堕落先生マギま!!   作:ユリヤ

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誰もが物語の主人公

一眠りした後目を覚ましたマギは千雨と茶々丸が、これからマギ達に協力すると申し出て来た。

最初マギは若干寝ぼけていたが

 

 

「自分が決めたんならこっちはとやかく言うつもりはない」

 

 

とそう答えた。

暫くしていると、報道陣を撒いたネギと小太郎と合流した。

合流したところでマギが、行きたいところがあるとネギ達に言う。

人目の着かないところに行くとカシオペアを起動。

2日目のマギとネギが野点をした少し後の時間に戻った。

いきなりタイムスリップを体験して開いた口がふさがらない千雨。

更に年齢詐称薬でネギと小太郎が高校生位、千雨が小学生低学年位に戻ったところで、あっもう考えるのはいいや。いまはこの状況を少しでも楽しもう。

と考えるのを止めた千雨である。

一方マギはそのままの年齢であるべき場所へ向かおうとしていた。

何処へ行くのかと訪ねるネギにマギは

 

 

「待ち合わせをしている」

 

 

とだけ答え、今度こそ待ち合わせの場所まで向かっていった。

待ち合わせをしている相手は亜子であった。

野点会場で、報道陣から逃げる時にマギが

 

 

『この後予定が無ければ少し一緒に回らないか?』

 

 

と亜子に訪ねると、亜子は瞬間的に何度も縦に首を降った。

OKと受け取ったマギは待ち合わせの場所と時間を指定してから逃げ去っていった。

そして今に至る。私服に着替え、待ち合わせのカフェテリアに10分ほど早く来ていた。

 

 

「ちょっと早く来ちゃったけど、大丈夫だよね……」

 

 

亜子は自分の私服を見て変じゃないと言い聞かせる。

 

 

「というかウチ、気になる男の人と二人きりでデっデートなんて初めてや。あッあわわ……なんか緊張で震えが」

 

 

大丈夫と言い聞かせた矢先に緊張で震えている亜子。

緊張をほぐそうと、あらかじめ買っておいたアイスティーを飲もうとすると

 

 

「ねぇねぇ、そこの可愛い子ちゃん。よかったら俺らと遊ばない?」

「ふぇ?」

 

 

急に誰かに声をかけられ、亜子が振り替える。

軽薄そうな男3人が、卑しい笑みを浮かべながら亜子に近づいていた。

 

「え?あのウチ人と待ち合わせしとるから……」

 

 

いきなりナンパされ戸惑う亜子。だが明らかに目の前の男は亜子に対して下衆な形で誘っているのは分かる。現に亜子の体を舐め回すように見ているからだ。

周りの人達は亜子をナンパしている男を止めようとしても止めることは出来なかった。

残りの2人が汚い笑みを浮かべながら周りの人達を近づけさせないようにしている。

周りの助けは期待できない。そう判断した亜子は断りをいれるが、ナンパするような男が亜子の都合など知ったことではい。

 

 

「えぇ~でもその相手全然来そうにないじゃん。約束すっぽかして、別の女の子の所に行ってるって」

「っ!マギさんの事知らんくせに、勝手なこと言わんといて!」

 

 

勝手な物言いに、語尾を荒くして言い返す亜子。

自分の思い通りにならないからか、笑みを消して強引に亜子を連れていこうとする。

 

 

「いいから来いって。言うこと聞かねぇガキだな」

「いや!離して!誰か!マギさん!」

 

 

マギの名を叫ぶ亜子。2人の男が軽口を叩いて囃し立てる。

このままどこの馬の骨かわからない男に連れていかれるかと思いきや……

 

 

「いやぁ。思ったよりも混んでたから遅れちまったよ。悪いな亜子」

 

 

若干顔に汗を滲ませながら、亜子に向かって手を振るマギが現れた。

 

 

「マギさん!」

 

 

マギがやって来て顔を輝かせた亜子は、なんとか男の腕を振り払う。そしてマギの元へ駆け寄った。

 

 

「なんかトラブってたみたいだったが、大丈夫か?わりぃな俺が遅れたばっかりに」

「ううん大丈夫。マギさんが来てくれなかったらウチなにされてたか……ありがとうな」

 

