漆黒の騎士と白の魔術師   作:源さん

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受験勉強の合間に気合いで書き上げました!ながらく期間を空けてしまい申し訳ありません!
お楽しみ頂ければ幸いです。

誤字、脱字やアドバイス、感想などは常に募集しておりますのでよろしくお願いします。


第4話

 

 

 クロスとの話し合いから数日後、椅子に座りながらウィザードは考えこんでいた。考えていることはドルモンについてである。

 ロイヤルナイツの目から逃れることは簡単では無い。この世界の最高神が中心というだけあってその情報網はかなり広く、さらには自由に動かせる隠密部隊までいると言われている。この村は他の村と比べると多少は閉鎖的だが、いつかは見つかってしまうだろう。

 そう考えるとこの村に留まり続けることは良策ではない。しかし、移動すれば見つかる危険性自体は上がってしまう。

 そのため、ウィザードはここ数日の間、頭を抱えて悩み続けているのだった。

 

 ドタドタドタ⋯⋯

 

 「⋯⋯⋯⋯」

 

 しかし、その思考は騒がしい物音によって遮られることになった。

 

 「はぁ、少し静かにしてくれないか。ドルモン」

 

 そう、物音の主は当の本人のドルモンである。

 呑気に部屋を走り回っているその姿はとても追われている事を自覚しているようには思えなかった。この様子を見ているとロイヤルナイツに追われている、というのが悪い冗談にしか聞こえてこない。

 おかげでウィザードはここ最近、頭痛にも悩まされ始めていた。

 ドルモンがそんなウィザードを心配そうに覗き込む。

 

 「大丈夫?ずっと考え込んでると身体に悪いよ」

 

 原因はドルモン自身なのだがそんなことには全く気づいていないようだ。

 その様子に思わず辛辣な言葉が出そうになるが、寸前で飲み込み、代わりに溜め息を一つついた。

 ドルモンはそんなことには少しも気づかず、また口を開く。

 

 「それにずっと家の中にいるから少しは外に出た方が良いよ」

 「⋯⋯それもそうだな。少し村にでも行くか」

 

 そう言ってウィザードは立ち上がった。ちなみにドルモンは、ただ単に外に出たいだけで言っただけだったりするのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 (さてと、なにをするかな)

 

 気晴らしに村に来たのはいいがウィザードは特にすることがなく空を見上げていた。

 ドルモンはというと、すでに近くで走り回っている。

 そんなドルモンの様子を横目で見つつ、村の様子をざっと眺める。

 今日も村の様子はいつもと同じようにこの村に住んでいるデジモン達が通りを歩き、観光客や旅人がいる区画からは賑やかな声が聞こえてくる。

 その様子を見ながら思い出すのはドルモンと出会う前に訪れた町の光景である。

 あの町では誰もが暗い顔をして通りを歩いていた。また、今思い返してみるとデジモン達の顔には何かに怯えているような様子もあった。

 あそこは数年ほど前にも1度行ったことがあるが、そのときは活気溢れた町だった。それだけに、ウィザードはこの数年の間に何が起こっていたのかが気になって仕方なかった。

 そうやってウィザードが悶々としていた時、通りから声が掛かった。

 

 「よう、お二人さん。こんな所でな何してんだ?」

 「あっ、ヘラさん。こんにちは」

 「⋯⋯なんだ、君か」

 

 ドルモンはちゃんと挨拶したが、ウィザードは少し見ただけで終わらせたのがヘラは気に入らなかったらしく、不機嫌そうな声を出す。

 

 「なんだはねぇだろうよ、ウィザード。おめぇもドルモンを見習って少しは愛想良くしろよ」

 「面倒だから嫌だ」

 「⋯⋯」

 

 これを聞いてヘラはかなり呆れつつ、再び口を開く。

 

 「はぁ、そうかよ。まぁ今日は特に用も無かったし、そろそろ帰るとする⋯⋯、ん?」

 

