ルーントルーパーズ〜国防軍漂流戦記〜 作:匿名
カルダは部下達と共に城へ侵入した帝国軍を掃討しながら中庭へ向かっているところだった。彼女の部下と城の衛兵と近衛の半分づつの混成部隊だ。練度にばらつきがあり屈強な継承帝国の黒騎士を相手にしながら中庭にたどり着いたが部下の3割近くが討ち取られた。
こちらが数を圧倒している状態の中での戦いでの損耗率だった。
屋外での防戦で、あの黒竜と氷結竜を相手にすることになる。伝令の報告では城壁の守備隊は壊滅し不利な状況だ。
こちらには竜を倒せるだけの武器も、戦士も、魔法もない。あれだけの数の竜騎士を撃退するのは不可能だ。
中庭に辿り着き、光景を目の当たりにした。
そこにはクゼと名乗る、異世界からやってきたと言う若造の指揮官が居た。
クゼは何か太い筒のような物を迫り来る黒竜に向けている。
彼の部下と思わしき物は黒い棒を黒竜に向けていたり、クゼを見守っているかのような行動をとっていた。
黒竜の咆哮を前に頭がおかしくなったのだろう。
次の瞬間、黒竜が凄まじい炎と共に爆散した。
「あ…な…な…」
カルダは目の前で起きたことには、すぐに理解できなかった。
一撃、そう一撃で竜を倒した。
クゼと言う若造が、だ。
あの肩に担いだ太い筒のような物から閃光が走ったかと思うと黒竜が爆発していた。
爆裂魔法か?そうに違いない。
奇妙な服装に、変な杖、そして見たこともない爆裂魔法。
異世界からやってきた魔法戦士...。
「ルーントルーパーズ...!」
カルダは震える唇で彼らをそう読んだ。
「制圧したぞー!」
「中村兵長ぉー!3人ほど連れてヘリパイロットの救助にあたってくれ!」
慌ただしく彼らが叫んでいるのも彼女に耳には入らなかった。
ハミエーア陛下が彼らを固執していることに確信した。
「この戦い...どうなるか分からんぞ」
カルダは小さく呟く。
異世界の戦場で小さな異変が起ころうとしていた。
「これで3騎目!」
フィルボルグ継承帝国の侵攻で哨戒任務から臨時帰還したアルメナらの部隊は帝国軍を迎え撃っているところだ。
アルゲンタビスでは単騎で黒竜や氷結竜には太刀打ちきないと判断したアナメルは無防備かつ竜の護衛が着いていない兵員輸送に使役している巨大種のアルゲンタビスを兵士ごと攻撃しているところだ。アルメナらは仲間と連携しながら着実に落としていく。
だが、彼女らの部隊も無事ではなかった。既に仲間が1人討ち取られてしまい3騎から2騎に減らされていた。
自分らの部隊もやられるのも時間の問題かと思っていた。
彼女は王城の中庭の方に視線を向けると中庭から何かが飛んでいくところが見えた。
確か、人魚の海から来た「ダイニッポン帝国」と名乗る連中が乗って来た鉄の虫だと言ってたな。
この戦場から離脱しようとしてるとようだ。だが、このセイロードの空の大部分は帝国軍の竜で支配されている。
帝国軍は味方以外のセイロードの空を飛ぶ物は全て落としにかかる。
そんな空を奴らは飛んでるのだ。
そうこう言っているウチに離脱する奴らに帝国軍の黒竜3騎が接近してきてる。それに気づいたのか速度を上げているが間に合わない様子だった。
ああ、これで奴らも終わりだな。
我らもじきにやられる。その時は天国で会おうと心の中で思った。
その時、前を飛行していた1騎の鉄の虫が竜の方向へ反転した。
どうやら、仲間を逃すために囮になったのだろうが1対3ではどうにもならない。
突然、囮になった鉄の虫から煙が出た。爆発したのか?
一瞬だが光る物体が竜に向けて飛んでいくのを捉えた。
刹那、ファイアブレスを吐こうとした黒竜が騎手ごと爆散し肉塊となって下に落下していく。
ありえない光景に見ていたアナメルは驚愕した顔で凝視していた。
「へ…?黒竜が爆発した!?」
「空の王者を...それも帝国の竜を...」
そうこうしている間に2騎目の黒竜も1騎目と同様に爆散して肉塊となる。
「まさか、あの鉄の虫がやったって言うの!?」
「光の矢...」
そして生き残った黒竜が仲間の仇と言わんばかりに加速しファイアブレスを吐いた。同時に鉄の虫からも光の矢と思わしき物の攻撃を行うが光の矢がファイアブレスの前て爆発したらしい。
ファイアブレスがそのまま鉄の虫へ直進し、今度こそもうダメかと思った。
鉄の虫が側面をファイアブレスの方向に向けた。ダメだ、同じ黒竜でもファイアブレスには耐えれないのにそんなことをするのか。いよいよ頭でもおかしくなったのか。
そしてファイアブレスは鉄の虫の側面に直撃した。
「どうなった...!?」
彼女達の予想とは反対の結果となった。
鉄の虫は堂々しており無事だった。側面が焦げたぐらいでそれ以外は何ともなかった。
「ファイアブレスに耐えた...!?」
鉄の虫もお返しと言わんばかりに生き残った黒竜に光の矢で攻撃し爆散した。
「1騎で3騎の黒竜を...」
「しかも損害無しで...」
そこに居たのは空の王者である竜を倒した鉄の虫が威風堂々と空中で停止していた。そして仲間の鉄の虫の元へ戻っていく。
「これが...奴らの戦いなの...」
彼女は戻って行く鉄の虫の背を見送りながら呟いた。
空の戦場でも小さな異変が起こったのであった。