デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー   作:SoDate

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第8-4話, 七罪を探せ Ⅰ

 十月二十一日、土曜日──七罪が士道に化けて問題を起こしてから五日が経った頃

 すぐに七罪が仕掛けてくると思っていた士道だったがあれ以来一度も姿を現していない、空間震が起こったわけでもなければフラクシナスの観測装置に引っかかった痕跡もない

 

「あー……こうも何もないと、かえって気味が悪いな」

 

 自宅のリビングのソファに寝ころびながら士道は額に手を置いて吐息をした。そんなことを考えていると、士道の腹の辺りに不意に重いものがのしかかってくるのを感じた

 

「うぐ……っ、な、なんだぁ?」

 

 突如として自分の感じた負荷に顔をしかめ、腹の方に視線を落とすと妹の琴里が澄まし顔で腰かけているのは見て取れた

 

「……おい、琴里」

「あら、あんまり精気がないものだから、珍しい人皮製のソファかと思ったわ」

「うちにそんなエド・ゲインみたいな趣味の家具はねぇ」

 

 半眼を作りながら士道が言うと、琴里はグッと反動をつけるように士道の腹に体重をかけた後、その場から立ち上がった

 

「くぇっ!」

「あら、金のエンゼルでも当たったかしら」

「おまえなぁ……」

 

 士道は腹のあたりをさすりながらゆっくりと身を起こす

 

「ふん、精霊に狙われてる状況だってのに、気を抜きまくってるからでしょ。何を仕掛けてくるかわからないのよ、もう少し気を張ってなさい」

「ぐ…………」

 

 そう言われると何も返すことが出来ず、唇を噛んで黙り込む

 

「あの精霊──七罪が何を考えているのかわからないけど、このまま何もせずフェードアウトってことは考えづらいわ。きっと何らかの方法で士道に接触してくるはずよ────そして、こちらからコンタクトを取る手段がない以上、私たちはそのタイミングで確実に七罪の好感度を上げなければならない、そこんところはちゃんとわかってるんでしょうね? 今回はトーマにも頼れないのよ」

「……わかってるよ」

「どうだか」

 

 本当にわかっているのかわからない様子の士道を見た琴里は、やれやれといった調子で肩をすくめた

 だが、士道から見ても琴里が言ったことはもっとも、ラタトスクの目的は精霊を倒す事ではなく、平和的にその能力を封印し、平穏な生活を送らせることにある。だからこそ今回のように精霊から敵意を向けられるような事態は避けなければならない、トーマが居る場合なら彼の無銘剣を使い精霊の体内にあるワンダーライドブックに霊力を移し、分離することは出来るが……今回の場合、トーマの協力も仰げない以上、今までよりも自分たちの力で何とかしなければならない

 しかし、七罪の場合、何故士道を目の敵にしているのか、そしてその理由がわからない以上、接触を逆手に取りその理由を知る必要がある。それを考え少し気が引き締まった士道を見た琴里はフンと話を鳴らし、手に下封筒を掲げてみせた

 

「ようやく顔に緊張感が出てきたわね────ほら、これ、朝ポストに入ってたわ」

「……手紙?」

「えぇ、ラブレターよ。七罪からのね」

「ッ!?」

 

 琴里の口から発せられた名前を聞いた士道は慌てて封筒の裏を見た。丁寧に蝋で封緘されており、その下には確かに七罪の名が記してあった。士道は唾液で喉を濡らすと、封筒をテーブルの上に置いてソファに座り直した

 

「あ、開けて大丈夫なのか……?」

「えぇ、開けた瞬間にドン! なんて可能性もなくはないから、一応フラクシナスで外部から調べさせてもらったわ。危険なものは入ってない筈よ──もちろん、相手が精霊である以上、それが絶対の保証になるわけではないけれど」

 

「──アイツが今、このタイミングで何かを仕掛けてくる場合はないぞ。二人とも」

 

 琴里の可能性を否定したのは、いつの間にか五河家に入って来ていたトーマ。士道と同じ手紙を手に持ったトーマは二人に近づくと口を開く

 

「オレが保証する、アイツはこのタイミングで仕掛けてこない」

「…………わかった」

 

