デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー 作:SoDate
「……道……士道……」
寝ぼけ気味の士道の耳に、誰かの声が聞こえてくる
「……ん……んん……?」
「ふふ……起きた?」
士道が目を覚ますと、近くに立っていた少女──園神凜祢に声をかける
「ん、……凜祢……おはよ」
「うん……おはよう士道」
「ん? なんかちょっと元気ないな?」
凜祢の様子を見た士道がそう言うと、凜祢は少し慌てた様子で言葉を返す
「そ、そんなことないよ! ……士道こそ、ちょっとうなされてたみたいだけど、大丈夫? ちゃんと起きれる?」
「え、あぁ、大丈夫大丈夫! 今起きるよ」
士道は、今から三日前に霊力が暴走した十香を助けようとしてその途中で意識を失った。そして昨日ようやく目を覚ましたばかりであるため、本調子ではなかったりする
因みに霊力の暴走に伴い、精霊マンションも現在使用不能に陥っているため、十香と四糸乃も五河家に居候中だ
「よかった。朝ご飯作ってあるから、着替えたら降りてきてね」
「凜祢……」
「え?」
「いや……なんでもない。ただ、本当に良くできた女の子だなぁって……」
「ふふ、ありがと。でも、そういうことばっかり言ってると軽く見られちゃうよ?」
士道の言葉を聞いた凜祢は、少し困り顔を作りながらそう言う
「いや、本気で言ってるんだって。俺も……そんな風になれたらなって思うよ」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、別に目標にされるほど立派なことはしてないってば……それに、なにかになりたいとかじゃなくて、士道は士道らしいのが一番じゃない?」
「ん、そう言われても俺、平均的だしなぁ……」
「そんなことないってば。私はね、士道にはいいところがいっぱいだと思うよ」
「え?」
「──っ!? あ、ううん、ひとりごとだよ……ひとりごと」
「お、おう……?」
士道と凜祢の間に、少しだけ沈黙が生まれる
「……凜祢?」
「ほ、ほら、こんなに喋ってたら遅れちゃうよ? 士道は起きて準備しないと!」
「あ、そうだよな。じゃ、パパっと着替えちまおう」
「きゃ!? ちょっと士道! 私がいるのに脱ぎ始めないでってば!」
「あ……そっか。すまん凜祢!」
「い、いいから早くね! 私先に降りてるから!」
そう言うと凜祢はそそくさと部屋から出ていった
「……凜祢の奴、ちょっと変だったような……。いや、気のせいか」
着替え始める士道、その中に生まれた小さな疑問はいつの間にか消えていた
着替えを終えた士道がリビングまでやってくると、凜祢の用意した朝食が綺麗に並んでいた。献立は白米に豆腐とネギの味噌汁、焼き魚にだし巻き卵。それに納豆に乗りに漬物。日本の朝ご飯を体現したようなラインナップである
士道たち全員が席に着いたのを確認すると、凜祢が声をかけてくる
「みんな席についたみたいだね。それでは、どうぞ召し上がれ」
「うむ! 早速いただくぞ!」
十香はさっそく凜祢の作った朝食を一口食べて、声を上げる
「……うまい! 今日の朝餉も絶品だ!」
「ふふ……十香ちゃんったら。褒めても何も出ないよ?」
「り、凜祢……それは、おかわりできないと言うことか?」
「え? ……おかわり……?」
「何も出ないって言っただろ? だから十香は心配してるんだよ」
「あ、そういうことね。大丈夫だよ、十香ちゃん。ちゃんとおかわりは用いしてるから。でも、とく噛んで食べてね?」
「うむ! おかわりの準備を頼む!」
いつもと変わらない朝の風景、それを眺めていた士道の耳にニュースの声が届く
『──天宮市で動物園を経営していた──男性五十六歳の行方が分からなくなってから、三日が経過した現在でも──』
「あぁ……まだ見つかってないのか」
「園長さんがいなくなって、動物園も困ってるでしょうね……」
『──何らかの事件に巻き込まれた可能性も高いとみて、今後も捜査を続けていく方針です──』
天宮市は空間震がやたら多い以外が平和な街だと思っていた士道から見ても、最近は暗いニュースが多いように感じる
『──それでは、次のニュースです。天宮市近郊で飼っていたペットが突然姿を消してしまう事件が相次いでいる件について──』
「動物園といいペットといい、なにがあったんだろうな」
「うー……う、宇宙人に連れ去られたとかじゃないよねー……?」
「いやいや、さすがにないだろ」
「不思議だね……ハーメルンの笛吹き男、みたいば感じなのかな?」
「どうだろうな。何かが起きる前触れ……みたいに見えない事はないけど」
「おぉ! 戦いの幕が開く……そのちのさだめ!」
琴里がどっかで聞いたことのあるフレーズを言うと、それに反応したのは十香だった
「戦い!? 敵が来るのか、琴里!?」
