ルーントルーパーズ〜国防軍漂流戦記〜 作:匿名
同じコンセプトの作品結構ありそうだから飽きられそう(登場する国家は原作よりバリバリ強化するけど)
今まで投稿した話を改行したり文章を直したりせんとな。
中央広場に面したところに立地している大衆食堂『海狼の毛皮亭』。
1階は食堂兼酒場。日中は食堂、夜は酒場になる。2階は旅人向けの安宿。3階は食堂主の家族の住まいだ。
店の看板娘であるレティアが開店の準備を始めてるところだ。
金髪ポニテールに動きやすいエプロン姿が彼女の快活な性格を表している。
テーブルを拭き終え、厨房で竈門の火を起こし、スープなどの支度にかかった。
1人でこれらをこなすのは初めてだ。
お盆にはなけなしの貯金で買ってきたパンとできたばかりのスープが載せられ3階の住まいへ上がった。
「父さん、具合はどう?」
部屋に入り全身に包帯を巻いた彼女の父がベッドで横になっていた。
「ああ、大分良い。そろそろ立てそうだ」
筋骨隆々、厨房に立ってなければ戦士にしか見えない男だった。常連客からは母親似で良かったとよく言われている。
そんな父も“流星の目”には無力だった。戦火から逃れようと教会に逃げ込んだが門は固く閉ざされ中に入れなかった。
逃げ回っている時に隕石の欠片が降りレティアを庇った父は大怪我を負った。
「良かったぁ!きっと神のご加護だわ」
父の言葉に安堵の笑みを浮かべる。母を亡くした彼女にとって残された肉親は父だけだった。
「はい!朝御飯だよ」
「すまんな」
「あの気味悪い連中に何かされちゃってたら、どうなっちゃうのか心配だったんだ」
“流星の目”の攻撃が終わった後“治癒魔法”を求めて開放された教会に駆け込んだが、同じような負傷者で溢れかえっており父の怪我を診てもらうことができなかった。
途方に暮れていると緑色の箱のような奇妙な荷車が数台やってきた。
白地に赤い十字の塗装が施されていた。降りてきたのは緑色や茶色の斑模様の服をきた連中が出てきた。
『要救助者確認!トリアージレベル赤!緊急手術を要します!』
『駐屯地跡野戦病院には間に合わない!宿営地にも小規模な野戦病院が展開してる筈だ。そこで緊急手術を実施する!』
あの時の事を思い出した。わけの分からない事を叫んでいたのを覚えている。
こうして今、父は命を繋いでいる。
彼女は、あんな気味の悪い連中が父を治癒しここまで回復している事に信じられなかった。
「なあ、レティア」
「なあに?」
「父さんが、食堂開く前に軍にいたことは知ってるな?」
「うん、母さんもそこで出会ったんだよね?」
「ああ、母さんは怪我人を看病する仕事をしていたんだ。でもな、これだけの怪我をして助かるなんて事はなかった」
「な、何よ父さん!!死んだ方が良かったわけ!?」
「そうじゃない。この左足にしてもおかしいんだ。あれだけズタズタになっていたのに、しっかりと傷口が塞がって化膿もせずに治りかけている。切断しても助かるかどうかの傷だった」
彼は過去の軍での経験で、負傷して命を落とす確率を肌身で知っていたからだ。
「だから!神様のご加護なのよ!きっと教会で私を追い払った代わりに、父さんの命を救ってくださったんだわ!」
「…そうだな、そうかもしれん」
「あんな緑色の変な服を着た外国人達からも守ってくださったのよ?治ったら礼拝に行ってお布施もしなくちゃ」
「う、うむ…」
腑に落ちない何かを感じながらも父は頷いた。
陸軍仕様の60式高機動装輪汎用車8型が徐行しながら走っていた。
交差点に信号機がない、標識もない、車道と歩道の区別がない、当たり前のように車輌の前を人が横切る、まともにアクセルを踏めないからだ。
ノロノロとすぐに止まれる速度で走らせて何かあれば停止していた。
「車の意味、ないっすね」
「上に徒歩機動で提案してみろ。突き返されるのがオチだ」
「徒歩だったら内地軍を巻けなかったでしょうし仕方ないですね」
東は備品のデジカメで街の様子を撮影していた。
「桜京市内を走行してる感じですね…」
「まあ、あそこは一部を除いて大正時代で時間が止まってるんだがな」
中世地中海の街並みに無骨なOD色の軍用車と言う何とも光景は異様だ。
「やっぱり通りに人が少ないです」
「おっと──前はもっと多かったんですか?」
「はい。ここからは中央広場に近いですし、市が定期的に開催されてるはずなんです。でも、今は行商人も少なくて...」
「まあ戦争の後ですし、仕方ないですね」
この辺りは、隕石の欠片が直撃し大きな被害を受けたようで人影が多いとは言えない。
「その中央広場に行けば良いんですね」
「そうですね、中央広場を基点に街の東西南北を回るとわかりやすいです。初めてこの街に来た時は、そうやって覚えました。そうですわ!とても良いお店を知ってるんですよ。そこで食事はどうでしょうか?」
「良いですね。そこに行きましょう」
「あれ、良いんすっか?俺たち量はいつもより少なかったとは言えレーション食べましたけど」
