デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー 作:SoDate
第4-1話, 炎の精霊
狂三は、巨大な戦斧を担ぎ上空にいる琴里を睨む
「邪魔しないでいただけませんこと? せっかくいいところでしたのに」
「悪いけど、そういうわけにはいかないわね。あなたは少しやりすぎたわ。──跪きなさい、愛のお仕置きタイム開始よ」
琴里の言葉が予想外だったのか、狂三はしばし目を丸くしていたが、すぐに堪えきれないといった様子で哄笑を漏らす
「く、くひひひ、ひひひひひひひッ……面白い方ですわねぇ。お仕置き、ですの? あなたが? わたくしを?」
「えぇ、お尻ぺんぺんされたくなかったら、分身体と天使を収めて大人しくしなさい」
それを聞いた狂三は、さらに可笑しそうに嗤った。周囲にいた狂三たちも、それに合わせるようにけたけたと嗤う
「ひひひ、ひひ。随分と自分の力に自身がおありのようですけれど、過信は身を滅ぼしますわよォ? わたくしの刻々帝は──」
「御託はいいから早く来なさい黒豚」
琴里が面倒そうに息を吐くと、楽し気に笑っていた狂三の頬がぴくりと動き、一斉に上空の琴里を睨みつける。そして、それと同時に前方から苦悶の声が響いてきた。どうやら十香と折紙が狂三の分身に気絶させられたらしい
「上等ですわ。一瞬で食らいつくして──差し上げましてよォッ!」
狂三がそう言った瞬間、屋上を埋め尽くしていた狂三の分身体が一斉に脚を縮め、空高く跳躍して琴里に迫った。琴里に迫る黒いシルエットは突撃と言うよりも無慈悲な機銃掃射や散弾銃の連射と言った方が適当に思える
圧倒的な物量で相手を圧殺しようとする数の悪魔、人間代の巨大な弾頭が狂三に迫った
「──ふん」
それを琴里は鬱陶しげに鼻を鳴らし、担いでいた戦斧を前方まで振り抜く。それでもなお、数の暴力の前に自分の優位は揺るがないと思っていた狂三だったがその予想は覆されることになった
『ぁ、ぇ……?』
琴里が灼爛殲鬼を振り抜いた瞬間、先端に生えた刃が揺らめき、それと同時に分身体の身体の一部が宙を舞う。自らの一部を失った狂三の分身体は自分の部位を見つめ呆然と声を発した直後、身体全てが炎に包まれ、地に触れる前に燃え尽きた
「…………」
狂三は無言で、士道の方に落とすと、もう一度灼爛殲鬼を振るい、士道に群がっていた狂三を消滅させた
「──っ」
士道は口の中に差し入れられていた指を吐き出し、幾度かせき込んだ
「こ、琴里……これは一体──」
「大人しくしてなさい、士道。可能なら狂三の隙をついてこの場から逃げて。今のあなたは──簡単に死んじゃうんだから」
「は……? それってどういう……」
士道の問いは、前方から響いた狂三の声によってかき消される
「ひひ、ひひひひひひひ……ッ! やるじゃあありませんの」
銃を握った狂三は唇の端を歪める
「でェもォ、まさかこれで終わりだなんて思ってはおりませんわよねぇ?」
そして、狂三は巨大な文字盤の前で二つの銃を構える
「琴里、気をつけろ、あれは……!」
「ふふ、士道さん、無粋な真似はしないでくださいましッ!」
Ⅰの文字盤から溢れ出た影を短銃に装填し、自分のこめかみに撃ち込む、瞬間、狂三の姿が霞となって消える
狂三の姿が霞となって消えた瞬間、琴里は灼爛殲鬼をバッと頭上にやると程なくして甲高い音が鳴り、灼爛殲鬼が震える。狂三の天使──刻々帝の
狂三は影すらような追いつかない速度の猛襲を、琴里に仕掛けるが、彼女の灼爛殲鬼は焔の刃を俊敏にうごめかせ、その攻撃をことごとく防いだ
「あッははははは! 素晴らしいですわ! 素晴らしいですわ! さすがは天使を顕現させた精霊──ッ! 高鳴りますわ、高鳴りますわ!」
「ふん……! 鬱陶しいわね。あなたもレディなら少しは落ち着きを持ったらどう?」
琴里が棍を薙ぐように振り抜くと、ようやく士道たちの目に吹き飛ばされた狂三の姿が見える。空中に吹き飛ばされ、不安定な体勢の狂三はけたけたと笑い、銃を構える
「ご忠告痛み入りますわ。ではご要望にお応えして、淑やかに
刻々帝のⅦから影が滲み出て、銃口に吸い込まれていった、そして引き金を引くと同時に漆黒の弾丸が打ち出される。
かわせるはずのない弾丸を琴里は灼爛殲鬼で撃ち落とす
「琴里!」
が、駄目だ……刻々帝の
「ふふ、あはははははッ! 如何な力を持っていようとも、止めてしまえば意味がありませんわよ?」
狂三がそう言うと同時に、周囲に残っていた無数の狂三たちが一斉に銃を構え、引き金を引いた
