デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー   作:SoDate

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第8-1話, ハロウィンの魔女

 電子世界での騒動が集結してからしばらく経った頃、フラクシナスは大規模なメンテナンスとセキュリティの強化を終え通常の状態に戻った。そんな船の一室でトーマは新たに手に入れた二冊のワンダーライドブックの調査を行っていた

 

「プリミティブドラゴンにエレメンタルドラゴン……どっちも凄い力を秘めてるが──」

『両方とも力が不安定過ぎる……でしょ?』

 

 トーマの操作していた端末の画面に姿を現したのは白い髪に赤みがかった黄色い瞳を持つ少女──或守鞠奈。現在の彼女はもう一人の自分であり唯一の姉妹ともいうべき存在。或守鞠亜の身体に宿るもう一つの人格と言った形で存在している

 

「その通り、プリミティブドラゴンの方は単体で使う分には問題ないが……一緒に使うのが安定するのは事実だが、ずっとオレが持ってる訳にはいかないだろ?」

『そうね、特に私と鞠亜から生まれたエレメンタルドラゴンは私たちの存在そのものと結びついてるかも知れないし』

 

 鞠奈の懸念している通り、エレメンタルドラゴンは鞠亜と鞠奈の二人から生み出された本であり、新たに生み出された物語ではあるものの同時に二人の存在を支える核になっている可能性もある。その可能性がある以上トーマもこの本の使用には慎重になっていた

 

「使わせてもらうにしても、暫くは様子を見た方がいいか。プリミティブドラゴン(この子)はオレが預かってて大丈夫か?」

『えぇ、お願い』

「それじゃ、エレメンタルドラゴンの方は管理よろしくな」

『──はい、私たちに任せてください』

 

 唐突に瞳の色が赤みがかった黄色から青に変わり、人格が鞠奈から鞠亜へと切り替わる

 

「急に変わるな、相変わらず」

『鞠奈は我が強いので……ともかくエレメンタルドラゴンはこちらにお任せください。琴里と万由里も少々試したいことがあるとの事なので。しばらくはお二人に預ける予定です』

「試したいこと?」

『はい、ですが詳細は明かされていないので、わかった際には改めてご報告します』

「わかった、それじゃあよろしくな」

 

 それだけ言うとトーマはこちらに頭を下げている鞠亜に軽く手を振ってから街に戻ろうとしたが、艦内に空間震警報が鳴り響いたため踵を返し司令室まで向かう

 

 

 

 

 

 司令室までやってきたトーマが中に入ると、既に士道が精霊とのコンタクトを行っている様子が映し出されている

 

「琴里」

「トーマ、少し遅いんじゃないの」

「すまん……それより今回の精霊は?」

「まだ士道君と接触はしていません。霊力は確認できているので接触に向かって貰っている所です」

 

 琴里に変わって神無月がトーマの問いに答え、再びモニターまで視線を戻すとフラクシナス内に士道の声が聞こえてきた

 

『ちょっと雰囲気出すぎだろ、これ……』

「文句言ってんじゃんないの・。出現した精霊は既に空間震発生ポイントから西に移動しているわ。すぐにASTも現場に到着するはず、余計な茶々入れられる前に接触してちょうだい」

『了解……っ』

 

 琴里が士道との通信を終えたのを確認したトーマは彼女へ近づくと話しかける

 

「オレも向かった方がいいか?」

「……そうね、すぐに転送するからいつもみたいに後方からお願い」

「了解」

 

 琴里から了承を取り、現地へ向かうため移動をしようかと動き出した瞬間、士道の困惑の声が艦橋へ聞こえてきた

 

『……は?』

「ちょっと? 何してるの? 精霊の反応はもっと先──」

 

 士道の怪訝な言葉に怪訝な表情を見せた琴里もまた、映し出される光景に言葉を止める。一体何を見たのかを確認するためにモニターへと視線を向けたトーマはその光景を見て、今回顕現した精霊が誰なのかを理解する

 

「……マジか」

『な、なんだ……これ。遊園地のアトラクションが生きてた……わけないよな……』

「──えぇ。微弱ながら周囲に霊波反応があるわ。詳しいことがわからないけど、恐れく精霊の能力に関係しているんでしょう」

「その通りだ」

「トーマ?」

 

 彼女の放った言葉を肯定したトーマは、こちらに視線を向けてくる琴里やクルーの視線を受けながら話を続ける

 

「士道、聞こえてるな」

『あ、あぁ、聞こえてる』

「今回の精霊はオレの個人的な知り合いだ。今からその特徴を伝えるから──」

 

『あら?』

 

 士道に今回の精霊の特徴を伝えようとした瞬間、士道の上空から声が聞こえてくる。視線を向けた先にいたのは魔女を思わせる女性。その女性の姿を見たトーマは軽く息を吐いてから士道に……否、この場にいる全員に告げる

 

「……すまん。やっぱ今回はオレ、お前らを手伝えないわ」

 

 その言葉を聞き、驚きの表情を見せる一同を背にすると、トーマは踵を返してブリッジを後にした

 

 

 

 

