デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー 作:SoDate
『──ハンプティ・ダンプティ、ドッキングに成功しました』
『システム、オールグリーン。軌道の調整も問題ありません』
『今からおおよそ五時間後に、目標地点上空に達します』
『DSS-009、空中艦プタメロン、所定の位置に着きました』
DEMインダストリー英国本社の会議室に設置されたスピーカーから、次々と報告が流れてくるのを聞いたマードックは、目の前の液晶画面に示されたデータの数々を目で追うと、大仰に頷いた
「──ウェストコットMDは、今どこに?」
『宿泊先のホテルから動いていません。空間震警報が発令されれば、非難するのはホテル内のシェルター、もしくは最寄りのDEM関連施設のものと思われます』
「耐久度は?」
『ハンプティ・ダンプティの衝突位置が、誤差十キロメートル以内であれば、問題ありません』
「セカンド・エッグの方は?」
『配備済みです。ご指示があれば、いつでも』
「けっこう」
「…………セカンド・エッグ?」
マードックの言葉を聞いたシンプソンが怪訝そうな目を向けてくるが、マードックは唇の端を上げながら視線を返した
「まぁ、念の為の保険ですよ。わざわざ気にしてほどのことでもありません」
「…………」
彼はしばし無言のままマードックの事を見ていたが、やがて手元の液晶画面に目を戻した。その様は不満層であると同時に、マードックヲ気味悪がっているようにも見えた
「計画は非常に順調です。今日の夕方にはウェストコットMDの訃報が届くことでしょう。社葬は盛大になりそうです。今日のうちに哀悼の言葉を考えておくことをお勧めします」
その言葉を聞いたマードック以外の取締役一同は一瞬目を見合わせてから、ぎこちない笑みを浮かべる。計画の決行日になったがウェストコットを敵に回す事を恐れている人物が大半らしい。万が一計画が失敗に終わった時、全責任をマードックに押し付けようと工作をしている者もいるだろう。
だが、マードックから見たらそんなことを気にしている暇はない。そんな保険一つで、ウェストコットを殺せるチャンスが手に入るのなら儲けものである。この作戦が失敗したらどのみち首謀者であるマードックに命はない。
本来であれば不要なリスクを冒してまで反ウェストコット派の取締役全員を作戦に取り込みたくはなかった。だが、今回の作戦を実行するには必要な人員や空中艦の確保、作戦に関わる情報隠蔽を考えると、マードック一人で実行でき程の権限はない。否────正しく言うならばこの規模の作戦を一存で実行できるのはDEM社の中でもウェストコットぐらいのものだろう
だが、人が増え、大所帯になったが故のメリットはないでもなかった。ここに居る面子は、ウェストコットが消える理由と原因を、よく知っている事になる。ウェストコットの訃報が届いた場合、すぐさま臨時の取締役会が開かれ、新たな最高権力者を決めることになる
そうなった場合、この場に居る面子が意識するのは今から行われる作戦──街一つの規模で行われるウェストコット暗殺と言う最悪の醜聞。この情報を知られてしまった場合、今度は情報を知った者を消さなくてはならないが、今周りに居るのは臆病者ばかり、マードックが次のMDに名乗りを上げた所で文句を吐く者はいないだろう
「…………」
その状況を作り出す為に、わざわざ自分がこんな作戦を実行してしまう狂気の男であると演出しているのだ、ウェストコット暗殺に成功した時、彼に向いていた恐怖がそのまま自分に纏わせるために
「……いや、少し違うか」
彼は、包帯の取れた右腕──かつてエレンに切断された腕を握ったり開いたりしながら、先ほどの考えを改める。あくまでも人心を掌握する手段の一つとして、狂気の男を演じているつもりだった……が、腕を斬られたあの日から、自分が本当に狂っていってしまっているようにも感じていた
七罪とトーマのデートが行われた翌日、ラタトスク保有のビルの一室にあてがわれた隔離部屋兼現在の七罪の部屋で、トーマは勝手にインスタントコーヒーを作り一口飲むと、ベットで布団にくるまってる七罪へと声をかける
「七罪、準備できたか?」
「……えぇ」
