現代に蘇りし超戦艦「大和」   作:クローサー

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勢いに乗って最後まで書けました。
…何でマクロスの「ライオン」を聴きながらこの話作れたんだろ。Arcana Eden聴くつもりだったのに。


砲撃戦

「ヤマトまでの距離、48km!!」

「第1戦速、面舵90!!右砲戦用意!!」

 

グレード・アトラスターの後尾下部に搭載されている巨大な方向舵が右に傾き、スクリューの回転によって発生する巨大な水流を変化させる。しかし約6万トンもの排水量を持っているこの艦が転舵するには数十秒もの時間を必要とする。しかしそれを過ぎれば、その巨体にしては軽快な勢いで右へと曲がっていく。

 

同時に、グレード・アトラスターの主砲にして故郷のユグド世界最大の主砲である46cm3連装砲3基がゆっくりと旋回し、砲身が少しずつ上向く。その狙いは、グレード・アトラスターの最大船速(30.5ノット)を僅かに上回る32ノットで追撃して来ているたった1隻の戦艦、大和。

 

 

しかし、グレード・アトラスターの乗組員全員が「たった1隻」と侮る事はない。

 

 

1隻の戦艦に、常勝を誇る200の艦載機が殲滅させられた。

1隻の戦艦に、1個艦隊(14隻の東方艦隊)が壊滅させられた。

1隻の戦艦に、グラ・バルカスの栄光が打ち砕かれた。

 

1隻の戦艦に、だ。

 

そして今、唯一の生き残りであるグレード・アトラスターも彼女(大和)から逃げ果せる事は叶わなかった。

僅かに最高船速を上回られたという事実。それ即ち逃走すら許される事はない。だからこそ、グレード・アトラスターは最後の望みを賭けて、46cm砲による砲撃戦を挑む。

 

彼等には、艦隊を壊滅させたあの攻撃を再度行わない理由は分からない。しかし再度行われた所で、グレード・アトラスターに抗う手段など無い以上、考えるだけ無駄。だからこそ彼等は敢えて考えず、大和との砲撃戦を制する事に集中している。

 

面舵90度の転舵が完了し、レーダー照準によって3基の46cm3連装砲の照準を詰める。

相手(大和)は砲撃戦に於いてもグレード・アトラスターと同等の能力を持っているであろう事は、分かり切っている。故に先に一撃を与えられるかが重要だ。ダメージレースになったとしても、1撃の差が致命的な差になるかもしれない。

 

「ヤマトとの距離、44km!」

「主砲全門、装填完了!!」

 

現在の状況としては、グレード・アトラスターが主砲全門斉射の体勢を完了させたのに対して、大和は変わらず全速前進を続けている。所謂「T字戦法」に近い状態となっている。

 

この状態では、グレード・アトラスターは46cm砲3基9門の全火力が発揮出来るのに対し、大和の砲撃は船体前部の46cm砲2基6門しか発揮する事が出来ない。船体がグレード・アトラスターに対して真っ直ぐ向いているため、グレード・アトラスター側から見れば多少当たりにくくはなってはいる。しかし3門の火力差は大きい。

 

「舐めるなよ…砲撃戦ならば、制するのは我々(グレード・アトラスター)だ!!

 

グレード・アトラスター艦長 ラクスタルが叫ぶ。こんな形では望んでいなかったが、完全なるタイマンの砲撃戦。これに燃え上がらない者は、外交官を除けばグレード・アトラスターに誰一人として乗り合わせていない。

 

射程(40km)まで後10秒!!9、8、7……!!」

「主砲、斉射用意!!」

 

そして遂に訪れるその瞬間にして、この海戦の最終局面。

 

「6、5、4、3…………射程内、今!!」

「っ撃ぇぇぇぇ!!!!」

 

次の瞬間、グレード・アトラスターの46cm3連装砲から海面を一瞬抉る程に巨大な発射炎が出現し、衝撃によって船体が震える。撃ち出された1.5tの46cm砲弾は空気抵抗等を受けながら、大和へと飛翔していく。

 

先手を打たれた大和。しかしCICに居る各員は変わらず冷静に対処を探る。

 

