幻想縁起   作:葬炎

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平穏なんてなかった

「ぶえっくしゅ!」

 

泉に落ちて、出て、びしょ濡れのまま乾かす方法もなく、呆然と突っ立っている桂一です。寒いです。

妖精たちは俺がジャンプした時点で離れて"チルノちゃん"と呼ばれている妖精の方へおそらく向かった。薄情なやつらである。明日はお菓子やらん。

それはともかく、今はどうしようかと悩んでいる。一応、服は全部脱いで全力で絞ったけどまだまだびしょ濡れだし。寒い。

しょうがないから紅魔館に戻ろうとしたら、前方から何か三人ほど飛んできた。

 

「おーいけーいち! この二人がここの泉の妖精の―――なんで濡れてるの?」

「いやまぁ、パワーアップしたんだから飛べるかなと思ったんだけど、まだレベルが足りなかったようだ。むう、◯ーラ、いやトベ◯ーラ習得にはまだなのか......いやバッジの数が足りないのか......」

「? よくわからないけど、けーいちって馬鹿なんだね!」

 

無邪気な吸血鬼の攻撃!

桂一は9999ダメージを受けた!

......いやまじで落ち込むからやめてほしい。さすがに俺も元からできるとは思ってなかったし。うん、少し希望を抱いたくらいでとやかく言われる筋合いはないと思うんだ。

 

「なんだこのへんな人間! へんだな!」

「初対面の人にそれは失礼だよチルノちゃん〜!」

 

と、フランの後ろについてきていた二人の言葉。

始めて見る顔だが、どうやらフランが連れてきたようだ。この様子だと、氷柱的な形の羽的なものが付いてる青髪の娘がチルノちゃんって呼ばれてた娘か。もう一人は緑髪の、俺がこの世界にきてからはいつも連れている妖精が周りにいる妖精が大きくなったような娘。

 

「こっちのアホそーなのがチルノで、そっちの緑色のが大妖精だよ!」

「わたしが最強の妖精のチルノだよ!しょーがないからよろしくしてやる人間!」

「チルノちゃん〜、それじゃお友達増えないよー? あ、私は大妖精です。よろしくお願いしますね〜」

「ん、ああ。俺は桂一。後藤桂一っていう、紅魔館に住んでるだけの一般人だぜ。よろしくな」

「んー、なんとなく魔理沙に似てる? まぁいっか! よろしくな!」

「語尾に"だぜ"がついてるだけで魔理沙さんと似てるって判断するのはよくないよ〜」

 

どうやら緑髪の子は大妖精が名前のようだ。それは固有名称なのか......? そうだとしたら村人Aのような、ひねりも個性もない名前である。

 

「んで、なんでその二人を連れてきたんだ?」

「ん〜?」

 

まぁそんなことより現状を把握しよう。

俺はてっきり遊ぶためにチルノと呼ばれている妖精のところへフランが向かったのかと思ったが、連れてすぐ戻ってきたってことは俺に二人を紹介するため....?

 

「あのねー、この前紅魔館にチルノが侵入してきて会った時にねー、チルノが『へんな人間はどこだー!』って騒ぎながら飛び回ってたの思い出したんだー」

「"へんな人間"が俺に確定!?」

「んー、そんなこと私言ってたっけ?」

「妖精たちに"甘いものくれるへんな人間がいる!"ってことを聞いた時に『甘いもの!? 私によこせー!』って紅魔館に突入した時だよチルノちゃん〜」

「んー、あー、えー、.....................

........ああ! ......そだっけ?」

「やっぱり忘れてる〜」

 

すごい悩んだ末に忘れてるるチルノに、頭を抱えてしゃがみこんでしまった大妖精。初対面なのだが、なんとなくチルノはバカというよりアホだと思う。勘だけど。バカとアホの違いがわかるわけでもないけど。

 

「.....まぁいいや。それより甘い物よこせ!」

「んー、すまないけど今は作れないな」

 

残念ながら今日作れる分は作ってしまったと、こっちに指を差しながら言ってきたチルノとそれを諌めるようにしながらちょっと期待した目で見てきている大妖精に言う。すると、チルノはキョトンとした顔をし、大妖精は少ししょぼんとしていた。ちょっと罪悪感。

悪いが、さっき全力で作ったばっかで自分の中のナニカが限りなく0に近いのを感じ取れるからね。無理だ。

と、そこで理解が追いついたのかチルノの顔が不機嫌なものに変わる。

 

「むー、なら力ずくで奪うだけだ!」

「え、俺の話し聞いてた!?」

 

......訂正。

どうやら俺の言葉は理解されなかったらしく、なにやら冷気を迸らせながらこっちを指差すチルノ。

そして対象的に身体の震えが加速度的に早くなっていく俺。いや別にびびってるわけではない。いや俺は無力だしびびってはいるがその震えではない。そう......単純に寒いのだ。まだ服は濡れてる俺に冷気を浴びせるとは......

