ルーントルーパーズ〜国防軍漂流戦記〜   作:匿名

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小隊編成
小隊35人
•小銃手:29人
小銃、散弾銃を主に使用するが通信、衛生、車輌操縦も兼任する。
•機銃手:2人
分隊支援火器を主に使用。分隊支援火器の出番がない時は小銃手と同様に小銃を使用。
•重火器手:3人
重機関銃、対戦車ミサイル、対戦車ロケット、グレネードランチャー、軽迫、携帯地対空ミサイルを主に使用する。重火器の出番がない時は小銃手と同様に小銃を使用。
•狙撃手:1人
対人狙撃銃、対物狙撃銃、ショットガンを主に使用。出番がない時は小銃手と同様に小銃を使用。

こんな感じで小隊組んでます。


発砲1

宴が始まろうとしていたその時、それは起こった。

ズンと重く城が揺れるような音。

 

「何事」

少女とは思えないほど低い声で彼女は部下に尋ねる。

大臣達も顔を見合わせるばかりで誰も答えは持ち合わせてない。

城の衛兵が息を切らして玉座の間に駆け込んできた。

 

「ほ、報告!帝国軍の飛行部隊が多数王都へ襲来!現在守備隊の招集を行なっておりますが突然のことですぐに防衛体制が整っておらず...」

「馬鹿なっ!?早すぎる!」

 

宣戦布告を受けてまだ2日しか経ってない。

帝国軍とはいえすぐに軍を送ることなど不可能だ。最も近い港から出港し風に恵まれたとしても4日はかかる距離だ。

 

「この早さは空からだ!」

「まさか、アルゲンタビスだけの部隊で切り込んできたのか…防戦さえしっかりすれば勝機はあるはずだ」

今度は振動が起こった。

 

「いや、どうやらそうではなさそうじゃ。この音、ただごとであらず」

ハミエーアは玉座から降りるとテラスへ駆け出した。

 

「陛下!?危のうございます!」

後を追う側近達がテラスへ出た瞬間、その光景に言葉を失った。

 

「あれは…まさか!?」

カルダが空を舞い狂う影に恐怖し心臓を鷲掴みにされた。

 

「そんな…こんな小国を相手に竜騎士団を投入したと言うのか!?」

先程の衛兵とは別の衛兵が駆け込んで来た。

「報告!未確認でありますが緊急帰還した哨戒部隊から、こちらに向けて空飛ぶ船を40隻ほど確認したと言う報告が!」

「空飛ぶ船だと!?」

「到着までには時間がかかりますが、それも時間の問題かと..」

「なんと…」

 

久世達、国防軍兵士らもゾロゾロと訳がわからないままテラスへ出てきた。

そして空を見てショックを受ける。

 

そこには航空機でも、ましてやアルゲンタビスでもない別種の生物が飛び交じっていた。

黒や白の体表をした巨大な恐竜のような生き物。

 

「嘘だ...」

「俺らは夢を見ているのか...」

久世達は呆然とその生物の姿を見つめた。

それは神話に登場する“竜”だった。

架空の生物であるはずの竜が今こうして目の前を飛んでいる。

 

キシャアアアアアアアアア!

 

竜は城壁で応戦する弓兵達を見つけると急旋回して接近してきた。

その凶悪な顎を開いたかと思うと紅蓮の炎を吐き出した。

 

「そんな馬鹿な!?火を吐く生き物なんて聞いたことない...!?」

戦場慣れした大塚ですら驚愕した。

 

だが、確かに存在した。

焼け焦げた臭いが風に流されてテラスまでやってくる。その感覚は夢でありえない物だった。

生物が火炎を吐くと言う驚愕な光景に国防軍兵士達は戦慄する。

向こうでは城壁の一角が燃え上がり、焼かれた兵士たちが悲鳴を上げて転げ落ちていくのが見えた。

カルダが唸った。

 

「ファイアブレスっ!あれは黒竜か!?」

 

禍々しい黒い体表をした竜は何匹か城の上空を飛んでいる。

兵士の一団に接近すると火炎を吐き出し殺していく。

兵は弓を射かけるが竜の強固な鱗に弾き返されていく。

黒竜は弓兵の陣取る城壁へ襲いかかり、鋭いかぎ爪で人間を鎧ごと切り裂き、炎を吐いて逃げ惑う者達をまとめて火達磨にする。

 

「うう!?」

そのあまりの凄惨さに久世は思わず目を逸らしてしまう。

目の前で人が死んでいく。

 

(あんなにも、あっさり!?)

