綺麗な星に還るまで   作:鈴川 掌

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 本日はこの小説を開いていただきありがとうございます。
 本小説はwordから直接コピー&ペーストしているのでルビ振りの残骸があるかと思いますが、そこら辺は気にしないでいただけると幸いです。
 作品向上の為アンケートに答えていただけると幸いです。
 1度1話を試験的に上下に分けてみます。1時間後に下は投稿されますので、一日一話という縛りは変わりません1話分毎日投稿します。



第九話 多大な犠牲(上)

 流氷さんの渾身の一射と共に、狼型レイダーは星空の藻屑と消え、この美しい夜景は張りぼてと言わんばかりの大穴ができた、その穴へ向かおうとするが、視界の端で力なく落下する流氷さんを見て急ぎ助けに向かう、もうこれ以上誰も失いたくないという一心で彼女を支える。呼吸も、心音も安定しており、恐らく凄まじい疲労感に襲われ気を失ったのだと安堵する、そして今回も防衛が成功したのか夜景空間は閉じられ、元の世界へと戻る。戻ってきたのは病院前、刃菜子先輩や白鳥さんに会いに行こうと考えるが、意識を失っている流氷さんは、寮に居て自分で病院に来れる状態でもないであろう為、病院に連れて行くべく寮に戻った。

 寮に戻ると、共用スペースで座り腕を机に乗せながら頬つけ寝息を立てている流氷さんの姿があった。急ぎ救急車の手配をし、運んでもらう。後は医療スタッフに任せ、白鳥さんの様子を見に行くとそこには、彼女に抱き着きながら余りの安堵からか、人目を気にせず大粒の涙を流す早雲さんと心なしか満足気な白鳥さんが居た。無事に辿り着き一命も取り留めたらしい、この場に入っていく勇気はなかったので、刃菜子先輩が安置されている場所を守護省の人間に聞き向かう。

 明るいとも、暗いとも言えない部屋に入り、彼女の手を握るが、彼女はとても冷たくそして硬くなっていた。既に守護省の人間か、それとも看護師が彼女を綺麗にしてくれたのか、はたまた布団で隠れているだけなのか、彼女の顔は、体は、まるでただ眠っているだけであるかの様であった。

「刃菜子先輩…皆を守れたよ…」

 返事は返ってこない。

「白鳥さんも無傷とは言えないけど生きてるよ…流氷さんも、勿論俺も生きてるよ」

 返事は返ってこない。

「これも…みんな…みんな刃菜子先輩が守ってくれたお蔭だよ?」

 返事は返ってこない、目の前が滲(にじ)みよく見えなくなる。

「だから…もう一度声を聞かせてくれよぉ…」

 一人の男の泣き声が木霊する、一頻り涙を流す、こんなの誰かに見られたら笑われるかもしれない、それこそ刃菜子先輩が見ていたらどういう反応をするだろうかと想像して、余計に涙が零れる。そこにノックの音が聞こえ、精一杯目を擦り涙を拭き「どうぞ」と伝えると意識が覚めたのか流氷さんが立っていた。

「流氷さんも来たんだ…」

「それは来るわよ…私達の大切な…大切な…先輩…だもの…」

 彼女の目の先には、目を閉じこちらに反応もしない刃菜子先輩が横たわっているだけ、それを見て改めて彼女も刃菜子先輩の死を痛感したのか、涙が零れ始める。

「私が…加勢出来ていたら白鳥先輩も、刃菜子先輩も助けられたのかもしれないのに…私が天成できない…ばかりに…」

 彼女にも悔やみきれない後悔があるのだろう、それをしょうがないで流す事も、どうしようもできなかったと諦める事も俺にはできなかった、しかしそれを追求しても刃菜子先輩が望まないのはわかっているから、必死に口を開くのを我慢する、彼女にも理由があった、解放の代償というべき理由が、そう考える事で必死に我慢する。

 明日には通夜があり、その次の日に葬儀をし、そして火葬がある。俺達は、その全てに一緒に戦ってきた守人として出る事になっているが、遺族にはどんな顔を見せれば良いのだろうか?刃菜子先輩は一人っ子で、父親も既に他界し母親のみという家族構成だったはずだ、たった一人の娘を戦いに巻き込み挙句死なせてしまった俺達はどうすればいいのか?

