ルーントルーパーズ〜国防軍漂流戦記〜   作:匿名

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Q.シュレティンガーの猫ってなんですか?

A.その事象に使われた猫が可愛いことです。

結局シュレティンガーの猫ってどう言うこと何でしょう?猫が可愛いことぐらいしかわからないです。


アルゲンタビス2

伊吹艦橋

 

「何か、分かったか?」

 

海軍で正式採用されてる洋上迷彩服の上に灰色の救命胴衣と青の鉄帽を身につけた蕪木が司令席に座り加藤に聞く。

 

「ええ、僕の仮説が正しければ、あの巨鳥や一連の出来事について説明できるかと思います」

 

加藤の声に蕪木含む艦橋に居合わせている者が一斉に静まった。

加藤が咳払いをする。

 

「伊吹士官室に現れた謎の少女によって引き起こした異変で我が艦隊は現在位置を失い、濃い霧の中を迷走していました。あらゆる周波数帯が沈黙し通信手段も失い、現在艦隊は同盟国であるインド帝国のムンバイ海軍基地に向けて進路を変更しました」

「そうだな」

 

加藤の認識に蕪木は同意した。

 

「霧を抜けたと思ったら、あの巨鳥です。ウチの乗員で鳥に詳しい者に聞いたところ「あれだけの大きさの鳥がこの地球上に存在しているのはありえない。居たとしても900万〜680万年前の現在のインカ帝国に存在した鳥類の古生物であるアルゲンタヴィスぐらいの化石レベル」と興奮気味に言ってました。しかもその背の中には少女がに乗ってました。しかも国籍不明。でもこれらの問題はそれほど重要ではありません」

 

加藤は通信士に現在取り巻く状況を詳しく尋ねる。

 

「霧が晴れた今も何の電波も傍受できてないですよね?」

「宇宙軍の衛星や航宙艦どころか民間の衛星からもレスポンスが消失しています」

「他の艦も?」

「他の艦も同様です。桜龍の艦載機もです」

「故障ではない?」

「3回点検しましたが、機器そのものの故障ではありません。これも他の艦も同様です」

「超光速通信システムも実用化しているこの地球でそんなことはあり得ない」

 

「皆さんは量子力学の多次元解釈と言うのをご存知ですか?」

 

加藤の口から突如として量子力学と言う言葉が出てきて蕪木達は驚いた。

 

「異なる世界が存在してる解釈のことですよね?」

 

そこにオタク通信長が答えた。

 

「その解釈で大丈夫です…量子力学のシュレティンガーの猫と言う思考実験で有名な分野です。通信長が言った通りに世界は一つだけではない、と言う仮説です」

 

「世界?」

 

「そう、世界です。我々が住む世界には多数の並行世界が存在し、並行しているが我々や相手も互いにその存在を知覚できないし、知る術もない」

「ですが、何らかの方法で別の世界にある物を自分達の世界へ持って来ることができたなら?あの、少女が観測者で自らを結節点としたら?」

 

「加藤中佐、も、もしかして!」

 

加藤の説明に通信長は何かを察し驚愕する。

 

「畑違いの分野で2人だけで話が進んでいるけど、どう言う事なんだ?」

 

「通信長が僕の仮説に察したならこれが正しいかもしれない…」

 

加藤は蕪木達を見回し、言い放った。

 

「世界が消失したのではなく、我が艦隊が並行世界に迷い込んだのです!」

 

 


空母桜龍

 

満載排水量147000トン、全長426メートルを誇る巨艦の乗員は今慌ただしく動いていた。その甲板の上で1機の83式艦上戦闘攻撃機と4機の60式艦上戦闘機が発艦準備を進めていた。

 

83式艦上戦闘攻撃機流星。

制空戦闘、各種攻撃、偵察などのあらゆる任務をを1つの機体でこなせることができるマルチロール機である。最もこの流星は数ある任務の中で得意としてるのは空対艦ミサイルによる対水上攻撃であるが。

 

60式艦上戦闘機トムキャット

防空、空中格闘を任務としている可変翼戦闘機。長距離空対空ミサイルを8発搭載し長射程からの爆撃機を破壊する事が出来、プロペラ機顔負けの空中戦も繰り広げることができる。

今、流星には各種偵察ポッドと増槽が、トムキャットには90式中距離空対空ミサイル“アムラーム”と50式短距離空対空ミサイル“サイドワインダー”、増槽が搭載されていく。

 