 

「やべ、テンション下がってきた。どうしよ。フラン、頼んだ」

「えー? けーいちが挑まれたんでしょー? まーいーや。けーいちは人間だもんね」

 

寒さにどんどん思考のテンションが下がっていくのを感じ、めんどくさくなったのでフランに任せることにした。力づくでフランに勝てる妖怪はいないだろう。だって『ありとあらゆる物を破壊する程度の能力』とかいうチートコードを使ったかのような能力持ってるし。

 

「んー、そだ! けーいち、貸し一つね! 今度なんでも一日言うこと聞いてもらうから!」

「え、ちょ」

「よし! いくよチルノ! 本当の弾幕ごっこを見せてあげる!」

「む、なにを! 最強はわたしだ!」

「誰が最強かなんて話してないよ〜」

 

勝手に俺の一日を束縛する約束をしながら湖の中心に向かって飛び出すフランに少しずれたことを言いながら追うチルノ。

 

......どうしよ。

 

そしてその場にはびしょぬれで勝手に約束を作られた桂一が立っていた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「で、結局戻ってきたわけね」

「仕方ないだろ。さすがに護衛(フラン)がいないまま森を抜けるのは危ないし、こんなびしょぬれだったら風邪引いちまうし」

「......まぁ、しょうがないわね。まったく、フランは......」

 

ということで、結局紅魔館に戻ってきました。桂一です。さすがにフランも咲夜さんもいないのに妖怪が徘徊する森を進むのは危険と判断。まだ紅魔館からそんなに離れてなかったこともあり急いで戻ってきたのだ。

そのことを聞いたレミリアは右手で頭を抑えてため息を吐いている。

 

「......私が一緒に行くのは紅魔館の当主として駄目だし、美鈴は門番してもらわないと妖精とか侵入してきて困るし、パチェは......言うまでもないし」

「咲夜さんは?」

「咲夜は今の時間、掃除で手を離せないわ」

「んー、だったら小悪魔さんとかメイド妖精とかは?」

「両方ともあなたを守って戦うには実力がまったく足りてないわね」

 

むぅ、そうか。そうなると誰もいないわけなんだが....

というか外に出れるのって実質咲夜さんだけなんじゃ......フランは色々子供っぽくて大変なとこあるし、実際今回みたいなことがあるからあまりこういうこと(誰かに着いていく)には向いてないだろう。

 

「ところで少し気になってたんだけど」

「ん?」

「その後ろにいる大きな緑色の妖精はなにかしら?」

「あぅあぅあぅあ〜」

 

レミリアに言われ後ろを向いてみると、そこには霧の湖で出会った大妖精が立っていた。....なんで?

 

「あの〜、実はチルノちゃんに着いていったんですけど、二人の弾幕が、というよりもフランちゃんの弾幕が濃すぎて避けれなさそうだったから桂一さんのほうにきたんです〜」

「え、なんで俺?」

「えぇと、その、この子たちを送るというのもあったのですがー」

 

そう言った大妖精の服の中から出てくる最初期から俺に着いてきてくれた薄情な妖精たち。全員涙目で『怖かった〜!』『遊びじゃない〜!』『チョコレート〜!』と言っていた。というか服の中から出たということは、大妖精の素肌に抱きついて、羨まsいやなんでもない。

 

「おー、お前ら。明日お菓子抜きな」

『『『『『えええ〜〜!?』』』』』

「当たり前だろうがヴァカめ」

 

不満そうに声を漏らす妖精たちに割とマジで怒ってる俺は妖精たちにとって最強な技『お菓子抜き』を発動する。反省するがいい!

 

「あの〜」

「ん? ああ、ありがとうな大妖精」

「あ、いえいえ〜。そ、それよりも私がついてきたのは妖精たちを送るためもあるのですが〜」

 

どことなくいい辛そうな、少し恥ずかしそうに顔を赤らめる大妖精。どうしたというのか?

