デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー   作:SoDate

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誤字脱字報告、ありがとうございます
伝えるのが遅くなってしまいましたが、いつも感謝しています


第8-3話, 二人の士道

 もう一人の自分が消えていった方向へ真っ直ぐ進んでいくと、見知った後ろ姿を確認できた

 

「! あいつ……」

 

 何でもないと言った様子で歩くもうもう一人の自分を見た士道は奥歯をぐっと噛み締め走る速度を上げる。校内の色々な場所を駆けまわり最終的に辿り着いたのは屋上、扉の前に立った士道は荒くなった呼吸を整えるように胸元に手を置き、大きく深呼吸をする

 

「はぁっ、はぁ……っ、もう……逃げ場は……ない、はず────」

 

 呼吸を整えた士道はドアノブに手を掛け、一気に開け放った。薄暗かった視界が一輝に開放感のある青空に浸食され、一瞬を眩ませた士道だったがすぐに屋上へ足を踏み出しフェンスに囲まれたそのエリアを探るように視線を巡らせる

 

「よう、意外と早かったな」

「……っ!」

 

 聞こえてきた声へと視線を向けた士道が見たのは、自身が今し方出てきた塔屋の上に悠然と腰をかけるもう一人の自分

 

「おまえ……やっぱり、俺────いや、違う。何が目的だ、七罪!」

「あら? てっきりもう少し悩むと思っていたけれど……なんか意外ね」

「カンニングをさせてくれた奴が居たからな」

「……あぁ、そう言うこと。こんなことになるならあの変人を口止めしとくべきだったわね」

 

 現在の状況と、昨日の七罪がASTとの戦闘中に見せた贋造魔女は光を浴びたモノを別の物へと変化させていた。それは人や無機物問わず適応されるもので、その能力を利用すれば自分の姿を別の姿に変えることも可能なのだろう

 だからこそ士道は理解できない、彼女が何をもってこのような事をしているのか。だからこそ聞く、いつものように精霊と対話をする

 

「七罪、お前の目的は何なんだ。俺そっくり化けて、みんなに悪さをして……本当に、俺の人生をおしまいにするってのが目的なのか!」

「────ニ十点」

「え……?」

 

 さっきまで笑みを浮かべていた七罪は半眼を作り士道の事を見下ろす

 

「言ったでしょう? 私の秘密を知ったからには、ただでは済まさないって。こんな嫌がらせ程度で済ますわけないじゃない。もっとめっちゃくちゃのぎったんぎったんにしてやるんだから……!」

「ちょ、ちょっと待った。そもそも七罪の秘密って、俺は何も──」

 

 士道が言葉を返そうとした瞬間、七罪は踵を屋上に叩きつけて無理やり言葉を止める

 

「だから危険なのよ。私の秘密を知る者は、この世界に存在してはいけないんだから……あぁでも、あの変人は知ってるんだっけ。けどまぁ、そんなの今はどうでもいいわ、だって──ここに士道くんが二人いるんだもの」

 

 呆れや諦め、その中にある僅かな嬉しさ。そしてそれ以上に強い負の感情、様々なものをごちゃまぜにしたような凄絶な笑みを浮かべた七罪は士道の方を指さす

 

「同じ人間が二人もいるなんて、士道くんもおかしいと思うわよね?」

「……七罪、お前まさか!」

「ぽんぽーん。ア・タ・リ。今日から私が、士道くんになってあげる。今日から私が士道くんを演じてあげる。何も心配はいらないわ、私の観察眼は完璧。あなたとあなたの周りの人の関係も把握済み。あなたがいなくなっても、きっと誰も気づかない。あなたがいなくなっても世界は変わらずに動き続けるわ」

 

「──生憎と、そいつは無理だと思うぞ。七罪」

 

 士道が反論するよりも先に、聞こえてきたのは士道たちの上空。太陽の光に照らされていたその人影──トーマは炎の翼を羽ばたかせながら屋上へと着地し、翼を消すと手に持った無銘剣を肩に担ぐ

 

