ルーントルーパーズ〜国防軍漂流戦記〜   作:匿名

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お絵描きに夢中になってしまい投稿が遅れました
戦闘には入ってません何とか作っています。


オペレーションセイレーン1

「そろそろね...」

 

白い珊瑚礁の家の窓から外を見る少女。

発光する珊瑚や海草で明るいはずの海中は、今や厄災により死に絶えてしまった。

この国は緩やかだが、滅亡への道を突き進んでいる。

 

姫である彼女は生贄に捧げられる。

彼女は決して、自分だけ生き延びようとは考えてない。

だが、食べられたとしても王国滅亡への道という結果は変わらない。

次の生贄に捧げられる時間稼ぎぐらいでしかないからだ。

 

レヴィアタン。

 

海の英雄コルブスによって封印された邪龍。

2ヶ月前にその封印が解かれ、暴れだした厄災。

王国をレヴィアタンの脅威から守るために出たマーフォークの戦士達は、戦いで傷つき命からがら逃げてきたか海の底へ沈んでいた。

精鋭揃いの王国親衛隊や屈強なマーマン揃いの王国突撃大隊ですら太刀打ちできなかった。

海の底へ沈んだ戦士達は深海生物のエサになり朽ち果ててるかレヴィアタンの胃の中で養分となってる。

 

自分ももうじき、奴の胃の中で養分に変えられるだろう。

 

母譲りの海草色の梳い、1日目の断食を終え心身共に疲れ果てていた。

生贄に捧げられる巫女は身を清めるために祭壇に捧げられる3日前から断食する。

 

彼女はまだ、14になったばかりの少女だった。

レヴィアタンに好まれる生け贄は子供もしくは生娘。

両方兼ね揃えた自分は最高な生贄だろうと皮肉り、乾いた笑みを零した。

今回の贄に差し出される少女は彼女含めて4人。

 

おぞましい死が待っている。

何の希望もない。

都合良くゴルブスのような英雄なんて現れるわけが無い。

レヴィアタンを封じる事ができたのは奇跡以外の何物でもない。奇跡が二度も起きるわけが無い。

 

ゴルブスのような美しき巫女のために命を捧げるような英雄なんて居ない。

 

「神様...」

 

全てを創りもうた母なる海の神に祈りを捧げる。

祈りが通じないのは分かりきっている。

恐怖に押しつぶされそうな彼女にとって、心を保たせるために祈るしか無かった。

 

(太陽の光が届かなくなって、どれぐらい経つのかな...)

 

死ぬ前に、もう一度太陽を見たいと思った。

 

「クリスティア...」

「母様...」

 

クリスティアの部屋に母であり、この国の女王であるフランシアがお供を連れてやってきた。

 

「貴方を奴の生贄になんて捧げられないわ...」

「やめて!」

「クリスティア...」

「アタシ1人が生き延びようなんて思ってないわ!」

 

自分の命が、生贄になって犠牲となった巫女達の上に立っていることに、罪悪感を抱いていた。

母としての本音でも自分だけ助かろうと願うのは傲慢としか思えなかった。

 

「違うのよ、母様はね、最後の“希望”に頼ってきたの」

「希望?そんな物がこの2ヶ月の間に何に役立ったって言うの!?」

 

「何度も祈った!海の神様にも祈ったわ!でも、誰も救われなかった!誰も助けに来なかった!」

 

「一体、今更誰が助けに来るって言うの!?こんな魔の海域に?誰が!?」

 

死への恐怖、巫女としての罪悪感で平静を失ったクリスティアは、誰も喜ばない言葉をフランシアに投げかけていた。

 

「彼らは約束した。必ず助けに来ると...」

「彼らって一体...!?」

 

クリスティアの言葉を遮るようにそれが聞こえた。

 

・・・コォォォォォォン・・・コォォォォォォン・・・

 

「なに?この音?」

 

遠くから聞こえてくる無機質な音。

 

・・・コォォォォォォン・・・コォォォォォォン・・・

 

音は一定の間隔で打ち鳴らされてる。

レヴィアタンが発するとは思えない異質な音。

聞いたこともない音。

 

・・・ピコォォォォォォン・・・ピコォォォォォォン・・・

 

「幻聴?」

 

何かが来る。

 

「や、やめてよ!」

 

「奴が起きちゃう!」

 

クリスティアは眠りを邪魔されたレヴィアタンがどんな猛威を振るうのか、考えただけで半狂乱になりそうだった。

 

 


伊吹CICで、ヘッドソナーを装着した水測員(ソナーマン)が、伊吹の船首ソナードームから放たれた探信音(ピンガー)の跳ね返る音響を聞き分けていた。

 

「アクティブソナー、感なし。近海に巨大遊弋物の存在は皆無な模様」

「116と139と伊203のアクティブソナーも感なしとの事」

 

レヴィアタン討伐艦隊は全てのソナーを総動員してレヴィアタンを釣ろうとしていた。

 

「これだけうるさければ、奴は嫌でも起きてくるでしょう」

「五十嵐艦長ら203の乗員はたまったもんじゃないだろう。彼らにとって見つかるのは死を意味するからな」

 

