デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー   作:SoDate

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第8-10話, 最後の調査 Ⅱ

 フラクシナスの所有する地下施設の一室、そこに集められた六人は各々が纏められた資料に目を通す

 

「へー……こんな事してたんですねー」

「……なんか、トーマが我々に行った調査雑ではないか?」

「同意。確かについでで終わらせられた感があります……戻ってきたら抗議しなければ」

 

 自分たちに対して行われたトーマによる本人か否かの確認がバイト先紹介のついでにやっていた事に不満があるらしい二人だったが、耶倶矢の方が士道の方へと視線を向ける

 

「して、士道。その七罪とやらは、一体どんな容貌をしているのだ?」

「え? あぁ、それは────」

「──見るもおぞましい、不細工面よ」

 

 耶倶矢の疑問に答えようとした士道の言葉を琴里が話を始める

 

「たとえるなら、車に轢かれたヒキガエルみたいな顔だったわ。ギョロっとした目は異様に離れ、鼻は豚のように上を向いていて、肌は月のクレーターみたいな痘痕(あばた)だらけだったわね。身体もまるまる太っていて、もうバストウェストヒップが全部同じ数字じゃないかと思えるくらいの酷い体型よ。そしてとにかく顔が大きいの、たぶん三頭身くらいじゃないかしら、なんかもう精霊ってよりモンスターよね」

 

 琴里は真顔のまま、士道の記憶にあるのとは全く違う七罪の容姿をペラペラと説明する

 

「おい、琴里────!」

 

 流石に間違った情報を伝えるのはどうなのかと思った士道だったが、そこで琴里がどうしてそんなことを言ったのか察する。琴里はこの中に居るであろう七罪のリアクションを見るためだ、士道が彼女と初めてあった時に彼女は自分の容姿を気にしているような口ぶりだった。だからこそ自分の容姿を悪く言われたら観測機にも何かしらの反応がある筈だった

 

『……それらしい反応はないね』

 

 士道の右耳に、令音の声が聞こえてくる。琴里にも同じ報告が届いていたのか、軽く舌打ちをした後、テーブルの上に置かれていた小型端末を操作する

 

「……なんてのは冗談よ。これを見てちょうだい」

 

 その言葉と同じタイミングで端末の画面に七罪の姿が映し出される。無論その姿はさっき琴里の言ったのとは正反対の、魔女のような霊装を纏った美しい女性の姿である

 

「確かに冗談だったみたいですねー、とっても美人さんです」

「……他に何かある?」

 

 琴里がそう言うと、耶倶矢が手を上げる

 

「一つよいか」

「何かしら?」

「我としては、士道や琴里がこれだけやって尻尾を掴めぬというのは、些か気になる……そもそも、この中にその七罪とやらが居るのは確かなのだろうな?」

「疑問。それは確かに夕弦も感じていました、本当はこの中の誰にも化けておらず、別の場所から慌てる士道の姿を見て悦に浸る……と言う可能性があるのでは」

 

 疑問を提示する耶倶矢と夕弦に対し、琴里は腕を組むと士道の方へと視線を向ける。士道もその視線に気づき言葉を紡ぐ

 

「勿論、その可能性もゼロじゃない……けど、嘘は吐いていないと思う」

「ほう? なぜそのような事を言える? 相手は知人である筈のトーマすら消し去ってしまうような精霊なのだろう?」

「そうだけど、何て言うのかな……七罪は、自分の能力にもの凄い自信を持っているように感じたんだ。それに、『この中に私がいる』って明言してるなら……ルールの隙はついてもルール違反をすることはないと思う」

 

 その言葉を聞いた耶倶矢はふむと言う声を漏らした後、納得するように頷く

 

「なるほどな、まぁ、直接七罪と会話をした御主が言うのなら、ひとまず信じよう」

 

 耶倶矢はそう言うと視線を資料に戻し、隣でその様子を見ていた夕弦もまた資料の確認を再開する。それからしばらくの間、全員で書類に目を通す作業をしていたが一通りの資料に目を通したらしい折紙が顔を上げる

