デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー 作:SoDate
DEMインダストリー、英国本社ビル。そのニ十階にある会議室に集まっているのはこの会社に所属する役員、巨大な楕円形のテーブルに着き、手元に置かれた資料に目を通し難しい顔を作っていた
その資料に記されていたのはDEM社業務代表執行役、アイザック・ウェストコットが日本で不当に権力を振りかざした結果、DEM日本支社と、それに併設された核施設を半壊状態に追い込んみ、貴重な
「一体……何を考えているのですか! ミスター・ウェストコット!」
周囲から負の感情を向けられても悠然と座っているウェストコットに対し、取締役の一人が手元の書類をテーブルに叩きつけ、声を荒げる。メガネをかけた初老の男は取締役会の中では若手だが、ウェストコットよりは年上に見える
彼のウェストコットに対する乱暴な態度を諫める者がこの場に居ないのは、ウェストコット以外の全員が同じような事を思っているからだろう。しかし自身が糾弾されているにも関わらず別段狼狽える様子を見せず、小さく肩をすくめるだけだった
「君の質問の意図がわからないな、マードック」
「惚けないでいただきたい! 自衛隊への不当な干渉に魔術師《ウィザード》及び装備の私的利用、一般人に被害が及ぶような襲撃作戦を指示し、あまつさえオフィス街の一角を丸々戦場に!? 被害額は軽く見積もっても十億ポンド以上! 日本政府にも大きな弱みを握られる事になってしまった! 一体この事態をどう収めるつもりですか!?」
「問題ない、それに見合うだけの収穫はあった」
「収穫……? 一体それは」
「────喜びたまえ、プリンセスの反転に成功した」
ウェストコットの放った言葉を聞き、取締役会の全員が目を見開き微かなどよめきが会議室で起こる
「ふざけているのですか……ッ! 状況を理解して頂きたい! 下手を打てば、DEM社の存続に関わる事態に発展するやもしれないのですよ!? 精霊が、何ですって!? 一体精霊が、我が社の窮地をどう救ってくれるというんですか! あなたのお遊びと自己満足に付き合っている暇はもうないんだ!」
「……ほう?」
ウェストコットの言葉を聞いたマードックは、更に怒りをあらわにして叫びを上げた。それを聞いたウェストコットは今までの浮かべていた無機質的な笑みを崩してはいないものの眉がぴくりと動く
だが、怒りに呑まれたマードックはそれに気づかぬ様子で、会議室に居並んだ取締役たちに目を向ける
「貴方方にも問いたい! 彼にこれ以上勝手な真似を許していいのか!? こんなことを続けていれば、そう遠くない未来DEMインダストリーは崩壊してしまう! そうなる前に、然るべき処置を執るべきではないのか!?」
「然るべき処置……とは?」
マードックの向かいに座っていた男がそう問いかけると、彼は芝居がかった調子で両手を広げながら、宣言するように言葉を紡ぐ
「私は! 今ここに、ウェストコットMDの解任を要求する!」
その言葉を聞いた取締役の中には、驚きの表情を作る者もいたが大半はこの解任要求を知っていたかのような様子を見せる。その様子を見たマードックは満足げにうなづき、ウェストコットの隣に座る老人へ目を向けた
「さぁ、ラッセル議長。決を」
促すように首を前に倒すと、ウェストコットの隣に座っていた人物──ラッセルは難し気な顔でウェストコットへ視線を送る
「……よろしいですか、ミスター」
「もちろん。それは取締役会に与えられた正当な権利だ」
「…………では、決を取ります。ウェストコットMDの解任に賛成の方は、挙手を」
ウェストコットの言葉を聞き、何かを察したように息を吐いた後、彼が声を上げるとマードックが高らかと手を上げ、それに続くように居並んだ取締役たちが続々と挙手をしていく。その数は若い役員を中心に、半数以上
通常であれば異常な事態だが、今回の一件は明確にウェストコットの行動による損失は大きく、取締役会の中でも大きな波紋を呼んでいた。それに加えウェストコットの傍若無人な振る舞いに不満をため込んでいる物も少なくなかった。
その様子を見たウェストコットがマードックへと視線を向けると、彼は鼻を鳴らしながら嘲笑めいた笑みを浮かべる。それを見て今回の一件はあらかじめ彼が手を回していたのだろうと考え、心の中で軽い拍手を送る
その様子を見ながら、ウェストコットの隣に座っていたラッセルが挙手した役員の数を数えるように会議室ないに視線を巡らせ、静かに言葉を発する
「──挙手数ゼロにより、ウェストコットMDの解任要求は棄却とします」
「何だって?」
ラッセルの言葉を聞いたマードックは浮かべていた表情を一転させ眉をひそめる
「こんな時に冗談はよしてくれ、ミスター・ラッセル。あなたにもチェアマンとしてのプライドがあるだろう、それとも、ついに上がっている手の数が見えないくらいに目を悪くしてしまったのですか?」
「いえ。私は見たままの結果を答えただけですよ」
「……何?」
訝しげに視線を上に向けたマードックは、その先にあった光景を見て息を詰まらせる。直後、マードックに賛同する形で手を上げていた役員たちも徐々に顔を苦悶に歪めていく。それもそのはず、彼らが高らかと上げていたはずの腕は──肘から先がなくなっていたのだから
「う、あ、あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?」
何が起こっているのか、それを正しく認識した全員が自らの感じている痛みを自覚し、絶叫を上げその場にへたれ込む。綺麗に清掃されていた筈の会議室は楕円形のテーブルを中心に血液に染まり会議室は一瞬にして阿鼻叫喚の地獄に変わる
「────お遊び? 自己満足? アイクの作り上げたDEMの名に後から乗っただけの方が、知った風な口を利いてくれますね」
ウェストコットの後方から現れた少女、エレン・ミラ。メイザースはワイヤリングスーツなしでレイザーエッジを握っている彼女の手によって取締役たちの腕を斬ったのだろう
「まぁそう言うな、エレン。彼は至極真っ当に、自分の置かれた環境を利用し、自分に与えられた権利を行使しただけさ」
「ですが」
なおも食い下がろうとするエレンを制したウェストコットは、ゆっくりと椅子から立ち上がる
「医務室に
「……っ、貴様……!」
もはや敬語を使うこともなく、ウェストコットを睨みつける。しかし彼はそれを気にする様子もなく、小さく肩をすくめた
「心配せずとも、私のお遊びと自己満足が済めば、この会社は君たちにくれてやるさ────なに、すぐだ。我々が今まで待ち続けた時間に比べればね」
取締役がいなくなり、ウェストコットとエレンのみが残った会議室。最後に立ち去ったラッセルとすれ違う形で、イザクが姿を現す
「随分と派手にやったみたいですね、エレン」
「……別に、それほどでもありません」
「冷たい反応ですね」
「それよりもイザク、君の要件は終わったのかい?」
「えぇ、この前の戦いで少し消耗しました分は補充出来ました……少々人の犠牲は出ましたがね」
「おいおい、あまりウチの社員を減らさないでくれよ」
「ご心配なく、犠牲にしたのは社員ではなく……一般的に社会のゴミと言われてる分類の人間ですから」
そう言うとイザクは新たに手に入れた三冊のアルターブックを手に取り空へ向けて気味の悪い笑みを浮かべた