どうか、読者様の娯楽になれれば幸いです。
「酷い言われようですな、そこまでの事は言っておりませんよ」
目の前に居た男はいつの間にか椅子に座ってそのようなことを口走っていた。彼の手を叩くと彼は僕から手を離してくれる。
「貴方の、貴方方の言いたい事は理解しました、喜んで引き受けましょうとも、少なくとも僕はですが。彼には少し考える時間を与えてあげてください、それと二つの条件があります」
「なんですかな?」
「一つ僕達に対する住居の手配」
「それは貴方方が守護者様と言われた段階で手配しておりました」
なんとも手の速い男だ、気に食わないがまだ外は暑いとはいえ路上暮らしになるのは御免だったから、ありがたい。
「最後に富士心美はこちらで預かりますいいですね?」
「それはー、ふむ…」
今この場において神ともいえる地球の言葉を聞ける少女、それを彼らは手元に置いておきたいだろうしかし、こればかりは譲ってもらわなくては困る。
「彼女は僕の良き友人です、僕は彼女を守る為に貴方のお願いを承諾しました。それが守れないのであれば僕は彼女連れて、そうですね北海道にでも飛びますよ?幸いな事に僕には飛行能力があるもので」
脅しではなく事実を述べる恐らく北海道の方がこの村より勝算はあるだろう。ならば彼女を連れて逃げるのも一興だ。
「わかりました…彼女は貴方に任せます、ただ一つお約束を」
「なんですか?」
「地球からの声が入った場合早急に我々に伝えていただきます事を約束していただけますかな?」
ふむ、これは僕が答える案件ではなく彼女が決める問題であろう。
「心美君それで大丈夫かな?」
「わかりました…それはお約束します」
交渉成立だ、その用意していただいた住居とやらに向かうとしよう。
「心美君では帰ろうか」
「はい、令華先輩」
去り際に武田君の顔をちらりと見る彼は悩んでいるようだった、それもそのはずか。ただ君がどのような選択を取ろうとも君を止められる人は居ないだろうから好きな選択をするといい。言葉にはしないが恐らく彼もそれはわかっているはずだ、だからこそそれ程まで悩み考えているのであろう、心美君同様心優しい青年だ、僕とは大違いで。
*
控え室に行くと、とても姿勢よく座っている子供が目に入る、その子供は遠目からだと間違いなくドールと見間違えてしまう程美しく、そして凛々しい顔をして、きめ細やかな長髪の女の子がそこに座っていた。しかしこの場に居る者がただの女性な訳がない恐らくは、と考えていると彼女から質問を受けた。
「君は役場の人かな?」というごく単純な質問が俺は違うと言うと彼女は納得した、しかし唯一気になる点があった何故彼女は自身を僕と呼んでいるのだろうか?しかし昨今のジェンダーレス社会であればこのような女性もいるのだろうと納得しその場で待つ。
それからは彼女の独壇場だった、目の前に居る賀水とかいうやつが言った。お願いというものについて真意を説明したり、自身と賀水の隣に居た女性を自分と一緒に来るように言ったり、俺に現実を叩きつけてきたり、彼女達がでて行ってもうかれこれ10分は経とうとしているが、俺は未だに答えを決めれていない。
守護者として、忍野村に居る1万人とちょっとの他人を守ることか、それとも家族を友人を探しに行くか、そこで賀水が口を挟む。
「君が苦しんでいる事はよくわかっている、だがこれだけは言わせて欲しい。私は何も自分が生きたいから君たちに頼んでいる訳ではない、この厄災ともいえる災害を一先ず凌ぎ切った先に外に居る、誰かがここまで辿り着くかもしれない、そう信じてこの忍野村という一つの小さな村を守り切りたいんだ、それだけはわかってくれるかな?」
彼の目には本当にこの村を守りたいという目をしている気がした、単純にずるい大人によって簡単に言いくるめられ、絆されているだけかもしれないが、今この一瞬だけは信じて見ようと思った、この言葉が例え嘘だとしてもこちらには天成という武器がある。
「わかった、アンタを信じるよ。少なくても答えが出るまでは、今言った事が嘘だと言う事がわかれば俺はアンタを斬るかもしれない、その覚悟を持っておけ」
「わかっているとも」
相変わらず、彼の目からは嘘というものが感じ取れない。
決まってしまえばもうここに用はないので、自分に用意された家とやらに向かう。
令華先輩に連れられ、役場を出て用意された家とやらに向かう、向かっている最中に様々な人に感謝される、一緒に避難した人だったり、令華先輩に助けてもらった人だったり、この村にもともと住んでいる人達にも感謝をされたが、素直には喜べなかった。一緒に避難した人の中にも私同様、家族や友人が居たはずだその助けられなかった方をどうしても見てしまう、結界についても私の力で制御出来ているモノでもない全ては地球が力を貸してくれて初めて成せた偉業なのだ、そう思うとどんどん苦しくなってくるが途中令華先輩が頭を撫でてくれた「考えすぎだ」と一言言って。確かに全員を救いたかったなんて言うのはただの傲(おご)りなのかもしれない。でも、私に令華先輩みたいな力があればもっと救えたかもしれないと少しだけ考えてしまった。
