デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー 作:SoDate
これは士道たちが最後の七罪探しを行う少し前のこと。
天宮市近郊に存在するラタトスク保有のビル、その地下三階へとやってきたのは女性に車椅子を押された男
「こちらです。ウッドマン卿」
若い機関員がウッドマン卿と呼んだ男──彼の名前はエリオット・ボールドウィン・ウッドマン。琴里が所属し、士道と精霊たちの対話を支援している組織、ラタトスクの創始者。そんな彼がやってきた先にあったのは鉄格子で仕切られた手狭な居住スペース────要は、この地下に作られた牢である。
そんな牢の中に入れられていたのは簡素な作業着に身を包んだ、初老の男。顔中、身体中に最近できたと思しき傷を幾つも残したその男の前で、機関員は話を始める
「今からおよそ二か月前、或美等での一件の際に捕らえたDEMの社員です。持っていた身分証から第二執行部大佐相当官ジェームス・A・パディントンであるという事はわかっていますが、それ以外は何もわかっていません」
「何も? 黙秘をしているということかい?」
「黙秘といいますか……」
ウッドマンの問いに困り顔を作った機関員は、ガンガンと鉄格子を叩く。しかし、牢の中のパディントンはベッドに横をなったまま、ピクリとも反応を返さない
「この調子です。
「成る程な、奴の使いそうな手だ」
「奴、ですか?」
機関員が首を傾げると、ウッドマンはいや、と言葉を返すと機関員へと視線を向ける
「少し、彼と話をさせてくれるかな」
「は……それは構いませんが……」
機関員が怪訝そうな顔をしながら後ろに下がると、ウッドマンは自身の車椅子を押す女性、カレンに命じ車椅子の向きを檻の中のパディントンに向けさせた
「──やぁ、ジェームス。少し私と話をしないかね」
と、ウッドマンが声をかけた瞬間。今まで無反応を貫いていたパディントンが、バネ仕掛けの人形のようにベッドから跳ね起きた
「うぉ……ッ!?」
突如として反応を見せたパディントンを見た機関員が肩を震わせ、思わず声を出してしまうがそんなものに構わず、パディントンはゆらゆらとした足取りでウッドマンの方へ歩いていき、ガシャンと音を立てて鉄格子にもたれかかった
「あ、あ、ああああああァア亜ぁアァア亜ァァァァああ、う、う、ウぅウウウウっど、ま、ままマままン」
焦点の会わない目と、涎まみれの唇が動き、のど奥から発せられたのは、壊れたレコードのような声、その声を響かせ頭を小刻みに震わせたパディントンだったが、数秒後にはのどから響いていた不協和音が、声として聞き取れるくらいに安定する
『──やぁ、久しぶりだな、エリオット』
そうして発せられた声は、今までとは異なる声……否、声を発したと言っていいのかわからない。パディントンの顔は今までとは変わらず、彼から言葉が発せられている筈なのに唇や舌さえ動いていない。
それは、目の前に居る存在が人間ではなく人型のスピーカーであるのでないかと錯覚するほどに奇妙な光景だった
「こ、これは……」
この奇妙な光景に機関員が狼狽の声を上げる。それも無理はないかとウッドマンは小さく肩をすくめた後、パディントンの────彼を通して話かけているであろう男に言葉を返す
「あぁ……三十年ぶりだな。壮健かね、アイク」
『おかげさまでね、君はどうだい、エリオット』
「私の方は自信がないな。最近はすっかり目も悪くなってね」
『それはそれは』
目の前に居るゾンビのような男から発せられる正体不明の声と、ウッドマンはしばしの間談笑を続ける
『──ところで、エリオット。私たちのところに戻ってくるつもりはないのかね。君も知っているだろうが、プリンセスが反転したのだよ。我々の悲願が成就するときも近い。君の力添えがあれば、それは更に確実なものになるだろう。君が戻ってきてくれば、エレンもさぞ喜ぶだろうさ』
「生憎だが、私にそのつもりはないよ、アイク。それは三十年前にさんざん話あった事だろう」
ウッドマンがそう言うと、声は残念そうに息を吐く
『残念だ。三十年もの時を経ても、君を冒した熱病は完治していないようだ』
その言葉と同時に、パディントンの身体がズルズルと鉄格子から落ちる
『──ならば、次に見える時は容赦できない。精霊は、我が悲願のために利用させてもらう』
「そうはさせんさ。そのためのラタトスクだ」
それ以降、パディントンから声が聞こえてくることはなく、床に突っ伏した状態で口から大量の血を吐いた
「な……!?」
急に血を吐く様子を見た機関員は泡を喰って端末を操作し、上層階へと連絡を入れ始める。そんな様子を見ながら、ウッドマンは微かに眉根を寄せた
「お前は変わらないな、アイク。──全てが、三十年前のままだ」
そうして、顔の向きを変えないまま、声をかける
「そう遠くないうちに、DEMとの直接対決もあり得るかもしれない……覚悟だけはしておいてくれ、カレン」
「何も問題はありません。姉さんと分かり合えないことは、何年も前から覚悟しています」
その言葉に、カレン──カレン・
同時刻、DEMインダストリー英国本社ビルの一室で、アイザック・ウェストコットはふうと吐息をすると、手元のボタンを操作、外部から人を呼ぶと、数秒と経たず、部屋の扉がノックされる
『──失礼します』
その言葉のすぐ後、エレンが部屋へと入りウェストコットまで近づく
「何か御用ですか、アイク」
「いや……大したことではないのだが」
ウェストコットはそう言いながら、エレンへと視線を向ける
「前の取締役会、マードックの意見も一理あると思ってね」
「と、言いますと」
「先の作戦で、大量の
「……補充要員を、ということですか?」
エレンが微かに眉をひそめながら言葉を発する。そんな彼女の表情に僅かな不機嫌さを見たウェストコットは小さく肩をすくめた
「無論、君さえいれば万事は上手く運ぶだろう。イザクのメギドを使えば頭数は揃えられるが、保険をかけておくに越したことはないだろう……君だって、サポートがいた方が動きやすいのは事実だろう?」
「…………」
その言葉を聞いたエレンは、ふぅと行きを吐いてから再度ウェストコットに目を向ける
「だとして、一体誰です? DEMのアデプタス・ナンバーに相応しい力を持つ
「いいや」
ウェストコットはエレンの言葉を制止すると、唇の端を上げた
「いるじゃないか、一人。君のサポートをするのに相応しい、とびっきりの
士道たちの知らないん場所、目が届かない場所で、闇は確実に、蠢いていた