ルーントルーパーズ〜国防軍漂流戦記〜 作:匿名
「艦隊左前方に低速浮上する物体を確認!物体の規模からレヴィアタンと推定!」
「それは確かか?」
「規模からして鯨の数倍はあります!」
水底の王国の女王フランシアからもたらされた情報によれば鯨の数倍の大きさだとされている。
「全艦隊戦闘配置、対潜戦闘用意!レヴィアタン討伐作戦を開始する!」
伊吹艦内では戦闘配置の警告音と鐘が鳴り響く。
水兵は持ち場へ駆け出し、通路内の隔壁が自動で閉鎖されていく。
「解析完了!目標の全長約400m!」
「400m!?マジで阿号潜並の大きさじゃないか!」
「コルブスとスアンは阿号潜並の生物を相手に戦っていたのか」
そんなレヴィアタンに立ち向かい封印させた英雄と巫女の所業に蕪木は感心していた。
「カトウ殿、アゴウセンとは一体...?」
「伊203より巨大な水中に潜る軍艦です。レールガン撃てたり艦載機...鉄竜を飛ばしたりできます」
「あの海に潜ってる軍艦より更に大きいのがルーントルーパーズにあるのですか!?」
「阿号潜に関しては元の世界にあるのでここには居ませんがね」
ヒラガルはルーントルーパーズの強大さを改めて認識した。
レヴィアタン並の大きさの水中に潜る軍艦を持つルーントルーパーズの世界とは一体どれほどなのだろうか。
「
「了解」
魚雷を統括する水雷長がアスロックにデータを入力していく。
「全艦データ入力完了。いつでも撃てます」
「対潜ロケット発射ぁっ!」
水雷長は操作パネルの発射ボタンを押した。
伊吹の後部VLSからオレンジの発射炎と煙が立ち上がりセル内から4発の、DDS116と139の前部VLSから6発づつの計16発のアスロックが荒れた空に向けて飛翔した。
伊203発令所
「艦長、伊吹から魚雷攻撃の命令が来ました」
「攻撃目標はレヴィアタンだろ?弾数は?」
「弾数は4発です」
「魚雷戦用意!魚雷室、1番から4番に89式を装填!誘導は有線を選択」
五十嵐の号令で伊203の艦首にある8門の魚雷発射管の内4門のに89魚雷が装填され 、管内に水が注水される。
注水が終わり発射口が開かれる。
「1番から4番の注水を確認。いつでも撃てます」
「水上でアスロック発射を確認」
「1番から4番、魚雷発射!」
伊203の魚雷発射管から圧搾空気で押し出された4本の89式長魚雷はガスタービンポンプジェットが始動し有線誘導の元、目標に向かって突き進む。
「アスロック、着水ポイントに向け飛翔中!」
「伊203、89式の発射を確認!」
レヴィアタンに向けて放たれた16発のアスロックは放物線を描きながら飛行する。
減速高度に到達しエンジンが逆噴射に切り替わりアスロックは着水した。
「アスロック全弾、着水を確認!弾頭、設定深度に向けて沈降中!」
弾頭である97式短魚雷はロケットモータから切り離され、予め設定された深度まで沈降した後に自律航行に切り替わる。
「アスロック、目標に向けて自律航行開始!」
16発の97式短魚雷と4発の89式長魚雷の計20発の魚雷がゆっくりと浮上するレヴィアタンへの直撃コースに入る。
「総員衝撃に備えよ!」
各艦の水兵は魚雷の大爆発による衝撃に備え取手に捕まり、ソナーマンは爆発による大音響に備えソナーの感度を下げた。
伊吹CICに居たヴィルヘルミーネやヒラガル、航海艦橋にいる内地軍と水軍の将校も何かに捕まる。
「弾着、今!」
20発の魚雷は水中で大爆発を起こした。
海中は大音響で響き、衝撃波が各艦に襲いかかり、100mに及ぶ水柱が立ち上がる。
艦内では備えが甘かったのか、何人かの水兵が壁や床に体を打ち付け、固定されてない物は宙に舞ったり、床に落ちて破損したりした。
徐々に衝撃波と水柱が収まっていく。
「痛ててて...レヴィアタンは仕留めたか?」
「か、海中のノイズが酷くて聞き取れません」
「配置そのまま、各艦警戒せよ」
大爆発の影響で海中のノイズが酷くソナーはしばらく使い物にならない。
「被害報告!」
「伊吹兵装システムに異常なし。衝撃波による影響で各科から多数の軽傷者の報告が上がってます」
『DDS116異常なし』
『DDS139もです』
『伊203異常なし』
「う、海の神でも怒らせたのか?」
ヴィルヘルミーネは衝撃波でぐらついたのか護衛の水兵の胸元に寄りかかっていた。
「これが彼らの力...決して敵に回してはいけませんよ、ヴィルヘルミーネ殿」
ヒラガルは尻餅を付き床にペタンと座り込みながらヴィルヘルミーネに問いかけていた。
「我々は、これ程の力を持った者達を敵に回そうとしていたのか...」
ヴィルヘルミーネは脳裏で敵に回った彼らが、マリースアの全てを破壊し尽くす光景が浮かび上がる。
崩れ落ちるセイロード城、燃える教会、焦土と化する王都、逃げる市民、敗走する内地軍と水軍...