 

「あのー、なんか桂一さんから落ち着くようなふいんきを感じましてー....あ、私のことは大ちゃんと呼んでください〜」

「落ち着く雰囲気......?」

「そんな『なに言ってんだこいつ』みたいな目で見るなレミリア」

 

失礼な。まぁ自分でも果てしなく疑問に思ってるけど。

にしても、落ち着く雰囲気ねえ......妖精である大妖精、あいや大ちゃんがそう感じるってことは、他の妖精もそう感じてるってことか?

 

「ですからあの〜、ちょっとあの二人が落ち着くまでは桂一さんに着いて行こうかと思いまして〜、迷惑ですか......?」

「いや、全然構わないが」

 

そんな不安そうな上目遣いでお願いされて断われるだろうか、いや、ない(断言)

まあ正直大人しそうだし断る理由もないため許可する。なにより普通に話せる人間(というか人間自体が少ない上大ちゃんも人間ではないが)はとてつもなく珍しいのでむしろお願いしたいくらいだ。

 

「では失礼して〜」

「ほぇ?」

「ア゛ァ゛?」

 

思わず惚けた声を出してしまう。

だって、大ちゃんのあそこが大ちゃんなのだ。意味がわからない。

簡単に言うと、大ちゃんが背中に抱きついてきた。首に腕を回して。つまり、当たってるわけだ。ナニがとは言わないが。

あと『ア゛ァ゛?』という地獄から這い上がってきたかのような声を出したのは一部始終を見ていたレミリアである。神を射殺さんとばかりにこちらを―――というよりも俺に抱きついてつぶれたように見えたであろう大ちゃんの大ちゃんを睨んでいる。正直全てを投げ出して逃げたい。あ、そいやフランに抱きつかれた時はなにもなk

 

「......どうしたんですか? いきなり震え出しましたけど、大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫だ。も問題ない」

 

......それよりグングニルを構えてるお嬢様に、霧の泉があるであろう方から感じた寒気をそうにかしてほしい。

いや、いかん! さっきからテンションだだ下がりで思考がつまらなくなってきている! もっと思考を! 妄想力を、タカメルんだああああああ!

 

「レミリア!」

「......なによ?」

「俺は別にちっちゃくてm」

 

ピチューン

 

「ああ! 桂一さん!」

「......私はまだ吸血鬼としては子どもなだけだわ。ええ、精神的には大人だけど体の成長という時の運命には抗えないものよ。だから私にはまだ将来性がある。だから見比べて落ち込むなんてことがあるはずがーーーー」

 

そこには声を出す間もなく倒れた桂一、それを心配する妖精s、自分にまだ将来性があると言い聞かせているレミリアの姿があった。

それはそれは平和な一日の一コマであった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

一部始終をなんとなく見ていたメイド長の一言

 

「......桂一は馬鹿ですか。いえ馬鹿でしたね」




年内に投稿できなかっただと......!?
明けましておめでとうございます。葬炎です。相変わらず遅くて申し訳ございませんorz
年末年始休み中に他のも一話ずつ投稿したいところ。まあ多分無理でしょう。


大妖精こと通称大ちゃんは、二次創作ではよくチルノの保護者的な立ち位置や苦労人として書かれてます(この作品でも)が、原作では立ち絵も台詞もない、中ボスだけど今のとこ完全な脇役というか、完全なモブです。チルノのステージの中ボスというだけで、実際は妖精なのか別の妖怪なのかも設定されてるわけではありません。設定で名前が大妖精と書かれているだけです。チルノとの関係も不明です。
まぁようするに二次創作に出てる大ちゃんは完全な創作キャラですね。
あと小悪魔と朱鷺子(ZUN氏作成の小説である東方香霖堂の一話だけに登場したキャラ)も同じような感じですね。二次創作に出てるのはほぼ全部と言っていいほど二次設定です。

あ、そういえば一般的な妖精は、原作のキャラとしての大きさ(ゲームだから見えるように大きくしなきゃいけないという理由もあるだろうが)から考えるに普通の子供くらいの大きさがあり(恐らく)普通にしゃべれます。ですがこの作品では手乗りサイズとしてしゃべれない設定です。理由は桂一にずっと着いていってもらうにはそのくらいの大きさじゃないと邪魔だし、チルノや大妖精との差別化もできるかと。そして可愛い(重要)。
あ、それとは別に紅魔館で働いてる妖精は御都合主義ってことで別です。普通の子どもくらいのサイズがあります。そうしないと掃除できないですし。
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