デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー   作:SoDate

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第4-4話, 水着対決

 辺り一面に広がる森の中、トーマは一人……森を彷徨っていた

 

「……ここは、何処だ」

 

 どこまで歩いても変わらない景色の中、トーマはひたすら歩き続ける

 

 

 

 トーマが森の中で遭難しているのと同時刻、五河士道は勝手に進んでいく話と目の前に広がる光景を見ながら、ポリポリと頬をかいた

 ふと四糸乃の方に目をやると、まだ水着を選んでいるらしかった、四糸乃はワンピースタイプの水着を希望しているようだが、よしのんは熱烈に露出度の高い水着を推しているようだった

 そんな様子を眺めていると、十香の入った試着室のカーテンがバサッと開け放たれる

 

「シドー!」

「お、おぉ……」

 

 士道の名を呼んだ十香が着ていたのはワンピースタイプの水着。それを見た士道は目を丸くする

 

「ど、どうだ、シドー! ドキドキしたか!?」

「え──あ、えぇと……うん」

「そ、そうか! シドーがそう言ってくれるなら……うん、頑張るぞ!」

 

 十香は嬉しそうに微笑むと、士道の心拍を読み取りでもしたかのように、聞き覚えのあるブザーが士道の右耳に聞こえてきた

 

『……アウト。少しは落ち着きたまえ、シン』

「あ──」

 

 令音に言われて初めて、自分が十香の姿に見惚れてしまっていることに気付いた

 

『……ともあれ、失敗してしまったからにはペナルティを受けてもらう』

「そ、それまであるんですか……!? い……一体どんな……」

 

 聞き覚えのある不吉フレーズを聞いた士道の背中に冷たいものが走る。琴里がいるとき受けたペナルティは自らの古傷を抉られるような、黒歴史の暴露だった。それ故に嫌でも警戒してしまうのは仕方ないのだ

 

『……どんなものにしようか』

「か、考えてなかったんですか」

『……ん、我々は琴里ほど、君の弱みを握っているわけでもないしね……』

 

 その言葉の後、令音は数秒間考えるように黙り、何かを思いついたように声を発してきた

 

『……よし、ではこうしよう。琴里の霊力を再封印し終えたあとで、夜ベットに入った琴里の頬にキスをして「ぐっすりお休み、マイ・スウィート・シスター」という』

「は──はぁッ!?」

 

 中々にインパクトのあるペナルティに、士道は素っ頓狂な声を上げた

 

『……これは今後琴里がいないときにこういう事態になったときは、その映像を公開するというペナルティも作成することができるね。……さ、では頑張ってくれたまえ。一度アウトになるたび、シーンは増えていくよ』

 

 勝手に話が進行していたデート権争奪戦に加え、まさかの追いうちを受けた士道が絶望的な心地で額に手を当てていると、十香の隣のカーテンが開け放たれた

 

「……っ!」

 

 士道は露わになった折紙の姿を見て言葉を失う。華奢な肢体をホルターネックタイプのビキニが覆っていた。そして水着の色は黒であるためか、折紙の白い肌が一層際立ち、普段隠れている部分にも目が行ってしまう

 

「士道、どう思う」

「……! え、あ、あぁ……凄く、似合ってると……思う」

「そう」

 

 士道の言葉を聞いた折紙は無表情のまま、しかしどこか嬉しげに首肯するとはだしのまま試着室から出てきて、士道の前でくるりと一回転した。その直後、2回目のブザー音が士道の耳に聞こえてくる

 

『……おやすみのチュウは、添い寝しながらだね』

「──! し、しまった!」

 

 士道はハッと肩を揺らすが時すでに遅し、罰ゲームは追加された

 

「ぐッ、ぬぬぬ……シドー! そこの水着を取ってくれ!」

「え……?」

 

 士道と折紙の様子を見ていた十香は悔しそうに歯ぎしりをすると、士道の近くにかけられていたビキニを指さした

 

「こ、これか? でも十香、恥ずかしいんじゃ──」

「いいから、それをよこすのだ!」

 

 士道は言われるがままに水着を手渡すと、当かはそれをひったくるように奪い取り、カーテンを閉めた

 

「こ、これでどうだ!」

 

 それから程なくして、試着室のカーテンが開かれると同時、先ほどとは全く印象の異なった十香の姿が露わになる

 士道の渡したビキニを身に纏い、頬を桜色に染めながらへそや太ももを隠そうとし、しかしそれでは意味がないと手を退かし、といった感じで落ち着かない様子だった

 