住民への給食活動を中止したが、それとは別に国防軍用の食糧であるレーションが常備してある。量は普段より少ないが、あと1週間は保つ。
「この国の食文化を調査する良い機会だ。それに腹が膨れてんなら皆で分ける手もあるし」
「まぁ、それもそうっすね」
リュミの丁寧な説明は分かりやすく、多くの人々に神の教えを説く聖職者だけあって説明するのが上手い。
運転を再開した久世は気になる物が目に入った。
「時々、武装した集団がいますが、あれは内地軍の増援ですか?」
それを聞き市之瀬達は身構える。検問の件があってから内地軍の追跡にを懸念していたからだ。
しかしリュミはギョッとした様子で久世の方を見る。
「とんでもありません!彼らはハゲタカです」
「「ハゲタカ?」」
「あれは傭兵達です。戦争の臭いを嗅ぎつけて、この街へやってきたのでしょう」
数にして20人、1個小隊ほどのグループが陽が昇って時間は経ってないが、酒を飲みながら我が物顔で歩いていた。
下品な笑い声を上げ、道歩く一般市民に威圧感を与えるような事をしていた。
久世達は傭兵と聞いて元いた世界に存在していた、傭兵に近い民間軍事会社やバチカンのスイス衛兵を想像していたが、彼らが知っているそれとは印象が違っていた。
民間軍事会社やスイス衛兵、内地軍のような統一された服装や武器や規律とは反対で、雑多な服装や武器を携行し印象はまともな輩ではない事はわかる。
民間軍事会社でも服装や武器や規律で多少な差異がある会社は知っているが、そっちの方がまだマシなレベルと思えるほどだ。
リュミのような純真ない少女からもハゲタカで形容されるからよほど嫌われているのだろう。
「もしかして、マリースア軍に加わる予定だったのに当てが外れて気が立っているとか?」
「いいえ。違いますわ、クゼ様」
リュミは傭兵達に軽蔑な眼差しを向ける。
「彼らは帝国軍に加わるつもりでやってきたんです」
「なるほどねぇ」
「うしっ!これでいいわ」
レティアは戦争で営業を中止していた『海狼の毛皮亭』の再開のために1人で支度を整えた。
早く再開して街の元の姿を皆に思い出して欲しかったからだ。それに父の怪我が快方に向かい精神的に楽になっている。
食糧の供給はまだ十分ではなく、昼食時だけの営業しか出来なかったが戦後の一歩を踏み出したかった。
軒先に『営業中』の看板を吊り下げる。
「はぁーい!いらっしゃい!いらっしゃい!マリースア1美味しい食堂が再開したよぉ!」
まだ人通りはまばらで戦争前の活気には及ばなかった。
「さてと!」
店内に戻り埃まみれになった皿を拭き始めた。
今の状況で店が満員になることはないから大丈夫なはず。
──ブロロロロ・・・キッ!
店の外から耳にしたことがない奇妙な音が響いた。
旅の芸人が、鳥の鳴き声をマネしてるのかと思ったが、そんな事をする理由がわからない。
(一体何の音かしら?)
「こんなとこに停めて、違反切符切られないんすかね?」
「駐車禁止の標識がないんだから、良いんじゃないか?」
「大丈夫ですよ。このあたりはよく馬車が止まってますし」
「武器は最低限携行しときましょう」
「必要機材、持ちました!」
男2人と女2人と少女の声。
少女の声には聞き覚えがある。
(この声はもしかして!?)
「ごめんください、お店やってますか?」
「リュミ司祭様!」
歓喜の声と共にレティアは飛び上がった。
「レティアさん!良かった、ご無事でしたのね」
「はいっ!本当良かったわ!司祭様が今日1番のお客様だなんて」
「そんな、それ私はまだ司祭見習いですよ?」
「そんなご謙遜を!どうぞお座りなってください。どのテーブルでもよろしいので」
レティアは嬉しくて仕方なかった。
リュミは以前からこの食堂を利用してくれている常連だ。
気取らずに下々の人に対しても教えを説き、相談にも乗ってくれる彼女は敬虔な信徒であるレティアにとっては聖女そのものだ。
「リュミちゃん、その方はお知り合いで?」
「え?」
興奮しているレティアの耳に男の声が入り、声の主を見た彼女は息を呑んだ。
そこには緑色を下地に小汚い茶色や黒の斑点模様の服を着た、教会前の公園に居座る邪教徒だった。
「司祭様!お下がりになって!」
「な、何しに来たのよ!この邪教徒ども!」
「じゃ、邪教徒?」
レティアの剣幕に、4人の男女がギョッとして顔を見合わせる。
「ち、違うんですレティアさん!この方達は私の恩人で...」
レティアの頭の中では、恐ろしい想像が浮かんでいた。
リュミ司祭は人がよろしいお方だ。この邪教徒共にも慈悲や説法を、と近づいてしまったのだ。
自分の父のように恐ろしい目に遭わされているんじゃ...
「司祭様!ダメです!こんな奴らの口車に乗ってはいけません!もしや、司祭様に洗脳魔術でもかけたのでは!?」
勝手にヒートアップするレティア、久世達は何か見てはいけないものを見ている気分になる。
「ち、違うんですよぅ!」