デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー 作:SoDate
映画の上映が始まる直前、スクリーンに新作映画の宣伝が流れ始めた頃に士道と折紙の二人は席に着く
「な、なぁ、折紙。おまえ、六月のときのこと覚えてるか?」
「六月のこと?」
「あぁ、ほら、あのときも一度、デートしたじゃないか」
探りを入れるように折紙へ話しかけると、折紙はこくりと頷く
「もちろん、覚えている」
「本当か? 何があったっけ」
「一一〇〇時、天宮駅前広場の噴水前で待ち合わせ。一一一〇時、昼食を食べにレストランへ。一一一五時、士道がトイレへ。一二〇〇時、映画館へ。一二一〇時、また士道がトイレへ。お腹の調子が悪いのではないかと考え、一四二〇時、薬局で薬を購入。一五〇〇時────」
「ちょ、ちょっと待った」
自分でも思ってもいなかったレベルで鮮明にすらすらと答えていく折紙に、士道は一度待ったをかけて、改めて折紙に聞く
「……なんでそんなに細かく覚えてるんだ?」
その問いにこくりと頷いた折紙は、持っていたカバンをごそごそと探りだし、中から一冊の本のようなものを取り出した
「それは?」
「日記」
短くそう言った折紙は、丁寧にページを開いてから士道に日記を手渡してくる。それを受け取って文面に軽く目をやった士道は、その時の事象が一分単位で事細かに綴られているのを確認し、苦笑しながらパラパラと日記を捲っていく
「す、すごいな」
膨大な情報を事細かに記されている日記だが、その中でも士道が折紙に告白した日の事と、士道が初めて折紙の家に言った時の事は通常の五倍くらいの文章が並べられていた
「……う」
初めて折紙の家に行った時の記録を見て、士道は頬に汗を垂らした。そこには士道がいなくなった後に部屋を検めてみたら数日前に拾ったウサギのパペットがなくなっていた旨がしっかりと記されていた、イラストまで添えられているあたり、ウサギのパペットと言うのはよしのんで間違いないだろう
四糸乃のために仕方なかったとはいえ、窃盗紛いの事をしてしまった事に胸が痛くなるが、そのあとに記された『士道が私の私物を持っていった記念日』と言う記述を見て、少しだけ気が楽になった気がした
「……こんなもの持ってるttことは、本物ですかね、この折紙」
『……まだわからないな。日記をつけていたのは本物の鳶一折紙だろうが、それを今持っているからといって、彼女が本物と決まったわけじゃない』
「まぁ……そうですよね」
志知右派日記を閉じ、折紙へと返す。そんなことをしている間にふっとスクリーンが暗くなり、重厚な音楽が流れ始めた。気付けば映画の本編が始める時間らしい……と、映画が始まってから少し経った頃に士道の右手の甲に何やら柔らかい感触が触れるのを感じた。そちらに目を向けると折紙が士道の手に自分の手を重ねていた
「はは……」
その行動に士道が苦笑するものの払いのけるような事はせず、その行動に微笑ましさすら感じていたが……士道の考えは甘かった
「…………」
映画が進むにつれ、折紙の手が少しずつ蠢き、重ねているだけだったが次は手の甲を撫で、その次は士道の手を慈しむように指を一本一本なぞり、最終的には指と指の合間にやたらエロティックな動きで指を絡めてくる
「ひ……ッ!?」
触れられているのは右手だけだと言うのに、士道は全身に電流が走るかのような衝撃を覚え、なんとも言えない感覚の波に襲われる
「士道……」
そんな感覚に襲われていると、耳元でささやくような声が聞こえ、士道は目をぐるぐると泳がせた
「な、なななななんだ?」
「士道も、触って欲しい」
「さ、触るって……」
士道が震える声でそう言うと、折紙は右手で自分の服の首元を引っ張って見せる
「今日は、何も着けていない」
「ッ!?」
士道は息をつまらせると、キャパオーバー寸前の思考がフル回転を始め耳から煙が出るのではないかと錯覚するほどに顔が熱くなる。どうにかして心を落ち着かせるために深呼吸をして、喉を潤すために先ほど買ったアイスティーを手探りで持ち上げ、ストローを口にくわえた……のだがいつまでたっても、冷たい紅茶の味が口の中に広がってこない
