デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー   作:SoDate

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第Ⅲ章, 狂三キラー
第3ー1話, 転校生・精霊


「わたくし、精霊ですのよ」

 

 六月五日、月曜日

 黒板の前に立っている少女の自己紹介は、突拍子もないものだった。最も多かった生徒か彼女の突拍子もない言葉に怪訝そうな顔を作り、その次に多かった生徒か彼女の美しい美貌に目を奪われて自己紹介を聞き逃したもの達

 ──だが、士道はどちらにも属していない、彼女の発した言葉は士道たちにとって因縁深いものだったから

 

「時崎……狂三」

 

 白いチョークで黒板に記されたその名前を、士道は誰にも聞こえないくらいの音量で呟いた

 

 

 

 

 時刻は午前九時を少し過ぎたあたり、美九は学校に行っている為トーマは一人、ダイニングテーブルに最近手に入れた本を並べていた

 

「十香と四糸乃から合計で七冊、それにラタトスクで保管していた三冊の合計十冊」

 

 並べた十冊の中からトーマは剣の名前を冠する三冊の本を手に取ると、空いたもう片方の手に無銘剣を出現させる

 

「とりあえず、新しい剣の確認だけしておくか」

 

 いつもの手順通り無銘剣に本をリードしていくと、十香から入手した土豪剣、四糸乃から入手した水勢剣は普通に変化して、次はラタトスクの保管していた火炎剣の本を無銘剣にリードするのだが、剣の形は変わらない

 

「あれ……?」

 

 二度三度とリードしてみるが、剣が切り替わる気配は一切なかった

 

「偽物を掴まされた……でも、本から感じる力は本物っぽいんだよな」

 

 そう言うと火炎剣の本以外にラタトスクから回収した残りの二冊を手に取るが、感じる力は確かに本物だった

 

「確かに本物なんだよな……ブレイブドラゴンもニードルヘッジホッグも」

 

 何か重要なピースが欠けている気がしていると、着信が入った

 

「もしもし?」

『もしもし、トーマ』

「琴里か、どうした?」

『実は、士道の高校に精霊を名乗る人物が転校してきたらしいわ』

「精霊を、ねぇ……厨二患者とかじゃないのか?」

『わからないわ、でも……こっちでも調べてみるつもりよ』

「……それは良いんだが、どうして俺に電話をかけてきたんだ?」

『一応、忠告よ』

「そう言う事か、一応気をつけとくよ」

 

 そう言ってトーマは琴里からの電話を切った

 

「一応、士道たちの様子も見に行ってみるか」

 

 トーマはベランダに出ると、無銘剣を使いファルシオンの姿に変化して飛び立った

 

 

 

 そして時は流れ午後三時、来禅高校では帰りのホームルームが始まっていた。なんの変哲もないホームルームのはずだが、士道は今までにない程の緊張感に襲われていた

 

「……!」

 

 時崎狂三は教師の隙をついて士道たちの方を向くと、ひらひらと手を振ってきた

 

「え、と……」

 

 流石に何もアクションを返さないのは失礼かと思った士道は、苦笑いしながら手を振り返す

 

『…………』

 

 すると両サイドに座っていた十香と折紙が、何の冗談もなく、長時間見つめられていたら皮膚炎になりそうな視線を向けられていた

 

「……ど、どうしろってんだよ」

 

 孤立無援となっていた士道が息を吐くと同時に、岡峰教諭がパタンと出席簿を閉じた

 

「連絡事項はこんなところですかね。──あ、それと、最近この近辺で、失踪事件が頻発しているそうです。皆さん、できるだけ複数人で、暗くなる前におうちに帰るようにしてくださいね」

「……ん?」

 

 岡峰教諭の言葉に、士道は小さく眉を上げる。朝に似たようなニュースを聞いたような気がしたから、意識の端に引っかかっていたのだろう。それから士道が少し考え事していると起立の号令が響き、それに従って椅子から立ち上がり礼をすると、岡峰教諭は教室から出て行った

 それからすぐ、右耳に装着したインカムから声が聞こえてきた

 

『──時間ね。準備はいい? 士道』

 