「やめ──」
士道の制止が間に合うはずもなく、放たれた弾丸は琴里に吸い込まれ、その肌に銃痕を残していく
「それでは、ごきげんよう」
その言葉を最後に、
「琴里……ッ!!」
士道は悲鳴じみた声を上げてその場に駆け寄り、倒れた琴里の身体を抱き起そうとするが、できなかった。
全身を狂三の弾丸に穿たれた琴里は夥しい量の血の海に沈んだ琴里は、生存の望みなど一縷とてない惨状。士道は妹の変わり果てた姿に呆然と手を突いた
「あ、あ……」
「うふふ、ふふふふふふッ、あぁ、あぁ、終わってしまいましたわ、終わってしまいましたわ。せっかく見えた強敵でしたのに。無情ですわ。無常ですわ」
芝居がかった調子でくるくると回りながら、狂三は可笑しそうに嗤う
「さぁ、さぁ、今度こそ士道さんの番ですわ。わたくしに──」
狂三はそこで言葉を止めると、訝しげな顔をして、仰向けに倒れた琴里の方を見つめている。倒れた琴里に刻まれた無数の銃痕から焔が噴き出し、傷口を舐めるように広がっていく
「……まったく。派手にやってくれたわね」
踵を支点にするように、琴里は不自然極まる体勢で身を起こした。彼女に刻まれていた傷跡も、出血も、霊装の綻びさえも一切がなくなり、完全に修復されていた
「な──」
「私としては、あなたが恐れ戦いて戦意をなくしてくれるのがベストなのだけれど」
「……ふん、戯れないでくださいましッ!」
狂三は身を反らし、両手の銃口を背後に向けると、Ⅰの文字盤から影が滲みでる
「
狂三はそう叫び、両手に握った銃の引き金を連続して引き絞り、屋上に残った狂三たちに
数十発の
「──ちッ」
琴里は面倒そうに舌打ちすると、左足を後方に振り、士道の脇腹を蹴った。
「な、何すん──」
突然の衝撃を受け、後方に蹴り飛ばされた士道は背中と後頭部を地面に擦ってなんとか停止し、非難の言葉を吐こうとするが最後まで吐くことはできなかった。
「切り裂け──灼爛殲鬼ッ!」
琴里が吼えた瞬間、灼爛殲鬼の刃は体積を何倍にも膨れ上がらせ、更に広範囲へと伸ばしていく。狂三たちは焔の刃に次々と薙ぎ払われ、その身体を灰にしていく
「くッ……一体なんなんですの、あなたは!」
苦悶の表情で琴里から距離を取った狂三の身体には灼爛殲鬼の攻撃を受け、肩から腹にかけて切り傷の上から火傷をしたような奇妙な痛々しい傷が出来ていた
「刻々帝──
狂三が短銃を掲げると、Ⅳの文字盤から影が滲み出て、銃口に吸い込まれた。そして銃口を自らのこめかみに向け引き金を引くと、時間が巻き戻るかのように狂三の身体から傷が消えていく
そして、狂三が傷を治したのと同時に、琴里の周囲を飛び交っていた狂三の分身体は全て灰となって風に消えていく
「あら、もう打ち止めかしら? 案外少なかったわね。もう少し本気を出してくれてもいいのよ?」
戦斧を肩に担いだ琴里がそう言うと、狂三は顔を歪ませ、歯をぎしりと噛み締めた
「その言葉──後悔させて差し上げますわッ! |刻々帝《ザアアアアアアアアアアアアアアアフキエエエエエエエエエエエエエエエエル》ッ!」
「ッ! させるかっての……!」
狂三の言葉と呼応するように彼女の左目に存在する時計の針がもの凄い勢いで回り始める
「──ぁ」
その様子に不穏なものを感じた琴里は、灼爛殲鬼を振りかぶった瞬間、小さな声を漏らし、その場に膝をついた
「く……こ、これは……」
灼爛殲鬼を杖のようにしてどうにか体を支えながら、琴里がもう片方の手で苦しげに頭を押さえる。士道の目から見ても琴里の窮地である事はすぐにわかった
「こ、琴里!?」
「あッはははははははは! 悪運つきましたわねぇ!」
狂三は高らかに笑い、刻々帝の弾が込められた歩兵銃を狂三に向けられた。彼女の銃に込められた弾がどんなものなのかわからないが、琴里の命を刈り取る為の一撃である事が理解できた
士道は直感で琴里のところに駆け出そうとして、誰かに腕を掴まれる
「駄目だ……士道」
「トーマ……でも、このままじゃ琴里がッ!」
「琴里をよく見ろ……」
「えっ──」
士道が琴里に目を向けた瞬間、膝をついていた筈の琴里がすっと立ち上がる
「っ、琴里! 大丈夫なのか!」
少し離れた場所から、士道が声をかけるが……琴里が答えなかった
「琴、里……?」
士道の問いに答えない琴里は、爛々と光る深紅の瞳で、狂三をジッと睨みつける。士道にとって、見慣れたはずのその顔は、何故か琴里ではないまったく別の少女に見えた
「灼爛殲鬼──