藤ぎに思って手元を覗いてみると、士道は自分のアイスティーのコップに刺さったままのストローを発見する、ならば自分の口元にあるストローは一体何なのか……士道が視線をストローの先まで這わせていくと、自分がくわえているのとは反対側を、折紙がくわえていた
「うわぁッ!?」
思わず声を上げて、椅子から立ち上がってしまった士道に、周囲の観客からトゲトゲしい視線が突き刺さる
「? どうしたの?」
「や、どうしたって、おまえ……」
『……これは……』
『本物ですね……』
『間違いなく……』
この瞬間、士道の目の前に居る折紙が満場一致で本物であるという認定が下された
それから、数時間後。士道がへろへろになりながら自宅の前まで帰ってくる。今日あったことを振り返りながら自宅の門を開けようとしたところで
「シドー!」
隣のマンションの入口からパジャマ姿の十香が姿を見せる
「十香? どうしたんだこんな遅くに」
「それはこちらの台詞だ。一体こんな時間までどこに行っていたのだ?」
「あー……すまん、ちょっとな」
起こっているというより純粋な疑問をぶつけているらしい十香に、少し申し訳ない気持ちを感じつつ士道がはぐらかすと、彼女は少し不満そうな顔を見せる
「むう……ここ数日、シドーは忙しそうだな。学校も休んでいるし、お弁当も晩御飯も作ってくれなくなった……」
「わ、悪い。いろいろ終わったら、またつくってやるから。な?」
そう言って士道が手を合わせて頭を下げると、十香は慌てたように首を横に振る
「いや、違うのだ。そう言う訳ではなく、だな……ん? いや、シドーのご飯が食べたいのはた正しいから、違うわけではないのか?」
何やら悩むように首をひねっていた十香だったが、すぐに思い直すように首を振り、士道の手を握ってくる
「とにかくだ! 何か事情があるのだろう? 私のことは気にするな。鳶一折紙とも喧嘩はしないようにするし、食事もなんとかする。だから、シドーは自分がやるべきことをやってくれ」
「十香……」
士道が彼女の名を呼ぶと、十香はふっと頬を染める
「……だが、ずっとシドーがいないのは、その、なんだ……寂しいぞ。私に出来ることがあったら言ってくれ。シドーのためならば、何をおいてでも駆けつけよう!」
十香が自分の手を握り、真っすぐ見つめてくる。士道もまたその手を握り返し言葉を紡ぐ
「……ありがとう、十香。おまえがいてくれたら千人力だ」
「うむ! 言いたかったのはそれだけだ! ではおやすみだ、シドー!」
それだけ言うと、十香はマンションの方まで走っていく
「あぁ、おやすみ! 十香!」
そんな十香に手を振ると、彼女もまたブンブンと腕を振った後、マンションの中へと入っていった。その途中でおおきなあくびをしていたあたり士道にそれを伝えるため今まで起きていてくれたらしい。それに何とも言えない申し訳なさと妙なお菓子さと愛おしさがこみ上げ、軽く笑うとさっきよりも軽くなった足で玄関のカギを開けて、家の中に入り、いつもより置いてある靴が多いことに気付く
「あれ? 誰か来てるのか?」
そう言葉を口に出すと、リビングからひょっこりと琴里が顔を出す
「遅い」
「悪い、けど、こっちもこっちで大変でさ」
「……それは、わかってるわよ。こっちだって事情は理解してるから……ただ、少し想定外の事があってね」
「想定外の事って、何があったんだ?」
琴里の言った想定外が何なのか、それを聞いた士道に返された言葉は彼にとっても想定外のものだった
「トーマが消えたわ、美九の目の前で……七罪の贋造魔女の手によって」
その言葉は、全員が限りなくゼロに近いと考えていた状況。未だ理解が追いつき切っていない士道がリビングまで向かうと、そこには琴里以外に美九の姿もあった
「美九……」
「こんばんは、五河くん」
「あぁ、それより……大丈夫なのか?」
「心配してくれてありがとうございます、けど大丈夫ですよ。琴里さんから事情も聞きましたから」
思ったよりも心配なさそうな美九の様子を見た士道は、それに少し安堵しつつ改めて琴里の方に目を向けると、その視線に気づいたらしい彼女が美九に話かける
