デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー   作:SoDate

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閑話Ⅱ, 折紙インポッシブル

「俺、実はロリコンなんだ」

 

 五河士道は口にする、白昼堂々街のど真ん中で

 

「近所の小学校に出向いて、女子小学生の体育風景を観察するのが日課でな。穢れを知らないつるぺたボディに俺の鏖殺公(サンダルフォン)は暴走寸前さ。全く小学生は最高だぜ」

「そう」

 

 おおよそ一般人が言ったら友人どころか社会的な信用も失ってしまうであろう台詞を、この男は同級生の女子に対して言っている

 

「いける」

「何が!?」

 

 士道(変態)の言葉に対して、目の前に座る少女― 鳶一折紙は自分の慎ましやかな胸元を触ってそう告げた。流石の士道もこれにはビックリである……のだがコホンと咳払いをして言葉を続ける

 

「実はそれだけじゃない。俺は重度のマザコンでもあるんだ。毎朝ママの写真にキスしてから登校してるんだぞ」

「そう」

「……‥‥じ、実はシスコンでもあってだな。いつも妹の琴里と一緒に寝てるんだ」

「そう」

「ぐ……! く、加えて凄い浮気性でな! 今だって十股くらいかけてるんだぜ!?」

「……」

 

 やけくそで叫ぶ士道(変態)の言葉に対して、常時鉄仮面だった折紙が初めてぴくりと眉を動かした

 

「全員根絶やしにすれば問題ない」

「何するの!? ねぇ何するの!?」

 

 鳶一折紙、びっくりするぐらいやべー奴である

 

『……うわぁ、何この寛容さ。世紀末覇者?』

「ど、どうしろってんだよ、こんなの……」

『泣き言言うんじゃないの、次よ、次』

 

 どうして士道はこんなことになっているのか、何故鳶一折紙とデートをすることになったのか。その発端は昨日のことだった

 

 

 

「ふふ、どうだシドー。琴里にもらったのだ! 離れていても会話が出来るシロモノらしいぞ!」

「お、おう、そうか。よかったな」

 

 絶世の美女と言っても差し支えない少女はめいっぱいの笑みを浮かべながら士道にビシッと携帯電話を掲げている。士道はあの携帯電話、どっからどう見てもお年寄りターゲットの簡易機種だよな……と思っていたが、水を差す必要もないと言う事で黙っておく

 と言うのも見た目はお年寄り向け簡易モデルであるあの携帯電話ダガ、一トンの負荷にも耐える強度を誇っているらしい。それ以外にも災害時に基地局が壊れてしまった際も衛生を介して通信を行えるようにもなっている超高性能携帯電話である

 

 ただの女子高生が持つには物々しすぎる装備であるが、彼女―夜刀神十香はただの人間ではなく精霊である以上仕方ないだろう。精神が不安定になり士道の中に封印されている霊力が逆流する可能性もある以上、万が一の時の為の通信手段は必要だからだ

 

「よし、シドー! 試してみるぞ!」

 

 そう言うと十香はくるりと体の向きを変える

 

「今から私が遠くに離れて電話をかけるから、シドーはそれに出てくれ!」

「あぁ……なるほど。わかったよ」

「よし、では行ってくる!」

 

 そう言い残した十香は教室の扉を開けて廊下に駆け出していった

 

「昼休み終わる前には帰ってこいよー」

「────わかったー! ────」

 

 廊下の向こう側から、十香の小さな声が響いてくる……そして、そんな彼女の事を見送ってすぐ

 

「──士道」

「うぉっ!?」

 

 十香がいなくなるのを見計らったかのようなタイミングで、折紙が現れた

 

「な、何か用か、折紙……」

「明日、何か予定はある?」

「え?」

 

 唐突に言われた言葉に対して士道は素っ頓狂な声を出すと同時にいやーな予感が全身を駆け抜けていった

 

「な、何でまた……」

「一緒に街を歩きたい」

「そ、それってつまり……」

「デート」

 

 予想通りの単語に、士道の顔を汗が伝う

 

