た。そう言う所がネギの優秀な所だろう。
ネギが瞬動術で背後に回ったのはいい選択だ。タカミチは今使った見えない攻撃ではなく、魔力や気を纏ったパンチを放つ。至近距離では使い技の様だ。
ネギは2回目の瞬動術を使い回避。連続で瞬動術を使った事に、小太郎やカモが下を巻く。
ネギは間合いを離れない様にと、瞬時に攻撃に移る。古菲に習った中国拳法を使い押して押しまくる。更に雷の矢を拳に乗せて威力を倍増させた技を駆使する。
「そうだ坊や。恐れていればそれだけで隙も出るし、間合いを取れば詰められジリ貧なるだけだ。わずかな勇気を持って攻め続けろ」
エヴァンジェリンは頷きながら、ネギの戦い方に満足している。驚いた表情を見せているタカミチ、ネギは更に距離を詰める。
ネギの猛攻にタカミチは手も足も出ない。防戦一方だ
「どうやらネギが使ってる中国拳法はタカミチにとっては相性はあまり良くないみたいだな」
「どういうことマギさん?」
「中国拳法は多種多様な技があって、やりにくい方だ。それにエヴァの修行のおかげで、技の強さや速さが俺と戦った時よりも段違いだ。そしてネギはまだ子供で、タカミチとの身長差はかなりある。小さい相手とはかなり戦いにくいってわけだ」
「成程……」
マギの考察にアスナは納得したようだ。現に瞬動術で虚を突かれたのか、ネギのペースで戦いは進んでいる。
更にネギは無詠唱で雷の矢3本を出し集束させる。そして集束された雷の矢3本を、拳に乗せてタカミチを殴り飛ばす。
見事に直撃したのか、タカミチは吹き飛びリングアウトした。あまりの光景に、呆然とする観客だが次には大歓声を上げる。
「凄いなあの技、ネギの必殺技か?」
「俺っちと古菲の嬢ちゃんが命名した技『雷華崩拳』ですぜ!今のネギの兄貴の中では火力の高い技の一つです」
「あの技を完璧に使いこなすなんて、我が弟子は成長したアル」
(カモや古菲には悪いが、タカミチがこんな簡単にやられるとは思えない。それはネギもそう思ってるはずだ。これで決められなかったのが痛いな)
マギの思った通り、煙が晴れると、ほぼ無傷のタカミチが湖の上を歩いている。距離を大きく開けられてしまった。これはネギのペースが崩されてしまった事を意味する。
タカミチが間合いを詰め、ネギも遅れて接近する。バトルリングを縦横無尽に駆けながら、高速の殴り合いをする。が先程とは違いタカミチも攻めている所だ。
タカミチがネギの一瞬の隙を突いて蹴り飛ばす。ネギは受け身を取り素早く起き上がるが、距離が離されたせいで、タカミチからの見えない攻撃を何とか防ぐネギ。
解説の豪徳寺もタカミチの技の正体に気づいたようだ。タカミチが使っているのは、居合剣ならぬ居合拳。ポケットを鞘代わりにしてパンチを繰り出しているのだ。
「達人になれば剣の刀身が見えない程の斬撃を繰り出せると聞いたが、タカミチの場合は目にも止まらぬパンチと言う事か、これは防ぎようも無いな」
「ネギ……」
タカミチの居合拳をじっくりと観察するマギと、ネギを見てグッと手を強く握っているアスナ。ネギも何とか居合拳を防ごうとするが、見えない拳を避けたり防ぐことが出来ず、紙一重に避けるか防ぐかしか出来ない。それならさっきと同じように瞬動術でと瞬動術を使うが、タカミチも瞬動術の弱点を知っているようで、足を引っかけられ、転ばされてしまう。しかもタカミチも瞬動術を扱えるようでネギの背後に回り、居合拳を繰り出す。
形勢逆転、一気にネギが不利になっていく。
タカミチの雰囲気が少し変わる。魔力と気がタカミチの周りで渦巻いているようだ。
「どうやらタカミチの奴、あれを使うようだな」