ヴィルヘルミーネの顔は青ざめた。
『こちら伊203!魚雷爆発海域で海上に向けて高速浮上する物体を確認!』
伊203からの緊急通信が舞い込んだ。
「レヴィアタンか!」
「あれだけの魚雷を撃ち込まれて無事なはずが...まさか、あの量の魚雷を躱したのか!?」
現代艦を確実に仕留めるために 89式長魚雷は最高速度48ノット、97式短魚雷は最高速度38ノットの速度が出せる高速機動魚雷だ。
高速機動かつ理論的には海軍最大の大和級戦艦を撃破可能な魚雷群を躱したレヴィアタンに蕪木らは戦慄していた。
だが、レヴィアタンの方も無事では済んでおらず、魚雷の大半は躱したが巨体が仇となり2発が直撃し傷を負っていた。
眠りを邪魔された挙句、害を成す者に攻撃されたレヴィアタンは怒り狂っていた。
「目標、爆雷投射範囲に到達!」
「魚雷、アスロック間に合いません!」
「116、レヴィアタンに向け爆雷投下!主砲、発射用意!」
蕪木は悲観している暇もなく、レヴィアタンが浮上してくる海域に近いDDS116に爆雷によるレヴィアタンの阻止を指示する。
伊吹前部の31cm3連装電磁投射砲2基が動き出し、レヴィアタンが浮上してくる方向に砲身を向けた。
116は煙突の間に設置されている2基の24連装爆雷投射機が起動し俯角を付け爆雷を投射する。
投射された爆雷は沈降し、内蔵されているソナーでレヴィアタンを探知し次々と爆発していく。
キオオオオオオオオオオン!!
爆雷の攻撃でレヴィアタンは更に怒り狂い咆哮をあげた。
恐怖心を煽り、全てを食らいつくし、全てを支配する力を持った邪神の咆哮だ。
レヴィアタンは姿を表した。
邪龍に相応しく、禍々しい牙、蛇のような舌、全身を負う何者にも打ち破らない鱗で纏っていた。
「主砲撃てぇ!!」
蕪木の号令で31cm3連装電磁投射砲2基6門が火を吹き、超音速にまで加速した徹甲榴弾がレヴィアタンに吸い込まれるように飛翔する。
6発の内2発がレヴィアタンのの身体に突き刺さり爆発したが致命的なダメージは受けなかった。
レヴィアタンは帝都東京の標準的な超高層ビルに匹敵する高さまでジャンプし伊吹とDDS139の間に着水した。
レヴィアタンが着水した事で高波が発生し伊吹とDDS139は大きく揺れた。
「レヴィアタンの状況は?」
「レヴィアタン、深度40m、速度50ノットで海中を航行!」
「司令、このままでは艦隊は岩礁地帯に突入してしまい戦いが不利になります」
蕪木はスクリーンに表示された海底マップを確認した。
水底の王国と思われる建造物群、それを囲むように迷路のように入り組んだ岩礁地帯が表示されていた。
船が入り気を抜けば岩礁と接触して座礁、この天候化では大破ないし沈没しかねない。
その前にレヴィアタンと決着を付けなければならない。
「機関最大戦速、進路そのまま、対潜駆逐艦は速度を落とせ」
伊吹は35ノットにまで加速し、対潜駆逐艦2隻は速度を落とし始めた。
「伊203は89式魚雷8発を発射。奴を取り囲むように魚雷を誘導。対潜駆逐艦はアスロックを6発づつ発射。距離2000、深度40に設定。レヴィアタンと89式が接敵したと同時に自爆コードを送れ」
『また魚雷とアスロックで攻撃するのですか!?』
『高速機動魚雷を躱したのにですか?』
『そりゃあ正気ですか?』
「至って正気だ。奴を岩礁地帯スレスレの所に追い詰めて伊吹の持てる砲火力全てを奴に叩きつける。対潜駆逐艦も速射砲で応戦してくれ」
蕪木は岩礁地帯に突入する前にレヴィアタンと決着を着けようとしていた。