遊戯王ZEXAL 熱き魂のデュエリスト   作:魔女っ子アルト姫

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始まりのオーバーレイ


第1話

「―――知らない空だ」

 

普通は天井というだろう、だがこの場合はあっている。何故ならば―――空に広がっている景色は彼方此方に走る未来感溢れる道、モノレールに立体映像の広告、空を飛ぶロボット……明らかに自分の知っている世界の常識を逸脱していて笑いを通り越して言葉を失う。そして同時にある物が見えて顔が青ざめるという言葉の意味を体感する事になった。

 

「……Mr.ハートランド……ゼ、ゼ……ZEXALかよォォォォォォ!!?」

 

天道 遊次、広告に映り込んだナイスミドルなおっさんの姿を見てこの世界を確信して絶望する。よりにもよってこの世界なのかと。

 

 

「マジかよマジかよマジかよマジかよマジかよマジかよマジかよ……」

 

壊れたスピーカーのようにそんな言葉を繰り返す事しか出来なくなっている遊次、それも致し方ないという物。何故ならば彼の直前の記憶というのは自宅にてマスターデュエルを楽しんでいたという記憶までしかないのだから。それなのに全く別の世界にいるという事をどうやって受け入れろというのだろうか。しかもやってきた世界が遊戯王の世界でも色んな意味で危険すぎるZEXALの舞台であるハートランドシティなのだから。

 

「待て、偶数を数えるんだ……偶数は二つで割れる数字、つまり私は孤独ではなく共に誰かといるという事―――2.4.6.8.10……」

 

と何処かで聞いた事があるような事を言いながらも何とか正気を保とうと試みる。天道 遊次、彼はかなり図太い性格であった。そして15分ほど偶数を数えて漸く落ち着いた遊次はベンチを発見してそこに腰を下ろして、本格的に状況の整理を試みる。

 

「落ち着いた……だけどこれは……絶望的な状況じゃな?YES、凄いホープレスだなッハッハッハ……ハァッ……」

 

落ち着いたら落ち着いたらで今度は果てしない絶望が沸き上がって来てしまったのである。今居るこの街がハートランドシティというのは絶望的なのは確かだが、それ以上にこれから自分は如何すれば良いのかという事に絶望してしまう。

 

「財布もない、携帯はない。何これ、俺に死ねと?」

 

残っているのは何故か背負っていたリュック、自分が愛用しているリュックだが……中にもしかしたら何か希望が……と思って開けてみるとそこには幾つものデュエルデッキケースがベルトに繋がれている。デッキの数は5つ、これらは自分がリアルで使っているデッキの数と確りと符合するし調整用のサブデッキケースまで存在していた。

 

「喜ぶべき、なのかこれは……いやデュエル脳が通じるこの世界ならばデッキの存在は俺の命綱になるな……」

 

遊戯王の世界は良くも悪くもデュエルが大きく関わっている。疑わしい相手を信じる為の行為、自分の本心を伝える為、世界の運命を掛ける戦い、それら全てがデュエルで解決すると言ってもいい。なので……それを上手く利用すれば何とか……一先ず付けていたベルトをデッキケースが付いた物と交換しておく。

 

「しまったデュエルディスクは!?しかもZEXALって他の奴も必要だった気が―――」

「おいそこのお前!!」

 

思わず慌てていると突然、低く重い怒号が向けられた。吃驚しながら振り向くとそこには大柄な大男が此方を強く凝視していた、しかもその瞳は何処か血走っており危険なオーラが見えている。

 

「あ、あの何でしょうか……」

「カードを置いてけ、なあ貴様デュエリストだ、なあお前デュエリストだろう!?なあお前デュエリストだろう!?」

「なんで妖怪首置いてけ風!?」

「デュエルだぁ!!」

「話きけやぁ!!」

 

男は突然叫び出しながらも左腕に付けていたデュエルディスクを展開し、更に左目にバイザーのような物を装着した。それを見て思い出した、あれはDゲイザー。ZEXALのデュエルはARヴィジョンとリンクする事で更に臨場感溢れるデュエルを行うらしい。デュエリストとしては是非ともやってみたいがDゲイザー処かディスクもない自分どうやって―――と思っていた時だった。

 

「な、なんだこの……何の光ぃ!?」

 

付けていた腕時計から急激に光が溢れ出した。その光の奥で腕時計はあり得ない変形を繰り返していき、周囲の光を物質化したとでも言いたいのかという巨大化を行い黒と赤のカラーリングが光るデュエルディスクとなった。

