綺麗な星に還るまで   作:鈴川 掌

19 / 24
 本日はこの小説を、開いて頂きありがとうございます。
 第二部 山梨編の開始です。
 どうか、読者様の娯楽になれれば幸いです。
 


山梨編
第零話 零なる僕+第一話 僕は(上)


第零話 零なる僕

 

 零それは全ての始まり。

 零それは全ての終わり。

 

 僕が全ての始まりにして、僕という存在が全ての終わりとなる、これはそういう物語。

 

だからこそ僕と僕の仲間達の話をしよう、全てが終わっても決して忘れないように。

 

 ある所に居た少女は人間が嫌いで嫌いでしかたがなかった、そんな誰よりも人間嫌いな人間を守るのが少女の矛盾、その矛盾ではなくなり人嫌いから解放された時、少女は一人全てに立ち向かうのだ。

 

 ある所に居た少年は自分の行動と理想の乖離(かいり)に苦悩した、全てを守ろうとする彼は、全てを守れない彼となる、その矛盾が矛盾で無くなった時少年は全てを守る事を辞め、たった一人を守る騎士となる。

 

 ある所に居た少女は全てを救いたいと願う、しかし自分の力では誰も救えないと悟るその矛盾に気づいた時、彼女は誰かに頼らざるを得ない。自分で守りたいと思う少女がその矛盾に気づいた時彼女は全てを託すのだ。

 

 これが全ての顛末(てんまつ)。

 僕という零が全ての始まりの引き金を引き、そして彼が全ての弾を回収した時、彼の旅路は僕という零を迎えて終点に辿り着く。

 

 だからこそ思う、僕の存在は彼の始まりにして、終わりである零なのだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第一話 僕は

 

 お盆も終わり、そして夏休みの終わりを告げるように暑すぎた気温も徐々に落ち着きを見せ始めるがまだまだ秋は来させないと言わんばかりに一定以上の気温を保ち続ける今日この頃。

周りでは課題に追われる人、課題を既に終わらせている人、そもそも課題なんて知らぬ存ぜぬで、通そうと考えている人は様々だが、僕たち二人は図書館に集まり課題を進めている。

学生にとって長期休暇という物は学校に行かず、面倒くさい授業なんて聞かなくてもいい反面、予(あらかじ)め約束等をしていないと暫(しばら)く人との繋がりが途切れる時期でもある。そこで僕たちは予め計画して一緒に課題をやる日を設けた、と言っても僕たちは別に勉強が嫌いな訳でもない、こんな計画を立てなくても課題を進めるし、なんなら二学期への予習だって欠かさない。そんな僕たちが二人で仲良くこんな熱い日にわざわざ歩いて図書館に集まっているのかというと、少しでも疎遠にならない為の僕なりの努力だった。

「それにしても、心美(ここみ)君は身長が伸びたねぇー」

「その話何度目ですか?令(れい)華(か)先輩?」

「いやいや、邪見に扱わず聞いておくれよ、君とっては対した事ではないかもしれないが、僕にとっては切実な問題なんだ」

「運動も女子では一番で、勉強は全国でもかなり高い位置にいて、それでいてお金持ちの家に生まれているんですよ?それ以上求めたら罰が当たりますよ?」

「家なんてどうでもいい、僕は家を捨てて身長を手に入れられるなら喜んで家を捨てるとも」

「もう、令華先輩ったらダメですよ、冗談でも家を捨てるなんて」

 おっと説教モードに入るかもしれないと思い話はそこで中断する、彼女は富士(ふじ)心(ここ)美(み)誰にでも優しく、誰にでも手を差し伸べる正真正銘の善人ともいうべき女性、彼女の唯一の欠点をあげるとするならば、人が好過ぎる余りその人を想う善意で説教を垂れる事ぐらいであろう。