「流氷さん、俺は寮に戻っているから…まだ話したい事があれば話してていいよ、守護省の人に送りをつけるように言っておくから」

「ありがとう」

 こちらを向かずただ刃菜子先輩の隣に座りじっと彼女を見つめている。

 

 *

 

 どうすれば車石先輩を失わずに済んだかを考える、こんな事をしたって意味が無いというのはわかっているでも、それでも考えずにはいられないのだ、私がもっと早く天成できていれば?もしくは最初から敵が大型一体と決めつけず解放を残していたら?彼女を救えたかもしれない、後悔しきれない後悔が私を埋め尽くす。

「車石先輩、前みたいにアドバイスしてください…こんなネガティブな思考にならなくてもいいように、どうでもいい話でもいいんです…お願いだから私に微笑みかけて…それだけで私は安心できるから…」

少し前に「弓はなんでもかんでも考えすぎなんだよー、言うだろ?後悔後を絶たず?って」。そう昔言われたことを思い出す。

「『それを言うなら先に立たずじゃ?』…本当に…車石先輩の言う通りだったみたいね…後悔は延々と残り続ける…」

 彼女の顔をもう一度見て決心する。これから先私は後悔し続ける、毎日、毎日。貴方を救えなかった事への後悔を。でも決めました。貴方の様な素晴らしい先輩に出会えて、守人の皆と会えて私はとても嬉しかった事も忘れません、貴方の笑顔、ポジティブさ、心の繊細さ、それに優しさ、全てを取って貴方は私の憧れです。だから少し休んでいてください、そう心で思い彼女に深々と頭を下げる。

「憧れなんて言ってくれてありがとうな!」

 幻聴かもしれない、いや恐らく私の心の弱さが生み出した幻聴である事は間違いない。それでもこう口に告げる。

「こちらこそ…ありがとうございました…車石先ぱ…ぃ…」

 精一杯の敬意を込め何とか口にする。折角止まった涙がまた流れ出しとまらない、ありがとう私の憧れの人、そしてさようなら。来世があるなら今度は本音を隠さなくてもいい、親友になれたら嬉しいです、涙を一頻り流し終えたら部屋を後にする、彼が行っていた通り帰りは車で送迎してもらえるみたいだ、助かる。もうできれば一歩も歩きたくない。

 寮に帰り食事は簡単に済ませ、脱衣所で服を脱ぎ、大浴場へ進む、頭を洗い、体を洗うそうして最後に顔を洗う、途中なんども気を失いそうになる、それ程今日一日は疲れた、肉体的にも、精神的にも明日には車石先輩の通夜がある、また大粒の涙を流すであろう、だから今日はすぐにでもさっぱりしたかった。

「はぁ…車石先輩が居ればなぁ」

 彼女が居ればお風呂の中で話の話題が尽きる事は無かった、どれほどくだらない事でも私がくだらないと苦笑しても、そんな私の笑顔を見て笑顔を返してくれた、その笑顔にいつも救われていた。

「……さん、…氷さん」

 ここからは聞こえるはずのない彼の声が聞こえる、余程疲れているのだろうか?ここは浴場で彼が居るはずなんてないのに。

「流氷さん、なんで今お風呂に入ってるの?寂しかったの?」

 横を見ると居るはずのない彼が、青池君が居る。

「な、な、な、なんで貴方が居るのよぉぉぉー」

 浴場内にパチ―ンという乾いた音が木霊した。

 

 *

 

 刃菜子先輩との思い出に耽り天井を見て、若干のぼせていた事もあり、目の前からいきなり湯船に浸かる音が聞こえハッとする。目の前には流氷さんが居て、彼女も刃菜子先輩が居ればと嘆いているようだ、どういう状況なんだ?しっかり立札も男湯に変えているはずだ、だと言うのに何故?恐る恐る彼女に近づき問いかける、できるだけ彼女の裸体は見ないように…。すると人生2度目の女性の全力ビンタを受ける事になった。こんな精神状況であったが少しだけ明るくなれた気もする。

 その後湯船から上がり共用スペースで彼女が出てくるまで待つことにし、その時に立札が男湯になっている事も確認した。それから少しすると彼女が共用スペースに来る。

「すまなかったわね」

 消え入りそうな声で彼女は謝罪をしてくる。

「い、いや最初に気づかなかった俺も悪いというかなんというか…」

 二人の間に何とも言えない空気が広がる。

「まぁ、そんな事より流氷さんが帰ってきたら、聞きたい事があったんだ」

「そんな事って何よ…人の裸を見といて…」

「ご、ごめんなさい」

 話が全くと言っていいほど進まないが、これはこれからの為に必要な話だ。

「それでも一応話は聞いて?大切な話だから」

「た、大切な話?…」

 彼女がなぜモジモジしているのかは凡その察しはつく、女性にとって友人とは言え異性に見られるのは相当恥ずかしい事なのだろう。

「解放について」

 解放、その言葉を出すと彼女の顔が少し嫌な物を思い出すような顔をするも、真面目に話を聞く気にはなってくれたようだった。

「単刀直入に、何回解放をして何を失った?」

 打ち明けていいものかと彼女は思慮深く黙り込む、ひと時経つと彼女は口を開く。

「左目と左手足の感覚が無くなった、一回目が左目、二回目が左手足、けど天成をすれば失ったものが一時的に帰ってくる事も確認済み」

「感覚が無くなったってどういう事?」

「触感が無いって感じかしら、私は今しっかりとコップを握れているのか、服の袖に手を通しているのか、そういうものが左手足には無くなってるわね、目は何とかなるにしても触感が無くなるのは、思った以上に不便だわ」