 

久世達若い国防軍兵士らはこの光景を見て、これが戦争だと言うことを実感した。

同時に、今この国ではとんでもない事態に陥っていることに理解する。

ハミエーア達は「帝国軍」と言っていた。この国は、その帝国軍から攻撃を受けているのだと想像するのは難くない。

 

自分達は戦場の真っ只中に取り残されているのだ。

久世は加藤と顔を見合わせて頷き合う。

久世は他の兵士達にも目配せした。

 

兵士たちはウェストバッグに収めていたプロテクターを膝に装着していき短機関銃や小銃に弾倉を装填していく。

「我々は艦隊に帰還します。この状況下、薄情と思われますが…」

加藤の声に大臣達はムッとした顔をする。

薄情だと思ったらしい。

 

だが、自分達は何もしてやれない。

国交を締結してない上に同盟国でもない。この事案は帝国政府からの指示がないと下手に動けない。その帝国政府との連絡が困難な状況だ。

 

ハミエーアは大臣達の非難めいた視線とは異なり扇子をパタパタとさせて涼しい顔をしている。

「なあに、元より異世界から来たと言う貴公らには関わりないこと。止めはせぬ」

 

「申し訳ない。どうかご無事で…」

久世達は玉座の間を出ると中庭へとひた走る。

その背中を見送りカルダはハミエーアに訪ねた。

 

「良いのですか?陛下」

クフフ、とハミエーアは微かに笑った。

 

「竜が空を舞っているこの有様で、無事でいられぬのは彼らの方。お手並み拝見とするわい」

 

 


久世達は大理石の廊下を全力疾走していた。

加藤が今にも死にそうな顔をしてボヤく。

 

「はひい!エアコン完備の艦艇暮らしには酷だよこれ...」

加藤は陸軍兵士である久世達のように戦闘を想定した陸軍夏季三等礼装を着込んでいるわけではなく、海軍の純白な参謀用夏季制服だった。持ち物もカメラやノートパソコンが入ったバッグだけである。

 

「陸軍にそんな快適なもんはありませんよ!死にたくなけりゃ走ってください!」

そう加藤に言い久世は銃を短機関銃を片手に走りながら無線に向かって叫ぶ。

 

「パイロットに、我々が戻り次第離陸できるようにスタンバイを頼むと、言ってくれ!それとLAVはギリギリまで展開してくれ!」

『りょ、了解!』

「火器の使用は正当防衛と防護対象の安全確保においてのみ限定!」

「久世少尉、久世少尉!ちょ、ちょいと待って…」

「1班、3班!止まれ!全周警戒!」

 

19名の兵士が銃を構えて臨戦態勢を取りつつ360度隙なく見張った。

加藤は緊迫した表情の久世が自分を急かそうとするのを手で遮った。

単に遅れているから呼び止めたのではない。

 

「久世少尉!急がないと…」

そこに大塚が口にするが加藤がそれ遮るように話す。

「去り際に黒い巨鳥が兵をこの城に降ろしているのが見えた。おそらく城内にも侵入しているから斬りかかられてもおかしくないから、迂闊に走り回らない方が良いと思うが」

加藤の判断に久世と大塚は、確かにと唸った。

 

「加藤中佐」

「ん?」

「万が一に備えましょう。護身用です、お持ちください」

 

久世は自分の腰から護身用に携行している93式8mm拳銃を取り出し加藤に差し出した。この拳銃は国防軍などの火器を扱う帝国の組織で採用されている上、参謀なら必ず扱い方を教育される。加藤も使えるはずだった。

 

「君達陸軍兵士のように銃を扱う機会は少ない。でもありがたく受け取るよ久世少尉」

加藤はそう久世から93式8mm拳銃と弾倉2個を受け取った。

加藤は慣れない手つきで弾倉を取り付けをスライド(遊底)を引き8mmNNB弾がチェンバー(薬室)に送り込まれる。

 

「久世少尉、廊下の曲がり角に近づいたら様子を見ながら行きましょう」

大塚からの提案に久世は賛成する。

「大塚軍曹の通りにそうしよう」

 

「きゃああああ!?」

 

どこかから悲鳴が響いた。

兵士達が思わず身を硬くする。

久世も93式短機関銃を下向け(ローレディ)に構えた。安全装置に指をかけ即応状態の姿勢だ。

 

「…女の子の悲鳴だな」

加藤の言葉に久世は汗をかき頷く。

どうする。どう判断すべきだ?

あの悲鳴の少女を救うべきか?

救うために、こちらが危険に晒された場合はどうする?