「こ、これは……」

 

 士道はごくりと生唾を飲み込む、先ほどの折紙の水着姿も素晴らしいものだったが、十香にまた違った魅力があった身体、深い紫色のビキニが八日の健康的なプロポーションを映えさせ、肌を晒すことに慣れていない十香の微妙な恥じらいが、魅力を倍加させていた

 

『……さて、ではおはようのチュウも追加かな』

「は──っ」

 

 罰ゲーム、追加。これはもう反論のしようがないほどアウト

 

「シドー、こ、これは似合うだろうか……?」

「そ、そうか!」

「…………」

 

 十香の問いかけに士道が首を縦に振ると、折紙が敵愾心を燃やし始める。彼女は無言のまま試着室に入っていくと、すぐにカーテンが開き、先ほどまでの私服に着替え直した折紙が出てくる

 てっきり過激な水着姿で出てくるだろうと予想していた士道にとっては、少々意外な格好だった。それは十香も同じだったようで、一瞬怪訝そうな顔を折紙に向け、すぐに腕を組んで勝ち誇ったように口を開く

 

「うむ、潔く負けを認めたか。貴様にしてはよい心がけだな!」

 

 しかし折紙は十香の言葉を無視すると、士道の元まで歩いていく

 

「な、なんだ?」

 

 士道が首をひねった瞬間、折紙は彼の手をガッと取り、自分のスカートの裾を握らせてきた

 

「うぇえ!?」

「な、何をしているのだ、貴様!」

 

 予想外の展開に士道は素っ頓狂な声を発し、十香も声を荒げるが、折紙は至極冷静と言った様子で口を開いた

 

「──めくって」

『な……!?』

 

 想定外の一言に、士道と十香の声が見事にハモる。右耳からブザーが聞こえてきたが、今の士道にはそれを気にしている余裕すらなかった

 

「な、何言ってんだ折紙。そんな──」

「そうだぞ貴様、ルール違反だぞ!」

「ルールにはきちんと則っている。士道、めくって」

「や、さ、さすがにそれは……」

 

 士道が言葉を濁していると、着実に士道の手は折紙によって動かされ、スカートの裾が持ち上がっていく

 

「ちょ、ちょっと、折紙……!?」

 

 士道が必死に抗おうとするが、確実にスカートが持ち上げられ、その中が少しずつその姿を現していく。悲しいことに士道も男の子、必死に目を逸らそうとしてもその中を目に焼き付けてしまっていた

 その瞬間、折紙は私服をバッとはだけさせるとその中に着ていた白い水着が露わになった

 

「な……ッ! なんだと!?」

「言ったはず。ルール違反はしていないと」

 

 驚愕に満ちた十香に対して、折紙はどこか得意げに返す。確かに発想な勝利だが、流石に反則な気がしないでもない

 

「ともあれ、彼を最もドキドキさせたのは私。──デート権はもらっていく」

「そ、そんなはずが……」

 

 十香は慌てた様子で士道のもとまで走り寄り、その胸元に耳を当てた

 

「ど、ドキドキしている……」

 

 私服を着直した折紙が、悠然とスカートを翻した

 

「潔く負けを認めるべき」

「ぐっ、ぐぐぐぐぐ……」

 

 十香は悔しそうに歯を噛み締めると、折紙の右手をはらって士道の右手を取った

 

「と、十香……」

 

 十香の意図がわからず、目を丸くする。十香は青を真っ赤にしながら士道の右手を両手で握ると、意を決したように気合いを入れた

 

「よしのん……おまえを信じるぞ……ッ」

 

 などと言いながら士道の手をぐいっと自分の方……具体的に言うと水着一枚に包まれた、十香の胸へ持っていく

 

「な──!」

 

 士道はすんでのところで力を入れ、その進行を中断させた

 

「ちょ、な、何してんだ十香! やめろって!」

「だ、駄目だ駄目だ駄目なのだ……! 私でドキドキしてくれ、シドー!」

「してるしてる! 十分ドキドキしてるから!」

「ほ、本当か……?」

 

 十香が不安そうに眉を八の字にしながら、再び士道の胸元に耳を当ててくる

 

「鳶一折紙のときの方がドキドキしている……っ!」

 

 絶望的な叫びをあげて、十香がまたも士道の手を取り自分の胸に押し付けようとしてきた

 

「ま、待て! 落ち着け十香! おまえも恥ずかしいんだろ!? 無理すんなって!」

「だ、大丈夫だ……! シドーなら、大丈夫だ! 前も触っただろう!?」

「どういうこと? その話を詳しく聞かせて欲しい」

「そこ食いついてねぇでこいつ止めてくれぇぇぇッ!」

 

 折紙参戦、事態はわけわからん状況になった士道が悲痛な叫びをあげた瞬間

 

士道……さ……ん……! 

