デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー   作:SoDate

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第2‐2話, 事情説明in五河家

「……で? 一体どういうこった?」

 

 部屋ぎに着替えた士道と服を借りたトーマの二人がいるのは、五河家の二階、琴里の部屋だった。パステルカラーの家具にファンシーな小物、ぬいぐるみとザ・女の子と言ったものが溢れている部屋に少女が一人、女性が一人、そして男二人と見ようによってはかなりシュールな光景だが、そこは気にしないでおく

 因みにこの部屋を使っているのは十香の耳に入れたくない話もあるからだ。そんな十香だが現在はリビングで再放送中のアニメに夢中になっている

 

「んーとね、今日からしばらくの間、十香がうちに住むことになったのだ!」

「だから、どうしてそうなったって訊いとるんじゃぁぁぁぁぁぁぁッ!」

「……まぁ落ち着いてくれ、しんたろう」

「そうだぞ、冷静になれしんのすけ」

「しんたろうでもしんのすけでもなく士道です、と言うかトーマはわざとだろ!」

「……あぁ、そうだった。訂正しよう。悪いねシン」

「あぁ、もちろんわざとだ」

 

 トーマの方はともかく本当に間違えて名前を憶えている疑惑のある令音もいる為、これ以上名前に関する言及をやめた

 

「……理由は大きく分けて三つある」

 

 名前コントを終えた令音は、静かな声で話しを始めた

 

「……一つは十香のアフターケアのためさ」

「アフターケア……っていうと?」

「……シン、君は先月、口づけで十香の霊力を封印したね?」

「……っ、は、はい」

 

 先月の光景を思い出したのか、士道の顔は赤くなっていた

 

「あー、おにーちゃん赤くなってるー。かーわいいー」

「う、うるせ!」

 

 心底楽しそうに言っている琴里と気まずげに目線を逸らす士道、何ともな兄妹である

 

「……まぁ、そこまでは良いのだが、一つ問題があってね。……今、シンと十香の間には見えない経路(パス)のようなものが通っている状態なんだ」

「パス? どういうことですか?」

「……簡単に言うと、十香の精神状態が不安定になると、君の身体に封印してある精霊の力が、逆流してしまう恐れがある」

「な……ッ」

「つまり下手に刺激すると精霊に逆戻りって事か」

 

 十香の状態についてを把握したトーマがそう言うと、令音は小さく頷いた

 

「……シン、君も知っての通り、十香は今、フラクシナスの隔離エリアで生活している」

 

 トーマの隣で狼狽している士道の事を知ってか知らずか、令音は静かな口調で続ける

 

「……十香の精神状態は常にモニタリングしているのだが……どうもフラクシナスにいると、学校にいるときに比べて、ストレス値の蓄積が激しいんだ」

「そ、そうなんですか?」

「……あぁ、それに、一日二回の定期検査もあまりお気に召さないようだ。今はまだ許容範囲内だが、このまま放置しておくのも好手とは言い難い。──そこで、だ」

 

 令音は指を顎に当てる

 

「……検査の結果も安定してきたし、そろそろフラクシナス外部に、十香の住居を移そうと言う事になってね」

「は、はぁ……そうなんですか」

「……あぁ。というわけで、精霊用の特設住宅ができるまでの間、十香をこの家に住まわせることになったんだ」

「プリーズ、ウェイト」

「……どうしたのかね?」

「なんで、うちなんですか?」

 

 士道の問いに、トーマは何言ってんだコイツと言わんばかりの視線を向けて口を開く

 

「なんでって、そりゃ住ませるならここしかないからだろ」

「だからなんで……」

「……まぁ簡単に言うと、だ。君といるときが、一番十香の状態が安定するんだよ」

「え……っ」

「そりゃそうだ、誰だって自分を救ってくれた相手のそばが一番安心するに決まってる、ましてや精霊なんだから普通の人よりその気持ちが強くてもおかしくない」

「……逆に言えば、シン以外の人間は、まだ十香の信頼を得ているとは言い難いがね。私や琴里なんかは比較的顔を合わせる機会が多いが──それでもね。……まずは少しでも安全性の高い場所で、十香がきちんと生活できるかどうかを試したい所なんだ」

「俺に至っちゃ顔合わせた時が両方ともファルシオン(あっちの姿)だったからな。今日だって士道の知り合いってのと互いに不干渉だったから何とかって感じだったし」

「……むぅ……」

 

 トーマもファルシオンの状態で顔を合わせる機会が多かったため、今日タオルを取ってもらうときだって警戒されているのを感じていた

 

「それで……もう一つの理由ってのは何なんですか?」

「……あぁ、これはもっと単純明快だ。──シン。君の、訓練のためさ」

「……っ」

 

 少し前に訊いた訓練と言う言葉を士道は思い出して息を飲んだ

 