「中立じゃなかったのかしら? それともやっぱりアンタもそっち(士道くん)側な訳?」

「勘違いすんな。こうして顔を出したのも軽い忠告だ」

「忠告?」

「あぁ、人間って奴は不思議な生き物だからな。その人との関係が深ければ深い程自然と本人かどうかが見極められるもんだ」

 

 その言葉を聞いた七罪は、僅かに表情を歪ませる

 

「そんなの、アンタが勝手に言ってるだけでしょ。私の観察眼は完璧、絶対に見破られるはずがないわ」

「それなら試してみると良い」

「試す? 試すってどうやって────」

 

 士道が言葉を続けようとした瞬間、屋上のドアがバンと開かれ二人の少女──十香と折紙が顔を出した

 

「この、貴様は別のところに行くがいい! シドーは私が見つけ出すのだ!」

「それはこちらの台詞。あなたになど任せておけない、早く教室に戻るべき」

 

 どうやら士道の事を探していたらしい二人は、いつものように喧嘩をしながら互いに睨み合い、押し合うようにしながら屋上へと出てきて、自分たち以外の屋上にいる面子を見つけ目を丸くする

 

「トーマ、それにシドーが……二人?」

「……どういうこと?」

「どっちかが偽物でどっちかが本物って事だ」

 

 二人の疑問に答える形でトーマがそう言うと、士道はこの場に二人の自分がいるのなら身の潔白を証明できると思い言葉を口にする

 

「十香、折紙! 聞いてくれ、こいつは──」

「こいつは偽物なんだ! 俺に化けて、みんなにイタズラをしたのはこいつだったんだよ!」

 

 が、それよりも先に七罪が大きな声で言葉を発する、口調や声音を完全に自分のものと同じものにして

 

「な……! だ、騙されないでくれ、二人とも! 本物は俺だ!」

「何言ってやがる! 俺が本物だ!」

 

 瓜二つの人間が、全く同じ声音でそう言っている様子を見た二人は眉をひそめる。どちらが本物なのか迷っているであろう二人に対して士道が出来るのは必至に訴えかけることのみ

 

「十香、折紙、信じてくれ……! 俺が本物の五河士道なんだ!」

「騙されちゃ駄目だ! 頼む──信じてくれ!」

 

 十香と折紙はどちらも本物としか思えない二人の士道を見比べる

 

「むぅ……これは、どちらかが偽元というわけか。ならば──」

「不可解な状況、しかし──」

 

「おまえが、偽物だ」

「あなたが、偽物」

 

 しばしの間を置いた後、二人は人差し指をびしっと────七罪が化けた方の士道へと向けた

 

「な……!?」

 

 まさか見破られると思っていなかった七罪の表情が驚愕に染まる

 

「な、なに言ってるんだ、二人とも。俺は──」

「正解だ」

 

 言葉を遮ったトーマは軽い拍手を二人に送ると、二人の方を憎々し気に見る七罪の肩に手を置いて質問をする

 

「それにしても、なんでわかったんだ?」

「なんで、と言われてもな……なんとなくだ。確かにシドーそっくりだが、本物と並び立つと、何か匂いが違うような気がした。それだけだ」

「あなた一人しかこの場にいなかったのなら、騙されていたかもしれない。実際、先ほどまで私はあなたを士道だと思っていた。しかし、二人士道がいて、どちらかが本物であるという条件下での問いならば話は別。あなたは本物の士道よりも瞬きが0.05秒ほど速く、また身体の重心が士道よりも0.2度ほど左に傾いている。間違えようがない」

 

「うわー……」

「な、何なの……何なのよこの子たち! どうかしてるわ……!」

「いや……それは、まぁ……」

 

 改めて折紙のプロファイルを目にしたトーマは若干引き、七罪もまた困惑と若干の恐怖が混じった様相を見せる。そして戦きながら呟いた七罪の言葉を聞いた士道は曖昧に返した

 二人に対する感謝はあるが七罪の驚く気持ちもわからないでもある士道が何とも言えない感情を抱えていると……七罪は忌々し気に歯噛みをした後、バッと右手を高く掲げた

 