 

目に少しだけ涙を浮かべている亜子。マギは安心させるために、優しく亜子の頭に手を置いた。

 

 

「外人のオニーさんよぉ、何俺らの楽しみ邪魔してくれたわけぇ?」

 

 

亜子をナンパしていた男がマギにガンを飛ばしてきた。

普通の相手だったら萎縮して何も言えなくなるだろうが、生憎マギは普通の相手ではない。

軽く頭をかきながら

 

 

「悪いがこの子とは俺との先約があるんだよ。それと、嫌がる女の子を無理やり連れていこうとするのは男としてどうかと思うがな」

「あぁ!?何チョーシこいたこといってんだ!ぶっ殺されてぇのかこらァ!」

 

 

マギに軽くあしらわれる男は、口調が荒くなる。

とマギを見て1人の男がマギに怒鳴り散らした男の方を叩きながら

 

 

「おっおい、その男さっきまで派手にやってた武道大会の優勝者の1人だぞ!やべーんじゃねぇか!?」

「あぁ?あんなの八百長だらけのインチキ試合だろ。そんな試合に出てるやつがイキッてるんじゃねーよ!」

 

 

男は予備動作もなくマギに殴りかかる。

何人かの観光客が悲鳴を上げ、亜子もこんな男にマギがやられるとは思っていないが、思わず目を閉じてしまう。

亜子の思った通り、マギは楽々と男の拳を受け止める。素人の拳など今のマギには止まって見えていた。

 

 

「なっ!はぁ!?」

「やれやれ。何でもかんでも暴力を振るえば良いってもんじゃあねぇぞ」

「何勝手につかんでんだ!離しやがれ!」

「いきなり殴りかかって来て今度は離せときたか。身勝手だな……ほれこれでいいか?」

 

 

押しても引いてもびくともしない。離せとマギに怒鳴り散らすものだから、マギは溜め息を吐きながら手を離してやった。

ちょうど男が手を引っ張っていた時に離したので、男は盛大に後ろに倒れて後頭部を強打した。

あまりに間抜け姿に何人かが笑みをこぼしていた。

 

「てめぇ!ぶっころ---」

 

 

完全にとさかに来た男が起き上がろうとした瞬間、男の額にマギの指が当てられる。デコピンの構えだ。

 

 

「おいたをする子にはお仕置きだぞと。久々の破壊神のデコピン・威力弱めと」

 

 

男の額にデコピンが放たれる。良い音が男から響いて響いている。

男は2~3秒放心していたが、次の瞬間には涙を浮かべのたうち回る。

 

 

「いっいてぇ!頭が割れるよぉ!」

 

本気でいたがってるのを見て、取り巻きの2人が顔を青くしている。

 

「まだやるってんなら、そこのお二人さんもどうだい?」

 

 

目が笑っていない笑みを取り巻きに向ける。

取り巻きは悲鳴を上げながら、いまだに呻いている男を置いて逃げていった。

いまだに額を抑えて泣きわめいている男もひぃひぃと情けない声を上げながら追いかけるように逃げ去って行った。

 

 

「やれやれ……口ほどにもねぇ奴らだな」

 

 

 軽く肩をすくめながらマギが言うと、周りの人から拍手が送られてきた。

 拍手を送ってきた人たちにどうもどうもと軽く答えながら亜子の方を向く。

 

「さてと、時間ももったいないから行きますか」

「うん!」

 

 

 笑みを浮かべた亜子を連れて、学園祭を周るマギ。

 先ほどまでのやり取りを見ていた千雨が

 

「いやどこの少女漫画のワンシーンだよ!?」

 

 

 千雨のツッコミに答えるものは誰もいなかった。

 

 

 

 

 

 亜子と学園祭を回っているマギ。そしてその学園祭の回るルートはと言うと

 

 

「意外とスリルがあるんだなこれ」

「ウチこういう類苦手なんやけどぉ!」

 

 

 学園祭の中でも人気な絶叫マシンの1つに乗り

 

 

「こんなところで、本当に頼んでいいのマギさん?」

「おぉ食べたいもの頼んで良いぜ」

 

 

学生ではなかなか食べれそうにないレストランでおごったり。

 