「……折紙。確認するんだが俺達って──」

「恋人」

「……ですよねー」

 

 誤解、今だ解けず現在を迎える

 

「どう?」

「わ、悪いんだが明日は──」

 

 言葉の途中で士道は息を詰まらせる。その原因は折紙から発せられる凄まじいプレッシャー

 

「や、その……だな。よ、予定を確認してみるから少し待ってくれるか……?」

 

 士道の言葉に折紙が頷く。小走りで廊下に出た士道が電話を掛けた先は琴里、彼女に知恵を借りようと言った算段である

 

『もしもーし、おにーちゃん?』

「……琴里。頼む、知恵を貸してくれ」

『え? どしたの?』

「……折紙にデートに誘われた」

 

 無言、それから少しして電話の向こうからリボンを付け替えているであろう布擦れの音が聞こえてきた

 

『──まったく、まだうだうだやってるの?』

 

 五河琴里、司令官モードに突入

 

「……っ、も、もとはといえばおまえらの訓練が原因じゃねぇか……っ!」

『面倒ねぇ。無視しておけばいいじゃない』

「っ、そんなことできるかよ……。もともと悪いのはこっちなんだぞ。このままあいつの気持ちを弄んだままでいいわけがねぇだろ」

『律儀なんだから。──なら、ちゃんとあの告白は間違いだったって伝えれば?』

「……どうやって」

『んー? 唾吐き捨てて、「俺はおまえなんかと付き合ってねーよ勘違いしてんなメンヘラ」って言えばいいんじゃない?』

「今度は意図的に風穴あけられるわ!」

 

 そのセリフを吐くのは最悪のクズ野郎だけである

 

『まったく、贅沢ねぇ。──じゃあ、そうね、向こうに士道の事を嫌ってもらえば?』

「え?」

『だから、敢えてそのデートを受けるのよ。―フラクシナスのAIの設定をいじって、最低最悪のデートになるような選択肢を用意してあげる。彼女が起こってかえっちゃうような、ね。向こうから嫌ってくれるなら何も問題ないでしょ?』

 

 フラクシナスは精霊の好感度を上げることに特化している、それを少しいじって相手の好感度を下げることに特化させるのは理にかなっている

 

「な、なるほど」

 

 まぁ、その結果どうなるかは考えなければいけないが……士道にとってはやらないよりマシだろう

 

「……わかった、サポート頼めるか?」

『えぇ。今後の事を考えたら、鳶一折紙に付きまとわれたままってのも問題だしね。──ただ、そうなると一つ懸念事項があるわ』

「懸念事項?」

『十香よ。明日は土曜で休みでしょう? 放っておいたら十香はまず間違いなく遊びに来るわ。そのとき士道がいなかったら起源メーターが下がっちゃうでしょ』

「別に俺なんていなくても……」

 

 士道の言葉を聞いた琴里は息を吐いた

 

「な、なんだよ」

『別に。──とにかく、作戦を決行するためには、十香に別の用事を与える必要があるわ』

「別の用事……か」

『えぇ、それこそ、買い物でもなんでも構わないわ。……一つか二つ、わかりづらいものを頼んで時間をかけさせたりしてね。とにかく、日中士道と一緒にいない状況に違和感を覚えさせなければいいわ』

「む……」

『──ま、とにかく、まずは鳶一折紙の方に了承を示しなさい』

「ん……わかった」

 

 そんなこんなで士道と折紙のデートの約束が取り付けられるのだった

 

「あっ、そういえば琴里。四糸乃は大丈夫なのか?」

『四糸乃なら大丈夫よ、明日はトーマと一緒にいることになってるから』

「そうなのか?」

『えぇ、一緒に料理の練習をするんですって』

 

 

 

 

 翌日―四糸乃の部屋

 

「よし、それじゃあまずは安全な包丁の切り方から教えていくぞ」

「……よろしく、おねがい……します」

「あぁ、最初は──」

 

 トーマと四糸乃の料理教室、開幕

 

 

 

 同時刻―折紙との待ち合わせ場所

 

『士道、もう少しゆっくり歩いていいわよ』

 

