2023/1/8追記
前半の文章に加筆修正しました。
大和型戦艦一番艦「大和」。
対米戦争に備え、1940年8月8日に機密裏に建造。いくつかの海戦を経て第二次世界大戦を生き残った後、冷戦の最前線で大日本帝国の強大な戦艦として、モンタナ級戦艦やH級戦艦としのぎを削る。その後1970年に一度退役し、予備艦の一つとして暫くの間の平和を過ごした。
しかし2010年、イデオロギーの相違から関係が冷却化し続けていたナチス・ドイツがH級戦艦「フリードリヒ・デア・グローセ」及び「グロース・ドイッチュラント」を大規模近代化改修の後に再就役する事を発表すると、大日本帝国とアメリカ合衆国も更に呼応。大日本帝国は戦艦「大和」及び「武蔵」を、アメリカ合衆国は戦艦「アイオワ」、「ミズーリ」、「モンタナ」をそれぞれ大規模近代化改修の後に再就役する事を発表し、三つ巴の「第二次冷戦」が勃発する事となる。
第二次冷戦の目玉となったのは、それぞれが再就役させる戦艦。つまりはフリードリヒ・デア・グローセ、グロース・ドイッチュラント、大和、武蔵、アイオワ、ミズーリ、モンタナの7隻。
「戦艦」という国民達に分かりやすい力の象徴であるソレは、他国に負けぬよう其々が国力と技術を惜しみなく投入し、第三次世界大戦にも耐え得る性能の獲得を目指して改修された。
大和と武蔵の大規模近代化改修の大まかな概要は、以下の通りとなる。
・仮想敵は大規模近代化改修後のフリードリヒ・デア・グローセ、グロース・ドイッチュラント、アイオワ、ミズーリ、モンタナ、及び米独艦隊。これら有力な敵戦力の脅威とするには、一種の「アーセナル・シップ」へと大和を進化させる事が最適解と判断する。
・日本版イージスシステム「
・上記の搭載に合わせCIWSや対空砲、ミサイルVLSを搭載。
・敵戦艦との砲撃戦も考慮し、15.5cm3連装砲を自動装填及び無人砲塔化した18cm連装砲に換装。主砲の46cm砲は再新すると共に砲身長を拡張、自動装填装置を導入。
・機関は大和及び武蔵専用に新規開発されたガスタービンに換装。悪化する燃費は、機関換装や区画整理によって生まれる余剰スペースを燃料タンクとして活用する。
・
・航空機運用機能は完全に撤廃し、生まれた余剰空間に
その他にも省人化や最新設備の導入などがあるが、特徴的となるのは上記の物となるだろう。近代化大規模改修の優先順位は大和>武蔵となり、2012年の震災などで遅れが生じつつも、最終的に2013年に完了。試験航行やシステムチェックなどを行い、2014年に大和は再就役する事となった。
大和の武装は、以下の通りである。
・10式50口径46cm3連装砲 3基9門
・10式18cm連装砲 2基4門(旧12.7cm三連装砲の部分に搭載)
・90式76mm単装砲 4基(艦橋の左右に設置)
・84式25mmCIWS 8基(艦橋の前後左右に設置)
・10式垂直発射装置 6基(旧カタパルトの位置に設置。1基に付き6×6のミサイルセル)
46cm砲という世界最大の主砲と、総数216のVLSによる世界最大のミサイルセル保有数。この2つの要素をたった1隻で独占する事となった大和は、正に「世界最強のイージス戦艦」として2014年に、再び青い海へと再臨した。
だが、此処から大日本帝国と大和は実に奇妙な歴史を辿る事となる。
武蔵の近代化大規模改修が本格化していた2015年、突如日本列島は異世界に転移。植民地を突如全喪失した上、既存の国交や交易が全て途絶えた事により、1年未満で資源危機が訪れる事は明白だった。幸い、早期にクワ・トイネ公国やクイラ王国との国交を結び、食糧資源や石油資源などを輸入することにより、資源危機は早期解消を見せる。
が、此処から大日本帝国は戦乱の歴史に巻き込まれる事となる。ロデニウス大陸を統一せんとしたロウリア王国、初接触の大日本帝国に対して服従を要求し、「フェン王国」侵攻の際に捕らえた外交官を殺害し、大日本帝国を激怒させたパーパルディア皇国。この2ヶ国と僅か2年で戦争を行う事となる。
この両戦争の海戦に大和は投入され、絶対の技術差と戦力差を以って圧倒。ロウリア海軍の木造船3000隻以上、パーパルディア皇国海軍の木造艦を600隻の殆どを単艦で撃沈し、その存在をグレード・アトラスターと共に世界に轟かせた。
余談だが、転移によって仮想敵国の技術や国力が大幅な低下した事により、武蔵の大規模近代化改修は一時中断。VLSの搭載数を削減し副砲を追加搭載するという新規改修案が提出され、議論が進められている。
そして今回、大和は外交官を乗せてこの世界の列強国「神聖ミリシアル帝国」が主催して開催する先進11ヶ国会議に参加。大和を使った砲艦外交で他国を牽制する為、先進11ヶ国会議の開催場であるアルトカルパス港に大和は単艦で派遣される事となる。
