「つきましたわ」
「ほほう....」
俺と咲夜さんは今人里の入口に立っていた。
道中青い子どもが襲いかかってきたり、咲夜さんに一蹴されてたり、緑色の子どもがオロオロしてたり、妖精たちが騒いだり色々あったが省略させてもらう。
「ところで咲夜さん」
「なに?」
「咲夜さんって吸血鬼の館(紅魔館)のメイドだけど、人里に入っても大丈夫なの?」
これはちょっとした疑問。
吸血鬼の館のメイドである咲夜さんが人の住む場所に行っても大丈夫なのだろうか。いや、吸血鬼の館のメイドってことを知られてなければ咲夜さんは普通の人間だし、大丈夫かな?
「大丈夫よ。人里の中の人には不干渉という契約があるから、人里にいる限りは手を出さないことをあっちは知ってるわ。当然自ら私に近寄ってくるような輩はいないけどーーいえ、けっこういるわね」
「ほほう」
詳しく聞いてみると、幻想郷内にいる大物の妖怪は人里にいる人間には手を出さないように幻想郷を取り締まる妖怪と契約してるそうだ。そして、その取り締まる妖怪はこの幻想郷を作った妖怪の賢者さんがやってるんだと。なんかその賢者さんは色々と大変そうだな。
ちなみに咲夜さんに近寄ってくる人間とは男が数人らしい。いや、咲夜さんが美人なのはわかるけど、だからといって吸血鬼の館のメイドさんに手を出そうなんて勇者がよくいたものである。
「それじゃ、入るわよ」
「うぃす」
俺と咲夜さんは人里の中に踏み込んだ。
入口に立っている門番らしき人がちらりとこっちを見たが、すぐに興味を失ったかのように目を逸らす。どうやら本当に大丈夫なようだ。
「ここが人里よ。見た感想は?」
「すごく..........古いです」
俺が人里に踏み込んで最初に思ったのは、人里の中の時代がとても古いということ。ここは江戸時代かなんかか?現代人である俺には馴染めなさそうだ。
「私は商店街に買い物しに行くわ。あなたは人里の守護者を訪ねてきて」
「ういうい。その守護者の名前はーーっていない!?」
咲夜さんはパパッと行ってしまったようだ。ちらりと居たはずの場所を見るとそこには風が渦巻いているだけだった。
しゃーない、そこらへんの人に聞くか。人里の守護者でわかるかな....
俺は通りすがりのおじさんに声をかける。
「すみません」
「ん、なんだ坊主?」
「人里の守護者って誰だかわかりますか?」
「人里の守護者? 慧音先生のことか?」
「先生?」
どうやら有名人なようだ。すぐに答えが返ってきた。
だけど先生? なにか教えてる人なのか?
「ああ、慧音先生だ。慧音先生は立派なんだぞ〜。色々と」
「へ〜」
色々と、という発言をしたときに鼻の下が伸びたのは気にしないであげよう。
「慧音先生知らないってことは、おめぇさん外来人か?」
「え? ええ、そうです。最近幻想郷に入ったばっかで知らないことが多いんですよ」
「そうかそうか。若ぇのに大変だな。住むところは大丈夫なのかい? うちでよかったら数日は置いてやれるぜ? その間に色々教えて、一人暮らしできるようにしてやらぁ」
「ありがとうございます」
どうやらこの人は優しい人だったようだ。ガハハハと笑いながら俺の世話を勝って出てくれた。
うぅむ、人里の人が全部そうではないだろうが、なかなかよさそうな場所だな。
「でも遠慮させてもらいます。今は紅魔館で世話してもらっているので」
「紅魔館!?」
おじさんの驚き声が俺の耳元で響く。うう、不意打ちされた。耳がキーンてする。
とても驚いたようで、おじさんは口が空いたまま呆然としていた。まぁそりゃそうか。
「おめぇ、今までよく生きてたな。なんかあって吸血鬼に気に入られでもしたのか?」
「まぁ、そういうことです」
気に入られたのは妖精を扱うことなんだよね。それがなければどうなっていたやら....
たぶん普通に食糧にされてオワタだっただろうな。
「っとと、そんなことより慧音先生の居場所だったな。慧音先生ならたぶん今頃寺子屋で授業中だろうさ。時間を見計らって授業の合間の休み時間に行くといい。寺子屋の場所だがーー」
「ふむふむ」
俺はおじさんに慧音先生とやらがいるであろう場所を教えてもらい、そこへ向かう。
さて、時間が合えばいいんだけど....
ーーーーーーーーーー
「ここか」
そこには周りの家と比べて比較的大きな家があった。ここが噂の慧音先生がいる寺子屋なのだろう。
寺子屋と言ったら、昔の学校か。うへぇ、生理的に受け付けないものが....いや、今は九九の789の段ができなくてずっと居残りさせられてた黒歴史を忘れるんだ! そう、ここはあの頃俺がいた小学校とかじゃないんだ。あくまで幻想郷内の寺子屋という施設なんだ。子どもがいっぱいいるだけの、あの頃とは関係ない場所なんだ....!
『はい、とりあえずここまで。休み時間にしていいぞ』
『『『『『はーい!』』』』』
と、俺が苦悩している間に寺子屋の授業は休み時間に突入した様子。
しかし、ここまできて今更だけど人里の守護者(慧音先生)に会ったところでなにを言えばいいんだ?
これから幻想郷でお世話になります? それは言うとしたら幻想郷の賢者さんじゃないか? 人里にお世話になるわけでもないし......
「......君はそこでなにをしているんだ?」
「あ、どうも。後藤桂一と申す者です。よろしく」
「よろしく。私は上白沢慧音だ。で、私になにか用なのか?」
寺子屋の前で変な顔をしていた俺を不信に思ったのか、入り口から出てきて俺に話しかけてくる慧音先生。やべぇ、まだなに話せばいいかわかんない....