 インカム越しに琴里の声が聞こえてくる。因みに今の士道の服装はよれたTシャツにすりきれたジーンズ、そして便所サンダル。何ともやる気のない恰好である

『最低一時間は遅れていきなさい。あと、何を言われても絶対に謝らないこと』

「はぁ……」

 

 中々に徹底したクズムーブに士道は思わず息が漏れる、ゆっくりと歩き続けてから折紙との待ち合わせ場所に着いたのは規定時間から一時間後。いよいよ折紙の好感度を下げるためのデートが始まった

 

「──よかった」

 

 士道が折紙の元にやってくると、士道に向かってそう言った

 

「へ……?」

「何かあったのかと思った」

「…………ぅ」

 

 基本的に根っこが善人である士道は、折紙の態度を見て心を痛めていた

 

『何やってるのよ士道。そんなので心を痛めてちゃ話にならないわよ』

 

 前途多難な好感度下方デート、開幕

 

 

 

 

「いいか、包丁を使うときは猫の……って、よしのんに押さえててもらえばいいか」

『よしのんも頑張っちゃうよぉー』

「……がんばり、ます」

 

 お料理教室、何事もなく進行中

 

 

 

 

 一方、士道は折紙の服を褒める流れに突入した

 

「どう思う?」

「え?」

「今日の服」

 

 そう言われた士道は改めて折紙の服を見直す

 

「あ、あぁ、良く似合って──」

『ちょっと、何普通に褒めようとしてるのよ』

「……っ」

 

 琴里に言われた士道は、寸前で言葉を止めて首を横に振る

 

「いや……ぜ、全然似合ってないな……!」

「……」

 

 無言で自分の装いを見下ろした。表情は変わっていないのにその様子はどこか寂しげに見えた。

 

「どんな服装ならいいと思う?」

「え……? そ、そうだな……」

『待ちなさい。早速チャンス到来よ。一発キツいのをお見舞いしましょうか』

 

➀「マイクロビキニにメイドエプロン」

②「上セーラー服下ブルマ」

③「スクール水着に犬耳&尻尾」

 

 選ばれたのは、③でした。その結果を聞いた士道は小さく肩を揺らす。確実に社会的に殺されるであろう言葉を、士道は口にする

 

「……す、スクール水着に犬耳と尻尾かな」

 

 てっきり士道はビンタか鉄拳の一発を受けるかと思って目をつむり全身に力を入れるが、いつまで経っても痛みが響いてこない。恐る恐る士道が目を開けると、そこには折紙の姿はなかった

 

『──あら、意外と簡単だったわね。おめでとう士道。ミッションクリアよ』

「あ……あぁ、ありがとう」

 

 ビックリするほどあっさりとした結末に、士道はなんとも複雑な気分になったが……その途中で思考が停止する。どこかに言ったはずの折紙が走ってきたのである.──どこで調達したかもわからないスクール水着を着て犬耳と尻尾を装備した状態で

 

『「な……っ!?」』

 

 流石の行動力に士道も琴里も愕然とする

 

「どう?」

 

 背徳的な愛らしさのある折紙だが、士道は別に気になる部分があった

 

「一体どこでそんな服……」

「近くにこの手のお店がある」

 

 知りたくなかった街の裏事情を知ってしまった士道のデートは、まだ始まったばかり

 

 

 

 一方、料理教室を開催してたトーマは、包丁の使い方や本日のメニューの選定を終えいよいよ調理開始──にしたかったのだがそこで調味料が少し足りない事に気づいた

 

「悪い四糸乃、調味料が少し足りないから少し買い足してくる」

「……わかり、ました」

 

 四糸乃にそう言ったトーマは財布とエコバックだけ持ってマンションを出ると、商店街に向かう

 

 

 

 

 士道と折紙のデートが始まってからおよそ三時間。冒頭の性癖カミングアウト作戦も失敗に終わった

 

「……これは、難物ね」

 

 ひたすら折紙の好感度を下げるための作戦はすべて無駄に終わった(服装は元に戻っている)