「住所の紙を渡して来てみては良いものの、普通の住宅だね」
「中に食料は置いてあるとの事でしたが、服とかどうしましょうか?」
「流石に衣服を1着着続けるっていうのは避けたいが…まぁとりあえずは入ってみようか」
令華先輩に続き、私も家に上がらせてもらう今日からここが私の家となる場所だから最低限の間取り位は今日中に覚えておきたい、と言っても一回にお風呂とトイレとキッチンとリビング二階に個室が三つというなんとも普通の住宅であった。
「僕は二階の各部屋を見てくるよ」
そういい彼女は二階に上がる、そこまで新しい家でもないのか階段を上る度、ギシギシと音を鳴らしながら登っていく。この様子では夜中にお手洗いでも言ったら起こしてしまいそうな気もするので気を付けておこう。
令華先輩が二階を探索している間に私はキッチンとトイレとお風呂場を見ていく、年期の入った階段とは別に特にトイレとお風呂は最近といっても数年前だろうが、その位に交換されたのでないかと思わせる設備ではあった。キッチンは冷蔵庫の中には少なくても一日二日で無くなるとは思えない量の食事とその近くの戸棚に缶詰等の非常食があった、地球からの言葉と言う面では、資源には問題はしないとの事だったが確かにこれならば大丈夫だろうが、他の避難民に対してもこのレベルの支援をしているのであろうか?ふと疑問に思った。
*
ギシギシと階段が軋む音を楽しみつつ二階へ上がっていく、二階は三部屋で二部屋は前の住民が住んでいた名残だろうか?それとも賀水という男が配備したのだろうか?最低限の家具にベッドが置かれ、残る一室には何一つ置かれていなかった。
何も置かれていない部屋を後にし家具が備え付けられている部屋へ戻り、タンスを開け 中身を確認すると、最低限の衣服が置いてあると言っても僕からしたら少しサイズが大きいが、だが心美君であればこのサイズであれば、あの豊満なバスト次第な気もするが、丁度よく着られるであろう。
次に襖を開け押し入れの中を見る、そこには恐らく来客用とでもいうべき布団が重ねられて置かれていた。
「使うなら…これかな」
布団を持ち上げ何も置かれていない部屋に置き、一階に戻り掃除機を探す。
「心美君どこかで、掃除機を見なかったかな?」
「掃除機なら、階段近くにあった気がしたんですけど…」
「おっと、近くにあったのかすまない、ありがとう」
「いえいえ大丈夫ですよ、一階はそんな場所なかったですけど、二階は埃とかが凄い所ありました?」
「いやそんな場所は無かったよ、ただ一応掃除して置きたくてね。それと着るものについての心配はなさそうだよ、二階のタンスにある程度の衣服は置かれていた、君の好みに合うかはわからないが…」
「こんな時に自分の好きなものは優先しませんよ」
そうだろうとも、君はこんな時だからこそ自分自身の事より赤の他人を案じる事ができるのであろう。僕を助けた時同様に…。
そう考えながら少し重たい掃除機を持ちながら、二階に再び戻り掃除をする念入りに細かい所のごみ一つ残さないよう入念に。
掃除が終わり、一階に掃除機を戻しに行くと彼女がご飯の支度をしていた。
「君の手料理を食べるのは、いつぶりだろうか?」
と他愛ない質問をする。
「夏休み入る前にもありましたよ、令華先輩が昼食を持ってくるのを忘れたって」
「ああそういえば確かにあった気もする、だが君が作る料理は色とりどりで毎回美味しかったことだけはしっかりと覚えているとも」
「本当ですかー?じゃあ令華先輩に質問、私の得意料理はなんでしょう?」
これは参ったな、全く解らないぞ彼女が作る料理は毎回綺麗に整頓されていてそれでいて味にも気を使っているというのは確かだが、彼女一番得意な料理か…。
「そうだな、卵焼きかな?綺麗な焼き目と絶妙な味付けが…」
「ハズレです、私の得意料理は今日の夕食でもある唐揚げでしたー」
唐揚げか、そうだったのかそれにしても僕は情けない、君の事をまるで理解できてあげられていないんだなと少しがっかりする。
「さぁ食べて、お風呂に入って眠って明日に備えましょう!」
「そうだね」
そんな感じで今日は終わる、少しだけ自分に失望しながら、明日がどうなるかはわからないができればこの彼女といる日常をもう少しだけ味わっていたい。
第二話完
本日はここまで読んでくださりありがとうございました。
明日0時に、次話が投稿されますので、よろしければお読みいただけると幸いです。
小説の文字数について
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