とある森の最奥地
「姉さん、レミィ姉さん、応答するんだ」
『なにかしらパッチェさん?』
「どうやらここMUGEN界じゃないっぽい。雰囲気的に幻想郷なんだが......レミィ姉さんたちの気配がしないな」
『ふーん。幻想郷ならとりあえず紅魔館に行ってみればいいんじゃないかしら?」
「よしきた。ナイス提案だ姉さん。それじゃ紅魔館にーー」
そこには一人の女性がいた。
目元は髪の毛の影なのか別の力が作用しているのか暗く、目だけが不気味に輝いているように見える。
しかしそれを抜けばとある魔法使いと瓜二つと言える容姿でありーー
『ねー姉様ー。このボタンはなにー?』
『あ、フランそれはパッチェさんが暴走した時に穏便に沈ませるための、1時間くらい持続する頭に激痛を発生する機能よ』
「押すなよ?絶対押すなよ?」
『えいっ☆』
ポチッ
「ぐああああ!? 頭が割れて中身をゆっくりかきまわされてるような痛みがああああ!」
『表現が生々しいよパッチェさん!』
『これ以上は年齢制限をかけなくてはならなくなってしまうわね。一旦他の人に変わりましょう』
ーーどこか壊れていた。
「あー、暇だー」
ところ変わってここは人里。
桂一はちょっとした用事で咲夜に連れられーー放置され自由行動になり、今に至る。
妖精たちは前回のみたいにならないよう置いてきた。というか少し大きめのチョコを置いたらそこに群がって俺は放置状態だった。泣ける。
「あーーーーん?」
思い出し悲しみに包まれながら咲夜が来るまでまたブラブラと人里の中を散策しようとしたところ、桂一は見た。見てしまったのだ。
『『『『『ぐほぉっ!?』』』』』
「っ!? な、なにがおきてるんだ!?」
人だかりができており、なにかあるのかと桂一が近づこうとした時だった。
そこにいる村人全員がいきなり鼻血を噴き出して倒れてしまったのだ。男女問わず、全員頬を赤らめて。
そしてその中心にいるのはーー
「〜♪(ぱたぱた)」
「お、なんか可愛い生物がいる」
ーー咲夜をひざ下くらいまでの高さにディフォルメし、犬耳と犬の尻尾を付けたような姿の生物を。
ソレは今、誰かからもらったのか魚をはむはむと食べていた。無表情ながらどこか楽しく、嬉しそうな雰囲気を出し尻尾を振りながら。
「んー、どうすっか?」
「〜?」
とりあえず今の状況をなんとなく把握した桂一はこの生物ーー仮にいぬさくやとしよう。いぬさくやを連れて行くことにした。理由はこのままここに置いといたらもっと大変なことになりそうだから。
ちなみに桂一は可愛いなとは思っているが鼻血を出してぶっ倒れるほどではない。というかそこまでなる意味がわからない。
「よし、ついて来るか?」
「〜(コクン)」
桂一の言ったことがなんとなくわかるのか、小さく頷くいぬさくや。それを見て挙動も可愛いまと思いながらいぬさくやを頭に乗せ咲夜を探しだす桂一。
なんとか紅魔館に住まわせてもらえないか相談するための口実を考えながら。
ーーーーーーーーーー
「......なんです?」
「いや、少し相談がありまして」
「......私は今用事中なので後にしてください。できれば100年後あたりに」
いつぞやの茶屋に咲夜はいた。茶屋で団子を食べる用事とはなんなのかと言いたいが今は置いておく。
それで桂一は頭に掴まっているいぬさくやのことを説明し紅魔館に住まわせることができないか相談をする。
「咲夜さんや、この子を紅魔館に住まわせてもらえないか?」
「......?」
「〜♪(すりすり)」
「......っ!?」
最初は面倒ごとを持ってくるなとでも言いたげな顔をしていぬさくやの姿をちらりと見る。
すると、咲夜の目が少し見開き表情が固まった。いつも作り笑いか無表情なのだが、驚いた表情のまま固まったのだ。
この間いぬさくやはなにか気に入ったのかずっと桂一の頭に掴まりながら頬ずりをしていた。
「......まぁ、桂一は妖精たちの世話をしてくれてますし、少しお願い事くらいめんどくさいですが聞いてあげてもいいかもしれません」
「まじで!? おっし!」
あっさり許可を取れるとは思っていなかったので言い訳を色々と考えていたのだが無意味に終わったようだ。少なくとも咲夜さんはクリア。後はレミリアが許可すれば大丈夫だろう。
そのレミリアをどう懐柔するか考え始めたところ、咲夜さんが話しかけてくる。少し所在なさげに手をうろうろさせ挙動不審になりながら。なんぞ?