 フラクシナスでモニタリングしているデートの様子だが、折紙の表情もかなり高い場所にある好感度も微塵も変化していない

 

「く……少し方向性を変えてみましょうか」

 

➀「いきなり胸を揉む」

②「顔に唾に吐きかける」

③「スカートを捲り上げる」

 

 そして、選ばれたのは──③でした

 

 

「……ま、マジかよ」

 

 スカートを捲り上げる、人目があってもなくても意図的にやるのは正気の沙汰とは思えない行為、それをやるよう言われた士道はごくりと唾液を飲んだ

 

『いいから、やりなさい。これくらいしないと彼女の好感度は揺るぎもしないわ』

「い、いや……さすがにそれは……」

 

 躊躇っている士道は後方を歩く客にぶつかられ、バランスを崩して前に倒れこんだ。咄嗟に体勢を保とうとするが、結局顔を地面にぶつけてしまい鼻をさする

 

「っててて……」

『よっし! やるじゃない、士道』

「あ、何が……」

 

 どういう意味か分からなかった士道ダガ、片手に見覚えのある布を掴んでいることに気づく

 

「……」

 

 油の切れたおもちゃのようにギギギ……と顔を上に向けると。スカートをずり下ろされた折紙の姿があった

 

「あ、あのだな折紙、これは……」

 

 脂汗をだらだらと流しながら、弁明をしようとした士道に対して。折紙は落ち着いた様子で、一言だけ発する

 

「ここで、するの?」

「……ッ!? な、何を……ッ!?」

 

 士道が慌ててスカートを元の位置まで戻すと、折紙は少しだけ残念そうな様子だったが、再びカウンターに視線を戻した

 

『……こ、これでも動じないの?』

「ど、どうすりゃいいんだこれ……」

 

 あまりの難攻不落ぶりに士道が諦めかけていると、インカム越しにアラーム音が聞こえてくる

 

『──っ、ち、面倒な……』

「な、何だ? 何かあったのか?」

『そっちじゃないわ。……十香の方よ。一応買い物に出かけた十香の方もモニタリングしてるんだけど……どうやら、変な男に話しかけられてるみたい。ナンパか客引きかしらないけど、面倒なことをしてくれるわね』

 

 その言葉を聞いた士道は眉をひそめる。世間知らずな十香のことだから、言葉巧みに騙されて。何か危ないことに巻き込まれてしまう可能性がないのではと考えたからだ……そして霊力が逆流した場合、男は消し炭だがそれはそれでマズい

 

「ど、どうにかしないと……!」

『わかってるわ。機関員を派遣してもいいけれど……できるだけラタトスクが関わってることを勘付かせたくないのよね』

 

 

 

 

 

 それと同時刻、今日に限って行きつけの商店街に必要な調味料が品切れだったせいで少し遠くまで足をのばしていたトーマは必要な調味料と、料理の勉強を頑張っている四糸乃へのご褒美として作るお菓子の材料を買い終え、マンションまでの帰り道を歩いていると、公園のベンチに座っている十香の姿が目に入った

 

「あれ、十香?」

「ん? おぉ! トーマではないか!」

「おう、それよりその荷物……買い物か」

「うむ、シドーからお使いを頼まれたのだ」

「そうか」

 

 屈託のない笑顔でそう言ってくる十香に微笑ましいものを覚えていると、何かを思い出したように紙を取り出した

 

「そうだ、トーマはこれが何処に売っているか知らないか?」

「どれどれ……サーターアンダーギー?」

「トーマにもわからないか?」

「そうだな……流石にわからん」

「そうか……ううむ……」

 

 とりあえず心配なので様子を見ていたトーマは、十香の頭上に電球を幻視する

 

「そうだ! こういうときこそ……これだ!」

「携帯か、買ってもらったんだな」

「うむ! ……確かさっきシドーから電話があったから、チャクシンリレキ……だったか?」

 

 ぎこちない手つきで電話を操作している十香が心配だが、四糸乃を待たせているため一応十香に確認をとる

 