 

「士道。ウィッチが送ってきたという写真とカードを見せてもらうことは可能?」

「あぁ、もちろん」

 

 士道はうなづくと、持参していたカバンの中から自分に送られてきたもの封筒と、トーマに送られてきた封筒を二つ取り出し、折紙へと渡す。それを受け取った折紙は二つの封筒から写真とメッセージカードを取り出しテーブルの上に並べていった

 

「……なるほどな。隠し撮りをしておったということか」

「感心。夕弦たちに気配を悟らせないとは、中々の手練れですね」

「写真には特に違いはないっぽいですねー、というか私目が半開きなんですけどぉ!」

「そこを気にするのか、お主は」

「気にするに決まってるじゃないですか! アイドルですよ私!」

 

 そんな事を言っている三人に気を留めず、並べた写真とカードに視線を這わせた折紙はしばし顎に手を当てた後、顔を上げる

 

「一つ、確認しておきたい事がある」

「なんだ?」

「ウィッチの変身能力と言うのは、人間や精霊以外のものに変身することも可能なの? もっと詳しく言うのなら、生命活動を行っていない物質、また、元の姿から明らかに体積の違う存在に変身する事は可能か、と言うこと。例えば、手のひらに収まるくらいの大きさになったり、紙のように薄くなったり」

 

 折紙がしたその問いかけに対して、士道は小さく頷いた

 

「恐らく、出来ると思う。ただ、極端に大きさの違うものに変身できるかどうかは……わからない」

「不可能とは言い切れない、ということ?」

「あぁ……」

「そう」

 

 士道の言葉を聞いた折紙が頷き、写真に視線を向けると今度は美九が言葉を発する

 

「それじゃあ、七罪さんがこの写真のどれかに化けているって可能性もあるんですね」

「……あぁ」

 

 七罪が写真に化けている、その可能性も否定できない。彼女が士道たちに送った文面は『この中に、私がいる。誰が私か、当てられる?』と言ったものであるため、この中と言うのが写真の束を指しているならルール違反にはならない

 

「その通り」

 

 折紙は美九の方を軽く一瞥したのち、こくりと頷く

 

「通常、写真を示されて『この中に、私がいる』と言われれば、写真に写っている人物の中に精霊がいると考えられる──しかし、今回の場合そうと明言されている訳ではない。そもそも、このルール自体に違和感がある。時間が進めば進むほど容疑者は減り、士道に焦燥感は植え付けられても、同時に自分が見つかりやすくなるリスクを負っている事になる……この方法は、自分が絶対に見つからないという確信がないと取れない方法」

 

 折紙の言葉を一通り聞いた後、美九が何かに納得したような表情を浮かべる

 

「と言うことは、お兄さんがわざわざ私に本を渡したのって、七罪さんが無機物に化けている可能性も考えろって意味だったんですかね?」

 

 その二人の言葉を聞いていた耶倶矢は腕を組むと、フンと鼻を鳴らす

 

「成る程な。だが、仮にそうだとして、どうする? 写真は全部で二十六枚、まさか一枚ずつ指名していくというのか?」

「難色。耶倶矢、それでは写真を全て指名する前に全員消されてしまいます」

「わかっておる、だからどうするのかと聞いているのだ」

 

「それなら、簡単な方法がある」

 

 二人の言葉を聞いていた折紙は、テーブルに広げられていた写真を十三枚ずつに束ねたかと思うと。懐から取り出したナイフを写真の束にそれぞれ突き立てる。ナイフの刃は完全に貫通し、テーブルに突き刺さっている

 

「これが最も簡潔、かつ速やかな確認方法」

 

 眉一つ動かさぬままそう言った折紙はナイフをぐり、と抉った後写真から引き抜いた──だが、写真は何の反応を示すこともなかった

 

「……どうやら違ったらしい」

 

