ルーントルーパーズ〜国防軍漂流戦記〜   作:匿名

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そう言えばルーントルーパーズの二次創作小説の数が少ないのってなんででしょうかね?もっとあっても良いはずなんですけど、誰かが書いてくれることに期待しましょうチラ…(´ ・ω|カケ


アルゲンタビス1

彼女は風を切って飛ぶのが好きだった。

 

ゴーグルの向こうには今のも吸い込まれそうなほどの蒼い海原が広がっていた。

マリースアの夏の潮風を感じ、世界がどんな惨状になっていようとも夏はやってきてくれる。

 

彼女の名はラロナ。マリースア南海連合王国軍飛行軽甲戦士団鳥騎手の練戦士だ。

熱い血潮のような紅く女っ気の欠片もない無造作なショートカット、勝ち気そうな顔つきは独特な野生的な魅力があった。

 

眼下に広がる蒼い海原と同じ彼女の蒼い瞳には、一点の曇りがない。

彼女は身に着けている装備品を確認している。飛行中何度も確認しており、もはや癖になっている。

空を飛ぶ者にとってはひょんなことで物を落とすので、確認作業が癖になるのは当然かもしれない。

着けているのはを忘れるくらいの軽い短胸当て(ハーフ・ブレストプレート)。しかしほとんど儀礼的な部隊識別用である。

 

胸当ての中央には、鳥のシルエットに槍と短剣(カトラス)が交差し彼女が所属する飛行軽甲戦士団(アヤム・エラング・サチュアン)であることを示した紋章が輝いている。

オリーブ色の穿き古された短パンに、腰には短剣(カトラス)、そして長時間の飛行で足が傷つかないように濃紺のオーバーニーソックスを履いているが、そろそろ買い替えどきだ。

 

「はっ!」

 

彼女は気合を入れて手綱を操った。年齢は15歳にも関わらず、その動作は手慣れた物だ。

彼女が乗っているのは鳥だった。

それもそこいらで見るような鳥ではない。翼長だけなら竜かイーグル(61式防空戦闘機)並の巨大種である。

 

アルゲンタビス(巨鳥)

人を乗せ、人と飛ぶ、大いなる鳥。

外見はハヤブサに似ており、その威容にふさわしい知性を備えている。

世界的に軍・商用に飼い慣らされている種ある。

 

ラロナが小柄とは言え、人ひとり+旅道具一式を乗せて長時間飛行している鳥力はかなりの物だ。

竜より安価で数が揃えやすいことから軍では伝令、偵察と言った細かい任務を担う。

アルゲンタビスの名産地では軍の専門の部隊編成されている。

 

ラロナが所属する部隊がまさにそうだ。

周辺に点在する島々とデメテル大陸の一部を領土とする連合国家が彼女の母国だ。

彼女は大陸内部の山育ちだがこの美しい蒼い海原がとても好きだ。

 

「テール!気持ちいいなぁー!」

 

彼女はアルゲンタビスの背中に装着された鞍に跨り、軍に入隊してからずっと組んでいる相棒に語りかけた。

『キュエ』と甲高い声でテールと呼ばれたアルゲンタビスが応じる。

 

「うんうん。そうだろう!」

 

ラロナは『カッカ』と笑う。

鳴き声や表情から、アルゲンタビスの言ってることが彼女にはある程度分かるらしい。その能力が買われ彼女は飛行軽甲戦士団の鳥騎手に選抜された経緯がある。

 

マリースアは海洋国家だが、デメテル大陸にある国境線付近に山脈が広がり彼女はそこの山岳民である彼女はと鳥と共に育った。険しい山岳地帯ではアルゲンタビスは重要な輸送・連絡手段だ。

 

彼女は10年前の国境紛争で家族を亡くして以来、鳥たちが家族同然だった。

鳥騎手以外にも新人育成の補助も担当しており、配属してくる新人と乗るアルゲンタビスのとの相性を見抜いている。

と、彼女の表情が険しくなった。

 

潮の香りが変わった。場の雰囲気が変化したのが正解だろう。

重く、まとわりつくような空気。

水平線を確認すると濃い霧のかかった海域が近づいた。

 

「『人魚の海』か...だいぶ飛んできたね、テール」

 

人魚の海。

決して濃い霧が晴れることはない魔の海域。

大継承戦争での頃に戦火を逃れた最後の海棲人(マーフォーク)たちが棲みついた場所である。

霧の中へ迷い込んだら最後生きて帰ってくる者はほとんどいないと言う海域だ。研究が進まないおかげで、あの海域の奥深くには世界の切れ目があるだとか、彼らが信仰している神々が住んでいる聖域だとかの奇想天外な説が流布している。

 

彼女にとって、はそんな真実なんかどうでも良かった。

大継承戦争は神話の域、一千年以上前の出来事だ。そんな時代から存在し続ける詳細不明な場所など、彼女自身どうしようもなかった。

 

