デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー   作:SoDate

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第3ー3話, ナイトメア《上》

 とある日、トーマは珍しくフラクシナスの艦橋にいた

 

「それで、わざわざ呼んだ理由は?」

「トーマ、あなたには狂三から手を引くように言われたわ……けれど、精霊と対話をして保護するのが私たちよ」

「それじゃあお前らはこれからもアレと関わるってことか」

 

 トーマのその言葉を聞いた琴里は頷いた

 

「わかった、それなら好きにすればいい。オレは何も言わない」

「待ちなさい、まだ話は終わってないわ」

 

 フラクシナスの艦橋を後にしようとしたトーマの事を琴里が呼び止める

 

「なんだ?」

「トーマ、私たちに力を貸して」

「……意味がわからないな」

「狂三は、私たちの力だけじゃ救えない……士道や私たちだけじゃなく、あなたの力も必要なの」

「言ったはずだぞ、オレはお前達に手を貸さない」

「それでも、お願い……」

「今回、オレは何処にも肩入れをしない。中立だ……だが、オレはオレが必要なら手を貸す」

 

 それだけ言い残し、今度こそトーマはフラクシナスの艦橋を去っていく

 

「司令、あのまま帰してしまって良かったんですか?」

「えぇ……言い方は分かりづらかったけど、協力はしてくれるみたいだからね」

 

 

 

 

 そして、士道がトリプルデートをすることになった日。トーマはどうしてこうなったのかわからないが今まで通りタブレット片手にデートの開始がを待っていた

 

『──いい? 午前十時に十香と落ち合って、東天宮の水族館へ。そうしたら何か途中で理由を付けて抜け出してちょうだい。外に出たらフラクシナスで拾うわ。それから十時三十分に改札前に狂三と待ち合わせして移動、十一時には駅前の広場に戻って鳶一折紙と合流しなさい。ただ、この時点で十香を三十分放置してしまうことになるわ。すぐにフォローして。その後もできるだけ間隔を狭めて、それぞれの空白時間があまり多くならないように調整しないとね。タイムテーブル管理はこっちでもやるから、士道はとにかく彼女たちがへそ曲げないように優しく言葉をかけてあげて。最優先目標は狂三をデレさせてキスまでいっちゃうことだけど、十香の機嫌を損ねてもだめだし、鳶一折紙に勘づかれるのも上手くないわ。どうにか──って、ちょっとねぇ士道、ちゃんと聞いてる?』

「……き、聞いてるよ」

 

 訊いてはいるが頭に入っているかどうかは別である

 

『聞いてるだけじゃ意味ないのよ。ちゃんと頭に入れなさい』

「う……」

『はぁ、もしもの時はオレの方でもフォローする』

「あ、あぁ……助かる」

『まぁいいわ……移動してちょうだい。準備はいい?』

「あ、あぁ……たぶん」

 

 そう言うと士道は改めて自分の装いを見直して、深呼吸をする

 

『さ、そろそろ時間よ。──私たちの戦争(デート)を始めましょう』

「お、おう」

 

 

 その言葉を訊いていた士道は気合いを入れ直して待ち合わせの場所まで向かう

 

「シドー!」

 

 待ち合わせ場所について程なくして、士道の名前を呼ぶ十香の姿が見える。その姿見慣れた制服ではなく薄手のチュニックにショートパンツ、その装いは十香にとても似合っていた

 

「こ、これは……」

『……あぁ、十香から、何を着ていけばいいのかと訊ねられたんだ。悪くないだろう?』

「は、はい……」

「シドー?」

 

 十香の姿に見惚れていると、十香が改めて士道の名前を呼んできた

 

「あ、あぁ……! 悪い。ボーッとしてた。……ん、似合ってる。可愛いぞ、十香」

「な……っ」

 

 士道の言葉を聞いた十香は顔を真っ赤になってあたふたしていた

 

「い、いいから行くぞ! ほら、早く!」

「な、なんだよ急かす──」

 

 そこまで言いかけた所で士道は足を止めた、前を歩いていた十香とぶつかってしまったからである

 

「十香? どうした?」

「む、むぅ……」

 

 立ち止まった十香は士道の方に振り返ってくる

 

「シドー、そういえば、一体どこに向かえばいいのだ……!」

「え? 水族館じゃないのか?」

 

 士道の言葉に十香も困ったような顔を向けてくる。どうやら十香は目的地の場所がわからないらしい

 

「はは……ちょっと待ってな」

 

 それに対して少し笑った士道は自分の財布からチケットを取り出すと、裏面の地図に視線を落とす

 

「えぇと、天宮クインテットか。なら向こうだな」

 

