漆黒の騎士と白の魔術師   作:源さん

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だいぶ、投稿が遅れてしまいました。申し訳ありません。
もう塾やらテストやらで時間が取れなくて⋯⋯。
何ヶ月ぶりだろう⋯⋯。
しかも、時間かかったのに内容微妙という結果に。


第3話

 

 

 ゴォーンという音がしてドルモンは目を覚ました。

 

 「⋯⋯うぅ〜、やっぱりまだ慣れないな〜」

 

 ウィザードの家に滞在し始めてからもう二日になるがどうもこの鐘の音で起こされるのに慣れることができなかった。

 ちなみにこの鐘は6時、12時、夕方の6時の三回のタイミングで鳴っているようなので、今はおそらく朝の6時だろう。

 

 「だけど、この二週間ぐらいで色々な事があったよな〜」

 

 自らが囚われていた施設から脱出し、ロイヤルナイツに追われ、それを撒いたかと思えば森で迷い、オオクワモンに襲われ⋯⋯思い返すとよく生き延びられたと思うようなものばかりである。

 そして、現在はウィザードに拾われ、旅に必要な知識や痕跡の消し方を教わりながら過ごしている。

 だがまあ、こうも色々な事が一気にあると、もはや他人事のように思えてくる。

 しかし、これらは全て自分に起こった事であり、今も自分には追っ手がかかっているのだろう。

 そう考えるとやはり自分はここに長く居るべきでは無い。

 けれど、やはり初めての自分の居場所とも言える場所を見つけたのだ、ここから離れたいとは思えない。

 この考えをドルモンは、この二日間ずっと繰り返しており、今回こそ自分の中で結論を出そうとするが、

 

 「おっ、もう起きていたか。朝食ができているぞ」

 

 結局、ウィザードが入ってきてうやむやになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 ドルモンの食べっぷりを見て、ウィザードは少し驚いていた。

 今までは体力の点も考えて、胃が疲れるようなものはあまり出していなかったが、もうそろそろ大丈夫だろうと思い、少々重めの料理も出したのだが、20分もかからず食べ終えていた。

 

 「⋯⋯そんなに早食いをして大丈夫か?」

 

 その食べる速さに少し心配して声をかけるが、

 

 「大丈夫だろ」

 

 少しの間も置かず、即答された。

 それに苦笑しながら、この二日間の日課となっているドルモンの診察をする。

 どうやら骨折もすっかり治り、他の傷も少し痕が残っている程度になっていた。

 

 「よし、大体の怪我は治っているな」

 

 いつもならばこのまま旅に必要な知識などを教えていくが、ドルモンの状態を診て思いついたことがあった。

 

 「そうだ、この村を見てまわる気はないか?」

 

 少し前からこのことは考えていたのだが、ドルモンの怪我がまだあまり治っていなかったので言わなかったのだ。

 

 「えっ、う〜ん」

 

 ドルモンはそう言われて少し考え込む。

 行きたいのはやまやまだが、ドルモンには一つ懸念することがあった。

 それは多数の者が自分の存在を知れば、追っ手に見つかりやすくなるのでは、という不安である。

 それに、この村は名物の鐘によって旅人もよるはずで、そのような者たちに見られれば、情報がかなり広く伝わってしまう。

 その懸念を察知したのかウィザードが口を開いた。

 

 「ああ、君のことについてはクロス様が村の全員に口止めしているから大丈夫だ」

 

 それを聞き、ドルモンは思わず声を上げる。

 

 「⋯⋯えっ、ということは、オレのこと話したの!」

 

 いくら村長から話されたとしても、お尋ね者がいるのだ、全員がそれに従うとは思えない。

 しかし、ウィザードは微笑さえ浮かべながら話を続ける。

 

 「ふふっ、大丈夫だよ。この村は全員がクロス様に惹かれて、崇拝しているような者か、移り住んできた者たちばかりだからな。その方が頭を下げて頼んだんだ、従わない者はいないさ。それに、こう言っている私もその一人だからな」

 

 そう言われ、少し安心するとともに、あのクロスという人はすごい人だったのだと思った。

 しかし、そのような人が自分のような者のために、頭を下げて頼んでくれたことには、恥ずかしいような申し訳ないような気持ちになった。

 そう考えている間にどうやらまだ話が続いていたらしい、急いで聴き取ろうとする。

 

 「それにこの村は案外、閉鎖的でな見物客も鐘の付近以外は立ち入りが禁止されているから、鐘に近づきさえしなければ見られはしないよ」

 

 そこまで言われればドルモンとしては断る理由は何も無い。力強く頷いた。

 

