幻想縁起   作:葬炎

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無事なんてなかった

「おれ〜はー♪ な〜んでこーんな〜にー♪ ふーこーぉーなーのぉ〜♪」

「おぞましい声で喋らないでください」

「やけになるのも許されないっていうのか!」

 

神は死んだ! と大げさに頭を両手で挟みながら左右に振るう変人が一人。そう、俺氏こと桂一です。

 

今現在地ですが―――

 

「ほら、ぱっぱと走ってください。死んじゃいますよ」

「なじぇこげなことになてるんすかああああああ!」

 

―――抜き身の日本刀を片手に持ちながら森の中、咲夜さんと二人で妖怪さんたちと鬼ごっこちうですた。

なんでこうなったか、回想どぞ。

 

 

 

 

 

__________

 

 

 

 

「おぉ……!」

 

思わず感嘆の声が漏れる。

抜いて出てきた刀身は、まるで先ほど磨かれたばかりのように思えるほど綺麗で、傷がなかったのだ。

 

「うぇはへぇ」

「なんて気持ち悪い声出してるんですか」

「壊れてしまったかしら?」

 

罵倒してるようで心底心配した風な罵倒の声が聞こえてくる。大丈夫だ、問題ない。俺は桂一で桂一は俺で、L5なんて発症してないし嘘だッ! なんて叫んだりはしないしそんなことよりおうどん食べたい―――

 

「桂一、意識をしっかり持ちなさい。目が虚ろになってるわよ。それにそれ、霊力が宿った刀―――霊刀とでも言えばいいかしら? みたいね」

「―――はっ、なんか頭がおかしくなってた」

「それはいつも通りね」

「いつも通りですね」

 

おいこらそこの主従。まるで年がら年中狂ってるみたいな言い方するんじゃない。あと可哀想な子を見るような目はやめてくだちぃ。

とりあえず危険な刀そうなんで鞘に入れて柄を掴んでいる手を離そうとする。が、

 

ガチャ

 

「あれ?」

 

がチャチャ

 

「あーれれー?」

 

ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ

 

「どうやら自分の意思では手放せないみたいね」

「残念! 俺は呪われてしまったぁ!」

 

まるで手放そうとする意思に反逆するとでも言うように手が離れることはなかった。

これはどげんかせんとあかんと思い、両足を鍔の部分に引っ掛け柄にひっついてる手がちぎれ飛びそうなほど全身で力を入れてみたが、離れる気配が感じられない。このまま一生この刀と寝食を共に過ごすのかと思うと絶望しかないですがそれは。

いや、まだだ。まだ終わらんにょ!

 

「問題ないでち」

「自分では気づいてないかもしれないけど、少し、いやだいぶ言葉が変になってるわよ」

「もうオリョクルはやm―――はっ」

 

危ない。意識が持ってかれる。自分が変になってることがわかる。抗えない。どうすればいい。

 

「その霊刀はね、少し前に紅魔館の近くで落ちてたのを美鈴が拾ったの」

「それでそれでそれがそれでどうしたと?」

「なんか封印されてたみたいだけど、危険な気配は感じなかったから、桂一に渡してみたんだけど―――」

 

レミリアは続けて言おうとしていた言葉を飲み込み、一旦間が空く。そして今までまっすぐこっちを向いていた目線が明後日のほうについっとフライアウェイしながら続きの言葉を紡いだ。

 

「―――それ見た感じだと、持ち主に対してけっこう強力な精神汚染の効果があるみたいね」

「実験台にしたんでぃすかああああ!?」

 

どうやら俺は実験台にされたらしい。

 

 

 

 

 

__________

 

 

 

 

 

 

そのあと聞いた話しをまとめるとどうやら、

 

・拾ってきた

・解析→なんもわからない

・封印されてるけど危険な感じはしない

・桂一に抜かせてみる→霊刀と判明

・どうせ巫女んとこに行くし任せちゃえ☆

 

らしい。

封印かかってるから博麗んとこの巫女さんに頼んで調べてもらうつもりだったらしいが、抜き身が見てみたいと思って俺を煽って抜かせてみたら予想以上に危険だったらしい。泣きたい。

それに抜いた瞬間封印されてた霊力が解放されたらしく、それに引き寄せられるかのごとく―――

 

「リアル鬼ごっこってかああああああ!」

「あ。少し進んだとこにムカデ妖怪がスタンバってますよ」

「ひぃっ!? っていねえじゃねえか!」

「冗談です」

 

