「パチュリー様、少しお話しをよろしいでしょうか?」
「あら? 咲夜。またレミィからなにか言われたのかしら?」
ここは紅魔館の地下にある大図書館の中、一人の人間と一人の魔法使いが話していた。
「例の件、よろしくお願いします」
「むきゅぇ? いいけど、大丈夫かしら?」
人間ーー吸血鬼の従者、咲夜が魔法使いーーパチュリーにとある一人の人間のためにお願いごとをしにきたのである。
「大丈夫ですわ。仮に大丈夫でなくともお嬢様の暇つぶしになるでしょう」
「......貴方も楽しんでるわね?」
「いいえ、私はお嬢様のお願いを聞いただけですから」
「はぁ、彼も厄介なことに目をつけられたものね」
そうして、魔法使いと人間に一つの約束が成された。
とある人間を心配してそうな発言とは裏腹に無関心な魔法使いと、ニコニコしながら楽しんでる気がある人間との約束がーー
ーーーーーーーーーー
「(ブルッ)!? い、いったいなんだ!?」
背筋に走った寒気に座っていた俺は勢いよく立ち上がる。
が、しかし特になにも起こるわけでもなくただ不審な行動となっただけだった。
「なにをしているの桂一。そんな馬鹿みたいな顔をして」
「相変わらず言葉に容赦がないですねお嬢様!」
「早く座りなさい。はしたないわよ」
「......くっ、なんだったんだ今のは」
レミリアに注意された俺は素直に座り直す。
今いるのは紅魔館のテラス。そこでレミリアとお茶会をしていた。理由は人里から帰ってきて早々にレミリアから呼び出されたからである。
咲夜さんはお茶を注いだ後に「私は少々用事がありますので失礼させていただきます。あとは桂一に任せてください』といってどこかに消えてしまった。忙しい人である。
「ほら、私の紅茶が切れてしまったわ。早く注ぎなさい」
「なぁ、いい加減執事役をするの疲れたんだがーー」
「注がないのなら代わりにあなたからーー」
「失礼します、お嬢様」
レミリアの前に置いてある空になったカップに、咲夜さんがテーブルの上に置いてったポットで紅茶を淹れる。
チョポチョポとカップの中に注がれていく紅茶は普通の紅茶よりも綺麗な紅色であり、なにが含まれているかは考えたくないところだ。
「ん、最初から素直にそうしなさい」
「いや、だって俺はただの妖精の世話係で執事なんてしたことがーー」
「じゃあ今度から貴方は『妖精の世話係兼執事』よ。これで問題ないわ」
「......はぁ」
まるで名案だとでも言うように満足そうに頷くレミリア。このお嬢様が......!
そんな俺を慰めるように頭を撫でている妖精。いや、嬉しいんだが、発している言葉が......いつも通りだな。明記しないでおこう。
「従者としてのマナーとかルールは咲夜から学びなさい」
「あれ? 本気で?」
「なにを言ってるのかしら? 私はいつでも本気よ?」
どうやら本気で俺は執事も兼任することになったようだ。これが藪蛇ってやつか......いや、紅魔館にいればいずれこうなってた気がする。だって主人がレミリアだもの。我儘お嬢様だもの。
「あら、あなたがフランの遊び相手をしている未来がーー」
「まじで勘弁してくださいぃ!」
「よろしい」
レミリアが不穏なことを口走ったので、俺は秘技[土下座]を発動。どうにか危機を回避できたようである。
いや、フランが悪いわけじゃないんだが、遊び相手となると、ねえ?
「お嬢様」
「あら咲夜。用事は終わったのかしら?」
「はい。実はといいますとーー」
俺が土下座の状態から頭を上げると咲夜さんがレミリアの斜め後ろに立っていた。神出鬼没な人である。
そして咲夜さんはどうやら俺には聞かれたくない話しのようで、レミリアに耳打ちをしていた。仲間外れにされたようで少し寂しい。べ、別にレミリアのことなんかっ! ..;...きめぇ。
「......ふぅん。面白そうね。いいわ。やりなさい」
「かしこまりました。お嬢様」
どうやらお話しは終わったようで、二人はなぜかこっちを見ながら笑っていた。咲夜さんはニコリと、レミリアはニヤリと。とてもではないが嫌な予感しかしない。
「それじゃ桂一、咲夜について行きなさい」
「こっちです」
「?????」
いきなり咲夜さんに連れられテラスから紅魔館の中に入ってどこかへ目指し歩いていく。
はて、なんなのだろうか......?
