ルーントルーパーズ〜国防軍漂流戦記〜   作:匿名

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帝都

フィルボルグ継承帝国。

 

この世界に君臨する強大な力を有した超大国。

建国以来、大小52の国家を併呑し、280の部族•種族を束ねてきた。

世界が神から“人間”の手に委ねられて幾千年。人の世を作り上げた者の継承者を自称し、世界を勝ち取らんとする。

 

建国時、世界の継承者を自称する帝国に誰もが失笑した。

今は、その帝国によってルーイエ大陸は手中に収まるに至る。

 

圧倒的な国力と軍事力、継承帝国第七代皇帝の苛烈さと類い稀な手腕と英雄性によって成し遂げられた快挙であり、愚挙であった。

 

皇帝の名は、エサイアス•アスガルド•フィルボルグ。

僅か一代で帝国を5倍にまで拡げた男。

“賢狂帝”と言う畏敬を込めて呼ばれた男。

 

8億5000万の帝国臣民と隷属民は、望むと望まざるとに関わらず、彼の下知の元に生き、そして死ぬ運命を負う。

 

皇帝が座する帝都アガルタ。

五百万の帝国臣民と、それを数倍の数の奴隷が住まう栄華と腐敗の都。

 

その中心に、皇帝が住まう皇宮が位置する。

幾層もの城壁が周囲を囲い、中央部には十分な広さが確保されている。

巨大な要塞であり城であり宮廷でもあった。

 

城壁の中には、世界の春を集めたかのような花咲き誇る庭園、あらゆる大陸を持ち帰ったような水路と人工湖。

帝国の力を見せつける、一種の象徴とも言える。

こんな庭園を維持する水道施設を、そもそもどうやってこれだけの軍事と文化を複合させた施設を建設できたのか。

 

他国から交渉に訪れた使節団は、考えただけでその国力に震え上がり、戦火を交えず降った国も少なくない。

 

その皇宮の地下には巨大な空洞がある。

 

天井には、恐ろしく緻密に描かれた天体図が描かれている。

その星々は、空にあるであろう星の瞬きを忠実に示した、動く絵画であった。

有翼の民が使っていたとされる、歴史の彼方に忘却された古代魔法によるものだった。l

空洞内には円を描くように大量の机が置かれている。

数百人の術士が座り一心不乱に星の解析を行なっていた。

 

帝国の最高機密にあたる継承帝国占星機関“ロギア”の一室だ。

 

万物の動きは星の動きに連動し、豊作や凶作、人の生や死も、全ては星の動きによって解明される。

微細で複雑怪奇な、数え切れない星々の動きを分析し、この世界に起こっていることを明察する。

ロギアは帝国の諜報機関と言う側面もある。

 

円形の中心部に座ってベールを被り瞑目する一人の女。

法衣に身を包み年齢や容姿は窺うことはできない。

 

「来たりしか?賢狂帝」

「うむ」

 

女は振り返りもせず、微動だにせず賢狂帝に問うた。

継承帝自らここへ足を運ぶのは珍しい。

術士達は一切動じず星の運行の解析に没頭していた。

 

そんな彼らを、好感の目を向けて継承帝は静かに女に尋ねた。

 

「南伐混成軍が敗れた件、何か確かな相は出ているか…?」

「否」

「ふむ、星を乱さないなら取るに足らん異変と言う事か?」

 

何かの間違いなのか。

南伐混成軍のリヒャルダ将軍は、自分への忠義が厚かったし、無用な用兵をして自滅するような無能ではない。

人を見る目には自信があったから、彼女を南伐混成軍の最高司令官に任命したのだ。

 

なぜ、南伐混成軍が毛が生えた程度の蛮族国家のマリースアに敗北したのか。

生きて帰ってきた者の報告もどれも信じられない内容だった。

 

『光る矢が飛行艦や竜を焼き尽くした』

『灰色の鉄の竜が竜の倍の速度で襲来した』

『百発百中の大砲で竜が射落とされた』

 

内容が荒唐無稽すぎて、内地の南伐混成軍司令部も報告を上げるのに手間取ったほどだ。

 

「否、星は出ている」

「ほう…どんな星だ?」

「太陽なり」

「太陽だと!」

 

全てに星の中心であり、自らの運行を乱さない太陽が乱れた事は、世界が震撼する時だ。

継承帝は珍しく動揺した。

 

「続けろ」

「現れた者あり」

「現れた者?」

「其はこの世界に在らざる者にしてなり。この世界に混沌と秩序をもたらさん存在なり」

 

継承帝の不敬を買うような言葉だが、こうした情報も貴重なものだ。

ロギアのもたらした情報で勝った戦争や脱する事のできた危機は数えきれないからだ。

 

「混沌と秩序…?」

「相反するもの。然してまた不確かなるもの」

 

「その者達、その物達。世界を敵に回し、世界を味方に付けんとするとものなり。その強大な力は破滅を呼び、戦禍を呼び、平和と変革を呼ばんものなり」

 

「赤き陽と純清なる白の旗に集いし戦士達。其は召喚されし軍勢(ルーントルーパーズ)なり」

 

「召喚されし軍勢...」

 

神話にしばし登場する、ありふれた単語。

何者かが異世界から、この世界へ召喚された。

召喚された者達が、南伐混成軍を、竜騎士団を、空中艦隊を破ったのだ。

 

「太陽神の遣わせし戦士...なかなか面白い番狂わせだ」

 

天井の天体図を見上げ、挑むような目で睨む。

拳をかざし、太陽を表す一際眩しい光を潰すように手を握りしめる。

 

(太陽の戦士、召喚されし軍勢とな...一体どんな連中なのであろうな?くく、陽の如く全てを焼き尽くしてきた狂戦士か?陽の照らすところ全てを平らげてきた豪傑どもか?)

 

自分の前に立ち塞がる者が現れた事に、彼は喜んでいた。

まだ見ぬ異世界の英雄達をねじ伏せる歓喜が待っている。

 

 

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