 途中まで言って急にヘラが口籠もった。

 

 「どうした?」

 「いや、今思い出したんだが俺、お前に薬を作ってきてくれって頼んでなかったけ?」

 

 それを聞き、しばらくウィザードが黙り込む。

 

 「ああ、そういえば1ヶ月くらい前に頼まれてたな。確か魔法薬だったと思うが、納期はいつまでだ?」

 「えっと、ちょっと待て」

 

 するとヘラは、どこに持っていたのか懐から1枚の紙を取り出す。

 

 「⋯⋯え〜と、明日までだな。間に合うか?」

 「問題無い、もうすでにその薬は作って保存していたはずだ。今から取って来るからドルモンの相手をしていてくれ」

 「分かった。で、そのドルモンはどこ行った?」

 「あそこだ」

 

 そう言ってウィザードが指を差した方向に店の展示物を覗いているドルモンが居た。どうやら二人の話に興味が持てなかったのか、ドルモンは再び走り回っている。

 

 「ドルモン、こっちに来てくれ」

 「なに、ウィザード?」

 「一度、私は家に戻るから少しの間、ヘラと一緒にいてくれないか?」

 「うん、わかった」

 

 ドルモンが頷いたのを確認すると、ウィザードはその場から立ち去っていった。

 

 

 

 「さてと、何かしたいこととかあるか?」

 

 ウィザードを二人で見送ったあとヘラがドルモンにそう尋ねた。

 

 「う〜ん、今すぐにしたいようなことは特に無いかな。それより俺はこの村のこととか、クロスさんやヘラさん、それにウィザードのことが聞きたいな」

 「そうか。でも、そういうことはウィザードに聞いた方が早くねぇか?」

 「いや〜、そうなんだけど最近、何故かウィザードがピリピリしててちょっと聞き辛いんだよね」

 「なるほどな、まあ確かにあいつ、なんか考え込んでたからな」

 

 二人でそんな会話をしているが、そのウィザードが考え込んでいる理由がドルモンのせいだとは全く気付いていない様子である。

 

 「え〜と、この村について聞きたいんだったな」

 「うん」

 「それじゃ結構長話になると思うから、一回俺の家に行こうぜ」

 

 そうヘラが提案し、ドルモンもいいよと言って頷きヘラの家に行くことになった。

 

 

 

 

 「なんか飲む物でも持ってくっから、ちょっと待っててくれ」

 

 ヘラがそう言って台所に行き、しばらくしてから手に湯気の立つ緑茶を持って来た。

 

 「ほれ」

 「あ、ありがとう」

 

 二人で緑茶を飲みながら、ヘラが話し始めた。

 

 「まず、この村の起源から話すか。ここは、なにがあったのかは知らねぇが、かなり昔にイグドラシルに反乱を起こして返り討ちに遭った連中が、罰として開拓させられてできたそうだ。まあ、そいつらが開拓した頃はここいらはとんでもない荒れ地だったらしい」

 

 「へぇ〜」

 

 そう聞いてドルモンは少々意外に思った。自分がみたこの村の様子はとても豊かで、元荒れ地であるということは全く感じられなかったからだ。

 

 「それじゃあ、そのデジモン達がここまで豊かにしたの?」

 「いや、なんでもそいつらは、一旦起こした反乱が失敗してほとんどの奴がやけっぱちになっちまったらしくてな、適当に技をぶっ放して憂さ晴らししたり、仲間割れをして殺し合ったりと、むしろここいらをさらにひどい状態にしたらしい」

 

 デジモンは完全体一体で核爆弾に匹敵するような技を持つ。成熟期でもそこまではいかないがかなりの威力を持つ技を出すことができる。そのような者達がヘラの言ったようなことをすれば、恐らくその周辺は焦土と化すであろう。

 

 「じゃあ、誰がここをこんなふうに変えたの?」

 「お前、前に話した大魔導師のこと覚えてるか?」

 「ああ、旅をしてて、あの鐘を作ったっていうデジモンでしょ」

 