ーーーーーーーーーー
「ここよ」
「ここは......図書館?」
行き着いたのはこの紅魔館唯一の大図書館である。図書館ってことは用事があるのはーー
「パチュリーか?」
「そうです。後はパチュリー様に聞いてください。それでは私は失礼します」
「あっ」
最後までニコニコしながら事務的挨拶をして消える咲夜さん。
こういう時は碌なことがないんだが......
「まぁ立ち止まっててもしゃーないか。レミリアに話してたからにはレミリアの提案なんだろうし」
俺は覚悟を決め、大図書館の扉に手をかける。
ギギギと開く扉の中、図書館には埃っぽい匂いと図書館特有の紙の匂いがした。
「さてパチュリーは、と」
学校の体育館よりも確実に広大であろう大図書館の中に足を踏み入れる。これは探すのに時間かかりそうだなーと愚痴りながらーー
「あ、桂一さん。お待ちしていました」
「お、小悪魔さん」
ーーどうやら探す必要は無いようだ。なぜならこの図書館の主、パチュリーの使い魔である小悪魔さんがすぐそこに立っていたのだから。
「パチュリー様はこちらです」
「ありがとうございます」
案内してくれる小悪魔さんにお礼を言いついて行く。
さてはて、俺はいったいなにをやらされるのだろうか......
「まぁ、と言ってもここなんですけどね」
「近っ!」
「ふふ、それでは私はお仕事に戻ります」
歩いて2、3歩して入口のすぐ横にある扉を指差される。はたして案内の意味はあったのだろうか......いや、もしかしたらその扉の中を確認せず図書館内を延々と彷徨ってたかもしれないが、そんな入口より遠くないなら本人が出迎えるぐらいしてやれよ! そのためだけに小悪魔さんを呼び出したんかい!
「......はぁ」
頭の中でいくら文句を言っても意味ないので扉を開ける。
すると、その中は狭い個室で、床には巨大な魔法陣とでも言うようなものが全面に書いてあり、その中心に目的の人物がいた。
「パチュリー。いったいなにをするんだ?」
「ようやく来たのね。もうすでに準備はできてるわよ」
「なにが?」
パチュリーがパン、と手を叩くと魔法陣が光だす。
それは床だけではなく、壁や天井にも書かれた文字や幾何学な模様も同時に。
「さぁ、こっちにきて」
「いやだからなにするんだよ!」
「大丈夫、危険はないわ。......失敗しなければ」
「すごい不安になる言葉が最後についてるんですがねぇ!?」
なにをするかはわからないが、心配はなさそうである。失敗しんければ。
「そうね、簡単に言えばこれはあなたをパワーアップさせるための魔法よ。わかったならさっさと来なさい」
「......納得いかねえなぁ」
人里から帰ってきてからの急展開の連続に、俺はいつしか考えるのをやめていたーーなんてことじゃなく、たんにめんどくなったので流れに身を任せることにした。
もーどーにでもなれやー。
「それじゃ、始めるわ。動くとあなたの体が分解してややこsーー危険だから動かないでね」
「分解!?」
一層に輝きを増した魔法陣に、俺の意識がーーーーーー
ーーーーーーーーーー
「レミィ、終わったわ」
「あらパチェ。自分から図書館の外に出てくるなんて珍しいわね」
「ええ。あなたの予想通り彼にアレは適合したわ。これもレミィの視た運命かしら?」
「ふふ、やっぱりね。これでいざとなったら使えるかしら?」
「まだまだ馴染んでないわ。少しずつ器が大きくなって時期になったらーー」
「楽しみだわ......」
また一ヶ月空いてしまった......葬炎です。
まぁ多少忙しかったとはいえまた期間が空いてしまいました。やっぱ「明日書く」と考えていても書かないもんですね。
そして今回もまた短し。そしてフラグ回。レミリアのしたこととはなにか?
まぁこのフラグが回収されるのはまだまだ先です。後はパワーアップフラグが立ちましたね。これでようやく妖精なしでも戦えるようになるか......?
その結果は次回にて。
それではまた。次回も一ヶ月後になるかも!と念のため言っときます。