「ただ、少し......その......」
「?」
「〜?」
「えっとですね.....」
なにかを言おうとしなぜか止める咲夜。
それに首を傾げる桂一。こんな咲夜さんを見るのは初めてだと。いつもは言いたいことをはっきりと言い容赦無い咲夜さんが。
いぬさくやは桂一につれられ首をコテンと傾げている。それを見てぴくりと反応するさ咲夜さん。あ、なんとなくわかった。
「......少し、その子を抱かせて欲しいのですが」
「......ぶっ」
「〜?」
頬を少し赤らめ、目を背けながら恥ずかしそうに言う咲夜に思わず鼻血を噴き出しそうになった桂一を攻めてはいけない。
予想可能回避不可能というやつだ。
「よし、では帰りましょう」
「まぁいいけどさ」
「〜♪」
結局いぬさくやは咲夜の腕の中に納まることとなった。強く抱きしめられてはいないようで、楽しそうにしている。たまに背中に違和感があるのか身をよじっているのに突っ込んではいけない。
そこで桂一は思った。このコンビ、なかなかクルものがあると。
「〜?」
「......? なんでしょうか?」
「〜? 〜♪」
「たぶんどこに行くか聞いているのと楽しいって意思だな」
「わかるのですが?」
「ああ。なんとなくな」
桂一はいぬさくやがはっきりと言葉がにして考えていないためか中途半端にしか通じない。せいぜいわかるのは楽しい、悲しい、そんな感情くらいだ。それと状況からなんとなく言いたいことを察することはできるがそれが当たってるとは限らない。
「これから行くのは紅魔館ーーじゃわからないかしら? 家ーー安心できる居場所に行くのよ」
「〜♪(ぱたぱた)」
「......」
「咲夜さん、ニヤけるのは少々気持ち悪ーーぶべらっ!?」
咲夜のできるだけわかりやすいようにした説明も、いぬさくやは言葉が理解できないため意味はない。しかしその言葉から感じとった安心するような雰囲気に嬉しそうにする。
そしてその姿を見ていかにも笑顔になりそうなのを必至に堪え変な顔になった咲夜に素直にコメントし割と本気の裏拳をくらった桂一。馬鹿である。
「くっ、俺は正直に言っただkーーふがっ!」
「黙りなさい」
倒れたままなお言う桂一を鼻フックをして立ち上がらせる咲夜。
もう一度言う、馬鹿である。
「理不尽だ......」
「〜?」
「そっちを見ては駄目よ。馬鹿が移るわ」
「〜?」
「そっちを見たら怠け癖が移ーーっ!?」
馬鹿である。
「ただいま。紅さん」
「帰ったわ」
「お帰りなさい桂一さん。咲夜さーー」
いつも通り門番をしている紅さんに挨拶をすると、咲夜さんを見てーー正確には咲夜さんに抱かれているいぬさくやを見て片手を上げかけたような状態で固まる紅さん。その顔には純粋な驚愕が浮かんでいる。
「さ、咲夜さんがーー」
「ああ、この子はーー名前はないわね。拾ってーー」
「ーー隠し子を連れてきっ、キャアッ!?」
「ーー次は頭よ」
こわっ!?
咲夜さんは紅さんがなにか言おうとしたのを察しいつの間にか手に持っていたナイフを胸ーー正確には心臓を狙い投げる。妖怪とはいえ生物として大事な機関である心臓を刺しても大丈夫なのだろうか。いやたまに頭に刺さっても平気な顔をしているのを見るし大丈夫なのだろうと自己完結する桂一。
「まったくもー、危ないじゃないですか。あやうく一日間門番できなくなってしまうじゃないですか」
「それでも一日なのか......」
「別にあなたが門番できなくなったらこの子に任せるからいいわよ。桂一をつけてね」
「〜?」
「なんで俺も!?」
美鈴の言葉にいぬさくやを少し前に出しそう言う咲夜。ついでに巻き込まれる桂一。
「あははは。冗談はやめてくださいよ咲夜さ「(ビュッ!)」っ!?」
「〜♪」
美鈴が軽く笑いながら咲夜の言葉に反論しようとした。だが、その言葉を遮るようにいぬさくやからナニかが凄まじい勢いで美鈴の頬を掠めるように飛んでくる。
「くっ!」
美鈴は頭を全力で横に倒し、飛んできた弾を回避しようとする。避ける必要はあまりなかったが勢いとそこから推測される威力に体が勝手に動いたのだ。
そして自分に当たることなく通り過ぎたそれの着弾点を見、なにが飛んできたのか確認する。そう、ソレはーー
「(掠める程度でなおかつ動かしやすい頭を狙ったものだから大丈夫でしたが、胴体を狙われていたら危なかった。いや、そんなことはいいのですが、それよりもなぜ飛んできたものがーー)」
「「骨!?」」
「......ナイフを持たせれば......」
桂一と美鈴の叫び声が重なる。
そう、飛んできた弾の正体はーー骨。いぬさくやが指の間に挟める程度の大きさの小さな骨だったのだ。
さすがにこれには桂一、美鈴は驚いた様子。咲夜は危険なことをつぶやいており、隣で聞こえていた桂一は戦々恐々としている。
「いえ、確かに弾の正体は予想外でしたが今のでわかりました。この子......強いですね」
「......まじで?」
「〜♪」
地上で格闘、物理戦のスペシャリストと言える美鈴から告げられる言葉。そしてそれはどう考えても桂一よりも強いということが確信できる言葉でもあった。
自分はこのようなちみっこくて可愛い生物に実力的に負けるのかと足を抱えて倒れこみ落ち込む桂一。それに追い打ちをかけるかのようにちょうどいい高さまできた頭を撫でるいぬさくや。
「当たり前じゃないですか。私は一目見た時から雰囲気でなんとなく場数を踏んでいて、桂一なんか足元に及ばないくらい強いのはわかってましたよ」
そして更に追撃をかける鬼がここに一人。
桂一は何回目かの自分の中のなにかが折れる音が聞こえたと後に語った。
「もういいよ......親切じゃなくて
割と精神がピンチかもしれない桂一だった。
ども。葬炎です。
本編を待ってると言う方、すみません。ちょっとMUGENのトーナメント見てたら書きたくなったんです。
いぬさくやは動画及び画像、Cパッチェさんは動画を探せば出てきます。興味がある方はどうぞ。今更ですが二人ともMUGENと呼ばれるゲームの改変キャラと呼ばれるものです。そんdrもってかなり強いです。
番外編は前後編で収めようと思います。次がいつになるかわかりませんが読んでくださる方はよろしくお願いします。