デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー   作:SoDate

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第8-2話, ドッペルゲンガー

「ふぁあ……」

 

 先の精霊との遭遇があった翌日。士道は大きなあくびをこぼしながら、自身の通う来禅高校の廊下を歩いていた

 士道がここまで登校を遅らせたのは、先日あった精霊──七罪に原因があった。士道と七罪のファーストコンタクトは最初こそうまく言っていたがASTの襲撃を受け、彼女が自身の天使──贋造魔女(ハニエル)を顕現させ応戦を始めた所までは良かったのだが、土煙により彼女がくしゃみをして士道が目を閉じている間に好感度が急降下した後、士道に危害を加える旨の言葉を残し姿を消した

 

「もう昼休みか……随分遅れちまったな」

 

 本来であれば精霊が出現しても学業に支障が出ないように配慮されているのだが、昨日は七罪についての緊急会議がフラクシナスで開かれ、士道もそこに出席していた。基本的には早めに終わる事その会議だが、今回は七罪の使う能力の詳細、そして能力を使用した意図が掴めなかったこと、好感度が急降下した理由、そして上記にも記したとおり士道に危害を加える旨の発言をしたことが重なりいつもより時間がかかってしまったのだった

 一応仮眠は取ったものの完全に眠気が取れている訳でない士道だったが、教室のドアを開けた瞬間、眠気は吹き飛んだ

 

『…………ッ!!』

「え? な、何だ? どうしたんだよ、みんな……」

 

 教室に入るなり自身に突き刺さるクラスメイトの視線、それを受けた士道はわけのわからないまま頬に汗を滲ませていると教室の端に集まっていた亜衣麻衣美衣が目をギラッと光らせ素早い身のこなしで士道へと近づいてきた

 

「よくもおめおめと戻ってこれたな五河士道ォ!」

「自分が何をしたかわかってんでしょうね!」

「痛覚を持って生まれた事を後悔させてくれるッ!」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ! 一体何をそんなに怒ってるんだよ!」

 

 士道を囲み怒りを浮かべている三人の気迫に押された士道は思わず身を竦めながらそう言う、彼女たちに怒鳴られる事は珍しくないが今回ばかりは心当たりのない士道がそう言うと三人は更に語気を強め士道に迫る

 

「シラを切ろうたってそうはいかないんだからね!」

「そうよ! 証人はたくさんいるんだから!」

「この桜吹雪、忘れたとは言わせねぇぜ!」

 

「三人とも、少しいいだろうか」

 

 身に覚えのない疑惑をかけられた士道は助けを求めるように周囲を見回すと、三人娘の後方から聞き馴染みのある声が届く

 

「! 十香!」

 

 見知った少女の登場に安堵した士道をよそに、十香は亜衣と麻衣の間をすり抜けて士道の前までやって来た

 

「助かったよ、十香。一体こいつらどうしたんだ? 俺は今登校してきたのに────」

 

 安堵の息を吐いた後、何がどうなっているのか訊こうとした士道を腹部にぽすっと顔を赤らめた十香のグーが当てられる

 

「……なぜ、いきなりあんなことをしたのだ。その、なんだ……驚くではないか」

「へ……? な、何言ってるんだ、十香……? 俺は何も──」

「……何?」

 

 士道が素直に答えると、十香は眉根を寄せて表情を険しくしていった────直後、目に涙を溜めながらぽすぽすと連続して士道の胸を叩いてきた

 

「わっ、な、なんだよ十香、痛いだろ……」

「うるさいっ! 見損なったぞシドー! 百歩譲ってあれは許すにしても、自分のやったことを認めないとは何事だ!」

「いや、だからあれってなんだよ!?」

「……っ! そ、それは……その、あれだ、わ、私の……」

 

 十香は口ごもり、赤い顔を更に真っ赤にしてうつむいてしまった。そんな十香を、亜衣麻衣美衣たちが抱きしめると、士道に非難の眼を向けてきた

 

「いいのよ! いいのよ十香ちゃん!」

「自分の罪を否認した挙げ句、被害者にフラッシュバックさせようだなんて!」

「貴様には落ちる地獄すらありはしない!」

「いや、だから! なんのことなんだよ!?」

 

 一体自分の身に何が起こっているのか、それを理解することの出来ない士道はたまらず叫びを上げる。瞬間、士道の右手首がガッと掴まれた……そこに立っていたのは鳶一折紙、普段と変わらない表情の彼女であったが瞳の奥に宿る確かな意思を感じ取った士道は嫌な予感を覚えつつ言葉を口に出す

 

「お、折紙? まさかおまえも俺に何かされたっていうのか……?」

 

 士道の言葉を聞いた折紙は目を伏せ、ふるふると首を横に振った

 

「何も」

 

「そ、そうか……」

 

 折紙の回答に一安心した士道は若干こわばっていた身体から力を抜いた瞬間、折紙は無言のまま手を引きあらかじめボタンを外していたであろう自分のブラウスの中に士道の手を突っ込み、胸に押し当てた

 

「!!??」

 

 突然の行動に士道の思考はショートし、僅かな間ではあるが完全に思考を止め、再起動同時に大慌てで手を引こうとするが手首はガッチリとホールドされ動かず、逆に動かせば動かすほど温かく柔らかな感覚が手に伝わり頭の中で更なる混乱を巻き起こす