 

「―――どういう事なの」

 

言葉を失っているとディスクの一部が飛び出した、それはまるで眼鏡にもサングラスにも見えるバイザー……この流れで行くとこれはDゲイザーという事になるのだろうか。もう色んな意味で理解を越え始めていたが、遊次は考える事を捨てる事にした。

 

「もう、考えるのはやめた。これから先の答えは―――デュエルが、カードが教えてくれる!!もうやけくそだ、やってやろうじゃねぇかこの野郎!!デュエルだデュエル、デュエルをやってやらぁぁぁぁ!!!」

 

最早思考放棄に等しいが、この世界の法則にも等しいデュエルに身を委ねるしかないと直感したのかもしれない。遊次はデュエルディスクにデッキの一つをセットする。同時にデッキは自動でシャッフルされ準備が整う。

 

「「デュエルターゲット、ロックオン―――デュエル!!!」」

 

ARヴィジョンとリンクし、周囲から無用な人が消えていく。完全にデュエルをする者同士の世界となり、真の決闘場が完成し同時デュエル開始の合図が互いのプレイヤーから飛び出した。デュエルが開始された。

 

 

「先攻は―――俺か」

「如何した、さっさとドローしろ!!」

「えっあっそうか、引いていいのか……ドロー!!」

 

相手に言われて気付いて急いでドローする。遊次が行っていた時は11期のマスタールール、既に先攻ドローは廃止されていたのでドローする事に違和感と懐かしさを覚える。そして手札を見て自分はどのデッキをセットしたのかを把握した。そして思わず笑みを強めた―――何故ならば、自分が一番好きなデッキだからだ。

 

「ッシャア折角だ思いっきり楽しんでやるよこのデュエル!!行くぜ、BK(バーニングナックラー) ヘッドギアを召喚!!」

 

召喚されるモンスター、それは遊次がデュエルに復帰する際に本当にお世話になったと同時にデュエルの楽しさを思い出させてくれたテーマ群、燃える魂の戦士たちのBK。但し、守備表示で出来るのか分からないので攻撃表示。

 

「ヘッドギアの効果発動、召喚に成功した時デッキから「BK」と名のついたモンスター1体を墓地へ送る事ができる。俺はグラスジョーを墓地へと送る」

 

その時、宣言したカードが音声認識されたのか自動でデッキからグラスジョーが飛び出た事に驚きつつ、引き抜いて墓地へと送る。これがデュエルディスク……と遊戯王プレイヤーの夢が叶った事に感動しつつも進行を続ける。

 

「更に他のBKがフィールドに居る時、此奴は特殊召喚出来る。BK スパーを特殊召喚!!此奴を召喚したターンにバトルフェイズは行えない、だが先攻は関係ない」

「レベル4が二体―――来るのか」

「ご期待通りにやってやらぁ!!行くぜヘッドギア、スパー!!」

 

―――オゥ!!!

 

フィールドに揃った二体のBK、これを揃えたならばやる事は一つしかない。そして一度でいいから思いっきり大声で言って見たかったんだと興奮しながらも叫んだ。

 

「俺はレベル4のBK ヘッドギアとスパーでオーバーレイ!!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!!!」

 

ヘッドギアとスパーは炎属性の赤い光となって螺旋を描き、赤いブラックホールのような渦へと飛び込んでいく。そして同時に新しい世界が構築され、新たな姿となって生誕する。

 

「魂に秘めた炎を拳に宿せ!その拳で敵を討て!BK 拘束蛮兵リードブロー!!!」

 

赤い渦から現れたのはBKの切り札の一柱を担うモンスター・エクシーズ、リードブロー。拘束具にその身を縛れているがそれこそがリードブローの強さの証明とも言える。そしてこの身を貫く感動と興奮の嵐、自分は本当にこの世界に来たんだと思う。絶望を感じたがそんな物はもうどうでもいい、デュエリストとしてこの世界でデュエル出来る事を誇りに思おう。

 

「さあ暴れるぞリードブロー……デュエルだデュエル、デュエルをやってやらぁぁぁぁ!!!」

 

―――オオオォォォォッッ!!!!

 

遊次の雄叫びに呼応するかのように熱き魂を秘めた戦士、BKの名を冠する戦士、リードブローは咆哮を上げる。

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