時と場合を読んだ冗談を言ってください。死んでしまいます。

そう、この霊刀から溢れ出る霊力を目印に妖怪が集まってくるのだ。ワラワラと。

そしてそれとはあまり関係ないが、頭の上の妖精たちが面白がって後ろの妖怪たちに弾幕を撃ってくれるおかげで牽制になっている。久しぶりに妖精'sが役に立った瞬間である。いや逆にそのせいで怒って走る速度が上がってる妖怪もいるし±0か。

 

「にしても言動が落ち着いてきましたね」

「なんで冷静なんすかああああ! あと精神汚染はなんとなく耐性ができたああああ!」

 

と思う。最初はアレだったのに対して今は思考は冷静になってるのがわかる。たまに無性にネタ発言したくなること以外は問題ねえ。俺はまだ戦える。

 

「……。なるほど。元(桂一)が狂ってるから汚染されても変わらないんですね」

「天啓を得たと言わんばかりに罵倒すんのやめてくださっ」

 

ダン! バキャァッ!

 

危ねえ! 横から突っ込んできた角が生えたイノシシっぽい姿の妖怪をすんでのとこで飛び込み前転っぽいことをして回避する。ほら、モン◯ンの緊急回避みたいなやつだ。

イノシシは突進が外れたのに気づいてないのか、そのまま俺の後ろを右から左へと走り去り、その先にあった巨木にぶつかり角が刺さったせいで身動きがとれなくなっていた。ざまあ。

とっさにあんなこと(緊急回避)ができた自分を褒めまくりたい。

 

「ああ、そっちの茂みから妖怪が―――って遅かったですか」

「明らかにイノシシが突進し終わった後なのを確認してから発言してんですがそれはっ!」

 

咲夜さんは木から必死に角を抜こうとしてるイノシシをちらっと見た後そんなことを言ってきた。俺を亡き者にしたいのかとたまに思えてくるサトゥーヤさんに文句を言いたい。

っと、そんな恨み言を言っている場合じゃないな。これじゃ埒が明かないんだがどうすれば。

 

「咲夜さん! 後ろのやつら倒せないんですか!?」

「倒してよかったのですか?」

「……倒せよ!?」

 

まるでそれなら早く言ってくれればいいのに、とでも言わんばかりな雰囲気を醸し出す咲夜はんにさすがに仏のようだと言われた俺も半ギレ気味に突っ込まざるえない。

だがそれでわかってくれたのか咲夜さんはスペルカード、通称スペカ。スイカみたいだな。を取り出した。

 

「さすがに数が多すぎて通常弾幕で倒すのは面倒なので使います。幻符『殺人ドール』」

 

咲夜さんが宣言すると同時に多数の巨大なナイフをいつのまにか持っていた咲夜さんが軽く投げるかのような動作をすると、ナイフは回転しながら咲夜さんの周囲に留まった。そしてそれぞれ狙いを付けたのか回転が一瞬止まり、切っ先を相手に向けるとそれぞれ妖怪に向かってものすごい勢い(小並感)で飛び出して―――妖怪どもの頭を貫いた。

 

「……ぉえっ」

「これぐらい慣れないと幻想郷では外出できませんよ?」

「…ふっ、大丈夫だ、問題ない」

 

ドサドサっと音を立てて崩れ落ちる頭からナイフを生やした妖怪たち。

頭が貫かれ死ぬ瞬間を、真っ赤な液体やそれに混ざる様々なものを直視してしまった俺は思わず膝を折り、襲いかかる吐き気に耐えるために手を口に当てる。

少し収まってきたころに珍しく、本当に珍しく厳しい言葉ではあるが普通に心配してくれてる言葉を咲夜さんがかけてきてくれた。それに大丈夫、と答えた気がする。

さすがに妖怪とはいえ生物の見た目をしているものの死体を間近で見るのには抵抗があったようだ。バ○オとかのぐろさなら全然平気だったから大丈夫だと思ってたんだがな。

 

俺の吐き気が完全に、とまではいかないが動いても大丈夫なほどに治まったのを確認してからまた森の中を神社に向かって歩き出した。

 

そこからの咲夜さんは今まで並走するだけでなにもしない役立たずだったのが嘘みたいに普通に撃退してくれるようになったので順調に進行することができた。今までの苦労を返せと言いたかったが拗ねられてなにもしなくなると死活問題なのでなにも言えない俺ですた。まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(おかしい……なぜ桂一は逃げ切れてる?)」

 

私は考えていた。主であるお嬢様がなにを考えてなにをしようとしているのか、お嬢様が私になにを求めているかを。

 

「(あの霊刀が身体能力、五感を向上させてる?)」

 