七罪に声をかけるが聞こえてきたのはベットではなく胸ポケットの中、そちらに目を向けると懐に入っていたのはエターナルフェニックスワンダーライドブック。それを確認したトーマは隔離部屋から出て廊下を歩き始めた
「それにしても、本当にこれで良かったのか?」
『当たり前でしょ……私が頼んだんだから』
昨日のデートの最後、七罪がトーマに頼んだのは自分の見ていない所で、七罪がどう思われているのかをトーマに聞いて欲しいというもの。それもただ聞くのではなく所持品に化けた七罪を持った状態で、だ。
「まぁ、それがお前にとっての第一歩になるならそれでいいけど」
『ほんっと、何なのよここ』
「ラタトスクの所有する施設の一つ、らしいが詳しいことはオレにもわからん」
相変わらず広々とした施設、見ようによっては研究施設ともとれる場所を歩いていると、不意に後方から声がかけられた
「あれ、トーマ君?」
「あぁ、椎崎さん。お疲れ様です」
「えぇ、お疲れ様です……それよりどうしたんですか、こんなところで」
「七罪と少し話をしてきた帰りです」
「あ、そうなんですね。それでどうでした? 彼女の様子」
「いつもと変わらず、です。士道たちに対しても少しずつ心を開いてるっぽいんですけど、こっからどうすべきかと」
「難物ですもんね、彼女……一応士道君とトーマ君、どちらでも封印できるようプランは組んでますけど今回はトーマ君に封印してもらうプランになりそうですね」
「そうですか……っと、そう言えば美九たちが何処に居るかわかりますか?」
椎崎と話し込んでいると懐に入れていたエターナルフェニックスの本──に化けた七罪から抗議が飛んできたため本題の質問をすると、椎崎は少し考えた後言葉を発する
「えぇっと、確か向こうの休憩エリアに居た気がしますけど」
「そうですか、ありがとうございます……それじゃあ、また」
「あ、はい」
椎崎と別れると、そのまま休憩室へ向けて歩き始める。丁度彼女の視線から外れるタイミングで胸ポケットから七罪の声が聞こえてきた
『ねぇ、トーマ』
「どうした?」
『さっきの……封印プランとかって、何?』
「一応この組織の目的らしい、精霊の力を封印して、普通の人間として生活できるよう支援する」
『……じゃあ、士道とトーマ、どっちかが封印するっていうのは?』
「あぁっと、精霊の封印方法は二つあって、一つは士道がキスをして霊力を封印する方法。それでもう一つはオレが無銘剣を使って精霊の中にある本……オレが使ってるアレに霊力を移し、分離する方法」
『トーマの方法、それ危なくないの?』
「危険はない、そこら辺は既に実証済み────っと、いたぞ」
『そう、それじゃあよろしく』
七罪が完全に沈黙した後、トーマは休憩室に居た十香と四糸乃に近づいていく
「よう。十香、四糸乃」
「おぉ、トーマではないか」
「あ……こんにちは」
『おぉー? トーマくんじゃーん。めずらしいねー』
「今日は偶然な、それより二人とも、なんか飲むか?」
トーマは自動販売機の前まで歩いていくと二人にそう声をかける
「む? いいのか?」
「あぁ、ここは飲み放題だからな」
「飲み放題?」
「タダでジュースが飲めるって事だ」
「おぉ! それはすごいな!」
「四糸乃も、好きなの選んでいいぞ」
「あ、ありがとう……ございます」
『えー、よしのんはー?』
「よしのんも、好きなの選んでいいぞ」
トーマは目を輝かせている十香と、おずおずと言った様子でジュースを選び始める四糸乃たちを見て軽く笑みを浮かべると、聞かなければならないことを聞く
「そう言えば、二人に少し聞きたいことがあるんだ」
「なんだ?」
「お前ら、七罪のことどう思ってる?」
七罪から聞いてくれと頼まれたことを問いかけると十香は首を傾げる
「どう……とは?」
「正直に思った事を聞かせてくれていいんだ、ほら、変身計画とかで少し迷惑かけちまったからな」
「む、別に迷惑だとは思ってないぞ? 服を選ぶのも楽しかったしな!」
「はい……七罪さん、きれいでした……」
『いやー、士道君のメイクすごかったねー。今度よしのんもやってもらおうかしらん』
「そう言うのは、本人に言ってやりな。よしのん」
そんな話をしながら懐に入れたワンダーライドブック──に擬態した七罪に意識を割くと懐に入れた彼女が小刻みに震えていることに気付く。それは彼女たちの放った言葉から嘘がなかったから、それと同時に七罪の脳内に様々な可能性が現れるが、どれも荒唐無稽な考えでしかなかった