「それで、美九。改めて聞きたいんだけど贋造魔女が現れてからのトーマの様子はどうだった?」
「……自分が消えるのが最初から分かってるみたいでした」
「消えるのがわかってた?」
「はい、自分が消えることを理解していたから自分の本を私に渡したり、貴方達を頼れなんて言ったんだと思います」
それから美九によって語られたのは、トーマが消える直前に残した、自分たちならば七罪が誰なのかを見つけられると確信しているらしい言葉。それがどういった意味なのかを理解するよりも先に、空間が歪み、三人の前に贋造魔女が現れる
「……出たわね」
「贋造魔女……!? もう零時なのか!?」
話をしている間に、気が付けば零時を回っていたらしい。目の前に現れた贋造魔女は先端についた鏡を士道たちの前に晒すとそこに七罪の姿が映し出される
『はぁい。一日ぶりね士道くん。寂しかった?』
「七罪……おまえ、どうしてトーマを消したんだ」
『あぁ、彼とはそう言う約束だったからね。彼が条件を満たしたら私が彼を消す、ちなみに条件はひ・み・つ』
士道たちに向けて蠱惑的な笑みを浮かべる七罪を見た士道たちは、トーマと七罪の間で交わした条件が何なのかを考えていると、七罪は更に言葉を続ける
『それじゃあ、ゲームも二日目も終わりね。消えた彼と二人で調べたんだからもう全員調べ終わったかしら?』
「……あぁ」
『なら、答えは絞れたわね? 彼が消えたから士道君に回答権を二つ上げる、ただし……その分、人は消えるけど────さぁ、私はだーれだ』
そう問いかけられた士道は、消された殿町を覗く全員、自分が会った十香、四糸乃、琴里、四糸乃、亜衣、麻衣、美衣、岡峰教諭。トーマが話をした耶倶矢、夕弦、美九の三人の事を思い返す、全員にそこまで不審な点は見当たらないがこの中に七罪が居るのは間違いない
「士道、時間がないわよ」
「……わかってる」
琴里にそう言われた士道は頭の中で一人ずつ容疑者の事を消していくが、三人娘と岡峰教諭の四人から先が絞り込むことが出来なかったが、今日当てなかった場合はまた誰かが消える
「七罪は────」
誰が七罪か、それを答える為に言葉を紡ごうとしたが、ここでもし、自分が間違った答えを言ってしまったら人が消える。そんな考えが士道自身の思考を縛り、言葉を止めてしまった
「──士道!」
「……っ!」
自分にとっては僅かな時間でも現実の時間では回答時間を消費するには十分、琴里の叫び声でハッとした目を見開いた時には、既に時間切れだった
『ブー! 時間切れよ。残念でした、また明日チャレンジしてねー』
それだけ言い残すと、空間が揺らめき贋造魔女の姿が消え、その場に残されたのは士道たち三人だけ。沈黙がその場を支配している中、琴里が頭をかきながら息を吐く
「……責めはしないわ。指名が外れていたらその人が消えてしまうだなんて状況で、決定的な証拠もないのにおいそれと答えを出せるはずはないもの」
でも、と琴里が続ける
「もう既に、一人が消されて……今日で二人消されてしまう、トーマが居なくなった以上、あなたが七罪を見つけない限り、このゲームは終わらないって事だけは覚えておいて」
「……あぁ」
「あのー、それで誰がいつ消えるとかわかってるんですか?」
「いえ、回答をしてからどのタイミングで消されるのかは────」
美九と琴里が話をしている横で、士道は自分の髪をくしゃくしゃと掻いていると、右耳のインカムから令音の声が聞こえてくる
『……シン、聞こえるかい、シン』
「令音さん……? どうしたんですか?」
『……先ほど、容疑者たちを監視している自律カメラに、贋造魔女が現れた』
令音の言葉を聞いた士道は、心臓が締め付けられているように感じながら、令音に対して言葉を返す
「……一体、今日は誰が」
消えてしまったのか、そこまで声に出すことはできなかったものの、令音は何を聞こうとしたのかわかった上で一瞬ためらうように言葉を切ったのち、続ける
『……あぁ。今日消えたのは────十香、そして四糸乃の二人だ』
「え…………?」
消えた者の名前を聞いた士道は、自身の中にあったナニカに