デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー   作:SoDate

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第8-9話, 最後の調査 Ⅰ

 トーマ、四糸乃……そして十香が消えた日からはや二日。士道は自室の窓から覗く朝日を一瞥してから、パソコン上の画面に表示されたデータと、辺りに散らばった夥しい量の書類を交互に見やる

 容疑者たちの身体情報から趣味嗜好に至るまで、プライバシーを無視した情報がいくつも記載されていやが、今の士道には底を考えている余裕はない。それ以外にも士道は令音に頼み込んで、容疑者全員の記録映像にも目を通し、少しでも怪しい部分がないかを確認していた

 

「……もう……朝、か」

 

 長時間の確認作業で思考能力が低下している士道だったが、霞む目を擦ると再びパソコンを操作して残っている容疑者のリストを表示させる。あの日以降、士道は二度の犯人を当てることが出来ず、計六人の容疑者を失ってしまっていた

 十香と四糸乃が消えた翌日のミスによって亜衣と岡峰先生を、その次の日には麻衣と美衣が消え、残った容疑者は琴里、折紙、耶倶矢、夕弦、美九の五人……なのだが、その中の誰にも不審な点は見られなかった

 

「…………」

 

 眠気で朦朧とする意識の中、士道は思考を巡らせる。疑わしい点のない容疑者たちと頭の中に存在する引っかかり……そして、トーマが美九に自身の本を託した理由。もしも本を託すこと自体が自分たちへのヒントになっているのだとしたら、そう考えた士道の頭の中に一つの可能性が芽生える。それはこれまでの自分の行動がひっくり返る程の劇薬じみた発想

 

「……もしかしたら、これは──」

 

 そう口に出したところで、士道は机に肘を突いて口元に手を置いた。寝不足と長時間の作業による疲労、そして自身の所為で人が消えるというストレスによってちょっとした動作をするだけで軽い吐き気に襲われる

 士道が吐き気を抑えつつ、その場で考えこんでいると部屋の扉が開き、部屋に琴里が入って来る

 

「士道……って、ちょっと。あなたまさか、寝てないの?」

「……おう、琴里」

 

 士道は近くまでやってきた琴里に対して、そう言葉を返す

 

「言ったでしょ、無理はするなって。気持ちはわかるけど貴方が体調を崩したら元も子もないのよ!?」

「……大丈夫だよ、これくらい。今日は……再調査だっけか」

 

 そう言った士道は立ち上がり床に落ちた資料を拾い上げようとしたところで、目眩がしてその場に膝を突いてしまう

 

「っ!」

「あぁもう、だから……!」

 

 そんな士道の様子を見た琴里は苛立たしげに、士道の手を取ってくる

 

「言わんこっちゃない……! とにかく、今は休みなさい! そんな状態じゃ、まともな判断なんてできないわ!」

「そんな暇──ねぇよ……ようやく、わかりかけたんだ。早く、七罪を探さないと」

「いいから。どっちにしろ昼と夕方の調査はキャンセルするつもりだったし、とりあえずしばらく寝てなさい!」

 

 琴里の言葉を聞いた士道は、バッと手を振り払った

 

「キャンセルって……どういうことだ!? それじゃ、余計に手がかりがなくなるだけじゃないか。なんでそんな……!」

「ちょっと落ち着きなさい」

 

 冷静さを失っている士道に対して、琴里はチョップを叩き込む。そこまで力を入れていない筈の一撃だったがそれを受けた士道はその場に突っ伏す

 

「ぐ……」

「そのままでいいから、これを見なさい」

 

 琴里は、突っ伏したままの士道に対して白いメッセージカードを見せてくる。それが最初に渡されたメッセージカードかと思った士道だったがよく見ると書いてある文章が違っていた

 

 

そろそろゲームも終わりにしましょう。

今夜、私を捕まえて。

でないとみんな、消えてしまう

七罪

 

 

 その文を見た士道は言葉を詰まらせた後、身体を起こしてカードをひったくった

 

「これは……一体」

「朝起きたら、ポストに入ってたわ。七罪からの挑戦状……ってところかしらね」

「今夜……七罪を見つけないと、残った容疑者が全員、消されちまうってことか?」

「額面通りに受け取るなら、そう言うことになるわね」

 

 琴里がそう言うと、士道は奥歯を噛み締めながら拳を強く握る。自分にとって調べられることは全て調べたが容疑者の中から七罪を特定する事は出来ていない、自分の中で生まれた可能性も検証をする時間を取る事が出来ない

 

 ────今日、判断を誤れば残る容疑者も全員消される

 

 その重圧が士道の精神を蝕んでくるのを、奥歯を噛み締めて耐えると琴里の方へと視線を向ける

 

「琴里、一つ頼みがある。聞いてくれるか?」

「何? 可能な限りは善処するわよ」

 

 神妙な顔をして聞き返してくる琴里に他強いて、士道は考えを纏めながらゆっくりと提案を口にする

 

 数分後。それを聞いた琴里が、ふむという声を漏らしてあごに手を当てた

 

「なるほど。いいわ、手配してあげる」

「……助かる。正直まだ、最後の決め手に欠けてるんだ」

「その代わり、それまでの間しっかりと睡眠を取ること。それが条件よ」

「あぁ……わかった」

 

 士道は琴里の言葉に頷くと、その場を立ち上がってベットに身体を預け、瞳を閉じる。その中でゆっくりと考えを纏めていく、ついさっき琴里にした頼み……それが欠けている最後のピースを埋める鍵になると信じて

 

 

 

 

 