「あぁ……ネギの勝率が2割、いや下手したら1割を下回るかもしれない」
マギとエヴァンジェリンは、タカミチが何をするのか分かっているようだ。左腕に魔力、右腕に気。そしてその2つを合成。瞬間、タカミチの魔力と気が数倍に膨れ上がる。
咸卦法。マギが時偶に使っている。あの技である。
タカミチに何か言われたのか、それとも何か凄い力を感じ取ったのか、ネギは大きく後退する。次の瞬間ドゴォンという比べ物にならない轟音がリングの床が陥没し砕け散る。
余りの威力に、ネギや観客は絶句してしまう。
「咸卦法、俺が使っているあれを教えてくれたのは、他でもないあのタカミチだ」
「そうなの!?と言う事はマギさんが使ってるよりも、高畑先生の方が上……」
「具体的にはどのくらい上なんや?」
「例えるなら、俺が最近読んだ漫画で例えてみるか。俺の咸卦法が界〇拳3倍か4倍だとするなら、タカミチのは10倍だと考えた方がいい。タカミチは魔法が使えないからな。咸卦法を極めたと言ってたし」
(タカミチが咸卦法を使ったと言う事は、少なからず本気を出したって事だ。ネギの奴もタカミチの本気の1部を見て戦意を失ってるようだな。これがどう転ぶか……)
マギのDG例えに、読んだことのある小太郎は苦々しい表情を浮かべる。
タカミチは轟音が鳴り響く“超”居合拳を連続で使用する。ネギは攻撃が直撃しない様に逃げる躱す。一発でも当たれば無事では済まない。
「どっどうすんのよ!?高畑先生がこんなに強いなんてアタシ聞いた事ないわよ!」
「落ち着きぃアスナの姉ちゃん!どんな技にでも弱点はあるんや!」
小太郎の言う通り、先程から使ってる強力な居合拳は一発一発が大きい反面、隙も大きいし動作も丸分かり。近づけさえすれば何とかなる。それにタカミチは観客に被害が及ばない様に飛んで斜めに打ち込んでいる。チャンスと見てもいいかもしれない。
がしかし……
「普通の居合拳も混ぜて使ってるから、強力な居合拳の弱点も護っているな」
時折普通の居合拳を使い、隙をつくらないようにするタカミチ。
ネギは瞬動術を使い背後に回る、同じ戦法を繰り返すが、タカミチ相手にそんな手は通用しない。むしろタカミチの方が上手な瞬動術を使われてしまい、背後に回り超居合拳を繰り出す。
一方的な試合展開に、観客も所々でタカミチの攻撃がやり過ぎだと言う声が上がる。
遂にはネギの上空から直撃コースの超居合拳を繰り出した。ネギは風の障壁で防ぐが、完全に隙が出来てしまう。
風の障壁は連続で使用する事が出来ない。それを知っているタカミチはネギの腹に超居合拳を。腹を殴られ血反吐を吐くネギ。
そして更に超居合拳、ネギが辛うじて防ぐが此れは囮、本命はネギが防御を終えた隙を突く、超居合拳。防ぐことも出来なかったネギはリングに沈んだ。
「ねっネギィ!!」
リングに沈んだネギを見て悲鳴を上げるアスナ。古菲や小太郎に楓は少しだけだが顔を青くする。エヴァンジェリンは少しつまらなそうに鼻を鳴らした。
レフリーをしている和美もネギのダメージ具合を見て、勝手にタカミチを勝利させる。
この光景を見て、やれやれだぜ……と呟いたマギは
「おいネギ、情けない奴だなお前は。タカミチが少し本気を出しただけで怖気ついちまって、だからお前は戦いに向いてない弱虫なんだ」
「マギさん!アンタ何を言って……!」
「お前は黙っていろ神楽坂明日菜」
怒鳴っている訳でもなく、会場に響くマギの声。逃げながらもタカミチに立ち向かったネギに対して労いの言葉ではなく、冷たい言葉だ。周りの観客の目もくれずにマギは更に
「お前はクソ親父を越えるためにこの大会に出たんだろ?だったらタカミチ相手に無様にやられてるんじゃあねえよ。中途半端な覚悟ならさっさとギブアップしろ。俺がさっさと優勝するからよ……それが嫌ならさっさと立ちあがれ」