『十香ちゃんがいうなら、そうかもしれないねー。わくわく!』
「不吉なこと言うなよ!?」
朝食を食べていた四糸乃の左手に装着されたパペットのよしのんの言葉に対して、士道が返した
「十香ちゃん、冗談だから落ち着いて……ね?」
「ぬ……冗談、なのか?」
「まぁ、何かが襲ってくるようなことはないかな……たぶん」
「ふむ……わかったのだ! 凜祢、おかわりだ!」
「はーい。十香ちゃん、よく食べるから作る方も嬉しいな」
十香のお椀を受け取りながら凜祢がそう言う
「凜祢の作る料理はうまいから、箸がどんどん進んでしまうのだ」
「ふふ……十香ちゃんってば、うまいんだから」
「ん? 私は料理をしてないが……」
「いや、そういうわけじゃ……ううん。それは置いておいて……十香ちゃん、ご飯大盛にする?」
「うむ! よろしくた──ッ!?」
凜祢の言葉に十香が返事をしている途中で、苦しそうな顔を浮かべる
「十香──ッ!?」
「十香ちゃんッ!?」
十香の様子を見た士道は、先日のように霊力が暴走したのかと心配するが。程なくして元の様子に戻る
「……だ、大丈夫だ……!」
「んー! だいじょーぶ? 詰まっちゃった?」
「あぁ、すまん琴里。心配かけたな、私は平気だ」
「ん、よかったー。ね、おにーちゃん」
「あ、あぁ……」
それが琴里なりの気遣いだという事を感じつつ、士道は頷いた。この場で十香が精霊の事を知らないのは凜祢だけだが、過剰に反応をしたらそれがバレてしまう可能性もある。流石にそれは問題がある
「でも、珍しいから驚いちまったよ……」
「わ、わたしも……です」
『十香ちゃん大丈夫ー? 今のはよしのんもびっくりだよー』
「本当に大丈夫? 手とか切ってない?」
「そ……それは大丈夫なのだが……」
「どうした、十香……?」
十香の表情が少し暗くなっているのを見た士道が話しかける
「すまんシドー……茶碗を割ってしまった!」
「何言ってるの。お茶碗より、十香ちゃんの身体の方が大事だよ? 怪我がなくて、本当に良かった……」
「だ、だが凜祢! これは……これはシドーが私に買ってくれたものなのだ! 大事にすると約束したのに……」
フォローするように言った凜祢に対して十香は少しだけ悲しそうに言った
「ご、ごめんなさい……私、そんなつもりじゃ……。どうしよう……どうすればいいのかな?」
「大丈夫だ、十香。また一緒に買いに行ってやるから」
「ほ、ほんとうか?」
「あぁ。それより、本当に身体は大丈夫か?」
「うむ、さっきも言ったが、全然平気だ」
「……やっぱり、士道は凄いなぁ……」
「……ん? なんだって?」
「なんでもないよ。士道は士道なんだなぁって」
五河家の朝は、何事もなく続いていく
一方、目を覚ましたトーマは一人状況確認を進めていた。美九の用意した朝食を食べながら昨日までの記憶を振り返ってみるが……やはりトーマには妹がいた記憶もなければ凜祢と言う人物に心当たりもなかった
「やっぱり、凜祢って名前に心当たりはないんだよな……それに、どうにも違和感がある」
トーマは起きてからずっと感じている違和感が何なのかわからないままポケットからワンダーライドブックを取り出そうとして……ようやく気付く。彼の持っていた筈の本の大半が失われていることに
「どういう事だ……なんで……」
トーマの部屋にある本の収納ケースや、ポケット等を確認したが。見つかったのはブレイブドラゴン、月の姫かぐやんの二冊だけ。聖剣も何故か無銘剣ではなく火炎剣の状態で顕現する
「一体、何がどうなってんだ……」
困惑しているトーマの思考は、真っ黒な絵具で塗り潰されたような状態になっていた。大切な記憶が意図的に塗り潰されているような、頭の中に無理やり空白を作り出されたような、そんな感覚だ
今のままでは正常な判断をすることが困難だと思ったトーマは、覚悟を決める
「……とりあえず、違和感を消すためは足を使うしかないか」
自分の中にあるナニカを解決するには、それしかないだろうと思ったトーマは今日は仕事を休むことを伝えると、一人街へ繰り出した
それからしばし時間が経ったものの、結局目立った成果を得ることのできなかったトーマは、一人駅前のベンチに座り天を仰いでいた
「収穫ゼロ……気になるのはあの”新天宮タワー”とか言う謎の建造物だが……どうにも足が進まん」
いつもと変わらない日常を送る人々、変わらない風景、何もかもが変わらない世界……他の人は普通の建造物であると認識している新天宮タワーも、トーマにとっては違和感しかないものだった
「にしても、何だろうなぁこの違和感……」
得体の知れない違和感をずっと抱えたまま動いているトーマの目に、見慣れた人影が写る
「シドー! 早く、プールに行くのだ!」
「お、おう! わかってる!」
「士道に十香じゃねぇの、あれ……そうだな、少しだけ話聞きに行くか」