 その話は覚えていた。

 

 「そう、そいつがこの村にの近くに立ち寄った時、ここの惨状を見て憐れんだのかどうかは分からんが、なんかの魔法を使ってこの一帯を一瞬で元の状態に戻したばかりか、それまでひび割れた土に切り立った崖と山しか無かったのを、ぜ〜んぶ緑豊かな場所に変えちまったらしい。で、そのついでにそのデジモン達を落ち着かせるためにあの鐘を作ったそうだ。まあ、本当かどうかはよく分かって無いけどな」

 「そんな事できるの?」

 

 デジモン達が荒らし回った土地である。その荒廃ぶりは凄まじかったはずで、いくら魔法を使ったとしても元に戻したりすることは厳しいはずだ。

 ドルモンがそう思って質問する。

 

 「う〜ん、まあクロス様やウィザードが言うには可能ではあるそうだ。あ、ちなみにクロス様はそういう術関係にも詳しいんだ。」

 「へえ」

 

 ヘラが言葉を続ける。

 

 「だけどな、そういう術は魔術師連盟とかいう、術を使える奴らの組織のトップクラスの奴らでさえかなり難しいらしくてな、しかもその大魔導師とやらのいた時代はそもそも、その術ができてすらいなかったらしいんだ。だからちょっとこの話は胡散臭いんだよな」

 「そうなんだ」

 「まあ、村の由来はこのくらいかね」

 

 言い終えると少し冷めている緑茶で喉をうるわせた。

 

 「んで?次は俺らのことだったか?」

 「うん」

 

 ドルモンが頷く。

 

 「え〜と、この村の奴らは結構訳ありの連中が多くてな、それで、結構閉鎖的な村になってるんだ。で、俺もそんな訳あり連中の一人だよ」

 「どんな?」

 「俺は前、盗賊をやってたな」

 「⋯⋯は?」

 

 一瞬、ドルモンが固まる。どうやら、いきなりの発言にかなり混乱したらしい。

 

 「えっ、ちょっと待ってどういうこと?」

 「そのままの意味だが?」

 「「⋯⋯」」

 

 二人して黙り込み、間ができる。

 

 「まあ、他の奴の事は聞くことがねえから知らねぇが、今言ったとおり俺は元盗賊ていう訳だ」

 「ホントに?」

 「おお、本当だぜ。とはいっても、もうきっぱりとやめてるけどな」

 

 最初の驚きが過ぎ、ドルモンが少々落ち着きを取り戻す。

 

 「それじゃあ、なんでこの村で薬屋してるの?」

 「まあ、ちょいと長い話になるがいいか?」

 「うん、別に良いよ」

 「そうか、だったら話させてもらうとするか」

 

 ヘラはそう言って自分の過去を語り始めた。

 

 

 

 十数年ほど前ヘラは一人である山に沿った街道を根城としている盗賊であり、その界隈ではそこそこ名を馳せていた。

 盗賊としてその場所に拠点を置いた頃は、自分より弱いと判断したデジモン達しか襲わなかったが、何年かしてうまく作戦を作れるようになり、また実力もついてきたこともあったので、金目の物をかなり持っているように見えるデジモンならば、自分より一つ上の段階である完全体でも襲うようになり、そのことがヘラの事を有名にしていた。

 そして、その辺りには完全体以上の実力を持つ者はほとんどいなかったため、成熟期にして完全体を倒せるようになったヘラに挑むような者は全くいない、といっていいほどであった。

 たまに腕試しなどと言って挑んで来る者もいたが、勝てる相手だと踏めば念入りに準備して返り討ちにしたし、自分より強い相手であれば出向かずに山に隠れていた。

 

 そのように敵の実力を的確に見抜く事によってかなり稼いでいた。

 しかし、そのような環境に長く置かれていたことで油断が生じたのだろう、ある日ヘラはミスを犯した。

 その日もヘラはいつものように通りかかるデジモンを待ち伏せしていた。

 