「敵艦、主砲斉射。全弾遠弾……いえ、近弾1の可能性有り」

「近弾?1射目、それも全門斉射だぞ。間違い無いのか?」

「現在再確認中です……………間違いありません、遠弾8、近弾1です」

「レーダー照準とはいえ、初撃でここまで合わせられるとはな。どうやら相手の練度想定を過小評価していたらしい」

「迎撃しますか?」

「初撃は不要。此処で当たるような不運など、大和は持っていない」

 

主砲斉射から約50秒後、大和の後方に9つの巨大な水柱が立ち上がる。その内の1本は、比較的大和に近い位置で立ち上がった。

直ぐに着弾位置が観測され、それを元に照準の情報を修正。再装填の為に一度降ろされたグレード・アトラスターの46cm砲の砲身がもう一度起き上がり、修正された角度へと合わしていく。

 

照準が完了し、すぐさま第2射が放たれる。

 

「敵艦、第2斉射。9発中2発が至近弾の可能性有り」

「砲弾迎撃開始。以降は敵至近弾を随時迎撃せよ」

「了解、対空ミサイル発射!」

 

此処で、全速前進を維持していた大和が初めて動いた。大和の旧カタパルト部分に搭載されていた10式垂直発射装置(VLS)から2発の対空ミサイルが放たれる。発射時に発生する猛烈な発射煙は、グレード・アトラスターからも目視で観測出来た。

 

「ヤマトの後部が爆発!?」

「何!?まだ第二射が着弾する時間じゃないぞ…?」

 

観測員から報告を受け取ったラクスタルは、首に紐で掛けていた双眼鏡を手に取って大和を観測する。

 

「………光の、矢?」

 

その時、煙の中から2つの対空ミサイルが姿を現した。

 

「…違う、ロケットだ!!ロケット攻撃が来るぞ高角砲射撃用意!!」

 

艦載機を殲滅し、恐らく艦隊を撃滅したであろう超火力の攻撃が今行われた事に、全員の額に冷や汗が流れる。

 

しかし彼等の予想は間違っている。

2発の対空ミサイルはグレード・アトラスターには目もくれず、46cm砲弾に向けて飛翔。そのまま至近弾になる筈だった2発を精密に迎撃し、空中に巨大な爆発が2つ生まれる。

そこから数十秒後、残りの7発が大和の後方に着弾。先程よりも少し近い位置にはなっていたが、しかし大和に何ら損害は与えられていない。

が、その光景を見ていたグレード・アトラスターの乗組員はそれどころでは無かった。

 

「…何故、7発しか着弾していない?何故、空中で2つの爆発が発生した?」

 

9発の主砲弾、2発の光の矢(対空ミサイル)、2つの空中爆発、7つの水柱。

この要素を並べれば、自ずと彼等にとって信じ難い答えは出る。

 

「……空中で……空中で、砲弾を、迎撃しやがった……!!」

 

それは、グレード・アトラスターにとって決してあってはならない事だった。

 

彼等にとって、目視がほぼ不可能な速度で飛翔する砲弾に対して、防御する手段は2つ。

「装甲で耐える」か、「回避で避ける」か。

しかし、彼女(大和)は「砲弾を迎撃する」というあり得なかった第3の方法を持ち出して来た。

 

こんな事をされれば、如何に強力な砲弾を撃ち込もうが迎撃してしまえば届く事は無い。

それは砲撃のプラットフォームである戦艦にとって悪魔的な所業であり、そしてグレード・アトラスターの46cm砲ですら大和には通用しないという事実を突き付ける物だった。

 

怯むな!!ヤマトは今、2発しか迎撃しなかった。ヤマトでも全弾を迎撃する事は流石に出来ないという事だ!!」

 

「今も尚、ヤマトは主砲を発射せずに接近を続けている。恐らく奴の狙いは、確実に主砲が命中出来る距離まで接近する事だろう。その前にヤマトの迎撃能力を突破して強力な一撃を与え、この海域から撤退し、生きて祖国に帰るぞ!!」

 

各員の闘志が折れ掛けていた所に、ラクスタルの一喝。

 

勝利するのではなく、生きて帰る。これによって折れ掛けていた闘志が立ち直り、それどころか過去最高の士気となって唸りを上げる。

 

「撃てぇ!!!!」

 