「令華先輩?どうかしました?ぼーっとこっちを見て」

「いや何、君は僕なんかと違って魅力のある女性だなと、感心していたまでだよ」

「どうしたんです?いきなり」

「ハハッ、忘れてくれ、今日の日照りに浮かされただけさ」

 そんな他愛もない話を続けながら一つ、また一つと課題を終わらせて行っている時だった彼女がふと周りを確認する、まるで何かから備えるように。

「どうしたんだい?心美君」

「いえ、少し外の空気を吸いに行きませんか?ちょっと休憩に…」

「この日差しの中、敢えて外に行くというのか?全く君は変わっているな…いいよ、少し勉強も飽き飽きとしてきた所だ、外に出向こうか」

 控えめにありがとうございますと口に出し、足早に外へでて行く彼女。そこまでして外に行きたかったならもう少し早め言ってくれても対して問題はないと言うのに…彼女は人への気遣いが過ぎるこれは少し彼女の長所と言ってもいいが短所ともいえるな。などと考えながら彼女が待つ外へ出る、ジンジンと肌を痛ませるような日差しが差す外へ。

 

 *

 

 何かを言われたきがした、よく理解はできなかったが皆が危ないと救いたいのであれば、行動しろと幻聴だろうか?とも思ったがここ最近見た夢を思い出す。人が沢山死に、街が滅びゆく光景を最近何度も夢に見る、なんとも嫌な夢だ。この胸騒ぎがただの考えすぎと思いたくて、令華先輩には悪いが、いち早く外に向かった。

「ママ、何あれ?」

 そう子供が空を指差し天を仰ぐ、そこにはこの世のモノとは思えない禍々しい亀裂がそこにはあった。

亀裂から何かが落ちてくる、ゆっくりとゆっくりと何かはわからないが危ないと、そう頭が警鐘(けいしょう)を鳴らす、物珍しさに子供と手を繋いだ母親はスマホを構えている、そんな事をしている暇は無い速く安全な場所へ。

「あの、逃げましょう?あれは危ないものだと思います」

「なによ?折角撮ってるんだから、邪魔しないで!」

 乱暴に手を退けられる、ここに居るのは絶対危険なのにどう伝えればいいのか悩んでしまう、その瞬間にも空の亀裂から落ちて来た何かは地面に近づいている。その時乱暴に体を抱き寄せられ、親の近くに居る子供も抱き図書館に戻らされる。

「ちょっと貴方!人の子になにしてるのよ!」

「何をしているかを聞くのはこっちの方だ!いくらゆっくりと言ってもあれだけの質量のある物体が地面に着けば、どうなるかぐらいその矮小(わいしょう)な脳みそで考えろ!」

 令華先輩が母親を諭し子供と私を連れてできる限り安全そうな物陰に隠れる。

「ちょっとふざけないでよ、あんた高校生でしょ?人の子連れて…」

 途中まで声は聞こえたがその後は何も聞こえなかった、彼女が言葉を発するのを辞めたからではない、その声をかき消してしまう程の爆音が鳴り響いた、まるで爆弾でも爆発したかのように。その直後凄い衝撃が私達を襲う。これでは外に居た彼女は…そして令華先輩がここまで連れてこなかったらこの子と私も…。

「大丈夫かい?心美」

「大丈夫です…あのっ」

「お礼も謝罪も必要ない、まずはその子とこの図書館内の人をできるだけ外に連れて行ってあげてくれ」

「わかりました、令華先輩は?」

「私は…望みは薄いだろうがその子の母親を見てくるよ、その子を連れてなるべく早く離れるんだ、わかったね?」

「ねぇママは?」

 状況をよく理解できていないのか、戸惑った顔をして私に訪ねてくるが、恐らくこの子の母親は…しかしそんな事を考えている暇は無い、あの衝撃を受けて動けない人も沢山いるかもしれない、急いで助けなくては。