「そういえばそんなこと言ってましたね……。でも、もう訓練なんていらないでしょう?」

「……ふむ、それは何故かね?」

「なぜって……だって、もう精霊の力は封印したわけで……」

「……精霊が十香一人だ何て、誰が言ったのかな?」

「一人じゃないにしても……もう一人の精霊も確かトーマが封印してるんじゃ……」

「精霊は十香と美九の二人だけじゃないぞ」

「え……? それって……どういう」

 

 士道の問いかけに対しては、令音が答えた

 

「……そのままの意味さ。空間震を起こす特殊災害指定生物──通称・精霊は、十香だけではない。現在の段階でも、彼女の他に数種が確認されている」

「な──っ」

「そうだな、俺も十香と美九以外に後二人知ってるのがいる……どっちもかなり癖が強かったよ」

 

 精霊になる前の美九と出会い、それから再開するまでの間にトーマは二人の精霊に出会っている。一人は自己評価の低い魔女、そしてもう一人は悪夢の名を冠する少女。彼女たちの事を思い出して変な笑みが浮かんでしまう

 

「……シン。君には引き続き、精霊との会話役を任じてもらいたい。そのための訓練さ」

「……っ、じょ、冗談じゃ──」

「──ふぅん?」

 

 士道が叫びを発した瞬間、ずっと静かだった琴里が声を上げた。そしてリボンの色が白から黒に変わっていた

 

「──っ」

「嫌なの? 士道。──もう精霊とデートして出れさせるのは、嫌だっていうの?」

「っ、あ、当たり前だっ!」

「ふぅん?──じゃあ、もうどうしようもないわね」

「あ……?」

「空間震によって世界がボロボロになっていくのを黙って眺めるか──それとも、精霊がASTに殺されるなんて奇跡的なイベントを気長に待つか。どっちかになるでしょうね」

「っ……でも、霊力の封印ならトーマにも──」

「オレは精霊を救ってるわけじゃないぞ」

「えっ……」

「オレは精霊の中に混じってる本を手に入れたいだけ……基本的には救いたいと思ってるが、最悪死にかけの精霊から抜き取るのでも構わない」

 

 士道が言葉を発する前にさらにトーマは言葉を続ける

 

「それに、俺は霊力を封印してるんじゃない……霊力を奪ってるだけだ」

「だから士道、精霊の力を封印できるだなんて規格外の能力を、真の意味で持っているのはこの世にあなた一人だけよ。──そのあなたが嫌だと言うのだもの。もうどうしようもないじゃない」

「……っ、なんだよ……それ……っ」

 

 士道は自分の知らない間に背負わされた力の重さがどれだけ重大なものかを思い知らされた

 

「──琴里」

「何かしら?」

 

 士道は琴里に質問をする

 

「……まず、聞かせてくれないか? 。ラタトスクってのは、一体何なんだ? おまえはいつ、そんな組織に入ったんだ? それに──俺のこの力ってのは、一体何なんだ?」

 

 恐らくそれは、士道が前から聞こうと思ってた質問。その問いに琴里はふぅと息を吐き。チュッパチャップスを口にくわえてから話しを始めた

 

「──そうね。ちょうど良い機会だし、簡単に話しておこうかしらね」

 

 琴里は後方にあったクッションに背中を預ける

 

「ラタトスクは、有志により結成された……まぁ、言うなれば一種の自然保護団体みたいなものよ。──もちろん、その存在は公表されていないけどね」

「保護団体……ねぇ」

 

 どうにも腑に落ちてないのを感じている士道だったが、とりあえず話しを聞くことにする

 

「えぇ。そしてラタトスクの結成理由にして、最大の目的、それは──精霊を保護し、幸福な生活を送らせることよ。……ま、最高幹部連でもある円卓会議(ラウンズ)の中には、精霊の強大な力を得てどうこうしようって助平心を持ってる奴もいるみたいだけど」

「……空間震を防ぐことじゃないのか?」

「ま、それももちろんあるのだけれど。それはあくまで副次的なものよ。そこだけ見るのなら、私たちもASTも変わらないわ」

「まぁ、それもそうか。で……そういう組織があるとして、だ。おまえはいつ、どうしてそこの司令官になんてなったんだよ。俺は全然知らなかったぞ」

 

 士道は自分の妹がそう言った組織に入っていた事……いや、最悪命を落とすかも知れない事に関わっていたのが不満だった。隠し事はまったくなしとまではいかなくても危険なことに関わるのなら相談はしてほしかったといった風だ。琴里もそんな心境を察したのか息を吐く

 

「私がラタトスク実戦部隊の司令塔に着任したのは……大体五年くらい前のことよ」

「五年前……ね。―って、はぁっ!?」

 

 一瞬納得しそうになるが、流石に事実を流すことはできなかった

 