そんなことより重要なのは領海の哨戒任務だ。

この海域は、人魚の海の影響があって船や商用アルゲンタビスの往来は少ない。辺境と言っても差し支えない。

だが、海を挟んだ向こう側のルールイエ大陸に比較的近いため、敵の侵攻ルートになりうる軍事的要所だ。

 

つい2ヶ月前に大陸最後の防波堤、神聖プロミニア帝国を滅ぼした国がある。僅か5年で大陸を手中に収めデメテル大陸を征服しようとしている。

 

フィルボルグ継承帝国。

それが敵の名である。

自らが世界を継承者であるかのように国名に継承を入れてる。

 

ラロナはじっと継承帝国の手に落ちた、かつてのプロミニア領の対岸を監視した。

戦士団内では、継承帝国は先の戦争である程度損害を受け立て直しに時間がかかる。海を越えての遠征には相当な準備が必要なのでそこまで張り詰める必要はない、と言う考えが主流である。

 

しかし、ラロナは普段はずぼらな性格だが任務については生真面目である。

今も気を抜かず水平線の先を監視している。

彼女は目が良く、アルゲンタビス乗りにとっては必須の身体条件だが、戦士団内では飛び抜けている。

 

「ん...?」

 

警戒していなかった人魚の海から気配を感じる。

ラロナは身体を緊張させ、感覚を研ぎ澄ます。

その瞬間だった。

 

ボオォォォー!!

 

あまりの大音量に、手綱を落としそうになるが、なんとか堪えた。

彼女は霧の中から現れた存在に気づいた。

 

「な、何なんだ...!?これは!?」

 

ラロナは眼下の、“物体”に対して、形容すべき言葉が見つからなかった。

 

灰色の何か。

 

彼女に分かるのはそれだけである。

 

「もしかして...継承帝国の軍船?」

 

海の上で、一定方向の方向へ進んでいる。それは船に違いない。

だが彼女が知る船はこの世界では標準的な帆やそれに類するものが一切見つからない。

にも関わらず、その物体は白い航跡を引きながら波を割り進んでいる。

 

この物体はあまりにも大きすぎた。マリースアの港をを利用する巨大な交易輸送船でさえこの船の半分もない。おまけに中央に鎮座する平たい船に限ってはマリースアの王城以上の大きさはあるように見える。

継承帝国で帆を張らずに進む鉄の船を保有している情報は聞いた事がない。継承帝国の海軍といえば正規艦隊と悪名高き海賊集団が混成したのが母体で戦列艦と竜を搭載する軍船と大小様々な海賊船しかない。

 

「し、しかもあっちからって!?」

 

入った者は出られず、出てくる者ももいない人魚の海だ。

そこからやってきた異形の存在。

ラロナは総毛立った。

 

「と、とにかく情報収集しなきゃ!」

 

彼女は冷静になり、自分の任務である哨戒に専念した。異常があれば可能な限り調べることが優先にである。

 

「数は40隻ぐらい。色は灰色、全体的に角張っていて、人の姿が見当たらない」

 

彼女は目を凝らして全容を把握しようとした。

 

「その灰色の船と対称的な色は黒、全体的に丸み帯びた謎の船もあるね」

 

「あの平たくて大きい船、上に竜みたいなのが複数駐騎している。数にして20騎と言ったところか。しかもあのデカ物以外に小さくて同じ物体が3隻、継承帝国の海軍が持っている竜を搭載している軍船みたいな設計思想かな」

 

「箱に棒が付いているのって、まさか継承帝国が実用化している大砲?1本から3本で付いている」

 

船ならば、甲板でマストの帆を操作する水夫などが忙しなく働いているが、そう言った物は見当たらない。継承帝国が実用化している大砲や船竜を搭載した軍船に似た船を持ち継承帝国でこれほど大きい船を持っているのは聞いたことがない。何から何まで不思議な船だ。

 

「テール!もう少し接近してみよう!」

 

彼女は相棒と共に旋回すると、高度を下げてその物体への接近を試みた。

 

 


「レーダーに感あり!目標方位270(ふたひゃくななじゅう)度!距離2(ふた)マイル!本艦に接近しつつあり!」

 

打撃ミサイル巡洋艦伊吹のCIC内で、電測員が叫び声じみた報告を上げていた。

 

「なぜここまで探知出来なかった?島影に隠れていたのか」

 

レーダー・通信の責任者である船務長が呟く。

 

壁に配置された巨大なレーダースクリーンには目標がたった1つ。船務長はそれを見つめながら叫んだ。

 

「国籍は?SIF照合急げ!どこの航空機だ?チャトラパティ発の民間機あたりかと言ったとこか」

 

派遣艦隊は、あの異変があった後、進路を変更してインド帝国ムンバイ海軍基地を目指している。本国や合流予定だったインド帝国平和維持軍派遣艦隊とでの通信だけでなく、あらゆる交信手段が沈黙状態となり緊急事態となっている。