 移動を始めた士道の視界の端に見慣れた人影映った気がしたので、視線だけそこに向けると鳶一折紙の姿があった

 

「どうかしたのか? シドー」

「い、いや、何でもないぞ! さぁ移行すぐ行こう即行こう!」

 

 長引くことにリスクを感じた士道は十香の姿を隠すよう自分の右手側を歩かせると、自分の顔も十香の方に向けるようにしながら進み始めた

 

『あら、なかなか気遣いが身に付いてきたじゃない。女の子に車道側を歩かせない。視線を女の子から外さない。うん、ベタだけぢ、意外と嬉しいものよ』

「そ、そうか……」

 

 

 

 一方で、士道たちの事を見下ろしていたトーマは、さっきの士道の行動を見て苦笑いを浮かべていた

 

「危機管理能力だけは高いな」

『トーマ、そっちの様子はどう?』

「お前らの方から死角になる場所から見てるが、待ち合わせ時間一時間前に鳶一折紙が到着してるな」

『随分早いわね』

「……彼女は随分士道にご執心だからな、それより士道の方は」

『あっちは順調よ』

「そうか……っと、時崎狂三との待ち合わせ十分前だが、来たみたいだぞ」

『えぇ、こっちでも確認してるわ……タイムテーブル通り、一度十香と別れさせて士道を向かわせるわ』

 

 通信が切れると、改めてタブレットに表示されてるタイムテーブルに目を向ける

 

「……これ、改めて見ると士道は過労で倒れても可笑しくないな」

 

 とりあえず今日は大変な一日になるであろう士道に合掌をした

 

 

 

 そこからしばらくの間、十香と水族館にいた士道の耳に、琴里から連絡が入る

 

『士道、そろそろ狂三との待ち合わせ時間よ。フラクシナスで拾うから、外に出て人目のない場所に移動してちょうだい』

「……っ」

「シドー? 行かないのか?」

 

 急に足を止めた士道を不思議に思ったのか、十香はキョトンとした様子で首を傾げる

 

「あー……っと」

 

 士道は目を泳がせてから、腹の辺りを押さえて前かがみになった

 

「あ、あいたたたたた……っ」

「ど、どうしたのだ!? シドー!」

「い、いや、ちょっと腹の調子がな……トイレ行ってくるから、少し待っててくれないか?」

「な……っ! だ、大丈夫なのか……? も、もし酷いようなら琴里たちを……!」

「い、いや! そんな深刻なアレじゃないから心配しないでくれ! な!?」

「う、うむ……」

 

 士道の言葉を聞いた十香だが、それでも心配そうな顔のまま、士道の事を見つめてきた。ものすごい罪悪感が士道を襲うのだが……あまりもたもたしていると狂三を待たせることになってしまう為、段ボールに入った子犬の前から去るような心地で出口に足を向けた

 

「で、できるだけ早く戻るから、魚でも見ててくれ!」

「う、うむ、わかった。辛かったらすぐ琴里に連絡するのだぞ……!?」

「お、おう……」

 

 角を曲がって十香の視界から外れたあたりで姿勢を治すと、全速力で駆け出した

 

 

 

 息を切らしながら天宮駅東口改札の前に辿り着くと、そこには既に九r身の姿があった

 

「ま……っ、待たせたな……!」

「いいえ、わたくしも今来たところですわ」

 

 士道の言葉に狂三はそう返して微笑んできた。呼吸を整えた士道は改めて狂三に向き合う

 

「悪い……少し遅れた」

「うふふ、そんなに急がれなくても大丈夫でしたのに」

「い、いや、まぁ……はは」

 

 曖昧に笑ってごまかした士道の耳に。琴里の声が聞こえてくる

 

『──さ、今日はこれが本番よ。しっかりね』

 

 インカムを軽く小突いて了解を示した

 

「今日はお誘いいただきありがとうございます。とても嬉しいですわ。──それで、まずはどちらに行かれますの?」

「ん……そうだな」

『待ちなさい』

 

 士道の言葉は琴里からストップが入り、フラクシナスに選択肢が表示される

 

 

 

➀ショッピングモールでラブラブお買い物デート

②二人で甘い恋愛映画を

③ランジェリーショップで彼女の試着を鑑賞

 

 クルーたちの内容は割愛しますが、選ばれたのは③でした。その事を琴里は士道に伝える

 

「士道、③よ。駅ビルのランジェリーショップを案内してあげなさい」

『おう了解……って、はぁ……!?』

 

 

 まさかの場所に汗を浮かべた士道は、遠回りに狂三に問う

 