 「ちっ、今日はやけに旅人がこねぇな」

 

 いくらヘラの噂があったとしても普段ならば、街道を必ず通らなければならない者や不用心な旅人などが通るのだが、今日は夕刻になっても本当に誰も通らないのだ。

 

 「はあ、しょうがねえな。今日はこれで引き上げるか」

 

 溜め息をつきながら、ヘラはその場から立ち上がった。

 夜になって通る者はほとんどいない。稼ぎが無いとなれば山で今日食べる物を準備しなければならなかった。

 そう思って山の中に入ろうとしたときだった。一体のデジモンがこちらに向かって来るのが見えた。

 

 「おお、こりゃなんとか今日の食いぶちぐらいは稼げるかもしれん!」

 

 それを見てヘラは仕掛けてあった罠に駆け寄った。岩石を縄で木に縛り付けた物で、通った瞬間に縄を切ることで下にいる者に落ちていく物である。

 そして、ちょうど設置した場所に通りかかるところで縄を切り裂くと、かなり大きい岩石が下に向かって落ちていった。

 その岩石に気付いたのだろう、下にいるデジモンが避けるために跳躍する。その姿に右腕に装着されているキャノン砲を向けた。

 

 「ハンティングキャノン!」

 

 発射されたエネルギー弾が命中する。

 

 「よしっ!」

 

 岩石を落としてそれを避けた相手を狙撃する、単純ではあるが大体の者はこれで仕留められる。

 

 「さてと、どんな物を持ってるかね」

 

 そう呟き、それまでいた場所から満面の笑みを浮かべて降りていった。その時、頭上から声が響いた。

 

 「あなたがこのあたりで有名な盗賊ですか」

 

 上を見上げるとはばたきながら、こちらを見下ろしているデジモンがいた。

 

 「だったらどうするってんだ?」

 

 仕留められていなかったことにヘラは少し歯噛みをするが、それを表情には表さず、そのデジモンと対峙した。

 

 「いえ、特にあなたに恨みがある訳では無いので、できればなにもせずに通してくれればありがたいんですが」

 「へっ、んなこと誰がするかよ!」

 

 ヘラはこの時普段ならば絶対にしない失敗をしていた。獲物を前にした高揚感によるものなのか、自分自身の慢心だったのかは、今となっては分からないが、相手の力量を見極めずに戦いを挑むことは今までの彼ならばしなかったであろう。

 

 「しかたありませんね」

 

 そう相手が嘆息した次の瞬間である。目の前にその姿がせまっていた。

 

 「なっ!」

 

 そして、ヘラは自分が倒れていくことを他人事のように認識していった。

 

 

 「いっつつ」

 

 体の痛みに呻きながら起きた後、ヘラは自分が生きている事に驚いていた。確か自分は手も足も出ずにやられたはずだ。

 

 「おや、目が覚めましたか」

 

 すると少し後ろから声が聞こえてきた。その声のした方向におそるおそる顔を向ける。

 

 「どわぁ!」

 「おや、幽霊でも見たかのような顔をしないでくださいよ」

 

 目の前にそのデジモンが居た。

 

 「くっ!」

 

 すぐに右腕のキャノン砲を構えようとした、が

 

 「物騒な物は出さないでもらいましょうか」

 

 素早く手で押さえつけられてしまった。

 

 「くそっ!」

 

 どんなに力を込めても振りほどくことができずに悪態をつく。

 

 「まあ、とりあえず落ち着いて下さいよ。危害を加えるつもりはありませんから」

 

 そう言って相手は押さえつけていた手を離した。ヘラはすぐに跳び退る。

 

 「おやおや、随分と警戒されたものですねぇ」

 「当たり前だ!」

 

 口でどのように言っていても本心はどんなものか分かったものではない。そう思いながら油断なく相手を見つめる。

 その時、相手が唐突に話し始め、

 