航空機が飛んでくるとしたらチャトラパティ・シヴァージー国際空港から、と船務長は考えてた。

 

「当該機ATCトランスポンダ、レスポンスなし。国籍不明機(アンノウン)です!」

 

反応がないと言うことはSIFを搭載していない大富豪の航空機コレクターが操縦する博物館レベルの軍用機か民間機となる。

 

「無線で呼びかけろ。国際周波数を使用。応答するまで続けろ」

 

例を見ない異常状態の中で、たった1機でも航空機が現れたのは幸いだろう。

 

その時、艦橋から連絡がサンドパワー(艦内受信機)伝いでやってきた。

 

『CIC!目標とコンタクト取れたか!?』

 

艦橋からの航海長の通信がやけに慌てている様子だった。

 

「こちらCIC、当該航空機には国際周波数で呼びかけておりますが...」

『航空機だぁ?バカ野郎!』

 

『そいつは鳥だ!』

「と、鳥?伊吹の三次元レーダーがこの距離で鳥の群れを識別できないわけが...」

 

伊吹が搭載すると三次元レーダーは、同時に650個以上の目標を捕捉・追尾が可能なほど可能である。そんな性能で数キロ単位の距離で航空機ほどの強い反応を示す物体を誤認するわけがない。

 

『違う!鳥の群れじゃあない!翼長15メートル以上の巨大な鳥だ!空軍のイーグル並みはあるぞ!』

「よ、翼長15メートル以上の鳥!?」

 

艦橋からの通信に、船務長は愕然とし、思わずレーダースクリーンを見た。

艦橋の連中が幻覚を見ているのでは、と一瞬疑う。

 

「船務長、艦橋の言ってることは本当のようです」

 

CICのモニターに映し出された艦外カメラの映像に、その場の全員が絶句した。

そこには巨大な鳥に跨る赤い髪をした少女の姿が。

鎧のようなものを身に着け、腰に剣を提げている。

 

伊吹水兵には、まるで古代ローマ兵を見ているかのようだった。

彼女はモニター越しに。こちらを睨むようにしている。

CIC要員は呆然としたまま、彼女の視線を受け止めるしかなかった。

 

 


「正体不明生物、再接近!」

 

艦橋側面ウィングに詰めている乗水兵達が、双眼鏡で目標を追尾しつつ周囲に向かって叫んだ。

レーダーマストの真上を掠めるかのように巨大な影が通りすぎた。

 

「うおっ!?」

 

バサバサと翼を羽ばたかせる音が重く響き、隊員達がその迫力に身を竦めた。

艦橋内からウィングへ飛び出した加藤は、正体不明の巨大な鳥を追った。

 

「ちょっと貸してくれる?」

 

加藤はウィングの監視員にどいてもらい、据え付けられた長距離望遠鏡で鳥を観察した。

レンズ越しに映し出された赤い髪の少女は、無線機の類を持ってないようだ。海洋文化を思わせる民族衣装に、腰には剣を提げている。

鳥の背に跨り、手綱を手にしているので、彼女があの鳥を使役しているようだ。加えて彼女の行動は、強行偵察を試みているようだ。

 

絶えず旋回を繰り返しており、こちらの攻撃に備えた回避行動を取っているようだ。

加藤は、交信手段を持たないことに歯がゆかった。

 

 


「少ないけど人が居る」

 

謎の船の真上を通り過ぎた際、ラロナは自分を見上げている人々の姿を目にした。

ただ、すんぐりとしたチョッキのようなものを身につけたその様子から、彼らの正体を探ることは出来なかった。

 

中央に鎮座している平たく巨大な船にも接近した。

その船にも人がちらほらと居た。こっちに手を振っている人の姿も確認した。

こっちは赤・青・緑・黄・紫などのカラフルな服を着ているようだ。

 

「一体どこの国の人間だ?」

 

継承帝国の人間ではないかと疑ったが、そうではないようだ。

見知らぬ服装もそうだが、こちらに対して弓矢を射るような敵対行動が見とれない。それどころかこっちに手を振っており好意的と捉えられるような行動していた。

継承帝国の人間がそんなことするだろうか。

 

「分からないよ...奴らは何者なんだ?」

 

ラロナは周囲を飛びながら考えたが、答えは出ない。

そうした判断するのは上官の仕事だ。彼女はそう思い軍の基本に立ち返り、正確な情報を一刻も早く持ち帰ることの方が大事だと判断し手綱を引き、相棒を旋回させる。

 

「何だろう、凄く胸騒ぎがするよ、テール...」

 

自分の感情なのに、その胸騒ぎの正体が分からなかった。

あの異形の船に対しての不安と言うより、あの異形の船が現れたことで、何かが起ころうとしている。

 

「急ごう、テール!王都が心配だ!」

 

彼女の声に相棒は甲高く鳴き、帰路についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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