ルーントルーパーズ〜国防軍漂流戦記〜 作:匿名
とりあえず投稿して修正箇所あったら修正します
「総員抜剣!」
「陣を整えよ!」リヒャルダに眼前で城を包囲した軍団が攻勢陣形を整えていた。
精鋭の帝国騎士団、これに加えて上空には2個竜騎士団が控えている。1個竜騎士団で1万の精兵に匹敵すると言われている。
我が方の戦力は2万を軽く超えることになる。
常識的に考えて負ける要素がはどこにも見当たらない。
「攻勢兵力の半数以上の損害が出ています!」
「空中強襲部隊も上陸に苦戦しております!」
「報告!前線指揮官の騎士隊長6名、騎士団長2名、魔法騎士隊長1名が戦死!軍旗も喪失!部隊は潰乱状態です!」
部下から上がってくる報告にリヒャルダの常識が覆された。最後の仕上げで思わぬ抵抗と甚大な損害にはを食い縛る。
「副官に指揮を引き継がせて攻撃を続行させよ」
「そ、それが…指揮権と軍旗を引き継いだ将校が次々と見えない矢で倒れたとのことで」
「見えない矢だとっ…?」
「魔法騎士隊長は魔法障壁を容易く貫かれたと」
城の攻略が順調だと言う最初の報告に安堵していた自分が情けなかった。
あと少しで本丸というところで進撃の足が止まったのだ。
彼女の耳には乾いた音が連続して聞こえている。
城内からは血だらけになった兵士達が次々と搬送されてきた。
腹から大量出血を起こしてたり四肢が欠損してたりしている。それが尋常じゃないほどの人数である。従軍神官の治癒魔法も間に合わないほどだった。
彼らは見えない矢にやられたと口にしている。見たこともない奇妙な服装を着た集団に接近しようとした者は火炎系の魔法で木っ端微塵にされた。
「竜騎士団が先のようになってはと考えたが…」
リヒャルダは慎重な将である。
竜はその巨大ゆえ、あの黒竜を倒した魔法の餌食になると考え前線への竜騎士団の投入を控えた。
謎の敵の実態を把握することができなかったのも結果として判断の誤りを招いた。
「奴らは一体何者なのだ。黒竜を一撃で倒した魔法、見えない矢、この世のものとは思えぬ空飛ぶ虫、光る矢」
彼女の問いは、その場にいる誰にも答えることが出来なかった。
「将軍、南伐混成軍空中艦隊と2個竜騎士団が到着しました」
そこにリヒャルダ達に一筋の光が差した。飛行艦55隻、地上戦力7000人、竜騎士団2個の戦力が到着したのだ。
これで戦況は好転するだろう。
「分かった。打ち合わせ通りに兵士を揚陸せよ。戦列艦は7隻引き連れて城に攻撃を仕掛けよ」
「御意」
「前線部隊に一時撤退の命を出せ」
「御意」
「隊長!敵が撤退していきます!」
部下からの報告を聞き久世は顔を少し出しながら様子をうかがう。
先程まで狂気に満ち溢れ攻勢を仕掛けてた敵が撤退していく。
「総員、攻撃やめっ!警戒は怠るな!」
久世からの命令を受け小隊は攻撃を停止する。
兵士らは戦闘が終わり侵攻を食い止めたことに安堵の表情を浮かべる。
中庭は敵の死体やで埋め尽くされ鮮血で染められていた。
「大塚、敵の行動をみてどうおもった?」
「そうですね。敵の戦力が壊滅的な損害を受けたことで撤退をしたか、あるいは...」
「あるいは?」
「...ロングレンジ攻撃もしくは戦力再編のための撤退です」
大塚からの意見に久世はあることを思い出す。
「そういえば、敵に飛行艦船と大砲らしき物を確認したと言ってたな」
「となれば後者ですかね」
「その線で考えるべきだな。よし、厳重警戒だけは怠らないようにしよう。何か異変があれば報告しろ」
「了解」
「各自弾薬の残弾状況は?」
「小銃は弾倉が各兵にあと1個ずつ、グレネードランチャーは弾薬があと8発、90mm無反動砲は対戦車榴弾があと1発、対人狙撃銃は弾倉があと5個、対物狙撃銃は弾倉があと2個、拳銃と短機関銃は変わらず、といったところです」
「ギリギリだったな」
八重樫からの報告に久世は青冷めた表情で答える。
「加藤中佐、艦隊からの通信は?」
「ああ、飛行部隊と分遣隊が向かってるそうな。あと少しの辛抱だよ」
「そうですか。あともう少s...」
「少尉!上空に飛行艦船を確認!数は7!」
部下からの報告に久世の言葉は遮られた。
彼はバリケードから顔を出し空を見上げる。そこには大航海時代の帆船を思わせるような飛行艦船が側面を見せながら浮遊していた。距離にして1.5kmだろう。
「総員、戦闘配置!」
久世からの命令で小隊は戦闘体制に移行する。
「えっ、あれをやるっての?」
「無茶だ、できるわけがない」
「旅団か砲兵師団の高射部隊がないと無理だ」
部下からは不満の声が上がる。
久世も無意味なのは分かっていた。だが自分達は何としてでもここを守らなければならない。それが命令だ。
「クゼ殿…」
そこにカルダが話かけてきた。
みると不安そうな顔をしていた。
「どうしました?」
「あれをやるのか?」
「…ええ、例え無意味でもやらなければなりません」
カルダからの問いに久世は苦笑しながら答える。
「すまない...」
「カルダさん、市民の方に地面に伏せるように指示してください」
「なぜだ?」
「敵の攻撃から身を守るためです」
「分かった」
カルダは団員や衛兵に情報を共有し回廊に居る一般市民に地面に伏せるように指示していく。
ドドドドドドドドドドドッ!!!