 トーマの言葉を信じた士道は、意を決して頬を張り、気合いを入れてから印璽の押された封筒を剥がして、中身を取り出した

 

「これは……」

「……写真、みたいね」

「こっちも同じだ、中に入ってるのは写真」

 

 士道に送られたもの、そしてトーマに送られたものは全く同じ写真。一番の問題は、その写真に写っている被写体

 

「……これ、もしかして私?」

 

 琴里が眉をひそめながら写真を一枚摘み上げると、その写真に写っていたのは白いリボンで髪を括り、中学校の制服に身を包んだ琴里の姿が収められていた。しかし目線はあっておらず、距離も遠い。琴里の反応を見ても盗撮写真である事は明らかだろう

 否、琴里だけでなく写真に収められていた十三枚すべてが士道に近しい人物の全身像が映っていた

 

 十香。折紙。琴里。四糸乃。耶倶矢。夕弦。美九。亜衣。麻衣。美衣。岡峰先生。殿町。そして──トーマの封筒には士道が、士道の封筒にはトーマが。全て本人に気付かれぬよう撮られた盗撮写真だった

 

「なんなんだ、この写真は……」

「これが、七罪が提示したゲームみたいだな」

 

 封筒の奥にあった一枚のカードを取り出したトーマは、机の上に広げられていた写真の上にそれを置くと、そこに記されていたのは短い文章

 

この中に、私がいる。

誰が私か、当てられる? 

誰も、いなくなる前に。

七罪

 

「この中に、私が居る。誰が私か、当てられる……」

 

 封筒の中に入っていたカードを見た琴里は、難し気な表情をしたあと、士道の方に視線を向けると彼の受け取った封筒にも同じカードが収められていた

 

「ど、どういう……ことだ?」

「トーマ、これは額面通りに受け取って問題ない……それでいいのね?」

「あぁ、その認識で問題ない。七罪がオレと士道を含めた誰かの中にいる」

 

 その言葉を聞いた士道は息を詰まらせる……が、何となくは察していたし七罪の能力は知っている。彼が何よりも驚いたのは、彼女と知り合いである筈のトーマや自分も含まれていた事だ

 

「オレと、士道に、自分が化けている誰かを当てることができるか試す……それが七罪のオレ達に対する挑戦だ」

「そうなるでしょうね……最後の誰も、いなくなる前にって言うのが少し引っかかるけれど」

「……タイムリミットがあるってことか?」

「そうなるでしょうね……正直、まだ何も起こっていない以上。判断するには情報が少なすぎるけどね」

「なんにしても、動き出さないことには何も始まらないだろうな」

「それしかないか」

 

 トーマがそう言った直後、琴里がそれを肯定する

 

「けど、動くって言っても具体的に何をするんだ?」

「そうね……まずはラタトスク(うち)で、この写真に写ってる全員に霊波観測をかけてみるわ。相手が十全の力を保有した精霊。僅かな霊力の漏れでも見つけられれば話は早い」

「なるほどな……」

「だが、七罪の天使──贋造魔女の変身能力は完璧に近い、それこそ霊力の有無すらも真似る……だから、並行してオレ達も動く必要がある」

「動くって、一体何をするんだ?」

 

『……そうだね。さしあたって、デートしたい順番でも決めておいてくれたまえ』

 

 何をすれば良いのか、その問いかけに答えたのは通信端末越しにこちらの話を聞いていた令音。彼女の言葉を聞いた士道は眉根を寄せながら、疑問の声を発する

 

「デート? どういうことですか?」

「そのままの意味よ、明日から士道にはトーマと手分けしてこの写真に写ってる全員と一人ずつデートしてもらうことになるわ。そして──そのデート相手に何か違和感を覚えないかどうかをチェックしてもらう」

「そ、そう言うことか……」

「オレは日常生活で全員に違和感がないかを確かめる」

 

「それでも……大半は俺……なんだよな」

 

 頬から汗を滲ませながら言うと、通信端末越しに令音が肯定する

 

『……もちろん一日で全員済ませろというわけじゃあない。急ぐにしても── 一日三、四人くらいが限界だろう』

「いや、そうじゃなくてですね。十香たちはまぁいいにしても、山吹に葉桜に藤袴、タマちゃん先生に殿町までデートに誘わなきゃならないんですよね?」

 