「くく、何を集まっておるのだ?」
「請願。夕弦たちも混ぜてください」
「お兄さんもいるのは珍しいですねー」
「おう、三人とも。唐突で悪いんだ三人の七罪に対する印象を聞いてもいいか?」
少し唐突になってしまったがトーマが新たにやってきた三人に対してそう聞くと、三人は不思議そうな顔をトーマへと向ける
「疑問。急にどうしたのですか?」
「全員の意見を七罪の霊力封印の参考に出来ないかとおもってな」
「なるほど、そう言うことか」
「そう言うこった、それでどんな感じだ?」
急場しのぎの理由になってしまったがどうやら納得はしてもらえたらしい。改めてトーマがそれを問いかけると三人はそれぞれ言葉を返してくる
「ふむ、そうだな。我らも色々あったが、我ら八舞をあそこまで追い詰めた者だからな、軍門に置く価値はあろうよ」
「首肯。確かに見どころはあります」
「そうですねぇ、七罪さんがどう思ってるのかわかりませんけど、私は仲良くしたいなぁーって思ってますよ? 小動物みたいで可愛らしいじゃないですか」
「その発言には少々危険を感じるぞ、美九」
「そうですかねぇ、思ったままを言ってるだけなんですけどぉ」
目の前でそんなことを話している様子を見ていると、懐の震えが一層強くなったのを感じたトーマは目の前の彼女たちに別れの言葉を告げた後、その場を後にした。そうして彼女たちから別れて人気の少ない道にやってきたトーマは席に座ると、懐に居る七罪へ向けて言葉をかけた
「それで、どうだった? アイツらは」
『……意味わかんないわよ』
「そうか?」
『そうよ。私みたいなブスが嫌じゃないとか、見どころがあるとか、仲良くなりたいとか……ホント意味わかんない』
「……そうか。それで、これからどうするんだ? このまま逃げるか」
『……わかんない』
拗ねた子供のようであり、どうすればいいのかわからない迷子の子供のような声を発した七罪に対して、トーマはそうかとだけ言葉を発した後。沈黙の時間が続いていると通路の向こう側から歩いてくる士道の姿が目に入った
「ん? おう、トーマ」
「おう、士道。七罪の面会か?」
「あぁ、少し顔を出しにな」
他愛のない会話をしながら士道はトーマの横に腰をかけると、隣に居るトーマへ言葉をかけてくる
「そうだ、トーマ」
「どうした?」
「いやさ、丁度良いから七罪の事について、お前にも聞いときたいことがあるんだけどさ」
『!』
その言葉を聞いた七罪はビクリと反応すると、外の声に耳を澄ませる
「聞きたいこと?」
「あぁ、今日の夕飯。七罪さえよければあの部屋から出てみんなと一緒にどうかなと思ってさ」
『ぇ……?』
「成る程、オレは良いと思うが……急にどうしたんだ?」
いい案だとは思っているが、どうして急にそんな提案をしたのか気になったトーマがそう聞くと、あっけらかんとした様子で彼は答えた
「いやほら、いくら隔離状態とはいえ、毎日一人飯ってのは寂しいだろうと思ってさ、みんなももっと七罪と話したいだろうし」
「それに関しては正解だな、さっき美九が仲良くしたいとか言ってたし」
その言葉を聞くと、士道は頭に疑問符を浮かべる
「みんないるのか?」
「あぁ、休憩室で談話中だよ」
「そっか、それならまずは琴里に提案してみて、その後はみんなにだな。トーマも来るだろ?」
「あぁ、同席させてもらうよ」
そこまで話したタイミングで、トーマが立ち上がろうとした瞬間、士道の携帯電話が着信音を鳴らした。士道はトーマに許可だけ取ると通話開始ボタンを押して話を始めた
「もしもし、琴里か? 丁度いいところに────」
『士道ッ! 突然で悪いけど非常事態よ!』
「非常事態?」
「……何かあったのか」
非常事態と言う言葉に眉をしかめたトーマが言葉を発すると士道はスピーカーボタンを押してトーマにも聞こえるようにする
『トーマも一緒なのね? わざわざ二度連絡する手間が省けたわ』
「何かあったのか?」
『それを説明するから、落ち着いて聞きなさい』
通話越しの琴里は、深刻そうな声でそう言った後、言葉を続けた
『……にわかには信じられないだろうけど────今から数十分後、天宮市に、人工衛星が落下してくるわ』