伊吹のレーダーでムンバイどころかインド亜大陸ひいては地球の全大陸の地形情報とは異なる大陸を探知しその大陸を調査をするために各飛行隊から抽出された機で調査部隊を送りこむところだった。

 

「インド艦隊の消失、各種電波と交信手段の沈黙、地球上に存在しない巨鳥を操る少女の出現に加え伊吹の主席参謀からの艦隊は並行世界に迷い込んだ艦隊平行世界遭難説か...色々とありすぎて頭がパンクしそうだ」

「今のところ艦内では大きな混乱は起きてないことが幸いです」

「それもそうだな」

 

桜龍の艦橋では艦長の牛込浩一と副長が話あってた。

牛込浩一海軍大佐。

海軍の早期警戒機パイロットを務めた後に空母瑞鷹の副長も務め去年空母桜龍の艦長に就任した。「蕪木司令より牛込艦長の方が将校の威厳がある」と他の海軍兵からは言われている。

 

「で、今度は伊吹のレーダーで地球の大陸の地形情報とは異なる大陸らしき物を探知したから、ウチの艦載機で調査隊を編成してその大陸の偵察と調査をしてこいか…戦闘機での調査とは物騒だねぇ」

「最初は非武装の64式早期警戒機での調査が考えられてましたからね。想定外のことが起きて取り返しがつかないかもしれないから念には念を入れてでしょう」

 

「艦長!整備科から調査部隊の航空装備の搭載が完了しました!」

 

「ん、分かった…各機最終確認が終了次第カタパルトに移動し発艦せよ」

 

 


空母桜龍甲板

 

大空へ打ち上げられるのを待っている83式艦上戦闘攻撃機のコクピット内で2人の戦闘機乗りが駄弁っていた。

 

「かー、敵艦の土手っ腹に対艦ミサイルを撃ち込むのが俺の生きがいなのにそれができない調査かよ!!」

「調査も大事な任務だ。諦めて偵察任務に着くんだ」

「わーたよ。桐生ちゃん」

 

前席に座るパイロットの桐生隼人と後席に座るレーダー迎撃士官の寺田美海である。

対艦ミサイルを撃ち込むことを生き甲斐にしている彼女は桜龍屈指のトリガーハッピーで演習時に無茶な操縦を桐生に脅迫じみた口調で命令して空対艦ミサイルを撃ち込む程の狂人である。

そんな彼女とペアを組む桐生は冷静沈着で寺田とは反対の性格である。彼女の無茶ぶりな指示で腕が上がったとか。桜龍乗員内では「凸凹コンビ」と言われている。

 

「そう言えば俺らの任務って何だっけ?」

「ブリーフィング聞いてなかったのか...流星1機とトムキャット4機の飛行部隊を引き連れてレーダーで発見した地球の大陸の地形情報とは異なる大陸の調査だ」

「そう言えばそうだったね」

「機器のチェック始めるぞー」

「うぃ」

 

2人は雑談を切り上げ機器をチェックしていく。

 

「エンジン、操縦桿、ディスプレイ、HMD異常なし。ラダー、スポイラーの動作確認...異常なし」

「レーダー、FCS、ECM、チャフ・フレア、偵察ポッド、HMD共に異常なし。20mm機関砲弾も異常なし。いつでも発艦できるぜ桐生ちゃん」

 

PFC(航空管制所)、こちらVFA30(第30戦闘攻撃飛行隊)桐生・寺本機。各種機器と動作確認を完了。いつでも発艦できる」

『こちらPFC。おっ、凸凹コンビか。了解した、VF28(第28戦闘飛行隊)もちょうど各種機器と動作確認が終わったところだ。桐生・寺本機は第1カタパルトに移動せよ』

「こちら桐生、了解」

 

各種最終確認を終え桐生達が搭乗する流星はPFCからの指示により前部右舷の第1カタパルトまで黄色のライフベストを着た誘導員の誘導に従い移動した。第1カタパルトの隣にある第2カタパルトに今回の調査の護衛として第28戦闘飛行隊所属のトムキャットも移動してきた。

 

緑のライフベストを着たカタパルト操作要員が流星のノーズギア(前輪の前脚)に付属するランチ・バーをカタパルトのシャトルに引っかけ、ノーズギアの後ろに機体を止めるホールド・バック・バーをセットし、機体の排気炎を逸らす遮断壁が立ち上がる。

 

「カタパルトステーション、発艦準備とクルーの退避を完了。いつでもどうぞ」

 

『了解』

 

流星のエンジンがフルパワーになり、カタパルトオフィサーの発艦合図でカタパルト射出制御ステーションの発射ボタンが押される。

 

