ルーントルーパーズ〜国防軍漂流戦記〜 作:匿名
「放てっ!」
レフィティスの号令を端に18台のバリスタと10台のカタパルトから巨大な矢と岩を投射した。
矢に付加された貫通魔法は石作りのゴーレムに致命傷を与えることができる。
『ヴン!』
ゴーレムは攻撃を受け止めるようと胴体を突きだし矢と岩を受け止めた。
「矢を受け止めただと!?」
矢を受け止めたゴーレムは矢尻に滞留している貫通魔法の魔力を吸収しはじめた。
同時に受け止めた岩と石畳を取り込みゴーレムは35mにまで巨大化した。
(しまった!あのゴーレムは今でも希少なエンシェントゴーレムだ!?)
古代文明の遺跡でしか見つからず、現在の技術では再現不可能な高性能ゴーレム。
防御力、攻撃力、判断力、魔法耐性に優れた怪物だ。
だが、魔力を吸収し巨大化する物は聞いたこととがない。
おそらく、新種のゴーレムだ。
「つ、次の矢をつがえるのだ!」
レフィティスは命じるが、次の斉射には間に合わない。
「た、助けてくれぇ!」
ゴーレムはその巨体でバリスタを蹴散らし、蹂躙し、両手にバリスタを持ちぶつけ木片が散る。
一般市民や兵士達が逃げ惑いパニック状態に陥る。
持ち上げたバリスタをレフィティスに向けて投げつける。
「クソッ!?」
レフィティスは手綱を引いて避けた。
だが、運悪くバリスタが間近に叩きつけられ、その衝撃で背中からふるい落とされる。
「お、おのれぇ…!!」
レフィティスは、地獄の底から湧いてくる怨念を込めゴーレムを睨む。
「れ、レフィティス様が落鳥されたぞ!!」
「いやぁー!神様ぁー!」
総大将が無様な姿を晒すのは部隊の無力化を意味する。
蜘蛛の子を散らすように兵士も神官も市民も逃げていく。
「何だよ、“我が軍が失敗する訳が無い。お前ら蛮族に出る幕はないと思え”と言っておきながら、結局失敗してるじゃねぇかよ」
双眼鏡で様子を見守っていた阿久津が呆れながらボヤく。
『見事にフラグ回収しやがって』
『は、腹痛てぇ…!』
『やりますか?やりますねぇ?』
阿久津の部下である他の車長が無線越しに内地軍に対して呆れを越して関心していたり嘲笑っていたりウズウズしていた。
「こちら第4小隊、内地軍が迎撃を失敗した模様。指示を乞う。オクレ」
『こちら司令部、了解した迎撃を開始せよ。なお一般人に対して被害を出すな。オクレ』
「こちら第4小隊、了解した」
司令部から海兵隊第4装輪戦車小隊に対して迎撃許可が降りた。
「全車、司令部から迎撃許可が降りた。あのロボット擬きを倒すぞ」
『こちら2号車、待ってました!』
『こちら3号車、了解!』
『こちら4号車、了解した!』
阿久津からの迎撃許可が降り、車長含め車内…いや小隊内は歓喜の声で盛り上がった。
「歩兵部隊、援護を頼む」
『歩兵部隊了解した』
「小隊長、一般市民の完全退避を確認しました。この場は我々の狩場です」
「分かった。久世少尉、これより迎撃を開始する。安全圏に退避次第迎撃に出る!」
『こちら、久世。りょ、了解しました!』
──阿久津は車内に備え付けれらたスイッチを押した。
後部に取り付けられたスピーカーからアコーディオンとカンテレなど楽器の軽快なメロディーが流れ始めた。
それはフィンランド民謡のSäkkijärven polkkaのアレンジ曲だった。
第二次世界大戦時のフィンランドと旧ソビエト連邦間で起きた“継続戦争”で旧ソ連に占領された都市サッキヤルヴィに対して哀愁と慕情を込めて曲にした物。
それを現代風にアレンジした物だ。
キュイイイイイイイイン!!
80式装輪戦車のFHT1500ターボシャフトエンジンがガスタービンエンジン特有の甲高いエンジン音を響かせた。
富嶽重工業が設計・開発した大出力の車載用ガスタービンエンジン。
元は航空機用エンジンだったが車載用に改造した物だ。
「障害、クリア!偵察隊、安全圏に退避を確認!」
「全車前進!」
阿久津の号令で4両の80式装輪戦車が前進を開始した。
「2号車、4号車はその場で停止。目標足元。弾種榴弾」
『2号車了解!』
『4号車了解』
2号車と4号車はゴーレムの正面に停止し47口径128mm滑腔砲をゴーレムに向ける。
ドオオオン!!
