ルーントルーパーズ〜国防軍漂流戦記〜 作:匿名
セイロード湾
国防軍が一時的に停泊しているマリースア南海連合王国セイロード湾。
その沖合で停泊してる空母桜龍の艦上で、第30戦闘攻撃飛行隊“マイヒメ”所属の83式艦上戦闘攻撃機流星10機を発艦する準備が進められている。
流星には51式空対地ミサイル“マーヴェリック”4発、短距離空対空ミサイル“サイドワインダー”2発、増槽が搭載されている。
「なんで桜龍の上に集まってんの!?ハミエーア陛下経由でレヴィアタン討伐作戦遂行のため内地軍に、セイロード湾上空から退避するように通告してなかったか!?」
「分かりません!すぐに確認を取ります!」
臨時旗艦の防空重ミサイル巡洋艦羽黒のCIC内では艦長の森脇がキレていた。
どう言う訳か王国側にレヴィアタン討伐作戦にあたり円滑に作戦が進むよう、セイロード湾沖上空の飛行禁止を要請し王都防衛隊や内地軍に通達させてたはずだが、桜龍の上空の内地軍のアルゲンタビスが16羽ほど集まっていた。
このままでは桜龍に何をされるかわからない上、作戦遂行に支障をきたす恐れがある。
「時間が無い、対空戦闘用意!砲雷長、速射砲であの鳥野郎共をどかして!」
「い、いいんですか、艦長!?」
「構わないわ!こっちは人の命がかかってる!こっちに危害をくわえるなら当てるつもりで撃って!」
「わ、わかりました、対空戦闘用意!速射砲発射準備!」
羽黒の右舷に配置されている15.5cm単装速射砲2基が動き出す。
自動装填装置に対空砲弾が装填される。
「発射準備完了!」
「対空戦闘!CIC指示の目標、速射砲、撃ち方はじめぇ!!!」
ベレンゲルの通告を無視し、飛行禁止区域である桜龍の空域を飛行している内地軍のアルゲンタビス部隊。
「隊長、将軍の通告は無視して良かったのですか?」
「ふん、どうせ奴らは弱ってるに決まってる。我ら内地軍巨鳥騎士中隊に敵うまい」
血気盛んな巨鳥騎士中隊の若い中隊長が言う。
「将軍も将軍ですよ。あれだけ蛮族共を包囲しろって言ってた癖に、あのお飾り女王の言葉にはホイホイ従って...」
彼の部下である副隊長が愚痴を言う。
「何か変な動きをしてるな」
「あの灰色の化け物に何かしてますね」
旋回しながら桜龍の甲板の上を観察している。
「蛮族共が慌ててるぞ。滑稽だな」
「我ら巨鳥騎士中隊に怖気ついたのでしょうな」
桜龍の様子を見て、悪態を付いたりゲラゲラと笑う騎士。
そんな彼らに大きな爆発音と閃光が襲う。
「な、何だ!?」
「一体どこから!?」
自分達を攻撃してるであろう相手を探し出す。
「中隊長!あいつです、あいつが攻撃しています!」
1人の騎士が見つけ出す。
1隻の灰色の巨大船の側面にある2基の箱…確か大砲と言ったか。
それがこちらに向いているのが分かった。
大砲から煙が上がり、爆発音と閃光が再び起こる。
「クソ!全騎回避行動!」
中隊長の指示でアルゲンタビスが回避行動を取る。
羽黒の砲撃は桜龍の安全が確保できるまで続いた。
「障害物クリア!」
「よし、直ちに発艦だ!急げ!」
桜龍の艦長、発艦準備が整ってる流星の発艦を指示する。
『鳥野郎共がいなくなった。すぐに発艦させるぞ!」
発艦準備とクルーの退避が完了し5基のカタパルトから流星が次々と発艦していく。
カタパルトから解き放たれた第30戦闘攻撃飛行隊所属の流星10機が2個の5機V字の編隊を組み飛行する。
『内地軍が追いかけてきます!』
流星が発艦した事に気づいた内地軍の巨鳥部隊が追跡を試みる。
『しつこい男は嫌われるっつってんだろ!」
『お前にも乙女心があったのかよ』
『大丈夫だ。流星と連中じゃ追いかけることなんてできやしない』
流星の現在の飛行速度は巡航速度であるマッハ0.9なのに対し、内地軍の巨鳥の飛行速度は約380km/hで旧式の複葉戦闘機の速度でしか出せない。
みるみるうちに流星と巨鳥との距離が開く。
『今は作戦のことだけを考えろ』
『マイヒメ8、ウィルコ』
『マイヒメ1、ウィルコ』
『マイヒメ7、ウィルコ』
第30戦闘攻撃飛行隊10機は伊吹がいる人魚の海の空に向け進路を取る。
そんな彼らを王城のテラスで遠眼鏡で覗く人物がいた。
「やはり早いのう。ルーントルーパーズのカラクリ竜は」
マリースア南海連合王国の国王ハミエーアが関心しながら呟く。
「確か、今朝ルーントルーパーズからセイロード湾上空の飛行禁止の要請が来なかったかのう?ベレンゲルにも飛行している巨鳥騎士団を退かすように言わなかったかのう?」
ハミエーアは同席していたカルダに聞く。
「見たところ、一部の部隊が飛んでいたように見えます。恐らく命令無視による独断専行かと」
「そうかのう」
ハミエーアは呆れた顔をしていた。
「カルダよ、貴公には彼らに事の経緯を話してくれ。謝罪は改めて行う」
「承知致しました」
「それと命令を無視した部隊は騎士身分を剥奪、いずれ継承帝国と事を構えなければならないから最前線部隊に配属させよ」
「しょ、承知致しました」
カルダは各所での対応を取るため退席した。
「全く次から次へと...」
ハミエーアはそう言い椅子に深々と座る。
「彼らには頼ってばかりな上、迷惑をかけてしまった。国王失格じゃな」