水中を住処にする相手ということもあり対潜警戒配置となっている。

伊吹と対潜駆逐艦は狭域探知用のアクティブソナーを、伊203は曳航式のアクティブソナーでピンガーを放っている。

 

「準備は整ってるな?」

「ええ、全艦主砲、長・短魚雷、対潜ロケット、爆雷いつでも撃てるようにしています」

「対潜ロケットが、この天候下で正常に機能してくれるか心配だがな」

 

CICには近未来的な空間とは場違いな、時代錯誤な鎧と水兵服を着た2人の女性が様子を見守っていた。

 

ヴィルヘルミーネ神官戦士団長とヒラガル水軍下級校。

 

CICは、レーダーやソナーなどの機器の性能を秘匿するために大日本帝国国防総省が定める一等国防機密に指定されており、関係者以外の立ち入りは固く禁止している。

 

彼女らの入室は異例だ。

最初は教会に対する不信感や機密保持を理由で反対の声と、数百年先の技術の塊を彼女らに見せても理解しようとも真似もできない事や、国防軍の戦い方を見せようと言う賛成の声があり賛否両論だった。

 

最終的に蕪木の判断で入室が許可された。

もちろん、彼女らに不審な動きをすれば同室している武装した水兵が、直ちに拘束し処罰房に入れるようにしている。

最悪の場合、射殺も厭わない。

 

特に教会関係者であるヴィルヘルミーネに対しての警戒心は強く、そのオーラは本人である彼女も察している程だ。

 

他の騎士にも入室が許され、入ってみたがCIC特有の室内の暗さや光る板や箱を見て「悪魔の巣のようで気味が悪い」と言い、入るのを辞め航海艦橋に戻った。

 

「本気で挑むつもりか?」

「本気じゃなかったら、こんな海域まで来ませんよ」

「奴は邪神と崇められることもある海の支配者だぞ」

 

海図台を眺めていた加藤に彼女が口を開く。

 

「伝説だと、奴は剣で深傷を負ったんでしょ?なら、それよりも巨大な魚雷でも効くはず」

「ぎょらい...?」

「こっちには、潜水艦のチタン合金船殼や超弩級戦艦の重要装甲区画をぶち抜くことができる二重成形炸薬弾頭魚雷を搭載しています。効かなかった場合最悪、海域ごと破26のN2弾頭搭載のアメノハバヤで蒸発させることだってできます」

「当たればな。アメノハバヤに関しては使いたくないがな」

 

ヴィルヘルミーネは加藤の言ってることが、ハッタリやホラを吹いていない事がわかった。

蕪木が使うのを躊躇っているアメノハバヤと言う物に彼女は気になっている。

 

「海の邪神に勝つつもりなのか」

 

(騎士達でさえ怖気着く海域、覇者である邪神レヴィアタンを相手に。戦いを挑む気なのか)

 

「勝つつもりじゃありません」

 

スクリーンに映されている各艦の音響解析データを睨みながら加藤が口を開く。

 

「勝たなきゃならんのです」

 

 


水中を進む黒い鉄の塊。

“葉巻型”と呼ばれそれは、船殼が“超高張力鋼”と呼ばれる鋼材でできており、船体は音を吸収する吸音タイルが張り巡らされている。

排水量17000トン、全長155m、魚雷発射管8門とSLCM(巡航ミサイル)用VLS12セルを有した攻撃型潜水艦“伊203”。

 

伊203の心臓部である発令所は、正面に操艦する操縦桿と計器が、壁側面にはスクリーンやスイッチが、中央には外部を確認する円柱型の潜望鏡が配置され、数十人のサブマリナー(潜水艦乗り)が各々の任務に着いていた。

 

「ソナー、どうだ?」

 

開いてるかどうか分からない細目に海軍の洋上迷彩服を着込んだその男は伊203の艦長、五十嵐真也海軍中佐。

 

「目標と思わしき音は確認できず」

「そうか...ソナーマン随一の君の耳ですら、まだ分からないのか」

 

ヘッドソナーを装着した女性水測長は全ての感覚を聴覚に集中させている。

 

「敵が潜水艦ではなく水棲生物なんて誰が予想できた物か」

「水棲生物とは言っても元いた世界のシロナガスクジラやメガドロンが可愛く見える大きさですよ。情報だと200m以上あるとか」

「どこのSCPだよ」

「会議で聞かなかったんですか?」

「そういえばそうだったな」

 

本来は自分達と同じ潜水艦を相手にするのが任務だったのが、元いた世界の水棲生物が可愛く見える大きさの生物━━レヴィアタンを相手にすることに感慨深さを感じていた。

相手は生物な上、予想外の行動を取られるかもしれない。

初めて相手にすることもあって音紋データがないので、それがレヴィアタンなのか他の水棲生物なのか判別しにくい。

 

「ソナー、感あり。右方向、海上に向けて低速浮上する物体を確認」

「鯨じゃないのか?」

「情報が不足しているので何とも言えませんが、物体が発する音の大きさからすると鯨以上の巨体です」

「決まりだな」

 

五十嵐はほくそ笑む。

 

 

 

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