敵の飛行艦船から多量の煙と爆発が連続し辺りに響いた。
「ふせろおぉぉぉぉ!!」
久世の必死な命令に兵士は地面に伏せ、その気迫に押されたのかカルダ達マリースア人も地面に伏せた。
その直後、無数の黒い砲丸が中庭に着弾した。
着弾した箇所は土煙を上げ、敵の死体が舞い上がる。運が悪いことに久世達が籠城する中庭に幾つか跳弾した砲丸が襲いかかる。バリケードになっていた家具や調度品を粉砕し破片を辺りに撒き散らした。
砲撃が収まり久世は部下の安否を確認する。
「全員、無事か!?」
「1班、負傷者2人!」
「2班、全員無事です!」
「3班、負傷者1人!」
「4班、全員無事!LAV被弾!重機関銃破損!」
『狙撃班、全員無事っス!』
小隊は無事ではすまなかったようだ。幸いなことに死者は出なかったものの破片が体に突き刺さったり重傷を負っている。
軽装甲機動車も被弾しフロント部分が凹んだりフロントガラスが割れ、重機関銃も銃身がぽっきりと折れ曲がり破壊されていた。
「うぅ...」
「血が...」
「しっかりしろ!西本!処置を頼む!」
砲の装填が終わった飛行艦船から先に砲撃してきた。
最初の砲撃より精密性が向上していた。
「回廊の方にも被害が発生!」
一般市民にも被害が発生したようだ。
「ひいぃぃぃぃぃ!!」
「腕が...私の腕が…!!」
「母さんの顔が…」
「いやあぁぁぁぁぁぁ!!」
回廊の方は悲惨だった。伏せるタイミングが悪かったのか多数の死傷者を出してしまう。
砲丸が腕に直撃し腕が引きちぎれた若い女、頭部に直撃し胴体からさよならした母親、母親が死ぬ所を目の当たりにした男の子。阿鼻叫喚の惨状だった。
「みんな...すまない、本当にすまない...」
久世は部下や一般市民を守れなかったことに自責の念に駆られる。
「ここまでか...」
久世は自分達の運命はここまでなのかと悟った。
『騎兵隊の到着だあぁぁ!!』
加藤が張り付いている無線機から女性の活気が溢れる声が聞こえたかと思うと、次の瞬間浮遊していた6隻の飛行艦船が爆発していた。
『こちらセンリガン2、敵飛行艦隊を探知。2個艦隊に別れてる模様。1個は浜辺で揚陸作業をしている艦隊、もう1個は小隊が篭城している城の空中で浮遊している艦隊だ。ティーガー隊、マイヒメ隊は割り当てられた目標に対し対艦攻撃を開始せよ。各艦船への対艦ミサイルの使用は2発とする』
高空で敵艦隊を探知していたセンリガン2こと64式早期警戒機は洋上を低空で飛行していた20機の流星に対して攻撃に関する指示を出す。
『こちら、マイヒメ8。浮遊している奴らは俺がやる!』
『マイヒメ9、右に同じく』
『マイヒメ10、私も』
『了解した。マイヒメ8・9・10は浮遊している艦隊に攻撃せよ』
『ヒャッホーウ!俺はやるぜ桐生ちゃん!騎兵隊、俺に続けぇ!』
空中に浮遊する敵飛行艦隊を攻撃するため3機の流星が高度を上げ攻撃位置に着く。
『グングニルⅡ、4機発射。全機、攻撃開始せよ』
そして計20機の流星に搭載しているグングニルⅡこと99式空対艦ミサイルB型の
各機4発づつの計80発のグングニルが中間航程までは慣性誘導装置の誘導の元、目標までマッハ2の飛翔速度で指定された進路を突き進んだ。途中で2発のグングニルⅡが動作不良を起こし海面に堕ち不発になるも問題なく突き進んでいる。そして終末航程に達した78発のグングニルⅡはアクティブ/パッシブ・レーダー・ホーミングに切り替わりマッハ4にまで加速。目標となっている敵性飛行艦船39隻の左側面に2発づつ突入した。合計弾頭重量300kgに達する榴弾が艦内部で炸裂し爆風が上へ下へと流れ込み、人や物を巻き込みながら飛行艦船は大爆発を起こし残骸を辺りに撒き散らしている。相手が木造船だったこともあり想像以上の破壊力となった。