AD動力炉で発電された電力が流星を射出する力に変換した。機体重量30トンある流星はカタパルトの力で300km\hにで加速し大空へ射出された。

 

ゴオォォォォォ

 

流星が発艦して20秒後に護衛のトムキャットも次々と発艦していく。

 

『艦長の牛込だ。全機発艦したな?これより調査任務を開始する。諸君らの部隊名は大陸調査隊。コールサインは「シーカー」だ。発艦した順を番号とする』

 

「シーカー1了解」

『シーカー2了解』

『シーカー3了解しました』

『シーカー4了解です』

『シーカー5了解』

『諸君らの任務完遂と桜龍への帰還を願う』

 

艦長の牛込の鼓舞を後に調査隊シーカーは艦隊が迷い込んだ並行世界の空を巡航速度マッハ0.9にまで加速し飛行していく。

 

 


伊吹艦橋

 

「調査隊が行きましたね」

「そうだな」

 

伊吹の艦橋で蕪木と加藤が話ていた。

 

「この大陸の調査で国家機構が確認されたらその国家の領空侵犯となるな」

「異常事態なので致し方ないです。その時はその国家に特使を送って誠心誠意に謝罪し事情を説明するしかないです」

「特使は私だな」

「司令、特使は僕で十分です。司令に万が一何かあってはいけないので」

「頼んでくれるか?」

「えぇ」

「分かった、ならそうするよ」

 

蕪木と加藤は今後の対応について話ていく。

 

 


 

マリースア南海連合王国の王都セイロードは、海洋交易都市であり活気が溢れている。

都の湾岸線は大きな三日月を描き、その両側が岬となっており高低差がある。低い岬が灯台と軍の駐屯地が、高い岬がこの国を治める統治者の王城である。

 

低い岬にある駐屯地の戦士団長室のバルコニーで草色の長髪の妙齢の女性が黄昏ていた。

カルダ・レシュアフォード。

それが彼女の名である。

貴族であり飛行軽甲騎士団団長の軍人である。

マリースア南海連合王国軍は3つの軍管区で構成されている。王都警備隊、内地軍、水軍である。

カルダが所属する飛行軽甲騎士団は王都警備隊に属している。

 

「今日のご飯は何かしら...」

 

普段から部下には見せない彼女の気の抜けた姿である。

 

「ん?何か腹から唸るような音がするな」

 

腹から唸るような音が聞こえた。彼女は辺りを見回しながら音がする方向を探っている。

 

「海から?」

 

音の方向が海であると確信した。海の方は確か哨戒任務に出てる彼女の部下であるラロナ練戦士のはずである。だがラロナが乗るアルゲンタビスはこんな音をするはずがないし、音が聞こえる距離的に不可能であった。

やがて海の方向から黒い点がポツポツと現れ始めた。

 

「アルゲンタビスにしては速すぎないか?」

 

アルゲンタビスどころか竜よりも速くみえる。

その黒い点は次第に大きくなっていき腹からうなるような音も大きくなっていく。音の正体はどうやらあの音で間違いない。

 

「カルダだ、飛行軽甲騎士団は直ちに緊急発進せよ」

 

部屋に備え付けられている伝声管に鳥建屋に緊急発進の指示を出す。

宿舎で待機していた鳥騎手達が鳥建屋へ走っていった。

緊急発進が命令されたら2分以内に発進するようにしている。

 

だが、その緊急発進は遅かった。

音の正体である黒い点がはっきり見える位置にまで来ていたにだから。

 

「な、何だあれは!?」

 

彼女はその正体に驚愕した。

その正体は全体的に灰色かかっており常識的にありえない速度で飛んでおり翼らしき物は羽ばたいてないからだ。

まるで、この世の物とは思えない姿をしており異様な不気味さを放っていた。

 

凄まじい速度で彼女の上を通り過ぎて行った。

その音に駐屯地は蜂の巣をつついたような騒ぎとなっていた。

カルダは我に返り伝声管で指示を飛ばす。

 

「アルゲンタビスの緊急発進が完了次第、あの正体不明飛行物体を追え!」

 

5騎のアルゲンタビスが誘導員の指示で助走路に侵入し離陸して行った。

 

 


大陸調査隊シーカー

 

大陸調査隊は蒼い海原をマッハ0.9で飛行していた。

調査対象である調査大陸を捕捉するまでの間、暇つぶしで雑談をしていた。

 