刹那、47口径128mm滑腔砲が発射炎で輝く。
滑腔砲からはD99T対戦車榴弾が初速1750m/sの速度で発射しゴーレムの足元付近に着弾し爆発した。
「な、何だ、この音は...!?」
レフィティスはゴーレムの足元で起きた巨大な爆発炎と音を目撃した。
『ヴーン!?』
ゴーレムは突然起きた爆発に怯み、辺りをキョロキョロする。
そして戦場には似つかわしい軽快な音楽が聞こえてきた。
どこか哀愁を漂わすようで口ずさみたくなるようなメロディー 。
次第に音は大きくなる。
「あ、あれは!?」
物陰に隠れていた1人の兵士が指を指す。
指した方向を見ると、2つの物体が凄まじい速度でこっちに来ていた。
それは異世界から来た連中の乗り物だった。
長い棒を付けた箱がゴーレムに向けられた途端に爆発した。
その後、ゴーレムの両腕が爆散し石片が降り注いだ。
遊撃部隊として機動戦を展開していている指揮官車と3号車は弧を描きながら走行していた。
「目標、命中!腕の破壊を確認!」
「よし!」
「喜んでる暇はねぇぞ、次弾装填!目標胸部!」
「装填あい!」
砲手は主砲作動スイッチと弾種選定スイッチを操作する。
旧型の自動装填装置を搭載しているため、砲を一旦装填角度に戻す必要がある。
砲塔乗員室の弾薬庫から自動装填装置で対戦車榴弾が薬室内に押し込まれ尾栓が閉められる。
「装填よし!いつでも撃てます!」
『小隊長!前方に攻城兵器が!』
「構わん、突っ込め!俺が許可する!」
『小隊長の許可なら喜んで!』
阿久津が指揮する80式装輪戦車の操縦手は喜びながら残っていた内地軍のバリスタに突っ込んだ。
重量48トンの車体に内地軍の木製兵器が耐えれる訳もなくバリスタは盛大に木っ端微塵となった。
『ハハハッ!ザマねぇぜ!』
「よくやった、終わったら俺の秘蔵ビデオをに見せてやる!」
80式装輪戦車はゴーレムの胸部に狙いを定め128mm滑腔砲を向けた。
搭載されているFCSの自動追尾機能で目標を追い続けていた。
──「撃てっ!」
阿久津からの射撃命令が下り、砲手はボタンを押し込む。
2両の80式装輪戦車の128mm滑腔砲から対戦車榴弾が発射されゴーレムの胸部に突き進んでいた。
胸部に2発の対戦車榴弾が着弾し爆炎が起きた。
──煙が晴れ、現したのは無傷のゴーレムだった。
「なっ!?目標、撃破を認めず!」
『嘘だろ?80式の戦車砲はTー95やレオパルドⅢを破壊可能なはずですよ!?』
「習准将が懸念していたことが現実化したな...」
対戦車榴弾が着弾する前にゴーレムは胸部に対して強力な障壁魔法を集中展開していたのが原因だった。
「こちら第4小隊!目標の破壊を認めず!」
『こちら司令部、了解した。戦車小隊を投入する。装輪戦車小隊は攻撃しながら安全圏へ退避せよ』
「こちら第4小隊、了解」
「全車、後退しながら安全圏へ退避!攻撃は続行!」
『『『了解!』』』
80式は全速力で後退しながら退避していた。
後退途中でも攻撃は続行していた。
『目標、脚の破壊を確認!』
「最初からこれしとけば良かったな。まぁ、内地軍に対する鬱憤晴らしでやったけど...あのデカブツ、失った腕と脚を再生しようとしてるな」
『小隊長、安全圏に到達しました!』
「こちら第4小隊、安全圏への退避完了」
『了解した』
海兵隊のバトンは陸軍へ渡された。
曲も終盤に近づいていた。
「装輪戦車の攻撃を弾いただと!?」
「ハチマルの128mm砲は超大国の最新鋭MBTも撃破可能なはずですよ!?」
安全圏へ退避し様子を見守っていた久世達はゴーレムの防御力に驚きを隠せなかった。
「ゴーレムも凄いけど、あの乗り物もすごいねぇ...魔道士10人分の爆裂魔法じゃないと繰り出せないわ」
「貫徹魔法を付加された矢を弾き返されたのに腕を吹き飛ばすなんて...」
久世とは対称的にリュミとルーが80式装輪戦車の攻撃力に関心をしていた。
「クゼ様!あれは何ですの!?」
リュミが指を指した方向を見る。
指を指した方向から現れたのは、重量57トン、44口径140mm滑腔砲を搭載した国防陸軍の最新鋭主力戦車“10式戦車”。
新型自動装填装置とC4Iシステムを搭載した世界最強の戦車だ。
「10式戦車!?76式改じゃないのか!?」
久世は同部隊に配備されている76式戦車改E型が迎撃するのかと思っていたが、まさか最新鋭の10式が出てくるとは思いもしなかった。
ゴーレムは10式戦車の存在に気づいた。
自身を攻撃する物体と判断したゴーレムは10式戦車4両に襲いかかろうとしていた。
そんな事を許すはずもなく2両の10式戦車の44口径140mm滑腔砲が発射炎で輝く。
80式装輪戦車の128mm滑腔砲より大きい火球が生まれ、D10T対戦車榴弾2発がゴーレムに向かって突き進む。
その後、ゴーレムの両足に対戦車榴弾が着弾し吹き飛び、自律出来なくなったゴーレムは前かがみに倒れようとしていた。
10式戦車に搭載されているFCSの自動追尾機能でゴーレムの胸部に狙いを定めていた。
次に繰り出されたのはD10T2装弾筒付翼安定徹甲弾。重金属製の弾頭が従来徹甲弾より速く対象を貫徹させる威力を持つ物だ。
発射されたAPFSDS2発は、装弾筒4つに分離し細長いタングステン弾頭がゴーレムの胸部に突っ込む。
2発のAPFSDSはゴーレムの胸部に深く突き刺さり、轟音が街中で響き渡る。
「嘘でしょ!?魔法防御を物理で貫いた!?」
ゴーレムの上半身はそのまま重力に従って地上に落下し淡く発光した後ボロボロとなって崩れ落ちる。
残ったのはゴーレムを形成していた石だけだった。
「やった...のか?」
「そう見たいねぇ...」
80式装輪戦車から流れていた音楽は終わりを告げた。