ルーントルーパーズ〜国防軍漂流戦記〜 作:匿名
人魚の海を抜けてからの伊吹ら討伐艦隊の帰路は、それまでの死闘を労うかのように穏やかだった。
自分達の行為が、これからどんな意味を持っていくのか、気にならないではなかった。
多くの末端の水兵には、そんな大きい事を考えるのは無駄だった。
それよりも、最近はすっかり食堂に馴染んで食事を共にするようになった、内地軍と水軍の若い騎士達と話をした方が良いからだ。
「ちゅうことはさ、君らが陸に上がったら、内地軍と水軍の将軍に今回の事を報告する訳でオケ?」
騎士達が下士官食堂で食事を取っていると聞き、士官室からやってきた加藤が尋ねた。
「うむ、そうだ。しかと伝える覚悟だ。貴公らが敵ではないし、敵にしてはならない相手であるとな」
「それに両軍で蔓延る貴公らを過小評価する考えを正さなければならない」
内地軍騎士の代表格のユラウスと、水軍水兵の代表格のジュッセンが答える。
「堅いなぁ、もっとオブラートに包んだ言い方してよー」
女性水兵の松山上等兵が、フォークでサラダを突きながら軽口を叩く。
ユラウスの表情は険しいままだった。
「ウチのアンダーセン将軍はまだしも内地軍のベレンゲル将軍とかがね…」
「頭の堅い上層部なのだ。こっちも堅くないとその頭を叩き割れんのさ」
ユラウスは、陸に上がってからの事を危惧しているらしく、表情は微かに緊張で強張っているように見えた。
彼の真面目さに苦笑した魔法騎士の病院着姿のディアナが口を開く。
「それよりもさ、水と食糧の件、私が話をつけておく事にしたわ」
「ディアナさんが?」
ディアナは雪のような白い長髪を掻き上げた。
若い男性水兵が彼女の姿に見惚れていた。
あの戦いで容姿がすっかり変わってしまった彼女を見て、彼女とは縁があった水兵からはひどく驚かれていた。
「ええ、私の家は、内地の穀倉地帯にも都の商人にも顔が利くの。貴方達の陸軍と海兵隊への食糧供給をすぐにやらせるわ。最もあと3日はここで滞在しなければならないけど」
「申し訳ないね。魔法とか縁が無いから、魔法に関わる病気や症状は未知数なんだ」
「いいのいいの。それにヒラガルとマツヤマ殿が居るなら気にしないわ。ここを出れたらすぐに交渉するから。ああ、代金なんと気にしなくていいわよ。私の家、それなりに裕福だから」
「ほとぼりが冷めれば女王陛下の約束通り、国が肩代わりしてくれるだろうしな」
ユラウスが付け加える。
当初と比較すると信じられないほど友好的だった。
加藤はその成果に目を丸くした。
会話をしている時、ピンポンパンと言う穏やかな艦内放送を知らせる音が鳴った。
『連絡。セイロード湾が見えました。繰り返します、セイロード湾が見えました。乗艦中の方で、上陸まで街をご覧になりたい方は航海艦橋までお越しください』
騎士と水兵達、国防軍水兵達から安堵のため息が漏れる。
あの死の海から帰ってきたのだ。
「帰ってきたんだな…」
「そうね…」
喜ぶ反面、複雑そうな顔をしていた。
「…本当なら、貴方達は国を挙げた凱旋パレードがあってもいいはずなのにね」
ディアナが悲しそうに呟く。
伝説の英雄ですら封印するのに精一杯だった邪神をこの世から消し去った異世界の戦士の功績は、紛うことなき英雄のそれである。
彼らには、何一つの栄誉も与えられないのだ。
「凱旋パレードか…あったらウチの空母の飛行隊が祝賀飛行をしてたんだろうね」
「ま、パレードがあっても無くても気にしてはないからね」
松山が食べ終えたトレーを手に席を立ち、加藤も、海軍将校の社会に帰らなければいけなかった。
ユラウスが血気盛んで若い顔を曇らせる。
「それでも、貴公らは戦い続けるのですね」
加藤が苦笑で応じ、去っていく。
「そのための国防軍だからね」
にっと、こともなげに笑って出て行く松山の小さな背中を、ユラウスは見送る。
「ここからは、我らの戦いかもしれんな」
「彼らみたいに戦い続ける事ができるかしら?」
「できるできないの話ではない」
ユラウスは腕を組む。
彼の顔には、固い決意が見える。
「やるしかない、のね…」
ディアナは肩を竦めた。
自分達の戦いはまだマシだ。
彼らのように、孤立無縁で戦う訳ではない。
ここにいる者は内地軍や水軍の中でもそれなりの地位にある家柄の者ばかりだ。
若いからといって無下のはできまい。
騎士達は甲冑と剣の音を打ち鳴らして席を立つ。
「さあ、行きましょう。王都が見えるそうよ」
伊吹の艦尾に艦載艇を格納する格納庫内で、ヴィルヘルミーネらを王都へ送るため作業艇が発進しようとしていた。
海軍の純白な制服姿の蕪木と加藤ら海軍将校が立っていた。
「長旅、お疲れ様でした」
