デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー 作:SoDate
七罪からの手紙を受け取った翌日、トーマはいつものように朝食を作りながら美九が起きてくるのを待っていると寝間着姿の美九が目をこすりながら姿を見せる
「ふぁー……おはようございます、お兄さん」
「あぁ、おはよう美九。今日はオフか?」
「はい、今日と明日は久々のオフなのでゆっくりできます」
「そうか」
穏やかな時間の中で、トーマは作り終わったトーストを皿に載せると美九の前まで持っていく
「ほれ、冷めないうちに食いな」
「ありがとうございます、いただきます」
ゆっくりとトーストを食べ始める美九の様子を見ていたトーマは、目の前にいる美九の様子に気を配るが普段と特に変わったような様子はない。彼の目の前にいる美九もそれに気づいたのかキョトンとした様子でトーマを見る
「? どうかしたんですか」
「いや、特に何でもない」
「そうですか?」
「あぁ……そう言えば美九、今日は昼からおっちゃんの所に向かうけど一緒に来るか?」
「デートですか?」
「いや、少し前に耶倶矢と夕弦に頼まれたことがあってな……向こうで二人と合流予定だがお前も久々におっちゃんへ挨拶でもどうかと思ってな」
「……そうですねぇ、そう言えば最近顔を見せてませんでしたっけ」
「どうする?」
「そうですね、それなら私も同行させて貰います」
「了解、耶倶矢と夕弦にも伝えとく」
美九がどうするかを聞いたトーマは、スマホを取り出して耶倶矢と夕弦に美九も一緒に行くことを連絡して自分も朝食を食べ始めた
朝の出来事から時間が進んだ昼頃、トーマと美九の二人は待ち合わせ場所である駅前で耶倶矢と夕弦の二人を待ちながらトーマは隣にいる美九へと視線を向ける
「なんか、今日はお兄さんからの熱い視線をよく感じますねー」
「そ、そうか?」
「はい、それに熱い視線の中になーんか隠し事がある気もします」
「……気のせいだ」
「そうですか、それなら……そう言うことにしておきます」
「助かる」
「それ、隠し事をしてるって認めているようなものですよ?」
「……今更だろ」
「ふふ、そうですねー」
トーマの言った言葉に満足げな表情を浮かべる美九の姿を見て、少し頭を掻いた後トーマは軽く呆れたような表情を浮かべる
「敵わないな、美九には」
「お兄さんは案外わかりやすいですから」
「くっくっく、待たせたな! 美九、トーマ」
「挨拶。お待たせしました」
美九とトーマが待っていた相手、耶倶矢と夕弦の二人がやってきたことを確認すると二人で立ち上がり四人で並んで目的の店まで向かっていると、ハッとした様子を見せた美九が口を開く
「そう言えば、耶倶矢さんと夕弦さんはどうしておじさんのお店に?」
「む? トーマから聞いておらぬのか」
「意外。てっきり教えている物だと思っていました」
「あぁ、そう言えば伝え忘れてた……今日はな、二人がおっちゃんの店でバイトさせてもらえるように頼みに行くんだ」
「おじさんの店で?」
「あぁ、耶倶矢と夕弦は元々或美島に居るフミさんの所に住んでたからな……少しでもこっちで技術を付けておきたいんだってさ」
「なるほどぉ」
「呵々、盗める技術は盗むようフミさんより仰せつかっているからな」
「……あの人らしいな」
今も或美島で元気に働いているであろう人物を思い浮かべた後、トーマは軽い笑みを浮かべる。今回の話は七罪の一件とは関係なしに耶倶矢と夕弦の二人から頼まれていた事だ、霊力を封印された精霊がただの人間として生きる。人間から精霊になった琴里や美九とは違う純粋な精霊の中で一番人間社会に適応できているのはもしかしたら彼女たち二人なのかも知れない
「あれ? と言うことは耶倶矢さんと夕弦さんは学校を卒業したら或美島に帰るんですか?」
「あぁ、そのつもりだが高校を卒業してもしばらくはこっちに居るつもりだ」
「同意。耶倶矢も夕弦も、こちらではフミさんの為になることを学ぶつもりでしたから」
「はぇー、その感じだと将来どうするのかは決めているんですね」
「フラクシナス的には、有り難いことこの上ないだろうな」
そんなことを言いながら歩いていると、目的の店がトーマたちの視線に映る。土曜のお昼時と言うこともあり中々に人の出入りが激しかったがトーマが入ってきたのに気付いたであろう店長はトーマに向けて言葉を飛ばす
「おう、坊主! 顔出したんなら少し手ぇ貸せ!」
「わかりました! オレ以外にも三人くらいおっちゃんに用のある人居るんですけど」
「後で聞いてやっからそいつらの手も貸してくれ!」
「了解です、三人とも! おっちゃんが手を貸してくれだって」
「よかろう! 我ら八舞の実力をみせてやる!」
「闘志。フミさん仕込みの接客力、お見せしましょう」
「よーっし、私も頑張っちゃいますよー」
「! そいつぁ頼もしいな、期待させてもらう。坊主はキッチンだ!」
「わかりました」
店長はトーマたち四人に向かってエプロンを投げ渡した、それを受け取ると耶倶矢、夕弦、美九の三人はホールで注文を受けてメモを取り始める。それを見たトーマもエプロンを着るとキッチンの中に入っていった
四人が店の手伝いを始めてから少し経ち、客足も殆どなくなった頃、想像以上に疲れ果てていた三人へトーマはコップに注いだ麦茶を持っていく
「お疲れ様、三人とも」
「呵々……このくらい……なんてこと、ないわ」
「同意。或美島に比べれば……このくらい何でもありません」
