ルーントルーパーズ〜国防軍漂流戦記〜   作:匿名

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小学生の時給食で初めて杏仁豆腐を食べたんですけど食感が受け付けれなくてすぐに吐き戻しました

伊吹艦長だとか情報参謀だとか作戦参謀だとか言いにくいので次回ぐらいから名前付けます。

あと大日本帝国の人口増えるかもしれません。


オペレーションセイレーン6

国防海軍では旧帝国海軍から続く伝統である海軍カレーを金曜日に出している。

カレーは各艦によって味付けや使う材料が異なっている。

 

カレーで一番外せない物は白米などのカレーのお供だろう。

国防海軍ではこのカレーのお供は4つの派閥に別れている。

カレーと白米の白米派、カレーとナンのナン派、カレーと麺の麺派、それ以外もしくは別の形態の少数連合派。

 

伊吹のカレーは白米派に属している。

 

「見たこともない料理だな」

「白い粒状の穀物の上に、濃いソースのような物がかかってますわね」

「この船に乗って色んな料理を食べましたけど、初めて見る料理ですね」

 

内地軍と水軍の騎士達はステンレス製のスプーンを手にして固まっていた。

香ばしい香りに食欲をそそられるが、慣れない食べ物を口にするには勇気がいる。

 

「これはカレーライスと言う食べ物ですよ」

 

ボーイッシュな女性水兵が気さくに声をかけて来た。

彼女の上司らしき体格の良い水兵も彼女と一緒に居た。

 

「かれぇらいす?」

「そう、カレーライス。しかも、“伊吹”特製唐揚げカツカレーだよ!」

「この唐揚げカツカレーは特に絶品だ。カレーの隠し味は粉コーヒーと、唐揚げはニンニクと特製醤油で漬けてるんだっけ?」

 

彼女らはそう言いながら騎士達の横に座る。

 

「実戦の後にカツって皮肉ですよね。勝つんじゃなくて勝ったんだから」

 

女性水兵はスプーンにカレーを掬って口に入れる。

辛すぎず甘すぎず、しつこくない味が彼女の口内に広がった。

 

その光景を見た騎士達は生唾を呑み込み、おずおずとカレーを少しだけ掬い口に入れる。

 

「お、おお!?」

「美味しい!!」

 

騎士達はその美味しさに思わず声を上げた。

 

食欲をそそる絶妙な香ばしさ、濃すぎず薄すぎない粘度のソース、ほとんど均一に切られ煮込まれた野菜類、とろけるような牛肉、カラッと揚がったカツと程よい味の唐揚げ。

 

騎士達が口にしていたのは、この世界の軍用食で長持ちできる保存食がほとんどだ。

塩漬けされた干し肉、堅焼きのパン、チーズに玉ねぎ。

美味とは程遠い食事内容だ。

プライドの高さや毒が入れられたらと言う警戒心から一部を除き食堂を利用してこなかった。

 

「ぬうう!!斯様に美味なる料理は初めてだ!」

「本当だわ。今度シェフに作るように命じないと!」

 

伊吹の水兵達は彼らに向かって話しかける。

 

「お姉さんの家、シェフが居るんすか?」

「え?え、ええ。私の実家は内地の南西自治領の近くですの。料理と言えば南西。あのあたりの貴族は皆、腕の良いお抱えの料理人を探すのがステータスですのよ」

 

今は無き特権階級を目の前に水兵達はどよめく。

 

「聞いたか?貴族だってよぉ!」

「すっげぇな、お城とかあるわけ?」

 

話題に飢えていた水兵達は質問を投げかける。

彼らを嫌悪し食堂をそそくさと出ようとしていた水兵達も足を止め、話題の中にに入ろうとしていた。

騎士達も美味しい食事に加えて、素直に称賛する異世界の人間達に気を良くしていた。

 

「城持ちはルシリューだったか?」

「外戚が多かった時代の名残だ。今は番兵の代わりに鳥が住んでいる」

 

“番兵の代わりに鳥が住んでいる”はこの世界の貴族の没落を表すジョーク。

陸鳥や巨鳥を飼うのに作る小屋がなく、大事な館や城を当てる苦しい貴族の財政事情を風刺している。

 

どっと騎士達は笑い、水兵達も連られて笑う。

 

「ハハハ、こいつは良いジョークだ!この世界にもユーモアあるジョークがあったとはな」

 

ジョークが好きな北米管区出身の水兵が盛大に笑っていた。

 