 少し残念そうな声音の折紙はなうふを懐に戻す……これで本当に写真の中に七罪が居た場合は目も当てられない結果になっていたであろうことを想像した士道は、写真の中に七罪が居なかったことに安堵の息を漏らし、額に浮かんでいた汗を手で拭った所で、トーマが残した本が士道の視界に入る

 

「…………あれ?」

「どうかしたの、士道」

「いや、えっとさ。確かトーマって七罪に関しては中立って言ってたよな」

「えぇ、私たちには手を貸せないって言ってたわね」

 

 ここで士道の中に浮かんだのは、いくら自分がプレイヤー側になったとして、中立と言っていたトーマがそもそも自分たちにヒントなんて残すだろうか。そして、これがヒントではないのならどうしてトーマは自身の本を美九に託したのか

 

「なぁ、美九。トーマが消える直前……もっと言うとお前に本を渡してから何て言ったか覚えてるか?」

「えーっと、確か『絶対に戻るから、預かっててくれ』って言われて、私が信じていいんですか? って聞いたら半分は五河君たち次第な所はあるけど、信じても大丈夫だって」

「……やっぱり」

 

 美九からその言葉を聞き、士道はこれが自分たちに宛てられたヒントなどではない事を確信する

 

「この本を美九に渡したのは、俺達に対するヒントじゃない」

「ヒントじゃない? それなら一体何でこの本を美九に渡したのよ」

「美九に本を渡したのは、この本はアイツが自力でこの世界に戻るための鍵なんだと思う。それを消されない為に美九に託した」

「だが、それでは美九が消された時に奴はこっちに戻ってくる手立てを失う事になるのではないか?」

 

 耶倶矢の問いに対して、士道は一度視線を向けた後、言葉を続ける

 

「そうなんだ。そして……本そのものじゃなくて、本を美九託すって言うトーマの行動そのものヒントになってたんだ」

「どういうこと?」

「折紙の言った七罪が人間以外にも変身できるか可能性、それにトーマの行動。その二つを複合すると……一人だけ、思い当たるんだ」

 

 そう言った士道は、写真の束から一枚を抜き取ってテーブルの上に置く

 

「四糸乃?」

「士道、お主まさか七罪が化けているのは四糸乃だと申す気か」

「違う、七罪が化けてるのは────よしのんだ。そうだろ、七罪!」

 

 士道がそう言うと、テーブルの上空に贋造魔女が現れ、先端の鏡に七罪の姿が映る

 

『……正解よ。まさか、アイツのヒントにしっかり気付くとは思わなかったわ』

「じゃあ、やっぱりとトーマの行動はヒントだったんだな」

『えぇ、アイツが誰よりも早く私を見つけられたら、自分を消す代わりに一つだけヒントを残させてくれってね……まぁいいわ。結果は私の負け、消した人たちは大人しく返すわ』

 

 七罪がそう言うと、贋造魔女の鏡から放たれた光が部屋を覆い隠し、やがてその光は消え、部屋の明るさは元に戻ると部屋の中には贋造魔女によって消された人たちが寝かされていた

 

「みんな!」

 

 戻ってきた人物の中で、十香や四糸乃は頭を抱えながら意識を取り戻すが、岡峰教諭や殿町と言った人物は意識を失ったまま……だが、戻ってきた人物の中でトーマだけ姿が見えない

 

「あれ? お兄さんは──」

「ここだよ」

 

 トーマが姿を現したのは士道たちの背後、無銘剣を肩に担いだ彼は普段通りの足取りでみんなの所まで歩いてくるが、そんな彼の後ろには見慣れた魔女の帽子が隠れている。それを見た士道がみんなの一歩前に出て、彼女へと近づいた所で、その顔が驚きに染まる

 

「…………え?」

 

 トーマの背後に隠れていたのは、士道たちが今まで目にしていた七罪ではなく。小柄な体躯に手入れの行き届いていないわさっとしたヘヤースタイルの少女

 

「……どういう事だ?」

 

 これまでの七罪と現在の七罪、同一人物にも関わらず全く違う姿を見て困惑する士道に目を向けながら、トーマは軽く頭を掻いた

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