 その声は司令官モードの琴里のものだ。今の士道からは確認できないが、フラクシナスではラタトスクの精鋭が、精霊攻略の準備を万全に整えているのだろう

 

『まさか、本当に精霊だなんてね。──正直、士道の妄言かと思っていたわ』

「……おい」

 

 鼻で笑うかのような琴里の言葉に、士道は半眼を作るがそれも無理のない話なのかも知れない。実際、士道も半信半疑だったのだ、精霊が高校生として現れるのは

 彼女の発言からすぐ、琴里に依頼した狂三の観測結果、彼女は精霊であるという事が証明された

 

『──まぁ、でも好都合よ。向こうからお誘いかけてくれるなんてね。警報が鳴ってない以上、ASTもちょっかい出せないでしょうし、願ったりかなったりじゃない。今のうちに好感度上げて、デレさせちゃいなさい』

「……ん、そう……だよな」

『何よ、その腑抜けた返事は。まだ精霊とキスするのはイヤだっていうの?』

「……っ、べ、別にそういう……って、や、全く抵抗がないわけでもないんだが……」

『なんでもいいけど、あんまり雑談している暇もなさそうよ』

「へ?」

 

 士道が間の抜けた声を発すると同時に、士道の肩がちょんちょんとつつかれた

 

「士道さん、士道さん」

「うぉ……ッ!?」

「ごめんなさい、驚かせてしまいました?」

 

 いつの間にか士道の後ろに立っていた少女、時崎狂三は申し訳なさそうに言ってきた

 

「と、時崎……」

「うふふ、狂三で構いませんわ」

「あ、あぁ……じゃあ、狂三」

 

 士道がそう言うと、狂三は微笑んでから言葉を続けた

 

「学校を案内してくださるのでしょう? よろしくお願いいたしますわ」

「お、おう」

 

「うぉっほん!」

 

 今まで接してきた女子とのあまりの違いにドギマギしていると、わざとらしい咳払いが聞こえた事で士道は我に返る。咳払いの聞こえた方を見ると十香が腕組しながら睨んできていた

 

「あ、あのだな……」

「さ! 早く参りましょう。ふふ、楽しみですわ」

 

 士道が弁明するよりも先に、狂三が軽やかな足取りで廊下に歩いていってしまった

 

「あ……お、おいっ!」

「うふふ、士道さんも早くいらしてくださいまし」

『──士道、今は狂三よ。あとを追いなさい。十香の精神状態は、まだ危険域に達するほどじゃないわ。帰りがけにきなこパンでも買ってってあげれば収まるレベルよ』

 

 琴里の言葉を聞いてから、右側を一瞥すると未だ憮然とした表情の十香が目に入ったが、今は仕方がないと思った士道は「すまん!」と一言だけ残して狂三の後を追う

 

「それで、どこから案内してくださいますの?」

「あ、あぁ……そうだな」

 

 小首を傾げた狂三が問いかけると、士道はどこから案内するかを決めあぐねる。その様子を見ていた狂三がチラリと校舎の外へ少しだけ目を向け、すぐに視線を戻した

 

 

 

 

 

 同時刻、少し離れていた場所から来禅高校を見ていたトーマの元に、琴里から連絡が入る

 

「……琴里か」

『トーマ、結果が分かったわ、結果は──』

「あの女は精霊……だろ?」

『え、えぇ……でもそれなら話が早いわ、トーマも──』

「悪いが、オレはあの精霊に関してお前達に手を貸すわけにはいかない」

『は!? どういう事よ!』

『悪いが、説明をするつもりはない……これで話は終わりだ』

 

 そう言うとトーマは一方的に琴里からの通信を切り、再び士道たちのいる場所に目を向ける。その直後、校舎の外に視線を向けてきた狂三と目があった

 

「……目的は士道か、時崎狂三」

 

 狂三を見るトーマの瞳は、いつもと違い氷のように冷たいものだった

 

 

 

 

 今までと違うトーマの様子に漠然とした違和感を覚えていた琴里だが、選択肢が出てきたことで意識を士道たちの方に戻し、話しかける

 

「士道、ちょっと待ちなさい。こっちでも検討してみるわ」

 