 

 どこからか、すごく小さい声が聞こえてきた

 

「え……?」

「む……今の声は」

「…………」

「四糸乃……だよな」

 

 小さな声に反応した士道だけでなく、十香と折紙も眉をひそめた。

 

「士……道さん……た、たす……けて……ください……っ」

 

 耳を澄ました士道のところに、再び小さな声が聞こえてきた。そして助けてという声を認識した瞬間、士道は急いで声のする所に駆け寄り、カーテンに手をかけた

 

「……っ! 四糸乃、開けるぞ!? 大丈夫か!?」

「し、士道さん……」

 

 勢いよくかカーテンを開け放つと、そこには服がはだけ半裸状態になった四糸乃の姿があった。ビキニタイプの水着に腕を通した状態で、胸元を押さえながら涙目になっていた

 その姿は、四糸乃の小さな肢体と相まって、士道に禁断の扉を開かせるほどの妖しい魅力が溢れていた

 

「か、片手だと……上手く、着られません……」

 

 士道の耳元で、今日一番のブザーが鳴る

 ……こうして、士道との一日デート権の獲得者は、四糸乃に決まるのだった

 

 

 

 

 一日デート権の獲得者が四糸乃に確定したのと同時刻、森の中を彷徨っていたトーマも目的の場所に辿り着いていた

 

「ようやく……見つけた」

 

 ここに来る途中で転倒し、服を樹にひっかけ、ほぼ満身創痍のトーマは、竹林の入口に倒れこんだ

 

「あー……駄目だ、一歩も動けん」

 

 そのまま寝てしまおうかと目を閉じた瞬間、普段とは違う力の流れを感じ取る

 

「……やっぱ、ずっと休んでおくわけにはいかないか」

 

 その場から起き上がったトーマは、身体についた土を払って力の流れを辿っていくと、一本の竹の目の前に辿り着く

 

「力を感じるのはこの竹の前……か」

 

 その場所に辿り着いたトーマは無銘剣を右手に出現させた瞬間、目の前の竹が淡く輝き始める。この竹をどうすればいいのかを理解したトーマは無銘剣を使って竹を二つに斬る。その瞬間、中から現れたのは一冊のワンダーライドブック

 

「月の姫かぐやん……竹の中から現れるかぐや姫、そのまんまだな」

 

 新たに現れたワンダーライドブックを手に取り、来た道を戻ろうとしたところでトーマは後ろに誰かの気配を感じ取る

 

「……?」

 

 トーマは気配の感じた方に視線を向けるが、そこには誰もいない

 

「気のせい……か」

 

 視線を戻したトーマは、竹林から街に戻る為に歩き始めたところで、ある事に気付いた

 

「帰りは、フラクシナスに拾って貰えばいいじゃん」

 

 善は急げ、トーマはすぐさまフラクシナスへ連絡を入れた

 

 

 

 

 

 

「はぁ……なんか今日はどっと疲れたな」

 

 フラクシナス内にある休憩スペースで、士道が大きく息を吐いていると、足音と共にやたらボロボロのトーマがやってきた

 

「……おう、士道……息災か?」

「それを聞くならまず自分が健康じゃないと駄目だろ……それよりどうしたんだ、その姿」

「少し森の深いところまで竹を取りに言ってただけだ」

「竹って……」

 

 困惑している様子の士道を他所に、トーマは自販機で水を一本買うと士道の隣に腰を掛ける

 

「それより、随分疲れてたみたいだが……そんなに大変だったのか?」

「まぁ……大変っちゃ大変だったな」

 

 結局あの後、士道は三人に一着ずつ水着をプレゼントして、昼食を摂ってから帰宅した。その後令音に呼びだされプランの確認をしていたところだ、途中で十香や四糸乃との夕食を挟んだとは言え、中々にハードなスケジュールである