 視力に一部分ではあるが触感の消失まで、そして代償も左目だけかと思ったら左手足の二か所も奪われている。

「そういう貴方はどうなのよ、少なくても二回は解放してるんでしょ?」

 当たり前だがこちらにも質問は飛んでくる、なんと答えるべきか悩む、正直な所よくわかっていないのが事実だ。

「断片的になるかもしれないけどいい?」

「ええ、構わないわ」

「俺が一度目に失ったのは自分の失いたくないと思った記憶以外の全て、二度目は少し事情が変わって守人以前の記憶を差し出す代わりに守人になって以降の記憶を守られている」

 自分が理解できている所だけを、簡潔に伝える。

「どういうこと?代償とやらは自分で選べるのかしら?」

「いや俺の場合は少し違くて、この先の全てを捧げる事で解放の代償を無いものにしたみたいな?」

「そっちが、疑問形でどうするのよ…まぁ、貴方が言いたい事は凡そ理解できるわ」

「やっぱり?」

「デメリットがよくわかっていない俺に任せて、私の解放はここぞという所まで温存しろって言うんでしょ?お言葉に甘えてそうさせてもらうわ」

 その通り言いたい事を全て言ってくれて助かる。その後に続く言葉は少し驚いたが。

「てっきり流氷さんの事だから、ふざけないでって言われると思ったよ」

 彼女はいい意味でも悪い意味でも意固地というかなんというか、というのが自分の印象だったが、それは違ったのだろうか。

「私は家族の為にこの代償を受け入れた、でもそれで、家族と触れ合いすらできなくなるのは流石にいやだもの」

 そうか、彼女は何にしても家族第一であった、その考えは一切変わっていない。それならば家族の成長を見られなく、感じられなくなるのは、避けたいであろう、そう考えるとさっきの返答も納得できる。

「まぁこれで話したい事は大体終わったかな、それじゃあお休み」

「ええ、おやすみなさい」

 彼女が階段を上がっていくその時一つだけ伝え忘れていた事を思い出した。

「流氷さん明日の昼時間あったら、ラーメン食べに行こうよ」

 彼女は振り返り少し悲しそうな顔をし、瞳を潤わせながら一言呟く。

「そうね」

 そう一言だけ話し自室に戻っていった。

 

 *

 

 彼が悲しそうな顔をしてラーメンを食べに行こう等と言ったからだろうか、私は寝床についても眠れない、体はどうしようもない程疲れていて、頭では限界だとわかっているのに眠れない、車石先輩の前でも沢山泣いたしお風呂でも色々あったが結局は泣いてしまった。もう出る涙は残っていないというのに、それでも渇ききった瞳が、彼女の姿を空想させ瞳に涙を溜めてしまう。睡眠不足が影響して明日彼女を送り出す時に寝てしまう可能性があるのも良くない。

 体を動かせば少しは楽になるだろうかと考え、深夜に一人物音を立てないよう、ひっそりまるで泥棒の様に一回の稽古場に向かう。すると私と同じ気持ちになり眠れなくなったのか先客が居た。

「貴方も眠れないの?」

「そうだね、流氷さんがここに来るとは思わなかったけど」

 彼は少し微笑みながら木刀を敵に見立てた的に向い振るい続ける。

「私は貴方のせいで眠れなくなったの、責任を取って頂戴」

 すると彼は木刀を振るうのを止め、こちらを申し訳なさそうに見る、彼の目も泣き腫れて居た。彼も同じなのだ、未だに車石刃菜子という人が居なくなったことを、受け入れ切れていないのだ。

「それは、ごめんね」

「謝る位なら、私の稽古に付き合ってくれるかしら?」

 いいよと彼は答える、私達はどうにかこの暗い感情を払拭したい、しかし彼女の顔が声が脳裏に焼き付いて離れない、忘れたい訳ではない。もしかしたら今この瞬間が夢で一度眠って起きたら彼女が元気よく挨拶してくれるのではないかと、思い寝ようとしても、寝たら寝たで彼女の思い出が一つ、また一つと忘れて行ってしまうのではないかと考え怖くなる。

 お互いが天成をする武器は流石に訓練用のものを使うが…普段矢筒なんて持たないので違和感が残りはするものの問題はない。

 




 本日はこの小説を読んでいただき更に後書きまでも来ていただき本当にありがとうございます。
 あらすじでも、申し上げたようになろうでも投稿はしていますので一日一話投稿はしていきますが待てないという、大変ありがたい感情を持って頂いた方は、なろうに行けば今書けている部分までは投稿されています。
 そして毎度毎度ではございますがよろしければ、この作品の私的でも構いません、あんまり小説を読んだ事無い方でも構いません、できれば読みづらかったり、理解しづらかった文があればお教えいただけると幸いです、一先ず完結まで残り数歩という所まで来ているので直すのはすぐには出来ないと思いますが、ご指摘頂いた所を直せるよう精進していく所存であります。
 厚かましいですが、できればこの作品に対する評価をお願い致します、評価を頂く事で自分の励みにもなりますし、低ければ文の書き方の訂正にも繋がりますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

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