「え、えぇと……狂三。何か買いたいもの……というか、見たいものってないか? たとえばこう、身につけるもの……とか」

「お洋服ですの? あぁ、それは見たいですわね」

「や、洋服というか……その下に付けるものというか……」

「その下……?」

 

 士道の言っていることに気づいたらしい狂三は、頬を少し染める

 

「い、いや、やっぱりおかしいよな! よし、とりあえず別の──」

 

 額に汗をにじませ、歩いていこうとする士道の服の裾が、きゅっと掴まれた

 

「え……?」

「士道さんが……選んでくださいますの?」

「え!? あ……あ、あぁ……」

 

 上目遣いになりながら見てくる狂三に対して、士道は困惑気味に頷くと狂三ははにかんだように笑みを浮かべた

 

「ふふっ、では──可愛らしいのを、お願いしますわ」

「え、えぇと……はい」

 

 自分から誘った手前、嫌とも言えなかった士道はロボットのような挙動で歩き出した

 

『驚いた。本当に誘いに乗ってくるなんて』

「……おい」

 

 お前が指示したんだろうがとインカムを小突いてすぐ、駅前広場が視界に入る。噴水の前には三十分前から変わらぬ姿勢の折紙の姿が見える。しかし三人組のナンパ男に話しかけられていたのだが、まるで男たちの存在に気づいていないかのように折紙は無視し続ける

 三人組のうち一人が無視され続けたことに腹を立てたのか折紙の肩を掴もうとして返り討ちにあい、その場から動けないでいる間に警察に連れていかれるという事もあった。

 すべてが終わった折紙は何事もなかったかのように、先ほどと同じ姿勢に戻った

 

『……まるで宝を守る門番だな』

「…………」

「士道さん、どうかしまして?」

 

 インカム越しに聞こえてくるトーマの言葉を聞きながら、頬に汗を浮かべ足を止めていた士道を不審に思ってか、狂三が声をかけた

 

「や……な、なんでもない」

 

 折紙に気づかれないよう駅のすぐ近くに聳え立つビルの中に入っていき、ランジェリーショップに辿り着く。入口からやたらセクシーな下着が並べられたエリアで店員も客も全員女性

 士道が店に入るなり少しの間辺りから好奇の視線が注がる、狂三が隣にいるからいいようなものの、あまり気持ちのいい空間ではなかった

 

 

 

 

 タブレットの画面を分割して、その様子を確認していたトーマの目に、新しい選択肢が表示される

 

➀右手側。ピンク地に黒レースの妖艶なデザイン

②左手側。淡いブルーの爽やかなデザイン

③「俺はもっと露出度の高い方が……」後ろにかかっている下着を指さす

 

「なんだこの選択肢……」

 

 少し引きながら適当に選択肢を選んで成り行きを見ていると、インカム越しにクルーの声が聞こえてきた

 

『ここまで来たなら攻めに出ましょう! 最初に間隔を麻痺させておいて、キスへの抵抗を少なくするんです!』

『ま、AIがあえて第三の選択肢を提示してきたんだし、試してみる価値はあるかしらね。──士道、③よ。狂三の後ろの下着を選びなさい』

 

 相変わらず突拍子もない選択肢を眺めつつ、士道の成り行きをタブレット越しに見ていると、一瞬だけノイズが走る

 

「……ん?」

 

 何かの不調かとも思ったトーマは端末自体を見てみるが、特に変わった事は起こっていない

 

「後で一応検査を頼んどくか」

 

 琴里から支給されているタブレットだが、正式な任務以外にも使う機会が多い為案外気に入っているトーマはそんなことを考えていると、琴里と士道の声がインカム越しに聞こえてくる

 

『士道、時間よ。……本当なら狂三に注力しなきゃいけないところだけど、待ち合わせに遅れて探し回られても面倒だわ。鳶一折紙のもとに向かってちょうだい』

『そ、そんなこと言われても……』

『いいから、早く向かいなさい。──あ、狂三にちゃんと”可愛い”って言ってあげるのよ』

『……り、了解』

 

 画面の向こうの士道は意を決したように腹を押さえると狂三に言う

 

『すまん狂三! ちょっと腹の具合が悪い! トイレ行ってくるからしばらく待っててくれ! ちなみにその下着似合ってる! 可愛いぞ!』

『まぁっ』

 

 画面越しの士道を見たトーマはタブレットにビルの見取り図を表示させ、士道にインカムを繋げる

 

「士道、少し遠回りになるが今いる場所からエスカレーターで二つ下に降りろ」

『わかった!』

 

 指示に従った士道がエスカレーターを下った事を確認すると次の指示を出す

 

「降りたら、そのままビルを出て、すぐ近くにある路地裏に入れ。死角になってる」

 