 

「久世少尉、どうします?今なら素通りできますが…」

「自分達はあくまでも加藤中佐の護衛であります…」

大家や他の伍長からもそう諭される。

 

他の兵士はそれを聞き複雑そうな顔になる。

悲鳴の主が襲われている所を素通りして行くのに自分達の良心が痛むからだ。

助けれるなら助けたい。だが自分達はあくまでも加藤を護衛することが任務。それに国交を結んだ国でも同盟国でもない自分達とは関係ない国民を助ける義理もない。

 

久世は酷く悩む。軍人としての非情な決断を下すか、それとも1人の人間としての決断を下すか。

 

そこに加藤が不意に彼の肩を叩く。

 

「久世少尉、悩むことはないよ。直接の指揮権はないけど部隊の責任者は僕だ」

久世は加藤を凝視する。

 

「君の判断、僕が責任を取る。自分が正しいと思った方を選択してくれ」

「久世少尉、俺たちは少尉について行きます」

「それに悲鳴の主を見捨てるのは自分の良心が痛みます」

「責任取るなら皆仲良く取りましょう」

 

加藤や大塚や部下からの声に肩が軽くなった気がした。

「加藤中佐、ありがとうございます。それと皆、ありがとう…」

「礼は生きて帰ってからにしよう」

「礼は久世少尉の奢りで」

久世は覚悟を決める。

 

「全隊、接敵前進、着剣」

「了っ!」

部下達はウェストポーチから銃剣を取り出し銃の先に銃剣を装着し銃を構えリジリと前進する。

久世と大塚は短機関銃のため銃剣は着けれない。

 

「悲鳴はあちこちから聞こえるね…」

「中は酷い有様のようです」

 

彼らのそばにある扉から人影が飛び出た。

久世達はおもわず銃口を向けそうになるが、すんでのところで止まった。

人影の正体が子供だったからだ。市街地戦訓練で動体視力を鍛えていて良かったと思った。

 

数は3人、恐怖のあまり顔面蒼白になってたのは痛々しかった。

3人とも幼いが久世はその中で年長らしい少女に見覚えがあった。先程の酒杯の世話をしてくれた少女だったからだ。

どうやら向こうもハッと気がついたようだ。

 

「あ、貴方がたは...!」

「君達、無事かい?」

 

久世は銃を下ろし3人に向けて微笑んだ。

優しげな笑みに彼女は安堵し脇に子供を寄せて涙ぐんだ。

2人とも彼女にしがみついた。

 

「みんな...みんな殺されちゃったんです...」

 

死んでしまったではなく殺されてしまった。その言葉に久世は息を呑む。

彼女らをここに残していく訳にはいかない。

 

「君達も一緒に行こう。チヌークなら場所に余裕あるから脱出も…」

そうして手を差し伸べようとした瞬間だった。

ドシュと言う鈍く不快な音が久世の耳に入った。

 

「え…?」

 

少女はグラリと身体のバランスを崩し床に倒れる。

その背中に禍々しい矢羽根を生やし。

 

「なっ!?」

加藤が驚きの声を上げた。

 

「1匹仕留めたな」

「相変わらず良い腕だな、ルイド」

 

低い男の声が廊下の向こうから聞こえた。

ガシャと甲冑を鳴らし、こちらへ向かってやってくる。

黒い人影…いや漆黒と表現すれば良いだろう。

 

「おねえちゃあん!?」

その2人に20人前後の漆黒の集団が死に神のように近づいてきた。

 

「止まれぇっ!」

ピタと警告通りに男達は止まった。

警告のせいで止まったのではなく、こちらを値踏みするために止まっただけのようだ。

共通して腰に長剣を帯びており、ある者は槍を、またある者は弓や斧を手にしている。

顔まで覆うヘルムを着けているせいで人間なのかどうか判別出来なかった。

 

黒騎士。

 

何者なのか知らない久世達でさえ、その単語が脳裏に過った。

久世は“死”を象徴したかのような彼らから子供達を守るべく声を上げる。

 

「その子達に近づくなっ!」

彼らは顔を見合わせるでもなく淡々と低い声で話し始めた。

 

「何だ、こやつら?」

「ふん、城の大道芸人か?」

「国によっては、芸と武を融合させたものもあると聞くが」

こちらとは最初から話す気がない。

 

「まあ、どちらでも良い」

「ああ、そうでもあるな。命令は…」

弓を手にしていた1人が腰の長剣を抜いた。他の者達も武器を構える。

 

「1人も生かして城の外へ出すな、だ」

カシャと甲冑を軋ませ子供達に近づく。

 

「お前らは非戦闘員に対して危害を加えようとしている!ジュネーブ諸条約違反だ!即刻中止せよ!」

久世は必死の警告を与えた。久世達は銃口を上げ黒い甲冑達に向けてピタリと照準を合わせ安全装置を解除した。

だが、彼らは怯むどころか笑い始める。

 

「ハハハ!この芸人共、錯乱しておるぞ!」

「滑稽な事よ」

「ガキ共、その連中が地獄まで楽しく連れていってくれるぞ!」

口汚い言葉が廊下に響く中、子供の幼い手を鮮血に沈んだ少女が優しく握った。

 