下士官食堂はいつもより賑わっていた。

客人が少ない海軍艦艇で客人が訪れるのは一大イベントだ。

 

心が弾んでいるのは騎士達も同じだった。

 

「なんだ、話してみれば普通の連中だな」

「でも、貴族に対して少々慣れ慣れしすぎやしないか?」

 

騎士達は水兵達との距離感に困惑していた。

 

「彼らの国に貴族いないので我々貴族が珍しく見えるのだと思います」

「そうっすねー。貴族なんて昔の事か遠い国の話かゲームの中での話ぐらいでしかピンと来ないんですよ」

 

アルシェの補足に女性水兵が答える。

 

「貴族はいないのか!?では誰が国を導いているのだ?」

 

特権階級、それも国家を導く存在である貴族が居ないことに騎士達は驚きを隠せなかった。

 

「臣民いわば国民が国を動かしています。帝国には特権階級の皇族を除き人口の9割以上が国民です」

 

女性水兵とは別の水兵が答える

 

「国民だと?」

「そ、私達国民が選挙に行って議員に立候補した国民を誰にするか投票するの」

「議員はそれぞれの政党に所属していて、その政党で与党と言われる党の議員が総理大臣になって国を動かしている感じだな」

「補足ですが、我が国では議員は誰でも立候補できるようになっており、18歳以上の男女に議員を選ぶ選挙権を有しています」

 

彼らの祖国である大日本帝国は選ばれた国民が議員となり国家を導いているようだ。

それに一定の年齢以上の男女全てに参政権である選挙権を有しているのだ。

これが意味するのは国民の教養レベルが貴族や富裕層に匹敵するという事になる。

 

とりあえず話題を変えることする。

 

「貴公らの祖国ついて質問があるのだが...」

「ん?なになに?」

 

ヴィルヘルミーネの声に女性水兵が食いつく。

 

「貴公らの祖国“大日本帝国”は世界に名を馳せる強国と聞いた。人口62億、大陸2つを保有する大陸間国家、3度もの世界規模の大戦を経験したのは本当なのか?」

 

ヴィルヘルミーネの質問はアルシェから聞いた現実離れした大日本帝国の情報の真意についてだった。

 

「全部本当ですよ」

 

返ってきた答えは肯定だった。

 

「そうか...最初聞いた時は何かのホラかと思って半信半疑だったのでな。事実を確認したかったのだ」

「私達の世界は人口が10億越えの国なんてそこら中にあるんで普通な事かと思ってるんですよね」

「貴公らの世界は恐ろしいな」

 

地球の総人口は現在約302億8500万人に対してこの世界の総人口は約19億人と雲泥の差である。

この世界の総人口並の国家が地球にはゴロゴロ居るのだ。

 

「世界規模の大戦か...」

「これほど短いスパンで大戦が起きるなんて想像もしませんでしたよね」

「第三次世界大戦の時は小学生でしたね。世界の終末を実感して怖くて震えてましたよ」

「俺なんて「この世の終わりだぁ」って絶望して地元で暴れて警察のお縄に付いてたな」

「俺は太陽系防衛戦争で伊吹に乗っててと迎撃戦に参加してたな。まぁ完全迎撃失敗して伊吹が“死神に魅入られた軍艦”って言われるようになったがな」

 

水兵の間で第三次世界大戦と太陽系防衛戦争の時に自分達が何をしていたのかを話始めた。

学生だったり、別の部隊に居たり、商人だったりと様々であった。

 

「この船も戦争に行ってたのか?」

「ん?あぁ、太陽系防衛戦争で宇宙から侵攻する敵上陸部隊を迎撃するのに伊吹も参加してたんですよ。他の部隊や艦で完全撃破の報が入ってた中で伊吹だけは完全撃破できず、残骸が市街地に墜落して民間人に死傷者を出してしまったんですよ。それがきっかけでこいつ(伊吹)は“死神に魅入られた軍艦”と言われるようになったわけです」

 

女性水兵の上官が答えていた。

 

「ま、私たち、本当はアフリカ大陸って言うところに戦争するために向かってる途中でこの世界に迷い込んだんだけどね」

「それで、あれほどの大艦隊を成してたのか」

 

情報の真意を確認でき、ユラウスは次の質問に移ることにした。

 

「...俺から聞いてもいいか?」

「いいですよ、どうぞどうぞ」

「我らの民に、救いの手を...食べ物や傷の手当をしてくれたと言うのは真なのか?」

 

今までは悪質な噂だとして全く信じてなかったを確認しようとしていた。

 