「十香、一人で大丈夫か?」

「大丈夫だ! このさーたーあんだぎーとやらがどこに売ってるかはシドーに聞くからな!」

「そうか、それじゃあ俺はもういくからな?」

「うむ、また明日だ! トーマ!」

「おう」

 

 ちょっとした日常の会話、何故か娘を見守るお父さんの気持ちを少しだけ理解出来たトーマが公園から出てあと少しでマンションまで到着といったところで、後方から凄まじい爆発音が聞こえてきた

 

「ガス事故か? 最近物騒だな」

 

 のだが、トーマはマンションの四糸乃の部屋に帰還した

 

「ただいまー」

「あっ……おかえり、なさい」

『もー、おそいよートーマくーん』

「ホントに悪かった、少し遠くまで行かなきゃなくなってな」

 

 お料理教室、再開

 

 

 

 時間は少し戻り、丁度十香とトーマが別れてからすぐ。既に満身創痍といった風の五河士道はいよいよ最終手段として恋人として付き合っているのを受け入れ、そこから別れ話をすると言う手段を取ることになっていた

 深呼吸をするが心臓バックバクで顔に汗をびっしりと浮かべている士道に、琴里が話しかける

 

『落ち着きなさい……って言っても無理か。せめて大事なところで噛まないようにね』

「あ……ッ、あぁ、そ、そうだにゃ」

『いきなり噛んでるじゃない』

「う……」

 

 それを指摘された士道はわざとらしく咳払いをした

 

『まったく……距離を取らせて正解だったわね。ちゃんと口が回る様に、練習してから席に戻りなさいよ』

 

 その言葉を聞いた士道は、壁の方に向かって練習を始めた

 

「──別れよう。俺……お前のことがもう好きじゃなくなっちまったんだ。別れよう。俺……お前の事がもう好きじゃなくなっちまったんだ」

『な──、ほ……本当か……?』

 

 練習に混じる微かな違和感、だが士道は気付かずに続ける

 

「──あぁ、もう終わりにしてほしい」

『そ、そんなのはいやだぞ!』

「わかってくれ。もう俺に……おまえに対する気持ちは残っていないんだ」

『わ、私の事が嫌いになったのか……?』

「あぁ、お前の事が嫌いになったんだ…………んん?」

 

 原作主人公、ここでようやく違和感に気づく

 

『シ……ドー……』

 

 右耳に響く声音が、琴里の者でなくなっていることに。そしてそれは……間違いなく十香の声であることに

 

『う……ぅ、ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……ッ!』

「な──ななななな、なんで十香……ッ!」

 

 その疑問に答える前に、琴里の声が割り込んで聞こえてきた

 

『──馬鹿、何で回線切っておかないのよ!』

『す……すみません……ッ!』

 

 琴里の声にフラクシナスのクルーの声、その次に聞こえたのはすさまじい爆発音。それは士道たちのいる場所まで伝わってきていた

 

「な……っ、こ、これは──」

『十香よ! 精神状態が一気に下落! 精霊の力が恐ろしい勢いで逆流してるわ!』

「な──なんだって!?」

『く……こっちのミスだわ。十香との回線を切るのを忘れていたものだから、十香が士道に電話を掛けた瞬間、また通話状態になっちゃったのよ!』

 

 流石の琴里も、この事態にはかなり焦っている様子だった、そして聞こえる店の外での凄まじい音、あちこちから悲鳴が響き、逃げ惑う人々の地割れのような足音が聞こえてくる

 

「ど──どうすりゃいいんだよ。これ……ッ!」

『とにかく、十香の機嫌を直すしかないわ! 今のは冗談だって伝えて!』

「お、おう……!」

 

 士道はインカムに手を添えて、言葉を発する

 

「十香! 聞こえるか! 十香!」

『く──駄目か、仕方ないわね、士道。直接十香の元に向かってちょうだい!』

「でも、折紙が……」

『今はそれどころじゃないわ! 急いで! 商店街を抜けたところにある自然公園よ!』

「わ、わかった……ッ!」

 

 急いで向かった士道は人の波を避けるように路地裏に入り、十香の元に向かっていると、士道のポケットに入れていた携帯が震える

 