そういえば最近話をしていなかった気がするが、ここで会ったのも何かの縁だろうと考えたトーマは、立ち上がると二人の元に向けて歩いていく
「おーい、二人とも!」
「む? おぉ、トーマではないか」
「おう、十香。それに士道も」
「偶然だな、何してたんだ?」
「少し情報収集を……それより二人とも、最近何か変わったことはなかったか?」
「変わったこと……?」
「あぁ、どんだけ小さいことでも──」
「ごめん士道、十香ちゃん。おまたせ!」
トーマが話を聞いている途中で、二人に向けてそんな声が聞こえてきた──瞬間、トーマの頭の思考を塗り潰していたモノが、少しずつ剥がれていく
「あれ? 兄さん?」
トーマは、声のする方を見ると。そこに彼女は──園神凜祢は立っていた
「お、まえ……は」
「トーマ、お前大丈夫か? 顔色が悪いぞ?」
「大丈夫か?」
「兄さん、もしかして具合悪いの?」
「い、いや……大丈夫だ」
問題ないと告げるトーマだったが、頭の中では警鐘が鳴りっぱなしだった。この場にいると自分の中にある今まで触れていなかった部分が無理やり引きずり出されるような、そんな感覚
「それより、お前らはどうしてこんな場所にいるんだ?」
「あぁ、実はこれからプールに行くところだったんだ」
「なるほどな、邪魔して悪かったな」
「いや、それは全然大丈夫なんだけど……何か聞きたかった事があったんじゃないのか?」
「……それならもう大丈夫、三人とも楽しんでこいよ」
「うむ!」
「あ、あぁ」
そう言うとトーマは三人と別れる
「っと、そうだ……美九に料理を教えてくれてサンキュな”凜祢”」
「え、あ、うん……どういたしまして?」
そう言い残して去っていくトーマのことを、”凜祢”は複雑な表情で見つめていた
その日の夜
トーマは一人、天宮市内にある湖にやってくると、少し離れた場所から人の声が聞こえてくる
「い、いいか、今日の目的を忘れるなよ。あくまでも、『天狗牛』のお迎えに来たんだから!」
「とりあえず、それが終わるまでは待つ……」
「す、すまんシドー……熱くなって忘れていた……」
やけに聞き覚えのある……と言うか士道たちの声を聞きつつ、トーマは一人目的の人物が現れるのを待った。その間に士道たちの話に聞き耳を立てていると、どうやら肝試し紛いの事をしにやってきたようだ
と、そこで微かに霊力の気配を感じたトーマは、気配を辿りつつその場から移動する
「よう、時崎狂三」
「あら、随分と珍しいお客さんですわね」
「……少し、頼みたいことがあってな」
「頼み……?」
「あぁ」
そう言いながらトーマが取り出したのは、火炎剣が納刀された状態のベルト
「時崎狂三、お前の刻々帝には撃った対象の過去を見れる弾があるんだよな」
「えぇ……確かにありますわよ」
「時間の支払いはオレがする……だからその弾をこの火炎剣とオレ自身に撃ち込んでくれ」
「自分で自分に……一体何を考えていますの」
狂三は少し怪訝そうな顔をトーマへと向ける
「今のオレが忘れているモノを……確認したいんだ」
「……はぁ、わかりましたわ。ただし、使用分より少し多めに
「あぁ、かまわない」
狂三はその場でくるりと回ると、空へ片手を掲げる
「おいでなさい、刻々帝」
その言葉と共に狂三の背後に現れたのは巨大な時計。そして両腕に握られた歩兵銃と短銃
「刻々帝──【
Ⅹの文字盤から滲み出た影が短銃へと吸い込まれ、その銃口はトーマへと向けられる
「それではトーマさん、代金は後ほど」
その言葉と共に、トーマへ向けて漆黒の弾丸が放たれた
僅かな時間で、トーマは追体験する。
自身の身に起きた事を……あの日、正体不明の霊力を感知したトーマはそこで正体不明の天使と戦い、敗北した。
そして、天使によって自身の持っている力のほとんどを奪われ、残ったのは火炎剣の力と二冊のワンダーライドブックのみ
「……思い出し……てはないが、理解できた。自分に何が起こったのか」
「そうですの、それでは……代金はしっかりといただきますわ」
「あぁ、持ってけ」
狂三は、トーマの元まで影を伸ばした。ものすごい勢いで体から力が抜けていく感覚に耐えること数十分。ようやく解放されたトーマはその場に膝をつき息を整える
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「それでは、わたくしはこれで失礼しますわ。トーマさん、良い夜を」
その言葉だけ残し、狂三は影に沈むように消えていく
「あぁ、良い夜を」
目的を達成したトーマもその場を後にした
夜は深くなり。次の朝が来るのを待つ
五河士道の幼馴染、園神凜祢
天使によって奪われたトーマの力
少しずつ深まっていく違和感
交差した糸は絡んだまま
未だほどける気配はない
次回, 凜祢ユートピア EX1-3