 

「災害派遣?したよ。ちょー大変だったけど」

「なぜだ?」

「ふぁっ?」

「なぜ、助けた?」

「助けて欲しくなかったの?」

 

女性水兵からの問いに騎士達は顔を見合せた。

“正義のため”だとか“人を救う事こそ神の道”だとかの大仰な答えではなく“助けて欲しくなかったの?”と言う意外な答えだった。

 

「ま、助けて欲しくなくても助けなきゃいけないのが、私達の任務の一つだしねー」

「俺たちを毛嫌いする相手だろうが思想で対立してる相手だろうが困ってる人がいれば救いの手を差し伸べる。俺たち帝国国防軍兵士はそう言う共通認識を持ちながら災害派遣に従事してるんだ」

「助ける理由だの感謝されたいだの思ってちゃ、国防軍兵士なんざやれんよ」

 

彼らの中では助ける事は当たり前だと思っている。

自然災害や戦災で人や街が傷付く度に国防軍は内外問わず救いの手を差し伸べてきた。

 

話を聞き終え、騎士達の中に何か得体の知れない感覚が駆け巡った。

 

「貴公らは...」

「ん?」

「異世界から呼び出されし神の御使いでは無いのか?」

 

見返りもなく誰かを救う存在は『神』しかなかった。

おまけに天候を操る技術から星を砕く技術と言った、神の御業としか思えない技術を多数保有してる事もあり確信に近かった。

そんな神の御使いはキョトンとした顔をしていた。

 

「今度は何?しゅーきょーの勧誘?」

「神国“日本”はこの世界でも通じるのか」

「神国“日本”なんて昔の事ですよ」

 

(ここで、これ以上問い質すのは無粋か...)

 

ユラウスは首を振り、苦笑浮かべて答えた。

 

「いや、なんでもない。ただの勘違いだ。忘れてくれ」

 

「名前、まだだったわね。あたし、松山彩。階級は海軍上等兵。所属は飛行小隊よ。よろしく」

「ユラウスだ。内地軍白戦馬騎士団の隊長をしている。会えて光栄だ、マツヤマ殿」

 

ガントレットを着けた騎士とGショックの国防軍モデルの時計を着けた女性水兵の手が重なる。

 

「わたくし、記念に歌いますわ」

「お?ディアナの美声がここで聞けるのか?」

「特別よ。式典以外では、思い人の前でしか披露しないんですから」

 

妖艶に笑う美女の姿に、独身の男性水兵達が釘付けになる。

 

「何だか知らんが、盛り上がってきたな、おい」

「良いんじゃないんですか、曹長。衛星放送見れないわで、食堂にいてもつまんなかったですから」

「それもそうだなぁ、おおいネエちゃん!景気良いの頼むわ!」

「曹長のお許し出ましたぁ!」

 

最も彼の場合は曹長の中でも上位にあたる上級曹長であるが、下士官のボスが乗り気になった事でその場は一気に弾けた。

 

「あっちのテレビんとこにマイクなかったか?」

「カラオケ大会だ!」

「ボカロ布教のチャンス!」

「おいおい。ヘビメタが先だぜ!」

「これで酒がありゃ、最高なんだけどなぁ」

 

食堂はいつもより賑やかしくなっている。

内地軍と水軍を嫌悪してた水兵すらもその事を忘れてしまってる。

 

「カレーのおかわりは?」

 

海軍タイプのコック帽と白いエプロン姿の給養担当の曹長が彼らの前に立っていた。

 

「いただきますわ!できればこの料理のレシピを!い、いえ!それだけじゃダメね!シェフ。私のお抱えのコックになりませんこと?」

「定年後なら考えても良いですよ」

 

給養担当の曹長は笑顔で答える。

 

「中央食品のオンライショップか横須賀の“よこちん”でなら伊吹カレーはレトルトで売ってるんだけどな...」

「横須賀海軍カレー公式でレシピ公開してなかったか?」

「伊吹カレーは特製カツと唐揚げがないと意味ないっすよ!」

 

一部とは言え、全ての垣根が消え、信頼感が芽生えてることに気づいたユラウスは、仲間を横目で眺めた。

 

「...全く、異世界の者どもめ」

「とても、憎めぬ者達だな」

 

ヴィルヘルミーネが語りかける。

 

「彼らがこの世界へ迷い込んだのは、偶然なのか、神の意思なのか...」

「後者を、俺は信じます」

 

死の海で、新たな絆が生まれゆくのを確かに感じた。

 

 

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