明らかな異常。妖怪から本気で追いかけられてるはずなのに桂一は逃げ切った。多少危ないところはあれど、妖怪とほとんど同じ速度で走っていたのだ。普通の人間(.....)ならありえない。

要因の特定は簡単だ。おそらく桂一が今現在持っていて手放せないという霊刀のせいだろう。

ではなぜ桂一にそんな刀を持たせたのか。妖怪と同じくらい速力が上がり、妖怪の奇襲に反応できる程度まで五感を上げるとはいえ精神汚染という危険な能力がある霊刀を。

 

「(本当に封印によって調べてもなにもわからなかったのか? いや、ありえない)」

 

紅魔館にはパチュリー様という高位な魔法使いがいるのだ。例え霊力による封印やらで専門外だったとしてもなにもわからないなんてありえない。それとも霊力という専門外でなおかつ強力な封印だからなにもわからなかったとでも言うのだろうか。いや、そんな強力な封印ならそもそも桂一が鞘から抜くことなんてできるはずがない。

 

「(桂一をあわてさせるため? それはありえない)」

 

精神汚染や刀を手放せないことによるパニックを見るために嘘をついてまで抜かせた可能性。ありえない。

お嬢様はいじったり悪戯することは多々あるが、それは気に入ってる証拠。そんなお気に入りを命の危険に晒すなんてお嬢様の性格からしたらありえない。

 

「(桂一を鍛えるため? それもありえない)」

 

確かに普段の自分以上の身体能力を体感できればそれを目標にしたり、その感覚を元に前に比べたら敏感に反応できたりするかもしれない。だけどそれは―――雀の涙程度しか違いはないだろう。少なくとも紅魔館という特殊な環境にいた私や吸血鬼であるお嬢様からしたら。

 

「(いえ、それだけでもする必要があった……?)」

 

そう、意味はない。よほど緊急で、雀の涙程度でも役に立つようにしないといけなくなるなんてことが未来に起きるなんて確証でもない限り。……確実に生じる運命(..)でもない限り。

 

「(……お嬢様は、なにを見てしまった?)」

 

わからない。自分には運命なんて見えないし理解もできない。

ただ主がそう求めるのであれば従者の自分はそれに従うだけ。細かく考える必要はない。……ない。

 

「……少し手助けしてあげましょう」

 

ぽつりと呟いた言葉、桂一にははっきり聞こえてなかったようで首を傾げるばかり。

だけど紅魔館の住民である桂一に何者かが危害を加えるというのなら―――

 

「覚悟してくださいね……?」

 

誰に言うでもなく呟いた言葉は空気に溶けて消える。

目の前にいる桂一が少しぶるりと震えた気がしたが気にしないで空から奇襲しようとしていた鳥妖怪を撃ち落としながら、私は―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃の桂一

 

「(え、なになに『覚悟しろ』!? いったいどんな罰ゲームが待ってるんですかああああ!?)」

 

奇跡的に咲夜さんがつぶやいてた言葉を一部分だけ聞き取れたらしく、心底混乱の極みだった。




なんとなくオマケ

〜キノコタケノコ戦争〜

桂一「タケノコに決まってるだろJK」
レミ「なに言ってるのよ桂一。キノコに決まってるでしょ」
桂一「幼女がそんなひyなもん食うなよ。それにあれじゃん、キノコとか最後持つところ残っちゃうじゃん」
咲夜「いったいどんな食べ方してるんですか」
桂一「ん? ほら、チョコの部分だけ先に食うでしょ?」
レミ/咲夜「一口で全部食えよ」
桂一「なんかそれだと負けた気がするんだよねえ」
レミ「意味がわからないわ」
桂一「んで、咲夜さんはどっち派?」
レミ「キノコよね?」
咲夜「私はきこりの切株派です」
桂一/レミ「(またマイナーな物を……)」

ちなみに作者である私はきこりの切株派です。知り合いに話したら割と知らない人が多かったです。皆さんは当然知ってますよね?


はろー。はろー。私です。葬炎です。
まず最初、また遅くなって申し訳ございませんでした。たたでさえしょぼい小説なのにここまで1話1話の間隔が長いと何人読んでくださってるか心配です。

本編についてですが、本当はくだらない落ちを思いついてから投稿しようとしたのですが、そうすると何時投稿できるかわからないので先に投稿しました。この話自体は先週くらいにできてたりします。

さてはてこんなのでいいのだろうか……と心配が絶えなくも感想・意見・批判・馬鹿野郎を待ってます。葬炎でした。



あ、勘違いないように言っておきますが、咲夜さんやらレミリアやら桂一を嫌ってるわけじゃありません。むしろ気に入ってます。あんな性格なだけです。
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