 校舎案内の数パターンが表示されるが、最初に向かう場所は──

 

➀「屋上」

②「保健室」

③「食堂・購買部」

 

「──チャンスですね」

 

 ふと、琴里の後方から声が聞こえてきた、琴里がちらりと目をやると、神無月があごに手を当てていた

 

「行く先の判断をこちらの判断に委ねてくれたのはありがたいですね。組み合わせ次第では、良いシチュエーションを作ることも可能でしょう」

「まぁ、そいうね。──各自、選択! 五秒以内!」

 

 琴里の言葉のすぐ後、手元の小型ディスプレイに結果が表示される

 

「屋上が一番人気か」

 

 琴里が結果を見ている下で、クルーたちが意見をぶつけ合っている最中、唯一入ってる③の票に目を向ける

 

「この③に入ってる一票は誰のものなの?」

「……私だ」

 

 琴里の問いに対して応答をしたのは、近くに座っていた令音だった

 

「令音が? 以外ね。理由を訊いていいかしら」

「……あぁ。といってもたいそうな理由はないよ。単なる消去法だ」

「消去法? 屋上と保健室がダメだっていうの?」

 

 そう言うと、令音は首を横に振る

 

「……そうではないんだ。ただ、まだ保健室には養護教諭が常駐している。保健室の持つ破壊力を引き出すには、あと三十分ほど待った方がいい。……屋上の方も似たような理由さ。どうせなら、夕日が射してからの方が……素敵じゃあないか」

 

 令音の言葉を聞いた琴里は、唇の端を小さく上げた

 

「──なるほど、なかなかロマンチストじゃない、令音」

 

 そのまま琴里は、マイクに口元を近づける

 

「士道、聞こえる? まずは食堂と購買部でも案内してあげなさい」

 

 

 琴里の言葉を聞いた士道は、何処に行くかを狂三に伝える

 

「……そうだな、じゃあ食堂と購買でも見ておくか。何かと必要になるだろうし」

「えぇ、構いませんわ」

 

 そこから士道は狂三を連れて、食堂まで向かっているとインカム越しに琴里の声が聞こえてくる

 

『んん……?』

「どうかしたか、琴里」

『いえ……あなたたち二人に引っ付くように移動している反応があるのよ。……何者かに付けられてる可能性があるわ』

「え、えぇ……っ?」

 

 突然不穏な事を言われ、声を発してしまう

 

『静かに。……こっちで確認しておくから、今は狂三に集中なさい。──ていうか、女の子と歩いているっているのに、なんで無言なのよ。気が利かないわね』

「え、あ……っ」

 

 それを聞いた士道は、周りの視線に気を取られて狂三の事を放置していたのを思い出した

 

「……やべ」

 

 慌てて狂三の方に目をやると、狂三もまた士道の方をじっと見つめていた

 

「く、狂三。歩くときは前見ていた方がいいぞ……!?」

「気を付けますわ。わたくしを気遣ってくださるなんて、士道さんは優しいですわね」

「い、いや……そんなこと!」

「ご謙遜なさらないでくださいまし。士道さんの横顔に見とれてしまっていたわたくしが悪いのですわ」

「み、見と……ッ!?」

 

『あなたが口説かれてどうするのよ、士道』

 

 琴里の声が聞こえてきた事で、士道はハッと肩を震わせた

 

「わ、悪い……」

『……しかしまぁ、今までにないタイプの精霊であることは確かね。人間社会に溶け込んでるのはもちろん──無効からこんなアプローチをかけてくるなんて』

 

 琴里は少し考えこむようと、再び話しかけてきた

 

『興味深い存在だからいろいろと情報を探りたいところね。……まぁ、高感度上げつつ質問も織り交ぜていこうかしら。──と、ちょうどいいところで選択肢がきたわね。ちょっと待ちなさい』

 

 

 

 フラクシナスの艦橋モニターに、新しい選択肢が表示される

 

➀「朝言ってた精霊って、一体何なんだ?」

②「狂三は、前はどこの学校にいたんだ?」

③「狂三は今、どんなパンツを穿いてるんだ?」

 

「総員、選択!」

 

 表示された結果、一番票が入っていたのは➀

 