「こういった格好は少し恥ずかしいもんだな」

「うぅ~ウチはかなり恥ずかしいんやけど……」

 

 

強制的にカップルコンテストに参加されてウェディングドレスとタキシードを着せられる。

それ以降も気になった屋台や出し物を見て回ったマギと亜子。

その後ろを千雨や茶々丸を連れたネギ一行がついていく。

何で気になっている男性のデートを見ているのだろうともやもやと感じる千雨と茶々丸。

しばらく歩いていると、前に来たことがある高台に着いたマギ。

そこは学園祭の範囲外だからなのか、人影は少なく、一休みをしている者が数組いた。

 

 

「いやぁ遊んだ遊んだ。こんなに年甲斐もなく。はしゃいだのは初めてかもな」

 

 

芝生に座りながら亜子にそういうマギ。

 

 

「うん。楽しそうにしてるマギさんがとっても可愛く見えた」

 

 

 年下にかわいいと言われたマギは、顔を赤くしながら目線をそらし、やれやれだぜ……と小声で頬をかきながら呟いた。

そんなマギを見てやっぱり可愛いと内心思いながら、遠くを見つめる亜子。

 

 

「本当に男の人と楽しいことをしたのは久しぶりや……ねぇマギさん、ウチの昔話聞いてもらってもええ?あんまりおもしろくないんやけど」

「……あぁいいぜ」

 

 

そこから亜子の昔話が始まる。

 

 

「ウチな、マギさんが来るちょっと前の中学二年の時に付き合っていた人がいたんよ。3歳年上の高校2年生。同じサッカークラブにいて、ウチは気になってたらその先輩もウチのこと気になってたらしくてな。先輩の方から付き合ってくれって言うから、ウチも直ぐにOK出して、そのまま付き合ったんやよ」

「ふむなるほどな。どんなことしたんだ?」

「普通に買い物行ったり、映画見に行ったり遊園地行ったり公園でサッカーやったり、すごく楽しかった。そっそれで……」

 

 

赤面しながらその後にあった話を続ける。

 

 

「相手は高校生やし、その……やっやっぱ溜まってたのかうちとしたいなんて言い出して、ウチも思わず頷いて、そのまま先輩の寮部屋へ……」

「……まさかやったのか?」

 

 

マギも18歳、何が起ころうとしたのか察しており亜子の様に赤面し、不躾ながらも尋ねた。

亜子は首を振りながら

 

 

「うぅん、勢いでファーストキスはしちゃったんやけど、先輩も我慢出来なかったみたいで、ウチの服を脱がそうとしたんよ。でも、ウチも浮かれててつい忘れてたんよ。ウチの背中にあるこの大きな"傷"のことを」

 

 

そう言って自身の背中をちらりと見る亜子。

 

 

「ウチの傷見た時の先輩の顔は、正直思い出したくない。そのままお流れになって、先輩は段々とウチと会うんのを避けて、距離をとりはじめたん。そんで最後には別れようの一言……」

 

 

一呼吸入れ、遠くを見つめる亜子

 

 

「別れようって言われてウチ思ったん、あぁ、ウチみたいに、体に傷あるもんは物語のヒロインを夢見ちゃだめなんやて……」

 

 

言い終えた亜子の目には少しだけ涙を浮かべていた。

聞き終えたマギは、慰める様に亜子の頭に手を置く……なんてことはせずに軽くデコピンをした。

 

 

「いつっ!まっマギさん?」

 

 

いきなりのことでびっくりしながら額を額をおさえる亜子に対して、マギは

 

 

「亜子、一応先生として説教するが…女の子がそんな簡単に純潔を捧げようとするんじゃあない。後々面倒な展開になるだろうが」

「うぅ……それについてはウチも反省しているんよ」

 

 

マギに説教されて落ち込む亜子。

 

 

「それと、お前は損をしてるぞ亜子」

「損?」

「あぁ。だってそうだろ?まだまだこれからだってのに、そんな一歩引いた様な生き方してたらいつか絶対後悔するぞ。お前の人生って言う物語の主人公はお前なんだ。もっと好きなように生きていいんだよ。……なんか自分でもなに言ってるのか分からなくなってきたな。悪い、今のは無し。忘れてくれ」