家族の心配や今日の晩御飯やその調査大陸にラーメン屋があるか否か等、皆それぞれだ。

桐生と寺本が搭乗する流星でもだ。

 

「桐生ちゃんが鼻歌で歌っている歌って宇宙の船乗りの歌だよね?」

「おっ、そうだな」

 

寺本が言う宇宙の船乗りの歌は、帝国や人類が太陽系内でしか行動出来なかった宇宙進出時代に太陽系から最も近い星座であるケンタウルス座の恒星プロキシマケンタウリを目指す事を夢見ていた宇宙の船乗りが作った歌である。帝国内では誰もが知る歌だ。

 

「ウチの部隊歌とか軍艦行進曲はダメなん?」

「別にそんなんじゃないな。海軍に入る前に宇宙軍に入隊しようかと思ってたんだ。宇宙軍について調べてる時にこの歌と出会って以来、鼻歌で歌うようになったんだ」

「意外な過去を持ってたんだ」

 

「宇宙軍に入ってたら桐生ちゃんと一緒にならなかったんだな」

「宇宙軍に入っとけば、お前の無茶振りに振り回れずに済んだかもな」

「それもそうか」

 

桐生からの答えに寺本はカッカと笑う。

 

「おっ、桐生ちゃん。レーダーに例の調査大陸を捉えたぜ」

「分かった。ちゃんと記録に残しとけよ」

 

「こちらシーカー1。レーダーに例の調査大陸を捉えた。これより大陸に侵入する」

『シーカー1へ、こちらシーカー2。こちらでもレーダーに捉えた。了解した』

『シーカー5、思う存分調査しちゃってください!』

 

調査隊はやがて調査対象である大陸に侵入した。

 

「桐生ちゃん、調査対象の大陸に人工物らしき物を確認したぞ。高い岬にお城、低い岬に飛行場、城下町を確認した」

 

寺本はレーダーで確認しつつ時折視認しながら報告していった。

 

「そうか。城があるって事はそこに王様が住んでることになるな。城はどんな感じだ?」

「ファンタジー系の世界に出てきそうなお城みたいで綺麗」

「お前みたいな男勝りな性格で綺麗と聞くとはな」

「無茶ぶりさせるぞ?」

「悪かった」

 

『シーカー1へ、こちらシーカー3。城と街があるって事は何かしらの国家機構があるって事ですよね?しかも城って事は首都機能としての役割があるのでは?』

「昔の日本みたいに領地の防衛機能として働いていた城があるから一概首都とは言えないが、分かったことは俺たちはその国家機構の領空を侵犯してることになる」

『責任は蕪木司令が取るらしいから大丈夫だと思いますよ?』

「司令には申し訳ないな」

 

「詳細な情報を確認するからバンク(旋回)するぞ」

 

一通りの調査を終え次は詳細な情報を集めるために流星は上空をバンクする。

 

 


 

「正体不明飛行物体、王城周辺を旋回してる模様!」

「奴ら、王城になにする気だ!?」

 

緊急発進した飛行軽甲騎士団のアルゲンタビス5騎の部隊指揮官を務めるアルメナは正体不明飛行物体を迎撃すべく急行していた。その不明飛行物体は王城を旋回していることから何かしらの攻撃であると警戒していた。

 

「女王が危険だ。この命を変えてでも女王をお守りしろ!」

「「「「おう!」」」」

 

やがて彼女は正体不明飛行物体の全体が視認できる距離まで接近した。

 

「数にして5、その内1騎は全体が丸み帯びたフォルムをしてるね。残りの4騎も全体的に丸み帯びてるけど翼が大きいわね」

 

正体不明飛行物体の全体的な外見の特徴

 

「よく見ると人が乗っているわね」

 

近づくまでは分からなかったがその正体不明飛行物体の楕円を描いた部分に人らしき物が2体確認した。生物でもなく何かしらの人工物であることが分かった。その内の1機である全体的に丸み帯びたフォルムを持った騎の後部に座る人型物体がこちらに向けてピースをしていた。

 

...我々をからかってるのか、友好的に接しているのかよく分からない。

やがて王城を旋回するのを飽きたのか王城から離脱し海の方に向けで飛行していった。それも我々のアルゲンタビスよりも速い速度でだ。

 

「隊長、正体不明飛行物体が海の方へ逃げていきました」

「...仕方ない、各騎駐屯地に戻るわ」

 

迎撃に出たアルメナらの部隊は駐屯地に帰還した。アルメナは戦士団長であるガルダに一連の流れを報告していくことになる。

 

 

 

 

 

 

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