「えーと、私は外来人で、幻想郷に来たばっかで、紅魔館で世話になってます。ここまでOK? あ、いや大丈夫?」
「......待て、外来人はともかく紅魔館で世話になっている....?」
とりあえず現状説明。OKを大丈夫? と言い直したのは見た目すごい昔の時代である人里の人に英語がわかるかわからないからだ。まぁ言葉のニュアンスでわかるかもしれないけど。
そして案の定紅魔館で世話になっているというところに引っかかった様子の慧音さん。しかし本当のことだからしょうがない。
「....そうか、紅魔館の新しい住民なのか。だがその紅魔館の住民が人里の守護者である私になにか用なのか?」
「....あるぇ〜?」
どこか警戒し始めた気配を感じる。気配というかなんとなくだけど。
やっぱ紅魔館の住民、吸血鬼の館の住民ってのは怪しいのかな....?
「えーと、それが私にもさっぱりわからないんですが....」
「ほほう、理由もなく寺子屋の前で怪しい動きをしていたと?」
ヤバイ、変な方向に勘違いされてそう。もう飛びかかってきそうなくらい身構えちゃってるし。
だけど俺にはなにを言えばわからない。とりあえずで発言すると余計疑われそうだし、どうすればっ。
「....無事人里の守護者に会ってると思いましたが、変な感じになってますね。私はあそこの茶屋で待ってますので、解決したら教えてください」
「ちょっっっと待った咲夜さぁぁぁん! 特に説明されてなくて困っている俺を助けてぇぇぇ!」
「それくらい自分で考えてください。私はめんどくさそu(、じゃなくて話しをややこしくしたらいけないと思いますのでお団子を食いながらお待ちしてます」
「ごまかせてないから! はっきりとめんどくさそうって言ってたから! お願いだから助けて!」
今にもくるりと方向転換して茶屋に向かいそうだった咲夜さんに後ろから抱きついて止める。
なんか役得というか手にイイ感触がするが、今はそこに構っている暇はない。
「....なんだ、独り身の私の目の前でそれを見せつけるために来たのか? だったらもう見たから早く帰ってくれないか? 私は暇じゃないんだ」
「あなたはいったいなにをしていたのですか? 私は人里の守護者がここまで呆れている顔を見るのは始めてですよ?」
「失礼な。なにを言ったらいいかわからないから寺子屋の前でウロウロしていただけだ」
「あなた、もしかして小さい子にしか興奮しない特殊な性癖だったのですか....? これはお嬢様に伝えなければいけませんね」
「ロリコンちゃうわーーーー!」
なぜ寺子屋の前でウロウロする = ロリコンの方程式が立ったのかわからないが、咲夜さんの危険な発言を全力で否定する。そしてその発言を聞いて『やっぱり』といった顔をしてこちらに身構え直した慧音先生には落ち着いてもらいたい。
「だーかーらー!」
〜青年説明中・・・・〜
「ーーということなんですよっ!」
「ふむ、つまり君は吸血鬼に人里の守護者に会ってこいと言われたと? そして理由の説明はそこの吸血鬼のメイドがすると」
「そういうことです!」
「....そういえばそんな気がしてきましたわ」
納得した顔をする慧音さんとちょっと目が右斜め上のほうを向いている咲夜さん。
よし、これで誤解はなくなったかな。
「さて、では説明してもらおうか。そろそろ授業が始まるから手早くお願いする」
「・桂一が紅魔館に住むことになった
・これから桂一が人里に買い物しにくることがある
・変な事件とかに巻き込まれたときに紅魔館の従者ってことがわかるように誰かに説明しておく
・人里の守護者で顔が広いあなたに説明しておけばいいと判断
以上よ」
「ふむ、それで、最初っから気になっていたんだが、そこにいる妖精たちは?」
『〜〜!』
『〜〜〜〜〜〜!』
『〜〜〜!』
「あ」
すっかり忘れていたが、俺の頭の上には相変わらず妖精たちが騒いでいた。いやはやもう慣れたせいかけっこうな音量で騒いでるのにまったく気にしてなかった。
「こいつらは、まぁ俺になついている妖精たちですよ。危険はないんで安心してください」
「そうか。ならいい。くれぐれも人里の中に放してイタズラさせないでくれよ」
「了解」
まぁ大丈夫だろう。俺にチョコというリーサルウエポンがある限り妖精たちは身勝手に行動しないはず。....なにかに気を取られたり夢中になったりしなければ。それは注意しなきゃいけないか。
「よし、わかった。好きにするといい。なにか問題が起きたら私に言ってくれれば事情によって解決できるかもしれない。遠慮なく頼ってくれ」
「あいあい。ありがと!」
「うむ。それでは私は授業に戻るからな。じゃぁな」
ビシッと片手をあげて寺子屋に戻っていく慧音さん。やべ、かっこいい。
さて、じゃあこの後ーーどうしよう。気づいたんだけど、俺にこの後の予定がまったくと言っていいほどない。目的だった人里の守護者(慧音さん)に挨拶は終わったし、だったら買い物の手伝いかな?
俺は咲夜さんのいるほうに振り返りーー
『お団子を二皿お願いします』
『はいはい。お茶はいるかい?』
『お願いします』
「......」
俺はなにも見ていなかったかのように振り返り直る。
さて、人里を探索しようかな。
遅れて申し訳ございません!!!
一ヶ月空くとは思ってませんでした。気をつけますorz
しかし次も遅くなるかもしれません。いや、大丈夫かな....?
少なくとも年末年始は忙しいので無理です。理由は車の免許を取るために合宿してるからです。予想以上に厳しいんですね....
それではまた会う日までノシ