「ママは私の先輩、ほらあの人が探しに行ってくれるからまずはこの建物から出よっ、ねっ?」

 こういう状況下では動ける人が動かないと犠牲者は増えるだけだ、だから私が動いて少しでも皆を助けないと、本当にあの夢の通りになってしまう。それだけはなんとしても避けなくては。

 

 *

 

 爆心地方面にある既にもう吹っ飛んだ自動ドアから外にでる、辺りを見渡すがそこには誰も居ない。やはりあの母親は助からなかったか、もう少し私に威圧感でもあれば助けられたかもしれないが…しかし悔いるのは後でいい。

 空を見る、相も変わらず空には亀裂がある、だが先ほど降ってきた隕石のような物体は無いようだった、生存者を探すのであれば今の内だろうと考え一歩踏み出す。

 少し亀裂に近づくとそこには先ほどまで居た図書館よりも酷い光景が広がっていた、大地は燃え建物は崩れている。これでは生存者なんてものは夢のまた夢であろう、しかし彼女はこの惨状を見ても、もしかしたら居るかもしれないと声を張り続けるだろう、だからこそ彼女にはここを離れるように指示を出した。

「たす…ぇ…て…」

 何処からか声が聞こえるその声の方へと近づくと建物の下敷きになってしまった父親だろうか?それとその子供らしき人物がその父親の上にある建物を必死に退けようとしている。

「大丈夫かい?いや聞き方が悪いね、大丈夫ではないだろうから」

「よぁ…た…せめ…て、む…すこ…だけ、でも」

「何言ってるんだよ、父さん…そんな事できる訳ないだろ!」

 確かに子供としては、父親を置いていくなんて選択肢は存在しないだろう、しかし親としては、もう一度あの爆発が来る前になんとか息子だけでも助かってほしいという最後の願いなんだろう。

「わかった、最後に言っておきたい事はあるかい?」

「おいアンタなに諦めてんだよ…助けるのを手伝ってくれよ!」

「かぃと、俺と…かぁさ…んの…分…まで…い…きてく…れ」

「そんな事言うなよ、父さん!必ず助けるからアンタも手伝えよ!」

 本当は彼も生きて自分の息子の成長を見届けたいはずだろうに彼は自分の命よりも息子を想い僕に託した。だからそれを叶えなくてはいけない、彼女も悩みこそすれ同じ決断をしたであろう。

「貴方の想いはしかと受け止めた、あとは僕に任せてゆっくりと休んで」

 そう言うと彼は安心しきったかのように、瞳を閉じた。そして私は彼を担ぎあげここまで来た道を引き返す、せめてあの図書館まで行けば一(ひと)先(ま)ずの安全は保てるであろう、まだ時間も経っていないし彼女が残っているかもしれない。

「おい!離せよっこの!」

 じたばたと暴れられる、あぁ面倒くさい、小さい子供とはいえ男の子は男の子だ僕の小さい体ではいつかは耐えられなくなって、振り落とし父親の元へ戻るかもしれない。ならばダメもとではあるが説得をしたほうがいいか。

「君の父はなんで僕に託した後に目を閉じたと思う?」

「ああ?どうでもいいだろ!そんなこと!」

「そんなことではないよ、君の父は僕に託す事で自分の一番大切な物だけは守れたと安心して目を閉じたんだ、それまでもいつ死んでもおかしくはない怪我だったはずなのに、君の前では父親を演じきったんだよ、それでも君は彼の努力を無駄にして元の場所に戻るのかい?」

 少年は黙る、こんな事言っても納得はしないだろう、彼を助けなかった僕を恨むであろう、それでも僕は彼に託された君を安全な所まで運ぶよ。

 




 本日はここまで読んでくださりありがとうございました。
 引き続き12時に、(下)が投稿されますので、よろしければお読みいただけると幸いです。

小説の文字数について

  • このままの文字数でよい
  • 5000字の方がよい
  • 3000字の方がよい
  • 2000字の方がよい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。