ルーントルーパーズ〜国防軍漂流戦記〜   作:匿名

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ミサイルとかの設定も作らんとな


お供えもの

ある日の朝、伊吹で当直として周囲の警戒に当たっていたウィングの航海科員が、あるモノに気づいた。

 

「んー?」

 

双眼鏡で覗く。

 

何かの魚の群れが跳ねているのかと思ったが、イルカか何かの群れが回遊して来ているように感じた。

遂に人魚であると判別できた。

内線電話で上官の加藤にかける。

 

「…はぁ?マーフォークの群れがセイロード湾の本艦近くにやってきてる?なに寝言を言ってんのさ?」

 

加藤は海軍将校の個室にかかって来た内線電話の音に叩き起こされる。

寝ぼけ眼のまま怪訝な表情を浮かべた。

 

24時間365日年中無休の国防軍の、それも艦艇での暮らしとは言え、休みの日が無いわけではない。

加藤はたまの非番くらい昼まで寝ていたのだ。

 

加藤は渋々洋上迷彩服に着替え航海艦橋に向かう。

 

「おはよー」

 

20分ほどしてから航海艦橋へと上がってきた。

非番のつもりなので敬礼も堅苦しい口調も省略していた。

片手には目覚ましの缶コーヒーを準備していた。

 

そんな上官に呆れながら、当直の水兵らが敬礼しウィングへ促した。

 

「うー…休みくらい、こんなド早朝の朝日は拝みたくないよ」

「そう言わず、私のオススメの音楽でも聴いて目覚めてください…って違うそうじゃない!あれを見てください!」

 

当直の女性大尉が加藤の空気に流されそうになるが、彼に持っていた双眼鏡を無理矢理持たせた。

 

「へえへえ、えーと、ジュゴンかマナティがいるんだって?どれどれ…」

 

コーヒーを飲みながら、大昔の人魚伝説の元となった海棲動物の事を呟きながら、双眼鏡を覗き込む。

 

「嘘だったら君を詐欺罪で訴えるね」

「どこのジョルノですかそれ?」

 

2人の将校のやりとりに他の当直の下士官は呆れていた。

 

「あー!カトー様ぁ〜!ひっさしぶり〜!」

「ブフゥッ!?」

 

加藤は口中のコーヒーを派手に噴き出した。

双眼鏡の先には元気いっぱいに手を振る人魚の女の子。

海草色の髪、快活そうな表情、クリスティアだった。

 

「く、クリスティアちゃん!こんなとこで何してんだ!?」

 

加藤は航海艦橋のウィングから下にいるクリスティアに向けて大声で叫ぶ。

 

「何って、みんなと巡礼に来たんだよ〜!」

「じゅ、巡礼ぇ?」

 

加藤はさっぱり意味がわからなかった。

 

「そうだよぉ〜!“イブキ”様にお供えものがしたいって!みんなが言うからさぁ〜!」

 

彼女が振り返ると、わざわざ作ってきたのか立派ない筏の上に、大量の海の幸や美しい宝石や珊瑚などのお供えものが載せられていた。

 

「“イブキ”様?」

「まさか、この大型巡洋艦“伊吹”の事〜!?」

「そうだよぉ〜!」

 

加藤ら水兵達が唖然とした。

考えてみれば、彼女らにとって、この船は最後の希望だった。

邪神を討ち滅ぼした破邪の存在だ。

 

「ああ、“イブキ”様、貴方様のお陰で魚が海に帰ってきました…」

「珊瑚礁の成長も順調でございます…イブキ様」

「どうかこれからも我らの王国をお守りください」

「護り衛る海の化身よ、どうか永久の平和を…」

 

オーバーテクノロジーの塊を崇拝する人魚の光景に加藤と当直の航海科員が顔を見合わせる。

考えてみれば、元いた世界でもコピペを崇拝する宗教や近接支援航空機の雷電を崇拝する宗教と言った、いわゆるパロディ宗教が存在している。

彼女らのように無機物を崇拝するのもおかしくはないはずだ。

イブキ様も一種のパロディ宗教と捉えても良いと考えたが、邪神を討ち滅ぼした船がパロディ宗教として捉えても良いのか甚だ疑問だ。

 

朝日に照らされた、伊吹に参拝する人魚達は皆一様に幸せそうだ。

この世界の神は気まぐれで、豊穣に生贄を求める神もいれば、平穏を約束する代わりに服従を要求する神もいる。

この鉄の塊など、まだ良心的なのかもしれない。

 

「お昼までには帰るからさぁ〜!良いよねぇ〜!?」

「ああ、良いよ!遠路はるばる、お茶の一杯でも出したいんだけどさ」

「お構いなく〜!」

 

対岸のセイロード港では、人魚達の讃美歌が聞こえたのか、ざわざわと人が集まり始めている。

神話の時代から神秘に包まれてきたはずの人魚達が、堂々と人前に姿を現しているものだから、驚かない方がおかしかった。

 

加藤は一瞬、彼女らの肉を狙う密猟者の存在を危惧したが、伊吹の周辺から離れる様子はなかった。

 

対水上レーダーと当直が、24時間体制で監視している。

密猟者だろうが怪しい動きあれば、伊吹の速射砲や機関砲が黙っていないだろう。

念の為、彼女らが来た時は武装した水兵と複合艇での監視も追加すべきか、と加藤は考える。

 

「なんだ。結構、お前、神様らしいんじゃないか?」

 

加藤は苦笑し、伊吹の装甲をペシペシと叩く。

朝日に照らされたグレーの船体が朱に染まり、どことなく伊吹が照れているように見えた。




スパモン教が気になる
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