琴里は灼爛殲鬼を天高く掲げ、その言葉を発する。それに応えるように灼爛殲鬼の刃は空に掻き消え、その形を変形させていく。柄の部分は本体に収納され、大砲を思わせる形に変形した灼爛殲鬼は、柄を握っていた右腕を包み込むように装着される
そして、肘から先に灼爛殲鬼を装着した琴里は、その先端を狂三に定める、その瞬間、琴里の周囲に渦巻いていた焔が、その先端に吸い込まれていく
「────!?」
琴里に銃口を向けられていた狂三は、その様子を見て眉をひそめる。それは今までに見た事の無い表情、言葉を当てはめるなら恐怖や戦慄に近いものだろう
「わたくしたち!!」
狂三が叫ぶと同時に、分身体たちが、二人の間を遮るように這い出てくる
「──灰燼と化せ、灼爛殲鬼」
琴里が静かに口を開いた瞬間、構えていた灼爛殲鬼から凄まじい灼熱の奔流が放たれる
「ぐ……」
「ッ……」
息を吸うのも、目を開けるのも困難なほどの熱気。その一撃は数秒でその体積を減らし、琴里の右腕に装備されや灼爛殲鬼は、作業を終えた機械のように白い煙を吐いていた
「けほ……っ、けほ……っ」
「士道、大丈夫か?」
「あ、あぁ……でも、何が──」
軽く咳き込んでから視線を上げた士道は、その先に広がっている光景を見て小さく肩を揺らす。屋上の床や現須賀凄まじい熱によって溶かされていた。砲撃の通った後には何も残っていなかったが、その先には未だ狂三と刻々帝の姿があった
だが、狂三を護るように這い出た分身体の姿は一体もなく、狂三自身も左腕を失っていた。凄まじい熱量で吹き飛ばされた左腕は断面が炭化し、血の一滴も流れていない
狂三の背後に浮遊していた刻々帝も、その巨大な文字盤の一部を貫かれ、本来文字のあったであろう部分の一部が綺麗に抉り取られていた
「──ぁ……」
絞り出すように息を吐き、その場に崩れ落ちた狂三を見ても、琴里は銃口を降ろさない
「……銃を取りなさい」
琴里は、低い声で狂三に言う
「まだ闘争は終わっていないわ。まだ戦争は終わっていないわ。さぁ、もっと殺し合いましょう。あなたの望んだ戦いよ。あなたの望んだ争いよ──もう銃を向けられないというのなら、死になさい」
「琴里……? 何を言ってるんだっ!?」
士道はそう言うと、トーマの腕を払って琴里の元まで向かうと、その肩を掴んだ
「それ以上やったら、本当に死んじまうぞ! 精霊を殺さずに問題を解決するのが、ラタトスクなんだろ!?」
士道の声に耳を貸さない琴里は、再び灼爛殲鬼の砲門に焔を引き込んでいく
「……! お、おい、琴里!」
士道は琴里の前に回り──息を詰まらせる。冷たく歪んだ双眸に、妖しく光る深紅の瞳。そして口元に浮かんでいたのは、愉悦か恍惚にも近い表情
それを見た士道は、目の前にいる琴里が自分の知っている琴里でないことに戦慄し、その場から駆け出す──力なく膝をついた狂三の方に
「狂三!」
「士──道、さん……?」
狂三を連れて逃げるような猶予はないと理解した士道は、狂三の前にバッと立ちはだかる
「士道ッ! ──―」
トーマは、咄嗟に無銘剣を出現させ士道の元に走る。それと同時に灼爛殲鬼から再び紅蓮の一撃が放たれる。その瞬間
「っ!」
灼爛殲鬼を構えた琴里が、ハッと目を見開いた
「おにーちゃん……ッ! 避けてっ!」
琴里は叫ぶと同時に、右手の灼爛殲鬼を上空に向けるが、放たれた炎の軌道は完全には変えられず、士道に接触する直前でギリギリ間に合ったファルシオンが間に割って入り無銘剣で一撃を受け止める
「……ッ!?」
紅蓮の一撃を受け止めきったファルシオンは、背後を見ると意識を失った士道と、その場に膝をついていた狂三が無事なのを確認すると、意識を手放した
五河琴里
予期せぬ乱入者によって、ついに終結した狂三との闘い
そして、戦いの中で琴里の見せた獰猛な一面
真実が交錯していく中で、物語は進み続ける
次回, 五河シスター、第4-2話
原作4巻までは規定路線で進んでますが、4章終わった後どれがいいですか?
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Ⅰ,凜祢ユートピア【ゲーム1作目】
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Ⅱ,狂三スターフェスティバル【OVA】
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Ⅲ,八舞テンペスト【原作5巻】
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Ⅳ,宵待ビギニング【本編より少し前の話】