 

「な、何をしているかーっ!」

 

 そんな状態になった士道の腕を掴み折紙から引き剥がしたのは少し前まで顔をうつむけていた十香、彼女のお陰で右手が自由になった士道は未だ手に残る感覚にドギマギしつつ折紙に問いかける

 

「お、折紙……? おまえは俺に何もされなかったんじゃなかったのか……?」

「そう。だから、今からしてもらう」

「は……はぁっ!?」

「さぁ、皆にしたことを私にもして。壁際に押し付けて顎を持ち上げて、耳に甘い息を吹きかけておもむろにスカートを捲って」

 

 いやに具体的な指示に士道は目を見開き、近くで聞いていた亜衣麻衣美衣の三人は恥ずかしそうに頬を染める。そんな周囲の様子に構わず、折紙はまくし立ててくる

 

「そして濃厚なディープキスを交わし、服を引き裂き、乙女の純潔を奪い、一生消えない士道の痕跡を身体に刻み込んで」

「はっ、えっ、えぇぇッ!?」

「鳶一折紙! シドーはそんなことはしていないだろう!」

 

 暴走を止めない折紙相手に、十香がたまらずといった調子で叫びヲ上げる……が、折紙は未だ暴走を止めずずずいと士道に詰め寄る

 

「さぁ、士道、さぁ」

「ちょ……いや、あの…………」

「さぁ」

「ご、ごめんなさぁぁぁぁぁぁぁぁぁいッ!」

 

 何故か謝罪の言葉を述べながら逃走する士道を追いかけようと折紙も追いかけようとするが十香に阻まれ言い争いが始まる、そんな声がどんどん遠くなっていくのを聞きながら廊下を駆け抜けた士道は、追いつかれない場所に逃げ込み、汗を拭いながら荒くなった呼吸を整える

 

「はぁ……はぁ……みんな一体何を言ってたんだ? 俺は今登校してきたなッ狩りだってのに……」

「混乱してるな、士道」

「うわっ!? ってなんだトーマか」

「なんだはこっちの台詞だ、撤収作業中に駆け込んできて何かあったのか?」

「いやそれが、みんな変なんだよ」

 

 急に駆け込んできた士道から事の顛末を聞いたトーマは、売り切れたパンの入っていたカゴをカートに載せ終えると改めて士道へと視線を向ける

 

「それはお前、アレだ。ドッペルゲンガー」

「ドッペルゲンガー?」

「あぁ、同じ人間が同じ場所に複数存在する。そう考えれば不可解な事は何もないだろ」

「それはまぁ……そうだけど」

「なら、これ以上被害がデカくなる前に探したほうがいいぞ……アイツの能力なら、マジでお前の人生終わらされかねないからな」

「! お前、やっぱり何が起こってるのか知ってるんだな」

 

 士道の問いを受けたトーマどちらとも取れる笑みを浮かべた後、カートを押しながら言葉を発する

 

「あぁ……けど昨日も言った通りだ。今回の件は中立、七罪側にも、お前達側にも介入する気はない」

「七罪って……頼むトーマ教えてくれ! 今何が起きてるのかお前なら知ってるんだろ!」

「介入する気はないって言ったろ、後、オレから教えるんじゃ駄目なんだよ。他ならぬお前自身の手で解決しないと……じゃあな」

「おいトーマ! 待てって──」

 

 後を追おうとした士道だったが目の前からやってきた小さな人影が士道の前で止まる

 

「五河くん……!」

「た、タマちゃん……じゃなくて、岡峰先生。すみません俺いま急いでて────?」

 

 思わず喉から出てしまった言葉を訂正した後、トーマの後を追おうとしたが岡峰先生はガッと士道のシャツの裾を掴んだ

 

「ど、どうしたんですか、先生……」

 

 少し前にも似たようなことがあったなと、嫌な予感を感じがした士道は、一応彼女に問いかけると、岡峰先生は今にも泣きだしそうな顔を作り訴えかけるように声を発してきた

 

「あ、あんなことをしておいて、何を言ってるんですかぁ……! も、もう私お嫁に行けません……、ちゃんと責任取ってもらいますからね!」

「え、えぇぇッ!?」

 

 ある程度覚悟していた事だが士道だったが、いざ口に出されると動揺はする。鬼気迫っている彼女の様子に一歩後ずさると、今度は廊下の曲がり角から一人の少年が現れ士道の姿を見るなり怯えたような声を発した

 

「と、殿町……?」

「五河……くん、あの、な……俺、よく冗談を飛ばしてたし、誤解させてたかも知れないけど……そういう趣味、ないから……」

「お前は一体何をされたんだよ!?」

 

 トーマとの会話によって今起こっている騒動の原因が七罪であることはわかった士道だったが、具体的に彼女が何をしたのか、そしてどうすれば弁明をすることが出来るのかを考えていた士道は視線を右へ左へと向けると────その先に、五河士道が居た

 

「え…………?」

「…………」

 

 廊下の先に立っているもう一人の自分、まるで鏡の中から出てきたのではないかと錯覚するもう一人は自分の方を一瞥すると、二ッと唇の端を歪めて小さく手を振りながら廊下を歩いて行った

 

「ま、待て……っ!」

 

 もう一人の自分の挑発するような行動を見た士道は、近くに居た岡峰先生と殿町を振り切り、駆け出した

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