 

「そういえば、トーマの方は一体何をしてたんだ?」

「……あぁ、オレの方は少しフラクシナスの設備を借りて調べものをしてたんだが、それがようやくひと段落ついたんだよ」

 

 士道が打ち合わせなどをしている時、トーマはフラクシナスの設備を少しだけ借りて今日手に入れたワンダーライドブックと、一向に反応を示さない火炎剣烈火の本の分析を行っていた

 その結果わかったのは今日手に入れたワンダーライドブックは精霊と一体化しているものと比較しても明確な違いは存在しない事、そして火炎剣烈火の本にはその力の大半が残っていなかったと言う事だ

 

「……士道、お前は五年前の事、どこまで覚えてる?」

「……わるい、実は俺もあんま覚えてないんだ」

「そうか」

 

 トーマはそう言うとペットボトルの水を一気に半分まで飲み干した。士道はそんなトーマの方に少しだけ目を向けた後、五年前の記憶を探ろうとしたが、結局思い出す事が出来なかった

 

「お隣、よろしいですか?」

 

 声の聞こえた方に目をやると、紙コップを握った神無月が立っていた

 

「あ……どうぞ」

「失礼します……おや、トーマくんもいたんですね」

「あぁ、神無月さんか……設備の申請、ありがとうございました」

「気にしないでください」

 

 トーマはそう言って神無月に軽く頭を下げると、彼は軽く手を振りながらそう言った。

 

「それより士道くん。いかがですか、明日への自信のほどは」

「そういえば、明日か、琴里とのデート」

 

「あ、はは……正直、不安でしょうがないです。あの琴里をデレさせる自分ってのが全く想像できません。五年前琴里を封印したってのが信じられ──」

「正直士道なら問題ないと思うけど……って、どうかしたのか?」

「士道くん、何か気がかりなことでも?」

 

 言葉を止めた士道に対してそう言った二人に対して、士道は五年前の事件の事が思い出しきれない事を掻い摘んで説明する

 

「ふむ……記憶がない、ですか」

「……はい。その事件のことだけ、すっぽりと」

「お前、さっき覚えてないって言ってなかったか?」

「悪い、少しだけ誤魔化した」

 

「まぁ、そうでしょうねぇ」

「「え?」」

 

 神無月の言葉に、士道とトーマの二人は揃って目を見開く

 

「いえ、初めて司令が精霊のことを説明したとき、さも意外そうにしていましたから。もし五年前の事件を覚えていたなら、また違った反応をしていたでしょうし」

「言われてみりゃ、確かにそうか」

 

 トーマもその時は流していたが、確かに神無月の言う通りだ。そんなことを考えていると、紙コップを握っていた神無月は何かを思い出したかのようにあごに手を当てる

 

「もしよろしければ、映像をご覧になってみますか?」

「映像……?」

「はい、五年前、天宮市南甲町の大火災を捉えた映像です。数秒程度ですが、精霊化した司令と士道くんらしき姿が映っています」

「確かに、記憶に残るほどの火災ならニュース映像が残ってても不思議じゃない……にしても、良く残ってましたね」

「本当に偶々です、どこかのテレビ局のヘリが撮影したものだったらしいのですが、公開前にラタトスクがマスターテープを押さえたようです。──すぐに用意しましょうか?」

 

 トーマへの説明と、士道への確認の言葉を口にした神無月に対して、士道は躊躇いなく伝える

 

「お願いします……!」

 

 その映像を確認する為に、三人は休憩スペースからブリーフィングルームに向けて歩き出した




試練を終えた士道
散策を終えたトーマ

思い出すことの出来ない五年前の記憶
力の大半を失っている火炎剣烈火の本

全ての鍵は、天宮市南甲町で起こった大火災

そして、いよいよ士道と琴里のデートが始まる

次回,五河シスター第4-5話


《作者からのメッセージ》

デート・ア・ライブfeat.仮面ライダーセイバー読者の皆様
アンケートへの回答ありがとうございます。
アンケートの結果、五河シスター終了後は
”凜祢ユートピア”に進みたいと思います
また、今回は投票可能期間の明記をしていなかったことをお詫び申し上げます

次回以降は、しっかりと期間を明記いたしますので
アンケートを実施する際には、今後ともご協力のほど
よろしくお願い申し上げます。

SoDate

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