「ううん。ありがとうなマギさん。お陰で元気出たわ。そうかぁ物語の主人公かぁ……」

 

 

頭をかきながら顔を赤くするマギに微笑む亜子。

そしてなにかを決意したのか、よしっと頷いた亜子がマギの方を向いた。

 

 

「マギさん、ウチ聞きたいことがあるんよ」

「ん?なんだ?」

「……マギさんって好きな人はいるんですか?」

「……」

 

 

いきなり好きな人がいるのかと聞かれ、黙りこむマギ。

 

 

「ウチ、危ないところをタスケテくれたマギさんに、その……一目惚れしました。だからウチは、マギさんのことが好きです」

 

 

いきなり好きと言われて黙るマギ。亜子の告白を隠れて聞いていた千雨と茶々丸が複雑な顔を浮かべる。

亜子の告白を聞いたマギ本人は……

 

 

「亜子、すまん」

「っ……そうやよね。いきなり好きですって言われても迷惑なだけやよね」

 

 

マギに謝られたことに、意気消沈する亜子。

違う違うそうじゃないと慌てて首を横にふるマギ。

 

 

「実はな……日本に来るまで俺、女の子に好きですって言われたことがないんだ」

「うそ……」

 

 

マギのカミングアウトに亜子はもちろん、隠れて聞いていた千雨と茶々丸も驚きを隠せなかった。

 

 

「うそじゃあねぇよ。日本に来るまでほぼ1人で修行してたからな。女の子と話したこともなければ一緒に出掛けたこともなかった」

 

 

修行中はネカネが様子を見に来たり、息抜きに買い物に付き合ったこともあった。がネカネは女性である以前に家族である。

 

 

「だからな、女の子に好きって言われたこともないしデートもしたこともないから、いまいち好きっていった気持ちがよくわからないんだ」

 

 

自惚れに思われてもしょうがないが、最近自分に対して好意を持った女の子がいるということを気づいたマギ。

のどかはもちろん、あと数人はいると理解している。

 

 

「正直まだ気持ちが整理出来てない。もしかしたら亜子、お前を傷つける答えを出すかもしれない。けど今年中……3月まで答えを出す。それまで待ってもらえないか」

 

 

マギの真剣な顔に亜子は小さく頷いた。

 

 

「うんウチ待ってるな。でも答えが出たら絶対教えてな。約束な」

「あぁ約束だ」

 

 

指切りげんまんを行い、一休みを終え学園祭に戻った2人。

そして夜。亜子が入っているバンドがフェスで曲を披露した。

そして曲の半ばのトークで亜子がまた一緒にお出かけしましょうとマイクでマギに言い、マギもOKサインを出したのであった。

バンドのフェスを楽しんだマギ達はもう一度タイムトラベルを行うことに。

とその前にお手洗いと席を外すマギ。

用をたし、先程の亜子の告白を改めて思い出していると、包帯を巻いた手から激痛が走った。

 

 

「っ!?なんだ……」

 

 

包帯を外し、マギは言葉を失った。

何故なら、手の甲の黒いアザのようなものが手全体に広がり、真っ黒に染まっていたからだ。

変わりように唖然としていると、手から骨の軋むような鈍い音が聞こえたと思いきや、手が自分の意思とは別に急に動いたと思いきや、そのまま首を絞めようと首へ手を伸ばした。

慌ててもう片方の手で勝手に動く手を止める。

信じられない力に脂汗を浮かべるマギ。

数秒ほど自分の手との攻防の後、少しずつ大人しくなったマギの腕。黒くなった手を隠すようにもう一度包帯を巻く。

 

 

「悪い亜子……もしかしたら告白の答え、言えねぇかもしれない……」

 

 

脂汗を滲ませながらこの場にいない亜子に謝るマギ。

そう謝ったマギの腕から少しずつだが黒いアザ……いや、"闇"が広がっていったのであった。

 

 

 




皆様お久しぶりです。
ようやく最新話を投稿することが出来ました。

こんな小説をもし待ってくれた方々が少しでもいるのであれば、遅れてしまい大変申し訳ありませんでした
今後こうやって投稿間隔が空くことがあると思いますが、どうかよろしくお願いいたします

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