 「よし、では行くか」

 

 そうしてドルモンにとっては久しぶりに外へ出たのだった。

 

 

 

 「うわ〜!」

 

 外に出て、ドルモンは大きめの歓声を上げた。

 まず、目に飛び込んできたのは村を囲むように連なった山々である。

 春の色とりどりの花と木々の葉の鮮やかな緑がそれぞれの山を染め上げ、それが空の青さと相まって美しい景色を作り出していた。

 その次に目に映るのは、村そのものである。

 おそらくウィザードが話していた物であろうと思われる黒い鐘があり、それを中心に建物ができていた。

 そして、最後に思ったことは⋯⋯

 

 「遠っ!」

 

 そう遠いのである。

 どうやらウィザードの家は村を囲む山々の一つ、それもかなりの高さに位置するようだ。

 そのおかげで全体の景色が見渡せたのだろうが、ぱっと見、2,3キロ程はありそうである。

 

 「さてと、歩いて降りていくぞ」

 「えぇ〜、歩くの?」

 

 そう言って隣を見ると、ウィザードの姿が消えている。どこに行ったのか姿を探すともう先に進んでいた。

 

 「ちょっ、ちょっと待って!」

 

 その後ろ姿をドルモンは急いで追っていった。

 

 

 

 〜30分後〜

 

 「はぁ、はぁ」

 

 村に着いたドルモンは荒い息をしながらへたり込んでいた。

 

 「大丈夫か?」

 

 それに対しウィザードは汗一つかいていない。

 

 「けほっ、微妙。というかなんでウィザードは平気なんだ?」

 

 ドルモンが疑問の声を上げるのも当然だった。

 なぜなら、二人はほとんど整備されておらず、普通に歩けば2時間はかかりそうな急な山道を駆け下って来たのだ、疲れない方がおかしい。

 

 「う〜ん、慣れじゃないか?」

 

 その返答を聞き、慣れでどうにかなることなのかと思いながら、ドルモンはなんとか立ち上がった。

 

 「おっ、ウィザードか、久しぶりだな」

 

 その時、道端から腹から下は馬その上は人のような形をしたデジモンに声をかけられた。

 

 「むっ、ヘラか。久しぶりではないだろう、昨日、クロス様が開いた集会であったばかりじゃないか」

 「そうだったか?まあ、いいや。こっちがお前が拾ってきたっていうデジモンか?」

 

 急にこちらに話を向けられ、どぎまぎしながらも話しかけた。

 

 「え〜と、あなたは?」

 

 話しかけてきたデジモン軽快な声で問いに答えた。

 

 「ああ、まだ自己紹介をしてなかったな。俺の種族名はケンタルモン、個体名はヘラだ。この村で薬屋をやっていてな、お前のとこのウィザードに世話になってる者だよ」

 「へぇ〜。んっ?ウィザードに世話になってるってどういうこと?」

 

 なぜ薬屋のヘラがウィザードの世話になっているとはどういうことだろうと思い聞き返す。普通、逆なのではないかと思ったのだ。

 

 「あれ、ウィザードは話してないのか?こいつは薬の研究しててな、俺の所で扱ってる薬も大半こいつが作った薬なんだよ。多分この村の中で一番、薬学と医学に精通してんじゃねえかな」

 

 そう言われまたもや、へぇ〜と感心の声を上げる。どうりでウィザードが自分を治療した時の手際が良いわけである。

 そう思って、ウィザードの顔を見上げると、当のウィザードは渋い顔をしていた。

 なぜだろうと首を傾げていると、唐突にヘラが声を上げた。

 

 「ああ、そうだ、忘れてた。クロス様にお前を呼んでくるよう頼まれてたんだった」

 

 その言葉を聞き、今度はウィザードが首を傾げる。

 

 「クロス様が?なぜだ?」

 

 ウィザードの問いにヘラはあっけらかんとした口調で答える。

 

 「さあな。俺はただお前を呼ぶよう言われただけだ」

 「そうか⋯⋯わかった。すぐに行ってこよう」

 

 そうして歩きだそうとしたところで、急に足を止め、ヘラに話しかけた。

 

 「そうだ、今からドルモンにこの村を案内しようと思っていたのだが、代わりに君が連れて行ってくれないか?」

 「おう、いいぞ」

 

 即答である。

 それを聞き、頷いてからウィザードは再び歩き始めた。

 その場にヘラとドルモンだけが残され、ヘラがドルモンに話しかける。

 

 「とりあえず、ざっと案内するからついてこい」

 

 そして、返事を待たずスタスタと歩き始める。

 