「いえ、これだけの距離を航海した割には、驚くほど短い時間でした」
蕪木の言葉に、ヴィルヘルミーネが柔和に笑う。
「ウチのディアナをよろしくお願いします」
「ディアナさんは責任持って、万全な体調で王都に帰ってもらうように努めますので、安心してください」
ユラウスの願いに蕪木は自信を持って答える。
「ヒラガル殿、ディアナを頼んだぞ」
「任せてください!可能な限りルーントルーパーズに関する情報も持ち帰りますので」
「軍機以外の情報でしたら持ち帰っても構いませんよ」
ユラウスはヒラガルにディアナの付き添いを任せた。
ヴィルヘルミーネは手甲をはめた手を差し出す。
「平伏よりも、将軍にはこの方が良いのではないかと思う」
「ご配慮、どうも」
蕪木は彼女の手を握った。
内地軍の騎士達と水軍の水兵達が一斉に姿勢を正す音が響いた。
騎士のロングソードや水兵の短刀の抜刀の鋭い音が格納庫内に響く。
ユラウスは、剣を眼前にかざす礼を執る。
何人かの水兵が、その行為に驚き身構えたが、それが儀礼のための抜刀だと理解した。
「カブラギ将軍、そしてカトー参謀ら海軍将校の方々!我らマリースア内地軍とマリースア水軍、貴公らとの交流はとても貴重な物だった。感謝申す!」
「我々も、貴官らとの交流できた事に光栄に思う。我々とマリースアとの架け橋になる事を期待する」
「頼むよ。内地軍を説得してくれなきゃ、僕らが干上がっちゃうから」
加藤の開けっぴろげな言い方に笑い声が互いに漏れた。
「任されよ。貴公らに負けぬよう、我らも命を懸ける所存なり」
「私達は、本物の義を触れた。それは神に誓って忘れない」
彼らの目は真剣だった。
蕪木の中でも、世界は違えど人の心に宿るものは同じなのだと実感した。
「過分な言葉に感謝する」
そして、時が来た。
ヴィルヘルミーネ達が作業艇に乗り込んでいく。
乗り込んだ事を確認し、作業艇が緩やかにスロープを降りて海に着水した。
作業艇はエンジンを噴かしながら伊吹を離れセイロードの岸壁に向かう。
ピィーフィィ...
海軍の伝統儀礼として掌帆長による見送りのサイドパイプを吹奏し、その音色は海鳥が囀るように海に鳴り響いた。
「さようならぁ!」
「機会があったらまた来いよぉ!カレー作って待ってるからなぁ!」
見送りに来た水兵らはパトロールキャップや自前の帝国旗や海軍旗を振っていた。
騎士達も手を振り剣をかざし彼らに答えた。
「本当に不思議だな」
「そうだな...」
ユラウスが眼前に広がる王都セイロードを見ながらジュッセンの呟きに答える。
「まるで、故郷を離れるみたいに名残惜しいものだ…」
そんな穏やかな中、それは起こった。
ヒュオオォォォォォォォォン!!
作業艇の上を何かが空切る音がした。
音がした方向を見ると、胴体と翼が細い5騎の鉄の竜が王都に向けて飛んでいくのが見えた。
「おい、あれ雷電じゃないか?」
「しかも第33のバスターだ!」
鉄の竜の正体は60式近接支援航空機“雷電”だった。
双発・直線翼の、戦車や装甲車などの地上目標の撃破の任務を担う近接支援航空機だ。
航空機には過剰な程の防御力、戦車並みの火力、長時間の滞空飛行が可能で地上部隊からは「空飛ぶ戦車」「雷電将軍」などの愛称で呼ばれている。
王都に向けて飛行したのは戦略空母桜龍の第33近接支援飛行隊のコールサイン“バスター”所属の5機の雷電だ。
雷電の機首に搭載されている60式30mm7連装機関砲“アヴェンジャー”が火を噴き、直後辺りにブロォォォと言うアヴェンジャーの重たい発射音が響く。
「ど、どこに撃ってるんだ!?」
「あの丘じゃないか?」
一人の水兵が雷電のアヴェンジャーが撃ったところを双眼鏡で覗き込む。
双眼鏡には30mm機関砲弾で小高い丘は土煙が舞い上がっており様子が分からなかった。
「な、なんだあれは!?」
煙が晴れ映ったのは、有に千を超える数の異世界生物が王都セイロードに向けて雪崩れ込んで来る所だ。
再び、アヴェンジャーの発射音が響き渡り、30mm機関砲弾が魔物やその周辺に着弾し爆発を起こす。
「あ、あれは、ゴブリンじゃないか!なんでセイロードに居るんだ?」
ジュッセンが持参していた遠眼鏡で確認したところ、セイロードに居るはずがない人型の魔物であるゴブリンだと言う事がわかった。
5機の雷電が低高度でセイロードに侵入しゴブリンが蠢く小高い丘に向けて、30発の05式95kg無誘導爆弾を投下する。
無誘導爆弾が起爆しゴブリンは土ごと耕された。
撃ち漏らしたゴブリンは市街地に侵入して行く。
雷電の愛称が原神のキャラになってしまった。
遊んでみたいんだけどスマホのストレージが足りるのか不安だしアズレンやニケやブルアカとかもやってるからな
雷電将軍見た目が好みでスコ