「やっぱり、➀かしらね」

「妥当かと。狂三は、士道くんが精霊を知っていることは知らないはず。一度揺さぶりをかけてみるのもよいでしょう」

 

 後方から、神無月がそう言ってくる

 

「そうね。──ちなみに神無月。あなたはどれに入れたの」

「③ですが」

「一応理由を訊こうかしら」

 

 神無月に一応理由をきくと、彼は何の気なしに言う

 

「黒タイツ越しのパンツは人類の至宝。些かの疑問を抱く余地もありません」

 

 その言葉のすぐ後、琴里はパチンと指を鳴らすと、艦橋に筋骨隆々の巨漢が入ってきて神無月の両腕をホールドした

 

「連れて行きなさい」

「「はっ」」

 

 琴里の言葉に従った男たちはずるずると神無月を連れていく

 

「し、司令! お慈悲を! お慈悲をぉぉッ!」

 

 神無月、退場

 

「はぁ……『狂三は今、どんなパンツを穿いてるんだ?』……ねぇ。何なのこの選択肢」

「ま、まぁ……下ネタで場が和むこともなくはないですから」

 

 苦笑い、と言った感じで環境は若干場が和んだ瞬間、琴里はぴくりと眉を揺らした

 

「あ」

 

 マイクのスイッチが、押しっぱなしになっていたのである。つまり、琴里の言葉は全部士道の耳に入っていたわけで

 

『な、なぁ……狂三は今、どんなパンツを穿いてるんだ?』

 

 さっきの言葉をそのまま指示と勘違いした士道は、馬鹿正直にその言葉を復唱した

 

 

 

 

「ぱんつ……ですの?」

「……ッ!」

 

 ここで士道は自分がとんでもない言葉を発してしまった事を自覚した

 

「あ、いや、今のは──」

『馬鹿、今のは指示じゃないわ! 本当は➀よ。朝言ってた精霊って、一体何なんだ』

「は……はぁ……っ?」

『とにかく誤魔化しなさい! 今のは冗談ってことにして、本当の質問に繋げるの!』

 

 とりあえず士道は軌道修正をするために、狂三に向き直った

 

 

 

 

 

 一方、士道たちの事を見つめていたトーマは背後に気配を感じる

 

「……お前、どっちだ」

「どっち、とは……どういう意味ですの?」

「そのままの意味だよ、”時崎狂三”」

 

 トーマの背後から現れたのもまた、時崎狂三。しかし彼女の姿は学生服ではなく十香たちと同じ霊装を纏った姿

 

「そんなに警戒なさらなくても良いではありませんか……あなたとわたくしの仲ですのに」

「寝言は夢の中だけにしてくれよ、ナイトメア」

「相変わらず、つれないですわね」

 

 トーマの言葉に対して、狂三は何処か楽しそうに答える

 

「それで、今回は何の用だ」

「今日はわたくし、あなたにお願いしたいことがありましたの」

「お願いだと?」

「えぇ、わたくしが何をしようと、トーマさんは手を出さないでくださいまし」

「オレの目的を知って、そのために士道を利用する(たすける)のが最善だとわかった上で……オレがそれを受け入れると思うか」

「あら、それじゃあ交渉決裂……ということですの?」

「そうなるな」

 

 その直後、狂三はトーマに銃口を向け、トーマも狂三に無銘剣の切っ先を向ける

 

「今、この場で潰し合うか?」

「……遠慮しておきますわ、トーマさんの力と今のわたくしは相性が最悪ですので」

 

 それだけ言い残し、狂三は影に溶けるようにして消えていった

 

「……今回ばっかりは、少し面倒だな」

 

 誰に聞かせる訳でもないその言葉の真意を知るものは、この場には誰もいない




新たに士道たちの前に現れた第三の精霊
ラタトスクとの協力を拒んだトーマ

そして、時崎狂三とトーマの接触

これから何が起こり
何処に向かっていくのか

次回、交差する思惑


《先行解禁情報》
・トーマが天宮市にやってきたのは5年前
・美九と出会うまでは序章で出てきた定食屋に下宿していた
・天宮市にやって来てからどこかのタイミングで時崎狂三と接触している
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