「ば、馬鹿言うな。五年前って……おまえ、まだ八歳じゃねぇか!」

「ま、数年の間はずっと研修みたいなものよ。実際に指揮を取り出したのはここ最近」

「い、いや、そういうことじゃねぇだろ。そもそもそんな小さな女の子を──」

「まぁなんていうの? ラタトスクが、私の溢れでる知性に気づいてしまったのよね」

「納得できるかそんなんでっ!」

「そんなこと言われたって、事実なんだから仕方ないじゃない。もうちょっと素直に妹の言葉を信じなさいよ。人の言葉を疑えば頭がよく見えるだなんて思ってるの?」

 

 琴里と話す士道だが、少し慣れたとは言えいつもと違う妹相手だからか、頬に汗が垂れる

 

「……おまえのその二重人格も、ラタトスクのせいなのか?」

「失礼かつ短絡的ね。もう少し考えてものを言いなさい。第一これは──」

「これは?」

「…………そんな話はどうでもいいの。今はラタトスクの話でしょ。同じく五年前の転機となる、ある出来事が起こったの」

「おい、はぐらか──」

 

 はぐらかすな、と言おうとした士道の言葉は琴里に止められる

 

「キスによって、精霊の力を封印することのできる少年が発見されたのよ。それによりラタトスクは、積極的に精霊を保護しようって方針にシフトしていったわ」

「そ、それが……俺だってのか?」

「えぇ」

 

 琴里の言葉に、士道の思考は止まりかける。一度に多くの情報を与えられすぎたせいで飲み込むまで時間がかかっているのだ

 

「ちょっと待ってくれ……そもそも、なんで俺にそんな力が備わってるんだ?」

「さぁ?」

「は……? い、いやいやいや。そこまで言ってて勿体つけるんじゃねぇよ」

「勿体つけてなんていないわよ。本当に知らないだけ。”キスを介して、精霊から力を奪い取り、安全な状態にして自身に封印する”。そういう能力が士道に備わっているのを知ってるだけで、なぜ士道にそんな力があるのかは、少なくとも私は知らないわ」

「そ、それじゃあ、なんで俺にそんな力があるってことがわかったんだよ! その後年前に! 一体何があったってんだよ!」

 

 次々と渡される事実に、士道の頭はパンク寸前だった、そして士道の言葉を聞いた琴里はふいっと目を逸らす。逸らされた顔はいつもと違い、憂いや後悔の混じったような表情だった

 

「こ、琴里……?」

 

 士道が彼女の名前を呼ぶと、ハッとした様子で小さく肩を震わせる

 

「え。っと──そう、ラタトスクの観測機でね、調べたの。それで、わかったのよ。──私に関しても、同じ」

 

 そこまで聞いたところで、黙っていたトーマは立ち上がり琴里の部屋から出ていこうとする

 

「お、おい。何処に行くんだ?」

「……あぁ、オレは聞きたい事聞けたし、良い時間だからそろそろ帰ろうかと思ってな」

 

 士道たちの方に顔を向けず、トーマはそう言う

 

「悪い士道、明日の放課後にでも返すから服はこのまま借りて行っていいか?」

「そ、それは構わないけど」

「サンキュ、それじゃな」

 

 後ろから引き留めようとする士道の声を無視して一階に降りて、トーマはそそくさと五河家から出ていく

 

「あからさまに隠し事ありって感じだったな」

『──怪しさしかなかったわ』

 

 独り言のように呟いたトーマの言葉に、誰かが相槌をうつ

 

「……途中から気配は感じてたが、やっぱり居たか」

『悪かったわね、居たのが私みたいな女で』

「別にそう言ってるわけじゃないよ……ただ、珍しいこともあるもんだと思ってただけだ」

『偶然よ偶然、ホントに偶々、近くを通ったらアンタの姿を見つけただけ』

 

 人気の無い道で一度歩みを止め、トーマは見えない誰かと話しを続ける

 

「それでもわざわざ挨拶しに来てくれたんだろ? ありがとな」

『~~ッ!? ありがとうとか言わなくていいし! 私の好感度上げようとしたってそうはいかないからね!!』

「そんな事いってないだろ……それより、いずれあいつらはお前にも接触してすると思うぞ、そん時はどうする」

『別に、私みたいなのに接触しても意味ないし……ましてや交流持とうとするとかアンタみたいな物好き以外ありえないでしょ』

「案外、そう言う物好きが集まるかもしれないぞ?」

『最悪』

 

 誰かの言葉に対して、トーマは軽く笑うと再び歩き出す。そろそろ人通りの多い場所まで出る所だ

 

「……それじゃあ、またいずれ」

『えぇ、気が向いたら……また』

 

 その言葉と共に、トーマは人混みに紛れていった。そんな彼の事を一人の魔女は少しだけ見た後、その場から消えた




何か隠している様子の琴里
唐突に渡された情報の嵐と環境の変化に戸惑う士道
そしてトーマが話していた誰かとはいったい誰なのか

新たな日常に気力を減らされ続ける士道
彼の前に現れる新しい精霊”ハーミット”

次回!不機嫌な雨
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