 「ああ、そうだ私はクロスと言いまして、ある村で村長をしています」

 

 いきなり自己紹介を始めた。

 

 「は?」

 

 虚を突かれ、ヘラが間抜け顔になる。

 そんなことは気にせず、クロスはヘラに話しかけた。

 

 「ところで、あなたは薬について詳しいですか?」

 「えっ、ああそれなりには詳しいが⋯⋯」

 

 一人で盗賊をしていると怪我や病気になったとき誰も助けてはくれないので、ヘラは必然的に薬草などについて詳しくなっていた。

 それを聞きクロスが子どものように顔を輝かせる。

 

 「それじゃ、私の村に来てくれませんか?村で薬屋を営んでいた方が亡くなってしまったので、薬を作れる人が一人もいないんですよ」

 「はぁ?ちょっと待て、俺は盗賊だし、あんたの命を狙ったやつだぞ?」

 「それがどうかしましたか?」

 

 クロスがことなげもなくそう言った。

 

 「それに私の村は結構訳ありの方が多いんです。盗賊やってた人なんて今更、気にしませんよ」

 

 そして、穏やかに笑みを浮かべた。

 それを見てしばらく唖然としていた、ヘラも快活に笑い始めた。

 

 「⋯⋯アハハハハッ!あんた面白いな。分かった、あんたについて行かせてもらうぜ!」

 

 そうしてヘラは時鐘の村で薬屋を営むことになったのだった。

 

 

 

 「ま、ざっと話すとこんな感じかね」

 「へぇ〜、そんなことがあったんだ」

 

 ヘラが話し終え、ドルモンが満足そうに頷く。

 

 「ところで、ウィザードはどんな理由でここに来たの?」

 

 と、ドルモンが次の質問をする。

 すると、少しヘラが困ったような顔になる。

 

 「う〜ん、あいつはいつのまにかこの村にフラッと来たやつでな。俺もあんまりあいつの昔のことは知らねえんだ」

 「そうなんだ」

 

 それを聞いて、ドルモンは少し残念そうな表情になる。

 

 「まっ、それはあいつに直接聞いてみりゃいいさ」

 

 そう言ってヘラはドルモンの頭をわしゃわしゃと撫で始める。

 少し激しかったが、不思議と嫌な感じはせず、ヘラのぬくもりが伝わってドルモンにはとても心地よかった。

 

 コンコン

 

 その時ドアを誰かがノックし、ヘラが立ち上がる。ドルモンはもう少し撫でていて欲しかったのか、少々渋い顔である。

 

 「まったく、探したぞ」

 

 しかし、入ってきたデジモンを見て一瞬で笑顔になる。

 

 「あ、ウィザード!」

 「噂をすればなんとやら、だな」

 

 ドルモンが駆け寄り、ヘラが笑みを浮かべる。

 

 「ああ、ドルモンか。ヘラ、それはどいうことだ?」

 「たいしたことじゃねぇよ、気にすんな」

 

 ドルモンは嬉しそうに尻尾を振り、ヘラはそこはかとなくはぐらかした。ウィザードはそれを不思議そうな顔で眺めていた。

 

 

 

 

 その一時間ほど前、村を囲む山の一つから道をうろうろしていたドルモンを眺めている者達がいた。

 

 「カラテンモン様、ドルモンを見つけましたぞ」

 

 頭部がテレビのようになっている忍者のようなデジモンがカラス天狗のようなデジモン、カラテンモンに話しかけた。

 まわりには他にも三本足で金色の独鈷杵を背負ったカラスのようなデジモンと、さきほどカラテンモンに話しかけたデジモンと同じ種類のデジモンが数体ずついた。

 

 「そうか、よくやった、モニタモン。それではデータをイグドラシル様のもとへ送っておいてくれ」

 