 精霊と対面していた士道もまた、インカム越しに聞こえてきたトーマの言葉に驚いていると、少し離れた場所にいた筈の魔女はすぐ近くまで近づいてきていた。年の頃は二十代、グラビアアイドルが裸足で逃げ出すほどのプロポーションを持った魔女は、値踏みするような視線を彼に向けた後、少し顔を近づける

 

「ふふっ、別にそんなに怖がらなくても、取って食べたりしないわよ」

「あ、あの、俺は──」

 

 目の前にいる精霊の想定外の行動にビクっと身体を震わせた士道は何とか言葉を返そうとするがそれよりも先に精霊が片手を伸ばし、士道の顎をくいっと持ち上げる

 

「へぇ……なかなかカワイイじゃない。どうしたの、僕? 確か私が限界するとこっちの世界では警報が鳴るって聞いてるんだけど?」

「そ、それは……」

『士道、選択肢よ!』

 

 トーマの放った言葉で僅かに機能不全を起こしていたフラクシナスクルーだったがいち早く再起動を果たした琴里が士道へと選択肢が出た事を伝える

 

 

 

 

 

 

➀「理由は一つです。あなたに、会いに来たんです」

②「ぼ、僕、何もわからないですぅ……逃げ遅れて、気付いたら、ここにいて……」

③「とりあえずおっぱい揉ませてもらってもよろしいですか」

 

「総員──選択!」

 

 メインモニターに選択肢が映しだされると、琴里が司令官席から艦橋下のクルーへ向けて号令を出す。その声を聞いたクルーたちは一斉に手元のコンソールを操作し、選択肢を選ぶ。時間にして数十秒の後、画面上に集計結果が表示される

 

「まぁ……順当なところかしらね」

 

 表示された結果を見た琴里は加えたチュッパチャップスの坊を動かしながらそう言葉にする。表示された結果は一と二の選択肢が拮抗しており、三には票が入っていない。その結果をみたクルーの一人、中津川が指をパチンと鳴らした

 

「ここは➀でしょう。まだ相手の気性がわからない以上、奇を(てら)うのは危険なハズです……相手の気性知ってる人もどっか行っちゃいましたし」

 

 有力な情報を話す前にどこかへ行ってしまったトーマへの不満を若干漏らしつつそう言った中津川に反論するように、今度は箕輪が声を上げる

 

「いえ、ここは絶対②で行くべきです。中津川くんは男だからわからないかもしれませんけど、士道くんは意外と母性本能をくすぐるタイプなんですよ! 見たところ、今度の精霊はお姉さん! 今こそその武器を最大限生かすべきです!」

「あー……」

 

 箕輪の熱弁を聞いた椎崎が賛同を示すように小さな声を上げた

 

「なるほど、わからないでもないわ……でも以外ね、③に一票も入っていないなんて。てっきり神無月あたりがまた悪ふざけをするものかと思っていたのだけれど」

「そんなまさか、私はいつでも真剣です」

 

 琴里がそう言いながら艦長席の後ろに立つ男──神無月に目をやると彼はいたって真剣な表情で言葉を返した

 

「本音は?」

「胸は膨らみかけが思考ですので、あのようなだらしないおっぱいに興味はありません」

「…………」

「選択肢が、『膝の裏を舐めさせてください』だったら少し悩みました」

「…………」

 

 真剣に変態的なことを言う神無月を見た琴里は、無言でちょいちょいっと指を曲げ、神無月に膝を折らせると、その目へ向けて舐め終わったチュッパチャップスの坊を噴き出した。真っ直ぐ神無月の眼へ向けて飛んで行ったその棒は、真っすぐ彼の眼に着弾する

 

「ノォォォォォォォォォッ!?」

 

 目元を抑え後方に倒れこむ神無月を他所に、飴玉ホルダーから新しいチュッパチャップスを取り出しながら、士道のインカムに繋がるマイクのスイッチを入れ

 

「──士道、②よ。できるだけ目を潤ませながら、上目遣いで」

 

 精霊と対峙している士道にそう指示をした

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回は手伝わないと表明し、早々に離脱したトーマは一人マンションに繋がる道を歩いていると携帯の振動を感じ取り電源ボタンを押すと。アプリが勝手に立ち上がり鞠亜が姿を見せる

 

「フラクシナスの方に居なくていいのか?」

『機能の大部分はアチラにあるので問題はありません。ここに来たのも聞きたいことがあったからですので』

「聞きたいこと……って、大方さっきの事だろ?」

『はい、どうしてあのような事を言ったのですか、今回もいつものように協力を──』

「言ったろ、個人的な知り合いって……アイツの事を知ってるからこそ、オレが余計な情報を伝えるのはノイズになる」

『……それで、今回は静観すると?』

「そう言うこと……そんじゃ、後は任せた。どうしようもない場合は手を貸すから」

『……わかりました、ですがこの事は後ほど琴里たちにも共有させてもらいますね』

「それに関しては構わない、それじゃあな」

『はい、それでは』

 

 鞠亜との話を終えたトーマは携帯の電源ボタンを押すと、改めてマンションへ向かって歩き始めた

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