 「えっ、ちょっと待って!」

 

 なんとなく、既視感(デジャブ)を感じながらドルモンはついていった。

 

 

 

 

 少しして、ドルモンが追いつくと、ヘラが再びドルモンに話しかけたきた。

 

 「そうだ、お前この村の名前をウィザードに教えてもらったか?」

 「へっ、名前?そういえば⋯⋯」

 「はぁ〜、その様子だと教えてもらってねえな」

 

 たっく、あいつは仕事できるくせにこういうことできねえんだから、とか言いながらヘラは嘆息した。

 仕事とはあまり関係ない気がするがと思ったが、ドルモンは口には出さない。

 

 「この村の名前は時鐘(ときかね)の村つってな。名前の由来はお前もここに降りてくるときに見たはずの鐘だ」

 「へぇ〜、そうなんだ」

 

そう言った後、ドルモンは少し黙り込み、小さな声で呟く。

 

 「⋯⋯ちょっと見てみたいな」

 

 観光名所であり、さらに村の名前の由来にもなっているとなれば、どんなものなのか見てみたくなるのは当然だ。

 しかし、自分は追われている身である。観光名所などにはたくさんの観光客や旅人が居るため、見られる危険性がある。

 さらに旅人が立ち入り禁止になっている場所で旅人に見られない場所では、建物が邪魔になり見ることができなかった。

 はぁ、と溜め息をつく。そんな様子を隣で見ていたヘラは少し考えてから、ドルモンに向かって言った。

 

 「そうだ、観光客とかに見られずに鐘を見れる場所があるんだ。来るか?」

 

 それを聞き、ドルモンは目を輝かせ、頷いた。

 

 

 それからしばらくして二人は二階建ての一軒家に来ていた。

 

 「ここは?」

 「ん、ああ俺の家だよ」

 「へぇ〜」

 

 しかし、なぜヘラの家なのかがよく分からなかった。

 疑問が表情に浮かんでいたのだろう、ヘラに苦笑されていた。

 

 「まあ、とにかく上がってくれよ」

 

 そして、二人は家に入っていった。

 

 

 ヘラの家に入るといきなり色々なものが混ざり合った臭いが漂ってきた。

 

 「うえ〜。この臭いは何?」

 「商品の薬の臭いだ。まあそのうち慣れてくる大丈夫だ」

 「ふ〜ん」

 

 ドルモンは相槌をうって部屋の中を見渡した。

 日当たりが良いらしく、窓から光が入ってきて、部屋自体は明るいのだが、棚に陳列されている薬や薬草のせいだろうか、不思議な雰囲気が漂っていた。

 

 「んじゃ、二階にあがるぞ〜」

 

 ヘラはそう言って、カウンターに入り、そのまま奧の部屋へ入っていった。

 

 

 ヘラの家の二階に上がると一階から物を無くしたような感じだった。つまり、構造的にはあまり変わっていない。ただ、おそらく居住スペースなのだろう、色々な家具が置かれていた。

 

 「ほれ、こっから覗いてみな」

 

 そう言われ、窓から外を覗いてみる。

 すると建物に邪魔されることもなく鐘の姿を見ることができた。

 

 「わあ⋯⋯」

 

 それはかなりの大きさの鐘だった

 全体は素朴な黒で塗られ、そこに迫力溢れる金の龍が描かれている。その龍は見ているだけでなんとなく御利益がありそうな気がしてくるような程だ。

 

 「⋯⋯?」

 

 だがドルモンはそこで不思議なことに気づいた。

 本来あるはずの鐘を打つ物が無かったのだ。

 

 「おっ、そろそろ鳴るな」

 

 ヘラの言葉を聞き、時計を見てみると、確かにもうそろそろ十二時になる頃だった。

 そこでドルモンはハッとする。

 この鐘の音は山の中腹にあるウィザードの家にまで聞こえてくる程の音だ。

 ウィザードの家と比べ、かなり近いこの場所で聞こえる音はかなりの大きさのはずだ。

 そんな心配をしていると、十二時になった。思わず目を瞑って身構える。

 

 ゴォーーーン

 

 (⋯⋯あれ?)