 その直後、虚空から現れた箒型の天使は七罪の手に握られ、箒の先端が輝くと共に七罪の姿が士道のものから長身の美女へと変化する

 

「な……っ!」

「…………!」

 

 驚愕で目を見開いた十香と折紙は、士道を守るように片足を引く。しかしそんな二人の様子を気に留めることもなく悔しそうに歯をすり合わせガリガリと頭をかいている。そんな様子を見ていたトーマは、彼女へ一歩近づき言葉をかける

 

「だから言っただろ、関係が深ければ深い程、自然と本人かどうか見極められるって」

「……認めない、こんなの嘘! 絶対に認めないんだからッ!」

 

 トーマの方へ僅かに視線を向けた後、七罪は悔しそうな表情を浮かべ士道たちに指を向けてきた

 

「このままじゃ済まさない……! 絶対に一泡吹かせてやるんだから……!」

 

 軽やかな動作で箒の柄に乗った七罪はその言葉と共に空へ飛んでいく

 

「あ──お、おい!」

 

 慌てて追いすがろうとするが──時すでに遅し、士道たちの方を一瞥することなく、七罪のシルエットは小さくなっていった

 

「く……」

 

 霊力を封印するための方法は、好感度を上げること、だが現状は何も進展する事はなく、むしろ状況が僅かに悪化したような気さえする

 

「シドー」

「士道」

 

 士道がそんなことを考えていると、彼と同じように上空を見ていた十香と折紙は士道へと視線を向ける

 

「な、なんだ、二人とも」

「あやつは一体何者なのだ!?」

「あの女は誰。どういう関係なの」

 

 何を聞かれるのか、薄々わかっていた士道は顔を引きつらせトーマの方を向くが、既に彼の姿はなく……どうにか七罪の事をぼかして説明できる方法がないかを考え始めた

 

 

 

 

 

 学校での出来事があった日の夕方、夕食の買い出しを終えたトーマが一人歩いていると建物の影に気配を感じた

 

「……ん?」

 

 周囲に視線を巡らせてみるが何処にも人影が見えない、自分が感じた気配が誰なのかを把握したトーマは近くにあった自販機で飲み物を二つ買ってからベンチに座る

 

「随分と士道にご執心だな、七罪」

「……当たり前でしょ、私の秘密を知ったんだから。ぎったんぎったんにしてやる」

「オレはあっちより今の姿の方がいいと思うけどな」

「うっさい、ロリコンの変人」

 

 いつの間にか隣に座っていた七罪は、置いてあった飲み物に口をつけると目線だけをトーマの方へ向ける

 

「ねぇ、アンタ」

「どうした」

「その、お昼に言ってた事……本当なの?」

「関係が深ければ深い程、自然と本人か見極められるってやつか?」

「そう、それ」

 

 自身の質問が肯定されたトーマは、少し悩んだ後言葉を紡ぐ

 

「……少なくとも、オレは本当だと思ってるよ。実際仲が良い奴らはわかりそうだと思ってるし、鳶一折紙は兎も角……十香に関しては伝えた感覚が近いんだと思う」

 

 士道と十香も気付けばそこそこ長い付き合いになってるからな。そう付け足したトーマの言葉を聞いた七罪は手に持った飲み物を一気に飲み干すとトーマの方を向く

 

「トーマ、私がこれから仕掛けるゲームにアンタも参加しなさい」

「ゲーム?」

「えぇ、詳しい事は後のお楽しみ……だけど、もしアンタが一番に当てられたら。さっきの言葉を少しだけ信じても……いい」

 

 眼を伏せながらそう言う七罪の肩は僅かに震えていル。それに気づいたトーマは立ち上がると帽子越しに彼女の頭を雑に撫でる

 

「頭撫でんな」

「すまんすまん、けどわかった。オレがお前を一番最初に当ててやる……けど────」

 

 その後の言葉を聞いた七罪は目を見開いた後、その場から姿を消す。それを見送ったトーマもまた近くに置いてあった買い物袋を手に取り家路へとついた

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