「少尉、奴らは我々の殺傷も仄めかすような言動を取りました。行使しても問題ないかと...」

大塚は国防軍交戦規定の条件に当てはまるとし久世に意見具申をする。

 

「交戦規定の条件ではそうだな。だがそれだけの言動じゃ判断が難しいが...」

「久世少尉、悩むことは無いよ。責任は僕にあるからね」

「それに奴らの目は完全に我々とあの子供達を殺る目をしています。殺らなければ先に殺られます少尉!」

 

加藤と大塚からの促しに久世は頷く。

そして久世は深く深呼吸をし命令する。

 

「全隊、射撃用意!」

 

戦いの火蓋が切られた。

 

 


子供達は小間使いとして城にやってきてずっと面倒を見てきてくれた姉同然の侍女から離れようとしない。

 

どうしてこんな理不尽な目に遭わなければいけないのか、どうして誰も助けてくれないのか。

 

誰かが危ない時は神様が勇者を遣わしてくれる。

 

その勇者は一体どこに?

 

子供達は向こうにいる男達を見上げた。

自分達に微笑んでくれたお兄ちゃんが声をあげる。

 

「全隊、射撃用意!」

 

「なんだあいつら、何で棍棒を肩に乗せてるんだ」

「錯乱してるからだ!ハハハ!」

「仕方ねぇ、早く楽にしてやろう」

そう言い黒い人影達は長剣を携えこちらに向かって来る。

 

「いやああああ!!」

恐怖のあまりに悲鳴を上げる。

 

「撃てぇぇっ!」

久世の号令を端に小銃と短機関銃の銃口から発射炎(マズルフラッシュ)が吹く。

 

久世と大塚が持つ93式短機関銃からはGEATO規格の8mmナンブ弾が、部下が持つ89式突撃小銃からはGEATO規格の6.8mm高速ライフル弾が長剣を持ちこちらに来る集団に向け吸い込まれていく。

ある者は8mm弾で蜂の巣にされ、またある者は6.8mm弾で頭部や内臓を破壊され倒れていく。

 

「うぎゃっ!?」

「ぎゃあぁぁ!」

 

キンッキンッキンッ!...チリンチリンチリンチリンチリンチリン...

 

排出された空薬莢が大理石の床に転がり子気味良い音が連続で奏でていた。

彼らは悲鳴を上げながら自分の身に何が起きたのか理解しないまま人生の幕を閉じた。

 

「撃ち方やめ!撃ち方やめ!」

久世の号令に撃つのを辞めた。

5秒ほどで敵対分子の殲滅が完了した。

 

「お前ら、初めて人を撃った感想はどうだ?」

「こ、これが戦争...」

「俺、初めて人撃った」

 

大塚や部下は初めて人を撃った感想を言いながら空になった弾倉を外し新しい予備の弾倉を取り付けていく。

「なーに、最初はそんなもんだ。直に慣れていく」

 

当の久世もそうだった。人を始めて撃ったこと、そして殺害してしまったこと。もしあの時殺らなければ自分たちと子供が殺られて居ただろう。

呼吸は短く荒く短機関銃を持つ手は震えていた。

 

「ハ、ハハハハ」

久世は乾いた笑いを浮かべてた。実戦を経験したことでアドレナリンが分泌し、ハイな状態になっていた。

 

そんな久世を子供が眺めていた。

久世はそれに気づき、慌てて表情を消した。

 

だが、重大なことに気づいた。

少女にまだ息があったことだ。

 

「その女の子の容態は!?」

「矢は幸い背骨を外れています。ですが出血が酷く矢を抜いたら大量出血を起こしそうです!衛生資格のある西本伍長の応急処置なら設備が整っている艦隊までなら時間が持つかと…」

「分かった、応急担架を作ってヘリまで運ぶぞ!」

「わかりました、救急キットで何とか手当だけはしておきます!」

 

久世は膝を折り子供達の目線になってから、できるだけ優しい口調で言った。

「君達も、このお姉ちゃんと一緒に来るんだ。大丈夫だよ」

彼はそう言いながらも、こんな戦場のど真ん中で何が大丈夫なんだろうかと、思っていた。

 

「…お兄ちゃん達が守るから!だから大丈夫だ!」

子供達は、キョトンと泣き腫らした目を久世に向ける。

子供達は無垢な表情で尋ねていた。

 

「お兄ちゃん達、勇者様なの?」

「え?」

「勇者様なんでしょ?」

久世は、この子供達が言ってることが分からなかったが、とりあえず答えることにした。

 

「...残念だけど、違うよ」

「じゃあ、何なの?」

「なんなのー?」

 

苦笑し、2人の頭を撫でながら呟く。

 

「ただの、新米少尉さ…」

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