 

 その音は思ったよりも大きくはなく、むしろゆったりとした落ち着くような感じがした。

 そうして鐘を再び見てみる。すると驚くような事が起きていた。鐘がひとりでに何かに打たれているかのように動き、音を出していたのだ。

 その光景をポカンと見ていると隣のヘラが声をかけてきた。

 

 「驚いたか?この鐘はなんでも、その昔デジタルワールドを旅してた大魔導師が作ったって言われててな、こうやってひとりでに鳴るんだよ。それとさらに不思議なことに、この音はこの村と、この村を囲んでる山までなら普通に聞こえるが、その外に一歩でも出ると聞こえなくなるうえ、鐘に近づくほど聞いたときになぜか安心感を覚えるんだ」

 「へ、へぇ〜」

 「あと、鐘の音でこの村の周りに邪悪なものを遠ざける結界を張っていて、その結界が破れたときに警告を出すって話もあるが、こっちは本当かどうかよく分からねえな」

 

 普通ならあまり信じられないが、実際に目の前で起こっている事なので頷くしかない。

 綺麗だし、まあいいか、と開き直って、鐘の音に聞き惚れることにした。

 

 

 

 

 

 

 「⋯⋯もう十二時か⋯⋯」

 

 そう呟きながら、ウィザードは町を歩き回っていた。

 その手には湯気を立てる饅頭の入った包みをぶら下げている。

 帰り際に、ドルモンと一緒に食べて下さいと言われクロスに渡されたのだ。

 そんなウィザードを周りのデジモン達が、不思議そうな目で見ているがウィザードは全く気づいていない。

 その頭の中では先ほどクロスから聞いた話を考えていた。

 あの後クロスから聞かされた話はドルモンを追っているのはロイヤルナイツである、ということだった。

 

 それを聞き、ウィザードはかなり驚いた。

 ドルモンを追っているのはおそらく何かの組織ではないかと予想していたが、まさかロイヤルナイツという巨大な組織だとは思いいたらなかった。

 ロイヤルナイツはこのデジタルワールドの中でもとてつもない軍事力を誇り、さらに現在の最高神、イグドラシルを中心としているため、この世界全体を治めているといっても過言ではないほどの組織である。

 そして、クロスはそんな組織に追われているドルモンをこのまま匿うかどうか訊ねてきたのだった。さらに、どうするかはウィザードに任せると言って。

 普通ならば、素直に引き渡した方が賢明なのだろう。しかし、ウィザードが言ったのは全く逆の言葉だった。

すなわち、このまま自分が預かると言い切ったのだ。

 理由としては自分でもよく分からなかったが、一番強く思ったのは、ドルモンが大罪を犯したようには到底思えなかったからだ。

 そのことをクロスに言うと穏やかな微笑を浮かべながら頷いていた。その後、今後どうやってドルモンを匿っていくかをクロスと話し合い、現在にいたる。

 だが、クロスの前で言い切ったのは良い物のこれがとてつもなく困難だということは分かり切っている。

けれど、一度口にした以上破る気は全く無かった。

 

 「それにこれは私の罪滅ぼしに丁度いいかもしれないな」

 

 そう呟いて、自嘲的な笑みを浮かべる。思い出されるのは、自分の命欲しさに、権力に従ってしまった時のことだ。

 巨大な権力にあらがうことになる、今回のことはまさに罪滅ぼしにピッタリだろう。

 

 「あっ、ウィザード!」

 

 その声を聞き、前を見ると前方にドルモンとヘラが居た。そちらに手を振ると、ウィザードは二人に近づいていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこは不気味な空間だった。

 空間全体が血が乾いたような赤黒い色に染まり、同じ色をしたタマゴのような物体が整列している。

そこには一人の騎士が居た。

 獣のような面を被り、ひたすらに不気味なその空間とは場違いの雰囲気を放っていた。

騎士が、あいかわらず、気味の悪い場所だと思っていると、急に何かの気配がして、まるで空間そのものが話しているような不思議な声が響いた。

 

 ――デクスの様子はどうですか、ドゥフトモン?――

 

 ドゥフトモンと呼ばれた騎士は驚かず、声に応えた。

 

 「ハッ、順調に出来始めています」

 

 そう聞くと声は満足そうに言った。

 

 ――フフッ、そうですか。それではもう少しですね――

 

 すると、ドゥフトモンは苦い顔で黙り込む。

 

 ――⋯⋯どうしたのですか?――

 「やはり、このようなことは止めませんか?このような手段をとらずとも⋯⋯」

 ――黙りなさい。あなたは命じられた通りにすれば良いのです――

 

 声は叱責する口調となり、ドゥフトモンに言い放った。

 

 「⋯⋯わかりました」

 ――それでは任せましたよ――

 

 そうして、気配が無くなると、その場には苦々しい顔をしたドゥフトモンだけが残された。




今回はウィザード達の住んでる村の紹介と、ウィザードの決断などでした。
お楽しみいただけましたら幸いです。
感想、アドバイスなどお待ちしています。
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