 それだけ言い残して士道との通信を切ると今度はフラクシナスに通信を続ける

 

「聞いてただろ、士道の回収頼む」

『了解よ……それにしても、案外しっかり手伝ってくれるのね』

「オレが必要だと思ってから手伝っただけだ……それに、流石に士道が不憫だからな」

 

 今回に関しては誘いを断り切れなかった士道に非がある気もしないでもないが、流石に不憫な気がする

 

「そう言う事だ、後は任せた」

『えぇ、任せてちょうだい』

 

 その言葉を最後に、トーマ再び傍観者モードに入った

 

 

 

「す、すまん……、折紙……っ、ちょっ、遅れた……!」

「問題ない。私も今来たところ」

 

 嘘である

 

「え、ええと……今日は何処に行くんだ?」

「映画」

 

 折紙の言葉を聞いた士道はぴくりとほほを動かした

 

「な、なぁ折紙、その映画ってどこで……」

「天宮クインテット」

「……ですよねー」

 

 士道は引きつった笑みを浮かべながらインカムを小突く

 

『そうね、十香と鉢合わせる可能性があるし、あまり望ましくないわ。別の場所に変えられるか打診してみてちょうだい』

「あ、あのだな折紙、もしよかったら別の──」

 

 士道が言いかけたところで、折紙はチケットを一枚渡してくる

 

「先に渡しておく。なくさないで」

「……はい」

 

 完全に先手を打たれていた

 

『……ま、仕方ないわね。敷地も広いし、行く施設が違うんだから大丈夫でしょう』

「そ、そうだよな」

 

 士道は小声でそう言ってから折紙に向き直る

 

「じゃあ、行くか」

 

 士道の言葉に折紙はこくりと頷くと、並んで歩き出したのだが、不意に折紙が士道の腕に自分の腕を絡ませ、身を寄せてきたため、士道は思わず硬直してしまった

 

「あ、あの……折紙さん? 何をしてらっしゃるんでしょうか……?」

「腕を組んでいる」

 

 何を言っても無駄だと悟った士道は、バックバクの心臓で歩き出す。襲い掛かってくる邪念と腕に伝わる柔らかい感触によって目を泳がせる事数分、天宮クインテットに到着し、敷地内に入ったところで何故か折紙は水族館の方に向かって歩き始めた

 

「お、折紙……! ど、どどどどどこに行くんだ、映画館はこっちだぞ……!?」

「上映までまだ時間がある。軽く昼食を摂っていく」

「え……?」

 

 水族館の隣にあるこじゃれたレストランを見た士道は、軽く安堵の息を吐いたのだが、十香のいる水族館の近くは精神衛生上よろしくないため、他の食事出来る場所に行かないか提案しようとしたが、あっという間にレストランの案内された席に座らされていた

 

「…………」

「…………」

 

 しばらくの間、沈黙が流れる

 

『びっくりするほどの手際、オレですら戦慄するね』

『……何か言いなさいよ、士道』

「あ……っ、あぁ……」

 

 頬をかいた士道は、改めて口を開く

 

「なぁ折紙、今日はなんで俺をデートに誘ったんだ……?」

「今日は、できるだけ一人にならないで欲しかった」

「え……?」

 

 士道は眉を顰めるが、折紙は構う様子もなく言葉を続けた

 

「デートが終わったら、うちに来て欲しい」

「……!? ど、どういうことだ……?」

「そして、しばらくうちに泊まって欲しい」

「え──えぇッ!?」

 

 士道は思わず大声を出してしまった。周囲の客たちが驚いたように目を向けてくるが、今の士道にそれを気にする余裕はなかった

 

「な、ななななななんでいきなり、そんな……」

「私は本気」

「え──えぇぇぇぇぇと…………っ」

 

 目が泳ぎまくりしどろもどろになっている士道が天に助けを求めるとタイミングよくウェイターが料理を運んできた

 

「と、とりあえず冷めないうちに食べよう! な!?」

 

 士道の言葉を聞いた折紙はこくりと頷くと、二人で料理を食べ始めるのだが、混乱していた士道は料理の味などわからなくなっていた。そしてそれを食べ終えたところで右耳にアラームが聞こえてくる

 

『士道、十香が不安がってるわ。一旦戻ってあげて、そこからなら歩いて行けるわね?』

「お、折紙! すまん、ちょっとトイレに行ってくる!」

 

 そして士道は、レストランを出ると水族館に向かう。トリプルデート、ギリギリ安全に進行中




削られていく士道の体力
削られていく士道のメンタル
果たして士道は無事トリプルデートを終えられるのか

次回、ナイトメア《下》

前後編になってしまってごめんなさい
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