 カラテンモンにそう声をかけられたモニタモンが嬉しそうに返事をする。

 このデジモン達はイグドラシルに仕える隠密部隊だった。どこからもドルモンに関する情報が得られず、痺れを切らしたイグドラシルが秘密裏にい派遣していた部隊の一つである。

 そしてカラテンモンはモニタモンの報告を聞きあることを考えていた。

 それはなぜこの村からの報告が無かったのかである。

 故意にそうしたのか、それともたった今ドルモンが来ただけなのか、それとも別の理由か、様々な思考を張り巡らせる

 だが、途中でその考えを打ちとめた。

 いや、そのようなことはどうでもいい、イグドラシル様の命に従うだけだと考えたのである。

 そして、撤退の合図をかけようとしたときだった。

 

 「ぎゃぁ!」

 

 さきほどのモニタモンが悲鳴を上げ、斬り裂かれた。

 

 「なっ!」

 

 カラテンモンが驚きの声を上げ、敵の姿を捉えようとするが、その瞬間には次のモニタモンが斬られ、そのまわりが血で染まる。

 

 「くっ、ヤタガラモン!」

 「はっ!羽黒!」

 

 ヤタガラモンと呼ばれたカラスのようなデジモンがすぐに反応し、辺りが闇に覆われる。

 ヤタガラモンの羽黒は本来は周囲3㎞を闇に包む技だが、今は目立ってはまずいのでかなり狭い範囲にしか発動してない。

 しかし、それでも闇の中では一切の光を通さず、自分たちはそのような状態でも自由に活動できる。

 相手が闇に戸惑っている隙に逃げるつもりだった。

 だがそうすることはできなかった。

 すぐに近くから再び悲鳴が聞こえ、しかも次から次へと絶え間なく上がってくる。

 

 「馬鹿な!」

 

 思わず、驚きの声を上げる。羽黒の中は一切の光を遮断する。そのような中で活動できるのは、自分たちのように特殊な訓練を受けた者以外ありえない。

 おそらく全てのヤタガラモンが倒されたのであろう、羽黒の闇が薄れ始めた。

 せめて、一矢報いようと刀を構える。だがその時ちらりと黒い影が目の端で動き、腹部に一瞬痛みを感じたと思うと、意識が闇の中に沈んでいった。

 

 

 

 「ふう、なんとかなりましたかねぇ」

 

 そこには返り血を浴びたクロスだけが立っていた。

 周りではカラテンモン達の死体が早くもデータの粒子となって分解されはじめている。

 そこに白い何かがクロスの手元に飛んできた。呪文が書かれた札である。

 

 「術を張っておいて正解でしたね」

 

 クロスは魔法とは少し違う術式である呪術と呼ばれるものを使うことができ、それでここ一帯に結界を張って侵入者がこないかどうか見張っていたのだ。

 

 「しかし、まあこんなに速く動いてくるとは思いませんでしたね」

 

 イグドラシルはいつか動くだろうとは思っていたがクロスの予想以上に速かった。

 

 「それほど、ドルモンの存在がまずいんですかね」

 

 そう独り言を言ってクロスは一旦まわりを見渡し、その場から立ち去った。

 一体のモニタモンの死体の画面が弱い光を発していたが、誰もそれを見た者はいなかった。




え〜、今回はヘラの過去と、クロスさんの完璧無双でした。では今回出てきた語句の解説です。



魔法薬

作る過程でなんらかの術を使用しなければできない薬や、ただ単に魔術師や呪術師が作った薬を指すこともあれば、ある特殊な材料を使わなければならない薬で、普通の薬より効果が高い。


魔術師連盟

魔法を習得している者や、研究している者たちが集まってできた組織。
魔法を習得したいならこの組織に加盟することで魔法について習うことができる。


呪術

起源は魔法と同じと言われている術式。
しかし、魔法とは違い魔力ではなくありとあらゆる物質が持つ「気」を操り、呪符などの媒体を通して行う術が多い。(媒体を通さずに行う術もある)
五行思想と陰陽の属性をもとにしている。
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