 士道が意識を手放したのと同じころ、──―に化けた七罪は無表情に虚空を見上げ、ここまでの出来事を思い出す。周囲に居る人たちが消された時に士道の見せた様々な負の感情が混ざった表情

 

「はぁ……」

 

 けれど、それを見た際に七罪の中に沸き上がったのは歓喜ではない別の感情

 

「なんか、思ったよりもスッキリしないわねー」

 

 気軽い様子でそう言う七罪、その心の大半を占めていたのは諦観や失望と言った負の感情だが、心のどこかには可能性を信じたい……そう思っていた七罪はもう一通の手紙を彼らに出した

 

「これで本当に最後、絶望するか……それとも、否か、少しは楽しませてちょうだい、五河士道」

 

 鏡の向こうに映る暗闇。そこに視線を向けた七罪は誰に聞かせるでもなく、そう呟いた

 

 

 

 

 

 その日の夜、十分な睡眠をとりある程度コンディションを回復させた士道は、琴里と共に薄暗い部屋の中に居た。二十畳ほどの広さがあり所々に背の高いテーブルが置かれているがそれ以外には何もない。ラタトスクが保有している地下施設の一つらしいが詳しい事は士道にも聞かされていない

 

「くく、なんともお誂え向きではないか。我が、彼の邪王に審判を下すにふさわしき舞台よ」

「意外。まさかこのような所があるとは思いもしませんでした」

「ホント、なんだか秘密基地みたいですね」

「…………」

 

 そして、この場に居るのは士道と琴里以外の四人。七罪の容疑者として疑われている折紙、耶倶矢、夕弦、美九の四名。こうして容疑者が全員集められ、話をすることの出来る環境を作って欲しい。それが士道が琴里にした頼み

 これまで士道は、出来る限り自分一人で解決しようとしていた……しかしそれにも限度があり、自分以外の人の意見が欲しいというのも正直な感想だった。精霊が関わっている一件ではあるものの、この場に居る全員が精霊に関わっているからこそできる荒業でもある

 

「──よく来てくれたわね、みんな」

 

 琴里がそう言うと、その場に居た四人の視線が士道と琴里の二人へと向いた

 

「……みんな、もう話は聞いていると思う。まずは、謝らせてくれ。ごめん、俺の所為でみんなを巻き込んじまった……本当にごめん」

 

「ふん、気にするでない。お主やトーマと関わる以上、こういった事柄も我々にとって些事に過ぎない」

「同意。その通りです……夕弦たちからすれば、巻き込んだ士道よりも黙って勝手に消えたトーマの方に文句が言いたいです」

「そうですねー、私に至っては目の前でお兄さん消えられちゃいましたからねぇ」

 

 残っている容疑者五人のうちの三人は、士道と言うよりも勝手に消えたトーマの方に言いたいことがあるようだが今はそんなことを気にするよりも先にやることがある

 

「身勝手だってのはわかってる。でも……頼む、みんなの力を貸してくれ……っ!」

 

 そう言った士道に対して、四人がは力強く頷いた……が、その中で折紙だけが頷くことなく、ジッと士道の事を見つめていた

 

「士道。一体、これはどういうこと?」

 

 ようやく口を開いた折紙が発したのは、純粋な疑惑の言葉

 

「すまない、折紙。でも、頼む、お前の力が必要なんだ」

「勘違いしないで欲しい。士道に力を貸すのは当然、精霊が関わっているのであればなおさらに……私が聞いているのは、その事ではない」

 

 士道へ協力する、そう言った折紙はふっと目を伏せた後、再び口を開く

 

「ここは、一体どこ? 先ほど私たちに事情を説明したのは一体誰? 前からずっと思っていた。あなたは一体、何と関わりを持っているの?」

「それは……」

「あんまり細かい事を気にしすぎると、皺が増えるわよ」

 

 折紙からすれば当たり前の疑問、それに答えることが出来ず口ごもっていた士道に代わって、彼女に言葉を返したのは彼の隣に立つ琴里だった

 

「……五河、琴里」

「……何よ」

 

 折紙からの刺々しい視線を受けた琴里が、半眼で応える。しばしの間、二人の視線が交わりあった後……折紙の方が視線を伏せると小さく息を吐き、琴里から視線を逸らした

 

「──話は、あとで聞く。とにかく、士道に協力する事に異論はない」

「……ありがとう、折紙」

「構わない、でも」

「でも?」

「急に呼び出されたから、少し、期待した」

「……それは……なんというか、すまん」

 

「っくく、話は纏まったようだな」

 

 折紙の言葉に対して、なんとも言えない気持ちになった士道が小さく頭を下げたところで、耶倶矢がその場にいる全員に声をかけた

 

「それならば、早速始めようではないか。我らが中に潜みし悪逆の者を炙り出す、選別の儀を!」

「あら、随分気合いが入ってるわね」

「解説。耶倶矢はここで貢献できれば、少しはトーマや、士道たちに恩返し出来るのではと考えているんです」

「ちょ、夕弦! 余計な事言わなくていーし! と、とにかく! この中に潜んでいる精霊は、我が必ず見つけてみせる!」

 

 耶倶矢がそう言った後、琴里が加えていたチュッパチャップスの棒をピンと立てる

 

「とりあえず気合い十分なのはわかったわ……それで、状況はこの部屋に入る前に説明した通りよ。この中に一人、変身能力を持った精霊が紛れ込んでいて、私たちはそれを見つけなければいけない。今まで行った調査の結果は、この資料に纏められているわ。何か質問や気になる事があったら、どんな小さなことでも構わないから遠慮なく言ってちょうだい」

 

 こうして、最後の一日。七罪を見つけ出すための最後の調査が始まった

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