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ。むしろそんな士道の思考こそ、七罪の思うつぼかも知れないのよ」

「う……そ、そうだよな」

 

 少し呆れた様子で士道を見た琴里の言葉を聞いた士道は、少し言葉に詰まった後やらなければならないことを受け入れる

 

『……もちろん、こちらでも出来る限りサポートはさせてもらう。あくまでも七罪の目に触れない範囲で……だがね』

「はい……じゃあ今回もサポート頼むぜ、琴里」

 

 士道の言葉を聞いた琴里だったが、難し気に眉をひそめる。そんな様子を見た士道が首をひねっていると、令音がその疑問に答える

 

『……あぁ、悪いが、琴里は今回容疑者だからね、サポートには参加できないよ』

「あ、そっか」

『……だから、今回、サポート役は私が務めよう。琴里には申し訳ないが、七罪が誰か確定するまで、琴里をフラクシナスに居れるわけにはいかない。それはトーマも同じだ』

「えぇ、必要な措置だもの。仕方ないわ」

「こっちも異論なしです」

 

 フラクシナスと言う組織は通常の組織以上に特殊性が高い。外部に漏らせない情報も多く存在する以上、部外者である可能性のある琴里やトーマを入れる訳にはいかない……そんなことを考えていた士道だったが、とある疑問が彼に浮かび上がる

 

「そう言えば、なんで令音さんは入ってないんですかね。タマちゃん先生や山吹たちまで入ってるのに」

『……ん、これは完全な推測になるが、七罪が容疑者を選定したときに、君の周りに居なかったからだろう。私はここのところ、七罪の解析と調査でフラクシナスに籠っていたからね』

「あぁ……なるほど」

 

 自分の周りにいた人物を選定したというなら、確かに写真のメンバーである事に説明がつく。学校や家で合う機会の多い精霊たちやクラスメイト、そして家族である琴里に自身の通っている学校の教師である岡峰先生、そして七罪と士道、共通の知り合いであるトーマ。そしてトーマに送られてきた写真に入っていた自分も含めるとそこそこの人数になる。相手への選択肢の量としては問題ないだろう

 

「それにしても、なんでトーマの方に俺が入ってたんだ?」

「数合わせだろうな。今回のメインは士道が七罪を当てる事だが……こっちから見て士道を選択肢に入れることで緊張感が出るだろ?」

「あぁ、なるほど」

「とにかく、私たちの勝利条件はあくまで七罪をデレさせて、その霊力を封印することよ。くれぐれも最新の注意を払ってちょうだい」

 

 そこまで言ったところで言葉を止めた後、琴里は僅かに顔を歪め、言葉の続きを口にする

 

「──もしこれ以上、七罪の機嫌を損ねてしまったら、封印どころか人質の処遇も危うくなる可能性がある。それだけは覚えておいて」

「そうだな、人質の処遇に関してはオレは何も言ってない。どう扱うかは七罪次第な」

 

「ちょ、ちょっと待て。人質ってどういう事だよ」

 

 士道の言葉を聞いた琴里が、言葉を返そうとしたところでトーマに制された

 

「オレが言う……良いか士道、今の時点で七罪は写真の誰かに化けてる。なら既に一人は七罪の手の中にあるんだ」

「! そう言えば……」

「もしお前が誰かに化けた時、お前は化けた相手をどうする?」

 

 しばしの沈黙の後、辿り着いたシンプルな回答を士道は言葉を発する

 

「……自分が化けた相手を、どこかに監禁しておく」

「そう言うことだ、人によってはその人を殺して完全に成り替わる場合もある……無論、七罪はそんなことしないが何をするかわからないのには変わりない」

 

 トーマがそこまで言った後、琴里は士道に近づき言う

 

「わかったでしょ、私たちに与えられた猶予は少ないわ。十三人を士道とトーマの二人で手分けして調査して、絶対に七罪を見つけ出すのよ」

「あぁ……絶対に、見つけ出してやる」

 

 今置かれている状況、そして七罪が入れ替わっている人物の身の安全、そのすべてを考えた後、士道は決意を固めた表情を見せて、力強く拳を握りしめた

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