生きて帰る為に、戦う。その為に、今目の前にいる絶望に抗うのだ。

 

 

「敵、第3斉射。至近弾1、対空迎撃発動」

「敵艦との距離、約37kmです」

 

 

だが大和はその悉くを粉砕し、進んでいく。

 

第4斉射。至近弾2、迎撃。

第5斉射。至近弾3、迎撃。

第6斉射。至近弾2、迎撃。

第7斉射。至近弾2、迎撃。

第8斉射。至近弾1、迎撃。

第9斉射。至近弾2、迎撃。

第10斉射──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「当たれ、当たれ、当たれ、当たれよぉ!!!!」

 

グレート・アトラスターの46cm砲が再び砲を吹く。そしてゆっくりと転舵し、グレード・アトラスターと方向を合わせつつ46cm砲がゆっくり旋回している大和から、1発の対空ミサイルが放たれる。そして予定調和のように至近弾が撃ち落とされ、8発の近弾が着弾する。

 

25斉射目の砲撃も、儚い結果となった。現在のグレード・アトラスターの戦果といえば、大和の対空ミサイルを至近弾迎撃の為に54発を使わせた程度だ。

 

「転舵完了。主砲照準、間もなく完了します」

 

既に大和の46cm3連装砲3基9門の装填は完了している。後は狙いを合わせ、号令が下れば漸く大和の砲撃が始まるであろう。

 

「………主砲照準、完了!主砲斉射準備良し!」

「主砲、撃ぇ!」

 

距離にして約22km。同航戦に移行して主砲照準を終えた大和が、今海戦で初めて主砲を発射した。

 

グレード・アトラスターにも劣らない発生炎と衝撃を発生させ、飛翔する9発の46cm砲弾。

しかしグレード・アトラスターと明確に違うのは、全弾が10式総合戦闘装置によって精密に照準され、飛翔中の今も尚10式総合戦闘装置の誘導を受けている46cm誘導徹甲弾であるという事だ。*1

 

「敵砲弾、着弾します!!」

「総員衝撃に備えろぉ!!」

 

次の瞬間、グレード・アトラスターに大和の砲弾が飛来。最後まで完璧に誘導された46cm誘導徹甲弾は、全弾がグレード・アトラスターに命中。9発着弾の衝撃でグレード・アトラスターの船体を大きく揺さぶり、衝撃に備えていたはずの艦橋内に居た人間の何人かを吹き飛ばす程の威力を持っていた。

 

「ッ……被害報告急げ!!」

「……右舷前部及び後部甲板に甚大な損傷、一部火災も発生しています!!浸水もです!!」

「第2主砲塔大破、使用不能!!」

「何だと!?初弾だぞ!?そんな馬鹿な事があってたまるか!!……クソっ応急班、ダメージコントロール急げ!!」

 

グレード・アトラスターの艦内は、まさに阿鼻叫喚といった有様だった。大和の砲撃は始まったばかりだというのに、既に大きな損害が発生している。

グレード・アトラスターは既に25回の斉射、225発の46cm砲弾を放って何の損害も与えられていないというのに。

 

(……まさか、ここまでとは)

 

ラクスタル艦長は自身の認識の甘さを痛感していた。

彼はこれまでの軍属で多くの修羅場を潜り抜けて来た。それは決して運だけで勝ち取った物では無い。常に最善の選択をし、最効率で戦い、仲間と共に戦ってきたからこそここまで生き残れてきた。

 

しかし今回はどうだろうか?1隻の戦艦相手に1個艦隊と200の航空機が手も足も出ず、最後に残されたグレード・アトラスターも良い様に弄ばれているだけではないか。

こんな事は今まで一度も無かった。こんな経験をした事も無ければ、こんな事態に陥った事も無い。この事実に、彼は今まで感じた事の無い恐怖を感じていた。一体どこで何を間違えてしまったのだろうか。

…いや、それは分かりきった事だ。細かい事を挙げれば幾つも出てくるが、しかし最終的に辿り着くは一つの結論。

 

(我々は、ヤマトという存在を、大日本帝国という国家を過小評価し過ぎていたのだな。現に彼の国の象徴として此処に来た彼女は、我々の想像を遥かに超える化け物だった)