何故艦隊ではなく単艦かというと、まず戦闘を前提としたものではなく、あくまでも他国牽制の為の砲艦外交でしかない。そして大和の圧倒的な戦闘力は既に他国に知れ渡っており、軍事力のアピールは大和のみで十分に主張する事が出来るからだ。大和を加えた艦隊を組んでいくとなると、流石に過剰な警戒を招く事になる。
あくまでも他国の牽制程度に留める為、大和単艦での参加という形になったのだ。
…
大和がアルトカルパス港に着港して外交官を下ろした少し後、アルトカルパス港に入ってくる1隻の巨大戦艦。
それは大規模近代化改修を施される前…
「あれが、グレード・アトラスターか…」
CICのモニターに映し出されるグレード・アトラスターを見つめながらそう呟いたのは、大和の船長を務める「瀬戸 衛」。
「見れば見る程、二次大戦時の大和とそっくりですね」
「流石に細部は違うようだがな。25mm機銃の代わりに高角砲が針鼠のように搭載されているように見える。対空能力は当時の大和よりも上だろう」
「となると、航空戦力もそれ相応の戦力は確実に保有している事が考えられますね」
艦長と副長がそんな会話をしている間にも、グレード・アトラスターは湾岸誘導員の誘導の元、ゆっくりと第二文明圏エリアへと入港していく。
そうなれば当然、第二文明圏の空きスペースに臨時で停泊している大和に接近し、グレード・アトラスター側からも大和の全容をより詳細に確認できるようになる。
グレード・アトラスターの艦橋から大和を見ているラクスタル艦長は、その光景を見て目を細めた。
「あれが、報告に上がっていた我が艦に似た戦艦か…成る程、確かによく似ている」
「艦橋は直線的で、対空砲はかなり少なく見えますね。余剰スペースもかなりあるようですが……何方にしろ、あの対空砲の少なさを見るに、航空攻撃に対しては脆弱でしょう」
「そうだな。しかし、それでも油断は禁物だろう。我が艦と同等の防御力はあると考えていい筈だ」
ラクスタルはグレード・アトラスターの防御力の高さを信じているが、同時にグレード・アトラスターと良く似た大和の防御力も高いと考えていた。
大和の主砲に注目して観察すると、やはり大和のそれはグレード・アトラスターの主砲と酷似していた。恐らくだが、口径も同じか僅かに上回っているだろう。
(今までの敵は容易く葬ってきたが…この艦と戦うとなると、そうはいかないだろうな)
大和と戦えばどうなるのか。グレード・アトラスターの乗組員達は、どんな形であれ必ずグレード・アトラスターが勝利し、真なる世界最強の戦艦となる事を確信していた。そして大和の乗組員も、どんな敵が立ちはだかったとしても、必ず大和が勝利すると確信していた。
大和の横を通り過ぎたグレード・アトラスターは、そのまま第二文明圏エリアに着港する。
…
こうして世界を牽引し得る11ヶ国が集い、新たなる世界秩序の構築を目指して開催された先進11ヶ国会議。
しかしその会議は余りにも酷い進行を見せた。
つまり、どういう事かを簡潔に言えば。グラ・バルカス帝国は世界を…否。
『総員、傾聴。艦長の瀬戸 衛だ』
『現在我が艦が停泊しているアルトカルパスにて開催されている先進11ヶ国会議にて、一つ火急の事態が発生した』
『つい先日グラ・バルカス帝国が世界に対して服従勧告を行い、そして先程、主催国である神聖ミリシアル帝国が此処から西にあるマグドラ諸島の地方隊が被害を受けたと公表した。この攻撃はグラ・バルカス帝国艦隊によって行われ、此処アルトカルパスに向かっている可能性があるとの事だ』
『神聖ミリシアル帝国を筆頭とした9ヶ国が、この事態に対し臨時に連合艦隊を結成する事を決定。我が国もこれに参加する事を決定し、我が艦は臨時連合艦隊の1隻となる』
『敵は今までの木造艦やワイバーンとは違う。二次大戦時の技術と戦力を持った近代国家が相手であり、この湾岸の先に、超弩級戦艦が率いる1個艦隊が待ち受ける事は確実だ』
『対して味方の海上戦力は木造艦や一次大戦の戦艦、どれだけ良くても戦間期の巡洋艦程度の物。神聖ミリシアル帝国のエアカバーが提供されるとの事だが、対等以上の敵との実戦経験が無いパイロットで、果たしてどれ程の戦果が期待出来るのかは不透明と言わざるを得ない。つまり最悪の場合、現戦力でまともに対抗し得るのは我が艦のみとなる』
『だが、何ら臆する事など無い。何故なら我が艦は世界最強のイージス戦艦であるからだ。我が艦の能力を存分に発揮すれば、
次回からアルトカルパス沖海戦改め、フォーク海峡海戦をやっていく予定。気乗りしたらだけど。