「けど、普段の収録やレコーディングとはまた違った疲れがありますね」
三者三葉の言葉を発する三人の近くに店主がやって来ると、快活で豪快な笑顔を浮かべて三人に言葉を投げてくる
「お前らのお陰で助かった……それで、お前らの要件ってのは何なんだ?」
「あぁ、オレは付き添いで美九は挨拶に来ただけ。おっちゃんに用があるのはこっちの二人」
トーマはそう言うと机に座って伸びている耶倶矢と夕弦の方を指さす
「お前さんら……成る程、お前らがフミの奴が言った嬢ちゃん達か」
「その通り、我が名は八舞耶倶矢。颶風の巫女で……ある」
「失笑。ヘロヘロではないですか、耶倶矢。私は八舞夕弦と申します
「おう、アイツが言ってた通りえらい別嬪だな。坊主はそう言うのに好かれやすいのか?」
「いや、知らないよ……と言うか、美九も挨拶してないな」
「あっ、そうでした。お久しぶりですおじさん」
「おう、美九の嬢ちゃんも随分頑張ってるみたいだな」
「えへへ。お兄さんのお陰で色々吹っ切れましたから」
「そうか……そんで、俺に要件ってのは一体なんだ」
店主がそう言うと夕弦と疲れた様子の耶倶矢もピシっと身体を伸ばすと二人で頭を下げる
「頼む……いや、お願いします。私と夕弦をここで働かせてください」
「懇願。頑張るので、どうかお願いします」
頭を下げた二人を見て、店主は目を細めると二人に問いかける
「……ここで働きたいってのは有り難いが、何でここなんだ? お前らの様子を見るとフミの奴にはだいぶ懐いてるんだろう。そんでここに来たのもアイツの為ってのがデカい。違うか?」
「……違いません」
「なら、別にここじゃなくてもいいと思うんだよな俺は」
おっちゃんはそう言った後、二人から視線を逸らす
「俺ぁここで長くやってるが、お前らに教えられることは何もない。技術を盗むんならもっと別の所だってあるだろう……なのにどうしてここを選んだ? 俺がアイツの知り合いだからか?」
その言葉を聞いて、おっちゃんはあえて二人に厳しい言葉をかけているのだろうとトーマは察した後、美九の方へと視線を向けると彼女も発言の意図は理解しているようで黙って事の成り行きを見守っていた
「私と夕弦は、おじさんから何かを学びに来たんじゃありません」
「何だと?」
「私たちは確かにフミさんに、返しても返しきれない恩を感じてる。私たちの面倒を見てくれたこと、ここに送り出してくれたこと、血が繋がってなくても私たちは大切な娘だって言ってくれたこと…………だからあの人に少しでも恩返ししたい」
「直視。だからこそ、夕弦たちはここを選んだのです。教えを乞うためではなく。貴方の技術を少しでも盗む為に」
二人の言葉を聞いた店主はしばし沈黙をした後、二人に向けて言葉を投げる
「教えを乞うじゃなく、技術を盗むと来たか。ホント、アイツの娘って感じだな────」
そう言うと店主は、改めて二人の前に行き。ニカッとした笑顔を見せる
「わかった、盗めるもんなら盗んでみろ」
「! それって──―」
「雇ってやる……だが、給料が安くても文句は言うなよ?」
「……はい!」
「喜悦。もちろんです」
心の底から嬉しそうな様子を見せる二人の事を見て、トーマも笑みを零すと美九が彼の肩に自分の肩を軽く当てる
「よかったですね」
「……あぁ、ホントにな」
互いに喜び合う耶倶矢と夕弦、そして少し離れた所からそれを見守るトーマと美九の姿を見たおっちゃんは今まで以上に優しい視線を四人に向けていた
その日の夜、フラクシナスに居る令音に通信を繋げていたトーマは士道側の様子を映像記録で確認しながら令音に自分側であったことを報告していた
「──こっちはこんな感じでした」
『……そうか、トーマから見て、何か不審な点はあったかい?』
「今の所は何も、耶倶矢と夕弦は本人だと思います。化けてる様子はなかったし不審な箇所も見受けられなかった。美九は正直まだわかんないです」
『……そうかい』
「えぇ、正直身内贔屓が入ってる気もしますけど……士道の方はどうでした?」
『……シンの方も、まだ絞れてはいないようだ』
「そうですか……とりあえず映像記録見せてもらってありがとうございます」
『……気にしないでくれ、君たちの記録もシンたちに共有しているからね、お互い様だ』
それもそうかと思ったトーマは、改めて令音に礼を言うと通信を終えて士道が行った全員分とのデート記録を確認している。最初は十香のデート、所々に不審な行動は見受けられたがそれは蓋を開ければ他愛のない理由だった。四糸乃や、殿町宏人との会合にも特に変わった様子は見受けられない……そう結論づけたトーマは映像端末を閉じようとしたところでとある違和感に気付く
「──そうか」
トーマが違和感を抱いたのは四糸乃との映像、普段と変わらない様子の彼女だったが確実に普段と違う場所が一つだけあった。それに気づいた直後、自身の背後に見知った気配を感じる
「よう七罪、最近はよく会うな」
「……冗談を言ってる場合じゃないでしょ。それで、私が誰に化けてるかわかったの?」
「あぁ、わかった……けど、答える前に一つだけ頼みがある」
「なに?」
「もし、正解だった場合……一日──いや、半日だけ時間をくれないか」
トーマの背後に立つ気配から、疑問の感情が発せられる
「……半日で、やっておきたい事があるんだ。それが終わったらすぐにお前との約束を果たして貰って構わない」
「──いいわ、けど……あくまで合ってたらの話だけどね」
了承の言葉を聞いたトーマは、振り返ると目の前にある箒型の天使に向けて回答を口にした