『──士道、どこにいるの』

「折紙、悪いんだが、少し待って──」

 

 走る速度を緩めないで、電話に出た士道は、折紙に対して待ってくれと言いかけた所でまた爆発音がする。瓦礫がバラバラと落ちてくるがそれを躱して走り続けると。ようやく公園が目に入った

 

「な……っ!」

 

 目に入った公園は、一角が隕石でも落ちたかのように削れていた。そしてその真ん中に、うずくまりながら時折肩を揺らす十香の姿があった

 

「十香……っ!」

「し、シドー……」

 

 士道が叫んだ事でようやくその存在に気づいた十香は肩をビクッと震わせた後、涙でぐちゃぐちゃになった顔で、士道の名前を呼んだ

 

「……っ」

 

 それを見た士道は息を詰まらせそうになるが、なんとか言葉を紡いだ

 

「さ、さっきのは──冗談だ!」

「え……?」

 

 士道の言葉を聞いた十香はキョトンとした顔を作り、しばらく呆然としてから服の袖で涙をぬぐった

 

「ほ.……ほ、本当……か?」

 

 そして、士道の様子を窺うように、小さく細い声で発してくる

 

「あ、あぁ」

「私のことを……嫌いになっていないか?」

「と、当然だ! 嫌いなわけないだろ!」

「ほ、本当か!? で、では……離れ離れにならなくてもいいのか!?」

「お……おう、もちろんだ」

「ずっと一緒でもいいのか!?」

「あ……あぁ、ずっと一緒だ!!」

 

 士道は今まで一番大きな声でそう宣言すると、十香は鼻水を啜ってその場に立ち上がった

 

「そ……そうか。うん、そうだな!」

 

 ひとまず一件落着である

 

 

 

 とりあえず聞こえてきたサイレンの音によって、その場にいたら面倒なことになると察した士道と十香は路地裏に避難し、士道の方は数秒後に凍り付いた

 

「…………」

「お……折紙?」

「ぬ」

 

 理由はいたってシンプルで、いつの間にか現れた折紙の姿があったから。士道は全身をビクッと震わせ十香は不機嫌そうに腕組をしたのだが、とうの折紙は今まで以上に熱っぽい視線を士道に向けていた

 

「折紙……? どうした?」

 

 内心いやーな予感で一杯だった士道の予想は正しかったようで、折紙は無表情で士道に抱き着いた

 

「な……き、貴様、何のつもりだ!」

 

 折紙の事を引きはがしにかかる十香だが、士道の事をガッチリとホールドして離さない。そんな折紙が静かに口を開く

 

「──ずっと一緒」

「は……はぁっ!?」

 

 どっかで聞いたことのあるフレーズに、士道は驚く

 

「は、放さんか! その言葉は私のだぞっ! ずっと一緒にいるのは私なのだ!」

「──それはあり得ない。これは間違いなく士道が私に言った言葉」

 

 それを聞いた士道はハッとして自分のポケットに放り込んだ携帯電話の画面を見ると、バッチリ折紙と通話状態になっていた。これが意味するのは……十香に大声で言ったことはすべて折紙にも伝わっていると言う事である

 

『……おめでとう士道。ストップ高だと思われてた鳶一折紙の好感度が、さらに上昇したわ。……こんな数値を見るのは初めてよ』

 

 諦めに近い琴里の声を聞いた士道の口からは、乾いた笑いが漏れていた

 

 

 

 

 

「よし、後はしっかりと盛り付けて料理は完成だ、個人的には使った料理道具を洗うまでが料理だと思うが……とりあえずあったかいうちに食べよう」

「……はい!」

 

 十香と折紙がいつも通り修羅場を繰り広げ、士道が乾いた笑いを発していたのと同時刻。トーマと四糸乃のお料理教室は四糸乃が無事に料理を完成させた事で終わりを迎えたのだった




ノリと勢いで書いたこの話
次回からは本編に戻ります


やってくる謎の転校生
やってくる士道の実妹(仮)
それが意味する新たな事件とは

次章、狂三キラー
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