マギに対するブーイングも気にする事無く、マギはネギを煽る。だがそれはネギに対して失望したからではない。ネギにもう一度立ち上がってもらいたいからだ。
「マギさんの言う通りよ!頑張りなさいよネギ!」
「俺以外に負けるなんて許さないでネギ!」
「頑張るアルネギ坊主!」
アスナが小太郎が古菲がそして観客がネギを応援する。その応援に応えるかのように、ゆっくりと立ち上がるネギ。
考えがあるのか、無詠唱で光の矢を出していくネギ。光の矢を出したままタカミチに攻撃を繰り出す。7本8本9本と魔法の矢を出したが又超居合拳を喰らってしまいリングアウトする。
「ネギの奴!またアホみたいに特攻して!」
「いやネギのあの目は何か考えがある。そうじゃなきゃさっきと同じような事はしない」
マギの言う通り、湖に沈んだネギが水を吹き飛ばしながらリングに復帰。今度は雷の矢9本を周りに漂わせている。
「タカミチ!最後の勝負だ!」
タカミチを指差しながら最後だと宣言する。
「ふっいいだろうネギ君!受けて立とうその勝負!次が最後の一撃だ!」
タカミチも勝負に乗った。そろそろ試合の15分に近づいている。この最後の一撃が勝負を決めるだろう。タカミチの居合拳の射程範囲に居る観客は急いで避難する。
「瞬動術! 魔法の射手 雷9矢!!」
「豪殺居合拳!!」
全身に雷の矢を纏ったネギの特攻。タカミチの今までにない最大の居合拳がぶつかり合う。
「拳じゃなくて全体に雷の矢を纏っての特攻!兄貴考えましたね!」
「けどあれじゃネギの奴が先にバテルで!」
「いやまだアイツは手を残してる」
ネギはタカミチの豪殺居合拳とぶつかる前に、風の障壁を展開。特攻の勢いを消すことなく、タカミチに突っ込むネギ。
特攻したネギが、タカミチの体に練り込まれる。ネギの体当たりが直撃した瞬間、煙がリングを包む。
「……いけネギ。ぶちかませ」
マギはネギがタカミチとの距離を零距離に詰めているのを見た。
「桜華崩拳!!」
光を纏ったネギの拳が、タカミチに直撃する。強力な一撃によりリングがさらに破壊され、爆風が舞う。
「ネギの奴何をやったんや!?」
「遅延呪文。言葉の通り呪文を遅らせて発動させる事だ。光の矢を吹き飛ばされる直前に、もう拳に取り込んでいたようだ。特攻してタカミチが怯んでる隙に開放したのだろう」
ギリギリの戦いでこんな事が出来るとは……。小太郎に解説しながらそんな事を呟いたマギである。
ネギの最大の必殺技『桜華崩拳』を喰らっても、なお起き上がろうとするタカミチ。これで立ちあがったらメールによる投票に委ねられる。
が満足そうに笑ったタカミチは
「君の勝ちだネギ君」
ドサっと大きく倒れ込んだ。倒れ込んだのと同時に10カウントが鳴り響く。
この第2試合、勝者はネギに決定した。
「ネギ!」
「兄貴!」
「よっしゃあネギ!よおやったで!!」
会場はネギの勝利を称える拍手喝采の大歓声だ。マギも小さくだが拍手をする。
「どうだマギ。改めて聞くが坊やが勝つと本当に思っていたか?」
「そうだな……俺はネギの兄貴なんだし、弟が勝利すると信じてるのが兄貴として当然の事だと、そう思ったさ」
アスナと小太郎たちに揉みくちゃにされているネギを見て、微笑を浮かべるマギである。
「……フフ。あのタカミチに勝つとは、ネギ君は大きく成長しているようですね。もし彼と決勝で戦う事になったら面白くなるでしょうね」
ニコニコと笑みを浮かべているクウネル・サンダースは、ネギの成長を喜んでいるのだった。
次回はオリジナルのアスナとエヴァの戦いです。