 

そう思った時、ラクスタルは心の中でこの戦争の敗北を確信した。

1隻の戦艦に対して、グレード・アトラスターをも含んだ1個艦隊がこんな醜態を晒している。ならば大日本帝国が艦隊を揃えてしまえば、この海戦よりも悲惨で一方的な結果になるのは確実だ。

そして陸に於いても、空に於いても同じ事になるだろう。此処まで圧倒的な技術力の差を見せつけられて、どうして陸空で勝てるなどと思えるだろうか。

 

(この世界に来て、他国を「蛮族」と見做していた我々が、「蛮族」の立場になるとはな)

 

だが、彼の闘志は折れてはいない。最後の最後、その瞬間まで彼は諦めないと彼は決心した以上、最後まで抗う。

 

「まだだ!!まだ我々は負けていない!!残った主砲で反撃せよ!!」

 

ラクスタルの檄により、大和への攻撃を再開。第26斉射が放たれる。

そして大和もまた、抵抗を続けるグレード・アトラスターへ攻撃を続行。対空ミサイルで至近弾を迎撃しつつ、先程と同様に9発の46cm誘導徹甲弾を放つ。

 

「砲撃、迎撃されました!!敵艦無傷!!」

「敵第2斉射、来ます!!」

 

大和の第2斉射が着弾。先程と同じく9発全弾が命中。殆どが前部及び後部甲板に命中する中、1発が左舷艦首付近に直撃。更にもう1発が右舷艦尾付近に命中し、後部主砲近くで火災を引き起こす。応急班が消火を試みたが、直ぐに主砲の弾薬庫に注水による防火措置が施され、第3砲塔の砲撃能力も失われた。

 

残された第1砲塔で反撃するも、やはり大和の対空ミサイルで至近弾が迎撃され、無意味に終わった。

 

「……艦長。我が艦にヤマトに対抗出来る手段は、最早ありません」

「…………」

 

副長の言葉に隠された意味を、ラクスタルは正確に理解した。

 

「……そうだな、副長。これ以上の抵抗は無意味、か」

 

その時、大和の第3斉射が着弾。今度はグレード・アトラスターの艦橋付近に命中した弾があるのか、艦橋そのものが大きく揺さぶられる。

たった3度の砲撃にも関わらず、27発の46cm砲弾によって各所で甚大な被害が発生。大火災が広がり、右舷の損傷各所から浸水も発生して傾斜は10度近くに広がっていた。グレード・アトラスターの生存者達は、この艦の運命は最早風前の灯火である事を悟っていた。

 

「……総員退艦、ヤマトに降伏の通信を入れろ。もし通信機能が破壊されているなら白旗だ、兎に角これ以上の戦闘の意志がない事を、向こうに伝えるんだ」

「……了解しました。総員退艦!総員退艦だ!!」

 

その後、グレード・アトラスターから生存者が総員退艦。その直後、グレード・アトラスターは右舷からの浸水と傾斜に耐えきれなくなり、世界連合艦隊の目の前で横転。その身を海中へと沈めていった。

こうして後に「フォーク沖海戦」と呼ばれる事になるこの海戦は、グラ・バルカス海軍東方艦隊の壊滅と、グレード・アトラスターの沈没によって終結。

 

この戦いで、大和が世界最強の戦艦であるという事を世界に知らしめるのと同時に、神聖ミリシアル帝国の権威の失墜の始まり、グラ・バルカス帝国の敗北の始まりを告げるものとなる。

 

 

 

その後、大日本帝国は世界連合と共にグラ・バルカス帝国との戦争に突入。

 

大和も最前線に投入され、活躍する事になるがそれは別の話。

 

この話は、此処で筆を止めるとしよう。

*1
本来はGPS誘導による誘導砲撃で行われるが、転移後の今回はGPS衛星の範囲外の為、イージスシステムによる代替誘導が行われている。




という訳で、今作は此処で完結とさせて頂きます。
何処かで時間を作って、「出撃準備」にて記述している大和再改修の経緯とかを加筆修正する予定ですが、物語としては此処で終わりです。書きたい事を書けて満足。

1/4追記
ちょっとした裏話を下記の活動報告に。興味ある方は是非。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=291562&uid=56685
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