『こちらセンリガン2、グングニルⅡ2発が動作不良になるも全基、目標に着弾。39隻の撃破を確認』
センリガン2からの戦況報告を聞き両部隊のパイロット達は歓声を上げる。
『その調子で残存している敵飛行艦船に攻撃せよ』
攻撃部隊は残存している敵飛行艦船に対して残りのグングニルⅡ40発が発射された。
今度は動作不良なしで全てのグングニルが敵飛行艦船に飛行し着弾して爆散していく。中には4発も食らった飛行艦船もいれば上陸した敵兵の集団にも着弾するものもあった。
『こちらセンリガン2、敵飛行艦隊の全滅を確認。ティーガー隊、マイヒメ隊は桜龍に帰投せよ』
『マイヒメリーダー、ウィルコ』
『ティーガーリーダー、ウィルコ』
両部隊はマリースアの空を我が物顔で旋回しながら飛行していく。
『こちらセンリガン1、敵航空戦力を発見した。割り当てられた目標に対しヤタガラス隊、セイレーン隊は攻撃を開始せよ』
時を同じくして流星攻撃部隊とは反対方向から侵攻する制空部隊であるトムキャット20機がセンリガン1からの攻撃指示が届く。
『俺達がやるのは空飛ぶトカゲと大きい鳥か』
『空母航空団に入って生物に空対空ミサイルをぶっ放すとは思わなかったな』
『とっとと攻撃しろ。ヤタガラス1、FOX2!』
『ヤタガラス2、FOX2!』
計20機のトムキャットの90式中距離空対空ミサイル“アムラーム”の固体燃料ロケットに点火し計103発の中距離空対空ミサイルが発射された。53発は高空を飛行している敵の竜に、もう50発は上陸した兵を載せて空中輸送をしている巨鳥に対してだ。慣性誘導の後にアクティブ・レーダー・ホーミングに切り替わる。マッハ5の速さで飛翔するアムラームをミサイルや戦闘機より鈍足で対抗手段を持っていない竜や巨鳥では避けることが出来ずに着弾する。竜や巨鳥は肉塊や鮮血の雨となり地上に降り注ぎ自分達の身に一体何が起きたのか知る由もなくこの世を去った。
『こちら、センリガン1。敵航空戦力の撃破を確認した。残りの航空戦力は伊吹に任せる。全機、帰投せよ』
『ヤタガラスリーダー、ウィルコ』
『セイレーンリーダー、ウィルコ』
『あっけなかったな...』
『ああ、敵とは言え同情するぜ』
両部隊は流星攻撃部隊とすれ違うように飛行していく。
「航空隊だ!桜龍の航空隊が来たんだ!」
桜龍航空隊が来たことで小隊兵士らは喜びの声をあげる。喜びのハグをしたり銃を空に向け上げていた。
彼らの目に写ってるのは対艦ミサイルや空対空ミサイルに為す術もなく墜されていく敵。悠々と飛行する流星とトムキャットだった。
「あれが...鉄の竜の力だと言うのか」
その光景を目の当たりにしていたカルダは久世達の軍の力に絶句していた。無数にいた継承帝国の竜や巨鳥を一瞬の内に殲滅したことに、彼女の脳は追いついて行けなかった。
それと同時に久世達の軍の力に恐怖を覚えていた。あれほどの力があればマリースアや継承帝国どころか、この世界を破滅に導くことを。
「こ、これなら勝てる...!マリースアは救われた!」
それでも、彼女はマリースアが救われたことに喜びの声を上げていた。